第九話
夢小説設定
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『(辞める前に、皇后崎君に謝らなきゃ)』
部屋を出た命は叩いてしまったことを詫びるために、皇后崎がいる部屋の前まで来ていた。
コンコン
『皇后崎君、さっきはごめん。ついカッとなっちゃって…』
ノックをして扉越しに謝罪してみるが反応はない。
不審に思った命はもう一度声をかけた。
『皇后崎君?…迅君?』
今度は名前で呼んでみるものの、やっぱり反応はない。
ドアノブに手をかけてみると、鍵は掛かっておらずあっさりと開いた。
『いないの?』
中に入ると皇后崎はおらず、もぬけの殻だった。
部屋を見渡していると、備え付けのテーブルに1枚の紙が置いてあることに気付いた。
『え…』
クシャクシャの紙には一言こう書かれていた。
《申し訳ない》
……_____。
命は急いで皇后崎がいなくなったことを無陀野に報告した。
無陀野はすぐに生徒を招集する。
招集に馨も参加してくれた。
「これだけ置いて、皇后崎が消えた」
彼は皆にも皇后崎の書き置きを見せてやる。
「あいつ何やってんだよ」
「でもあいつ様子おかしかったな。少し変だったぜ?なんか…らしくねぇつーか」
『……』
四季の言う通り、皇后崎らしくない。
いつもなら生意気に口答えするのに、今日に限って大人しい。
恐らく、原因はあの事故だ。
「最悪のケースを見越して動いた方がいいかもですね」
「さっきの件で桃も警戒しているだろうしな」
『そうなると一気に面倒になってきますね…』
命達の会話を聞いて、他の隊員も騒ぎ出す。
「桃太郎も本格的に動くぞ。あいつらが動くか…」
「あいつらが?厄介なことになったな」
ただならぬ雰囲気で話す隊員達を見た四季が、馨に問いかける。
「この辺の桃太郎ってヤバいの?」
「練馬区担当の桃太郎は…」
『色んな意味でヤバいよ』
四季の問いに命は練馬区にいる桃太郎の説明をしてあげた。
桃華月詠、桃角桜介、練馬区の桃太郎機関で隊長と副隊長を務める男達だ。
幹部格ということもあり、実力は共に筋金入りだ。
その圧倒的強さに練馬区の鬼機関は日々警戒していた。
ミョリンパ和歌子という占い師に心酔する占い狂の月詠、褐色の肌で肉弾戦を得意とする桜介。
一見正反対の2人だが、どちらも生粋の戦闘狂という共通点があった。
しかし、他の桃太郎のようにむやみに鬼を殺すことはなく、普段は町中で暴れる野良の鬼などを狩っていた。
そのせいか、彼等が幹部になってから鬼機関との大きな衝突はなく、鬼にとって練馬は比較的安全に暮らせる場所である。
『(そう考えると、唾切よりマシなんだよな)』
しかし、桃太郎には変わりないので警戒するに越したことはない。
するとやたら練馬の桃太郎に詳しいことに疑問を持った四季が命に問いかける。
「チヨ先ってなんでそんな練馬の事情に詳しいの?」
『言ってなかった?私、元々練馬所属だったの』
「そうなん!?」
彼は驚愕の声を上げる。
副担任の意外な経歴に、他の生徒も少なからず驚いていた。
「戦闘部隊にいた頃のチヨ先ってどんな感じだったの?」
「彼女はね…練馬の守り神だったんだよ」
『大袈裟ですよ』
馨の説明におかしげに苦笑する命。
笑顔に隠された底しれぬ雰囲気に、四季は思わず息を呑んだ。
