第十話
夢小説設定
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潜入に向かった命と真澄は目的地のキャバクラに接近していた。
『流石、誰も気づかなかったですね』
「お前だけだぞ、俺の能力を見抜いたのは」
『いつまで根に持ってるんですか』
命が羅刹で保護されていた頃の話だ。
勉強の時間が終わり、校長と廊下を歩いていた時だった。
命は僅かな空気の揺らぎがある場所を見つけて、不思議に思いその揺らぎに触れようと近づいて手を伸ばした。
しかし…彼女が触れたのは空気の軽い感触ではなく、布の厚い感触だった。
触れると同時に、能力を解いて姿を現した真澄。
その時の彼の引き攣った顔は今でも鮮明に覚えているほどだ。
こうして命はただ一人、真澄の透過を見破った存在に成り上がってしまった。
『担任の先生から隠れてたんでしたっけ?』
「お陰でしっかり説教喰らったぜ?」
『でしょうね。あ、ほら、もうすぐ入口ですよ』
「チッ…」
2人はClub MEVIUSというキャバクラ店の前までたどり着く。
扉の前に来ると、真澄がドアノブに手をかけた。
「施錠は…されてるか。俺にとっちゃイージーな鍵だな」
彼は慣れた手つきで工具を使い、ピッキングを始める。
ガチ、と鈍い音が響いて解錠されると2人は中に潜入した。
「出入り口に罠は無し…」
『真澄さん、靴跡残ってる』
命が指差す先には、大勢の足跡があった。
「大勢で慌てて出た感じか…このへんは素人感満載だな」
『誰かに指示されて逃げたとか?』
「かもな」
いつの間にか10分経ち、透過能力が消えていたが2人はかまわずに店内へと足を踏み入れる。
きらびやかな店内はその豪華さとは裏腹に、嫌に静まり返っていた。
「(罠の1つもない…本当に急いで逃げただけなのか?じゃあこの違和感はなんだ…?)」
真澄は危険がないか、部屋という部屋を確認していく。
しかし、罠らしきものは一切無く拍子抜けするほどであった。
違和感を覚えながらも足を進める真澄を、突然命が彼の腕を掴んで足を止めさせる。
『真澄さん、止まって』
「?」
ガッシャーン
「!?」
突然、真澄の目の前で何かが落ちる。
落ちてきたのは天井に取り付けられていたミラーボールだった。
あと一歩進んでいたら、真澄に直撃していた。
『老朽化ですかね。大丈夫ですか?』
「…ああ(相変わらず恐ろしい程の動体視力だ。偵察で役に立つっつってるのに戦闘部隊なんか行きやがってこの馬鹿…)」
……______。
「邪眼の鬼?」
2人が潜入している頃、生徒達は馨から命の能力について説明を受けていた。
「かつて突然変異で独自に進化した鬼の一族がいたんだ。本質を見抜く洞察力、視線を外さずに持続して鮮明に認識する動体視力、その2つの能力がずば抜けて良く、予知能力に長けていると言われている。その能力を持った鬼は、"邪眼の鬼"と呼ばれている。命ちゃんは現在生きている唯一の鬼なんだ」
「最強の目じゃん!カッケー!」
四季が目を輝かせている中、馨は苦笑いを浮かべた。
「その代わりリスクも大きい。目を使い続けると…失明する」
「え…!」
「それに"邪眼の鬼"はその能力故に桃太郎機関から危険視されているんだ。彼女に懸けられた懸賞金は現在8000千万」
「はっ…!?」
「だから…命ちゃんは通常の鬼以上に狙われている」
桁違いの金額に四季達は絶句する。
そして彼らは疑問を抱いた。
何故、命はそこまでして戦うのか。
「どうしてそこまでして、先生は戦うんですか?狙われているなら、あまり目立たない方がいいんじゃ…」
「彼女にとって自分は二の次、まず優先するのは仲間なんだよ」
ー私は視力を失うだけだけど、それで仲間を救えるなら安いもんですよ!
「一度全て失っているからね。もう何も失いたくないっていう気持ちが人一倍強いんだ。今回の作戦も生徒を1秒でも早く助けるために、自分からサポートにまわったんだよ」
常に死と隣り合わせの世界で、いつか失明するという恐怖が付き纏っている。
それでも戦い続ける命の揺るぎない覚悟に、誰もが言葉を失っていた。
「腹括り過ぎだろ、チヨ先…」
「そうだね。君達の先生はそういう人だってことを、覚えておいてね」
馨の言葉は生徒達の胸に深く突き刺さることとなった。
