第八話
夢小説設定
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翌日、無陀野一行は町中にある《桃源書店》という古本屋の前にいた。
無論、勉強のために。
「まず最初に練馬区の偵察部隊で話を聞かせてもらう」
「つってもここ古本屋じゃん。ここなん?」
『カモフラージュだよ。お店の人は鬼なの』
「いいから行くぞ。誰かみたいにどっか行くなよ」
誰か、と釘を刺された四季は苦虫を噛み潰したような顔になり、また矢颪に笑われていた。
店内に入ると無陀野は迷うことなく、本棚から3冊の本を取り出すとそれらを店の奥の勘定場に持っていく。
勘定場には、店主らしき青年が本を読んでいる姿があった。
『(馨先輩だ)』
無陀野は彼に3冊の本を差し出す。
「これをくれ」
「お包みは?」
「"間に合っている"」
合言葉を伝えると、店主は読んでいた本から視線をずらして無陀野を見据える。
そして僅かに口角を上げた。
「無陀野さんご一行ですね。練馬に入った時点で情報は入っています」
彼は並木度馨、鬼機関の練馬区偵察部隊副隊長という役職につく命の先輩である。
「皆さん、本を物色しながら聞いてください」
馨の指示で一同は店内でバラけて彼の話を聞くことになった。
そうして部隊の説明が始まる。
「京都みてぇにすげぇ感じかと思った」
「あそこは本部ですから。皆偵察に行ってるし、これくらいの広さで十分なんですよ。それに重要な情報は地下に保管されています」
偵察部隊の主な仕事は隠密、桃機関の情報収集や動きを追ったり時には接触する。
「(俺は興味ねぇな)」
「(僕はここかな)」
場所は変わって次は医療部隊、戦闘で負傷した者の治療だけでなく隠れて生活している鬼の診察などもする。
「(できれば誰かを助ける仕事がいいな…)」
戦闘部隊、桃機関との戦闘時に最前線で戦う。
「(俺はここだな)」
遊摺部は偵察部隊、帆稀は医療部隊、四季、皇后崎、矢颪は戦闘部隊に興味を示していた。
一通り部隊の話を聞き終えた一同は店の外へ出ていく。
『……』
命は店を出る前に、どうしても馨に挨拶をしたくて彼に歩み寄っていった。
『…馨先輩』
名前を呼ばれた馨は顔を上げると、優しく笑いかけてくれる。
いつもの馨先輩だと、命は安堵の笑みを浮かべた。
「久しぶりだね、命ちゃん」
『お久しぶりです。あの…ご挨拶もできずに発ってしまって申し訳ありません』
「気にしないで。急だったもんね」
馨は手を伸ばすと命の頭を優しく撫でた。
部隊は違うが、命と彼は仲が良く懇意にしてもらっていた。
とは言っても馨が彼女に特別な感情を抱いているわけではなく、馨にとって命は可愛い後輩である。
「君が桃太郎に受けたことも知ってるよ」
『……』
「事情はどうであれ、君が決めたことなら僕は応援してるから」
『…ありがとうございます』
優しい馨らしい激励の言葉に命は微苦笑を浮かべた。
この仕事は自分で決めたのではない。
無陀野に副教官に任命されてなんとなく、成り行きに身を任せていると言ったほうが正しい。
教官を辞めたら、自分には居場所がない気がするから。
そんなこと、言えるはずもなく命は話題を変えることにした。
『馨先輩。
「あぁ…少し落ち着いてきたけど、まだ怒ってるかな」
『(後が怖いなぁ…)』
やはり今のうちに会っておくべきか…と考える命だが、そんな時間はない。
外から「シノブ」と偽名を呼ぶ声が聞こえて彼女は慌て出す。
『すみません!じゃあ、また』
「頑張ってね」
馨に軽い会釈をした後、命は古本屋を後にした。
「遅いぞ」
『すみません。…あれ?ナツ君は』
「採血に向かった」
『ああ…(メアリー亜紀さん元気かな)』
四季の採血をするメアリー亜紀は、鬼機関に所属する医師兼研究者で団地に住む妙齢の女性の鬼なのだが…なんというか、色々と大きい人だ。
遊摺部が会ったら鼻の下を伸ばしまくるに違いない。
命も"邪眼の鬼"ということで、練馬にいた頃何度か診察や採血を受けたことがある。
ー目の使い過ぎは禁物だぞ、あともっと食え。美乳なんぞクソくらえだ
ぽってりした唇を尖らせながら愚痴混じりの注意喚起をされたときは、命は色んな意味で複雑な気持ちになった。
『(良い人なんどけどなぁ…)』
「何してる、行くぞ」
『あ、はーい!』
無陀野に呼ばれて、命は無陀野達と共にその場から立ち去って行く。
つつがなく進められる部隊見学。
まさかこの見学が練馬全体を巻き込む大騒動に発展するとは、命は勿論誰も知る由もなかった。
つづく おまけ→
