第九話
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「今でも思い出す時があるぜ?桃太郎100人の血の雨を降らせた、あの時のお前を」
「先生って凄かったんだ」
「好きだぜ、そういう話は」
四季と矢颪は興味深そうに真澄の話に聞き入る。
命は真澄がまた何か攻撃的な言動をしないかハラハラしながら注視していた。
「まぁ元エリートか、教員なんかになりやがって。おまけに命まで」
『もう許してください』
「その半グレについても調査済みだろ」
案の定チクチクと嫌味を言う真澄を気にもせず、無陀野は顔色一つ変えずに言い放つ。
自分のせいで無陀野が攻撃されるのがいたたまれない命だったが、本人はさほど気にしていないようだった。
「そいつらのたまり場なら特定済み、あとは踏み込むだけだ」
「なんだよ…ちゃんと…やってんじゃん。怒っちゃったよ」
『ちゃんと謝ってね』
「ゴメン」
「仕事してるだけだ、馬鹿が」
軽い謝罪だが、真澄は受け入れたようである。
「戦闘部隊は動けないが無陀野に動いてもらう。命、お前も手伝え」
『はーい』
「馨、お前が一緒につけ」
「わかりました」
着々と皇后崎救出作戦が進められていると、待ったをかける者達がいた。
「待てよ!俺らも行かせてくれよ!」
「ここで留守番なんかする気ねぇぞ?それじゃマジで何しに来たかわかんねぇだろ」
「は?何言ってんだ。現状留守番もできてねぇじゃねぇか、引っ込んでろ」
「いや、やらせよう」
四季と矢颪の申し出を真澄は即座に却下するが、意外にも無陀野が二人に賛同し始めた。
「お前も冗談言うようになったのか?」
「うちは普通の学校じゃない。実践を積ませたほうが効率的だ」
「効率?知るかよ」
「あの!」
ずっと蚊帳の外だった遊摺部が挙手をして、真澄に訴える。
「自分は索敵ができます!役に立てるかと思います!」
「偵察部隊志願か?」
「はい!自分の能力に合うと思って!戦闘能力がないので、それくらいしか役に立てないと思いまして」
その言葉は真澄の逆鱗に触れてしまったらしい。
彼は遊摺部の胸ぐらをグッと掴み上げる。
「それくらい?戦わないならやれると思ってんのか?そんな覚悟でやってねぇんだよこっちは。最前線で戦ってるのは偵察部隊だ。戦闘が始まりゃ確かに俺らはサポートだ。けど最初に敵に接近して、時には接触して、情報を得るのも俺らの仕事。一歩ミスればよくてその場で殺されるか、最悪情報搾り取られて殺されるかだ。そして俺らは絶対に情報を吐いちゃいけねぇ、吐くくらいなら死を選ぶ。その覚悟がある奴が偵察部隊に入る。なのになんだ?お前は。医療部隊も戦闘部隊も全ての隊員がそうだ、俺ら鬼に安全地帯なんかねぇ。鬼機関は全員命がけだ、その覚悟テメェらにあんのか?」
言い終わると真澄は遊摺部の胸ぐらを離して解放する。
遊摺部はすっかり怖気づいていた。
命は見ていられず、間に入って彼を庇う。
『脅しすぎです、まだ子供ですよ』
「蝶世先生…」
「関係ねぇ、甘ぇんだよテメェは」
『(そうかもしれない…)』
自分は無陀野や真澄のようにはできない。
ならせめて、寄り添ってあげたいと命は願った。
すると、命の優しさに応えるように遊摺部がもう一度真澄に食い下がった。
「す…すみません…でも…役に立ちたくて羅刹学園に入りました…!死ぬ覚悟は…ずっと前からできてます!」
「つーか覚悟なきゃ入学しねぇだろ、俺は戦って死ぬなら本望だ」
「カッコ悪い死に方は、したくない…」
「愛する人と死ねりゃいいわ」
「え…?えっと…死ぬのは怖いです。ただやれることをやりたいです」
「んー俺は…死ぬ覚悟はできてる。けど、死なないために成長したい」
それぞれの覚悟を聞いて、命は微笑む。
みんな生半可な気持ちで羅刹に来たわけではないとわかったから。
「だからやらせてくれ!断られても勝手にやるぞ!?いいのか!?」
「…」
「育成は大事な仕事の一つだ」
『鬼はいつも人手不足なんですよね?』
「…チッ!」
無陀野と命の最後の一押しで、とうとう真澄が折れた。
「わかったよ。そんかわりガキだからって言い訳はさせねぇぞ」
「「「押忍!/よっしゃー!/ハイ!」」」
早速、皇后崎救出のための隊が編成された。
「それじゃあ隊列はこうだ」
戦闘・敵の排除
無陀野・四季・水鶏・ロクロ・矢颪
偵察・突入のサポート
真澄・馨・命・帆稀・遊摺部
「潜入や偵察以外で敵地に踏み込む時は、戦闘部隊主体となる。そこに偵察、医療が数人加わって隊を作る。覚えておけ」
「チヨ先は?戦闘部隊だったんじゃねぇの?」
『今回はこっち。その方がスムーズだろうから』
生徒の救出となれば"目"が必要になるだろう。
1秒でも早く皇后崎を救うため、命は自らその役を買って出た。
「優先すべきは皇后崎の救助だ。戦闘はできるだけ避けろ」
「変装はしねぇの?」
「敵地に行く以上必要ない。いざという時混乱を招く」
『服どうします?制服は目立ちますよ』
「用意する。すぐに着替えろ」
生徒達は用意された隊服に袖を通す。
赤と黒を基調とした鬼機関の隊服である。
「役職付きの隊員だけが本来着られる正装だ。気合い入れろよ。総員状況開始!」
皇后崎救出作戦が始動して、一同は夜の練馬へと足を踏み出すのだった。
つづく
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