第十話
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桃太郎機関墨田区担当の隊長ー桃巌深夜と、副隊長ー桃寺神門は練馬区担当の桃華月詠と桃角桜介の元に訪れていた。
深夜は鬼神の子の糸口を掴んだので、殺すから手伝ってほしいと頼んだ。
しかし、その反応はあまり良いものではなく桜介に至っては殺気を放ち拒否の姿勢を見せる。
「なんでテメェの手柄の手伝いを俺らがやんだ?なぁ?返答によっちゃ頭と体離婚させるぞ?」
凄まじい殺気に深夜と神門は肌がビリビリとひりつくのを感じていた。
そんな中で、月詠は冷静に桜介を宥める。
「落ち着けよ桜介、沸点が低いのはお前の悪い所だ」
「すまん!」
桜介も一応、上司の月詠の言うことは聞くらしく、殺気を引っ込める。
「そもそも疑問だが、手を借りる必要はないんじゃないか?鬼神の子でも問題ないだろ?」
彼はそう言うと神門を指差す。
「神門君がいるだろ?その歳で副隊長になったんだ、君の功績は知ってるよ」
「買いかぶりすぎですよ、僕は争いが苦手ですし。一ノ瀬がどんな人なのかもわからないのに、やる気なんか出ませんよ。第一糸口を掴んだとか、今知ってビックリしてるくらいですよ」
「斜に構えた生き方してんじゃねーよ」
戦いに消極的なスタンスの神門を、桜介は非難する。
彼は拳同士をぶつけ合うと、楽しげに笑いながら言い放つ。
「楽しく殺し合って生を感じる!それで人生最高だろ!」
「その人生の喜びをくれてやるよ。タダでなんて言わねぇさ、無陀野と
その名前を聞いた瞬間、桜介の表情が驚きに変わる。
「無陀野ってあの無陀野!?」
「無陀野って誰でしたっけ?」
「昔100人対無陀野1人で無双した戦闘部隊のエースだ。今は一線を退いたって噂だったけどな」
続けて深夜は月詠達にこう告げる。
「京都同様、一ノ瀬と無陀野はセットだ。いっぺんに相手すんのは骨が折れる。そこでお前らに無陀野の相手をしてもらいたい。俺らは一ノ瀬、お前らは無陀野。利害は一致」
「ガセじゃねぇだろうな」
「重要な場面で下手な嘘はつかねぇ。断言するぜ、100%無陀野と殺らせてやる」
「…確かにお前はその情報力で隊長になったと言っても過言じゃない」
「どうするよ!決まってるよな!?」
深夜は確信していた。
この2人は話に乗ると。
何故なら、2人は生粋の戦闘狂。
鬼機関最強の男、無陀野との戦闘は彼らにとって最上級のご馳走なのだと。
「その話、乗ってあげるよ」
「ありがとよ」
予想通りの返答を受け取り、深夜はニヤリと笑みを浮かべる。
交渉が成立すると、月詠がこんなことを言い出した。
「どうだ?景気付けに2人の運勢見ようか?」
「断る。生年月日も血液型も俺にしたら大事な情報、迂闊に教えねぇ」
「ケッ、だから信用できねぇんだよ」
頑なに自分の情報を教えようとしない態度の深夜に、桜介は不満そうに悪態づく。
「僕10月21日O型ですけど、どうですか?」
「べらべら喋るなよ。ったく…トイレから戻る間に終わらせろよ」
そう言って深夜は部屋を後にした。
残された神門は、月詠が調べている占いの結果を待っていた。
「ふんふん神門君の運勢は…お!悪くないね!長い付き合いになる人と巡り逢うだって」
「え!」
それを聞いて、神門の頭をよぎったのは昨晩出会ったナツという少年だった。
「凄い!当たってる!」
「ミョリンパ先生流石過ぎる…。ただ…きっかけ一つで関係が崩れる可能性有りだって」
「え…?」
不穏な言葉に神門は思わず聞き返す。
「今日の開運ポイントは《竹馬で過ごす》だって」
「むず過ぎません?」
「ミョリンパ先生の開運は難易度が高いので有名なんだ。因みに竹馬あるけど使う?」
「なんであるんですか?」
「なんでもあるよ。全ては開運のためさ」
薄ら笑いをする目の奥に狂気じみたものを感じ、神門は若干引いてしまった。
彼は気持ちだけ受け取り、深夜の帰りを待つことにした。
その間も練馬の2人は無陀野との戦いが待ち遠しいらしく、会話を続けている。
「なぁ月詠!俺に無陀野と
「そこは公平に行こうぜ」
「いいだろ、蝶がいなくなっちまって退屈してたんだ」
「蝶?」
桜介の口から出た、似つかわしくない可愛らしい単語に神門は首を傾げた。
そんな神門に月詠は説明してやる。
「"死を呼ぶ蝶"って聞いたことない?練馬を中心に活動してた女鬼だよ。最近その鬼が特殊な血を引いているとわかって、隊長会議でも話題になったんだ」
神門は少し前に聞いたことがあった。
最近、頭角を現してきた女鬼がいて、その鬼が特別な鬼の末裔であることがわかったと。
「どんな人なんですか?」
「名前は蝶世命。美しい鬼だよ。輝く白髪に妖しく光る紫眼…何より女だけど強い」
「俺も月詠も一回やり合ったが、中々骨のある女だったぜ」
月詠は恍惚とした表情を浮かべながら、桜介は感情と興奮が抑えきれないという表情を浮かべながら説明する。
この2人が評価するのだから、余程強いのだろうと神門は確信した。
「そんなに強い人が、どうして急にいなくなっちゃったんですか?」
「新入りの馬鹿共がやらかしたからだよ」
「あの美しさに魅了されたようでね。どうやら手籠めにしようとして返り討ちにされたんだ。それっきり練馬での目撃情報は出てない。もしかしたら身の安全のために後方支援にまわってるのかもしれないね」
「それは酷いですね」
神門が酷いと評しているのは桃太郎側である。
鬼相手とはいえ、乱暴を働こうとすることは彼には許しがたい行為なのだ。
紫色の瞳と聞いて、神門はある人物を思い出した。
昨晩、ナツを迎えに来た栗色の髪の女性。
幼気な顔立ちに驚きはしたものの、大人の余裕を見せながらナツを気にかける姿は間違いなく先生だった。
「(あの人も紫色の目だったな…)」
神門は騒ぐ練馬組2人を前に、理知的な光を宿した紫の瞳を思い出していた。
