第十話
夢小説設定
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「こいつも吐いた!低IQ眼鏡!」
『(この子達のIQが低すぎるのか、馨先輩のIQが高すぎるのか…)』
四季と同じように遊摺部の背中をさすってやりながら、命は考えていた。
「まぁ僕も使い過ぎると高熱出るしね、似た力でも使えない場合も全然あるよ。それあげるよ。2時間はもつよ」
「僕に…くれ…」
「だめ!!俺もらう!俺の!」
『使えないのに持ってどうすんの?』
「いいの!」
遊摺部も欲しがっていたが、四季が小瓶を頑なに離そうとしない。
結局、小瓶は四季が持ったままとなった。
「遊んでねぇで状況教えろ」
仕事が進まないことに痺れを切らした真澄が馨に言い放つ。
業務に戻った馨は少し慎重な面持ちで真澄に伝える。
「少し変ですね。あの店内、鬼1人の反応しかありません」
「絶対皇后崎じゃん!」
「一番奥の部屋に監禁されてますね」
「拉致った奴生かして置いとくのは少し変だな。罠か、慌てて逃げたかのどっちかか?」
そう言うと、真澄は傷ついた親指から滴る自分の血液を舐める。
それを見た遊摺部は血蝕解放をするのだと理解して、馨にあることを聞いてみた。
「隊長の能力って?」
「真澄隊長は凄いよ」
「まあ見てくりゃわかるか」
血を舐めた瞬間、真澄の体がみるみる透けていく。
その様子を見た四季が驚きの声を上げた。
「透明になってる!」
「自分の血を舐めて10分間透明になれるんだ」
「すげぇ!もう見えねぇ!」
真澄の体は完全に透過して皆の視界から消える。
すると彼は、透過した状態で命に声をかけた。
「命、ついて来い」
『えーまだ出番早くないですか?』
「テメェ、除隊の件まだ許してないからな?」
『お供します』
「ごめんね、隊長のこと頼むよ」
有無を言わさない真澄に折れる形で、嫌々ながらも同行することになった命。
真澄に触れられると、命の体も透過していく。
「チヨ先も透明になってく!?」
『透過してる真澄さんに触れられると、その人も透明になるの』
「イチイチはしゃぐな」
「あたっ!」
騒ぐ四季を真澄が後ろから軽く蹴飛ばす。
命の体も完全に透過すると、水鶏が感心したように声を上げる。
「マジで見えねぇな、つーか服も透明になるのかよ」
「そこが隊長の能力の凄いところさ。身につけてる物まで体と同じ反応が出るんだ」
これが淀川真澄の血蝕解放ー
正に偵察のためにあるような能力である。
「中を確認してくる。お前らは待機だ」
『行ってきまーす』
準備が整うと、2人は屋上の手すりを飛び越えて潜入に向かった。
その慣れた様子を見ていた無陀野は、切れ長の目を更に細めて疑念を馨にぶつける。
「…偵察の仕事を手伝わせていたのか?」
「いつもでは…けど、たまに隊長の希望で。彼女の"目"は偵察でも重宝されてましたから」
「……」
無陀野は、数時間前に命に練馬への復職を提案したことを後悔した。
前線には出さないと誓ったはずなのに…自分でも何故あんなことを言ったのかわからない。
それでも、辛そうな表情を浮かべる命を無視できなかった。
「(駄目だな、あいつのことになると効率が悪くなる…)」
それが愛ってものだよ!と京夜の言葉が聞こえた気がした無陀野。
彼はふと、少し離れた場所で手すりに肘をかけてうつむく遊摺部を見つける。
彼の表情は暗く、落ち込んでいる様子が伺えた。
「落ち込むのは勝手だが、その時間に意味は無いぞ」
「先生…正直凄い凹みます…あの2人が凄すぎて…あの2人がいるなら自分はいらないんじゃないかって…それに2人に信用されてる蝶世先生も…練馬の最大戦力と言われただけあるんだなって…」
無陀野からすれば、百戦錬磨の現役隊員と入学したばかりの学生では天と地の差があるのは目に見えていた。
重要なのは経験を積ませることである。
しかし、落ち込む生徒をほったからしにするほど彼も鬼ではない。
無陀野はある話を遊摺部にしてあげた。
「真澄たちの能力は確かに凄い…でもあいつの透過能力も、最初は30秒しか続かなかった」
「え!?」
「必死に努力して経験を積んで、自力で能力をのばしたんだ。命も同じだ。あいつの能力については聞いたな?」
「はい…血を毒に変えられる能力だと」
「そうだ。だが…最初は二匹の蝶しか出せず、毒も軽い麻痺を起こす程度の物だった。それでも、仲間を守りたいという強い思いであいつは努力し続けた。その結果、戦闘部隊でも随一の実力を持つようになったんだ。まぁ…あまり褒められた努力ではなかったがな」
一番近くで見てきた無陀野だからこそ、2人の血の滲むような努力を理解していた。
「落ち込むのは経験と努力を重ねてからにしろ。お前の能力も捨てたもんじゃない、が、腐らすか伸ばすかは好きにしろ」
夜空を見上げながら、彼は遊摺部に言ってやる。
遊摺部はしばし考え込むと、バッと顔を上げて無陀野に顔を向けた。
「ありがとうございます!馨さん!お話色々聞かせてください!」
彼は無陀野に礼を言うと、自ら教えを乞うために先輩である馨の元へ駆け寄って行く。
無陀野は手すりに腕をかけながら、その背中を静かに見送った。
