第七話
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「屏風ヶ浦!漣を説得してくれ!じゃなきゃ手術岾がいい思いしちまう!」
「えぇ…?」
四季はもう一人の女子である帆稀に助けを求める。
急に話しかけられた帆稀は、戸惑いを隠せずにいた。
「えーっと…あの…えっと…ごめんなさい私がいなくなれば偶数になりますよね。気が利かなくてすみません…私…外でいいです…」
「なんで!?」
「野宿でもします。あ…段ボール頂いてもいいですかね…?」
「心がいてぇよ!」
荷物を持って本気で外に向かおうとしている帆稀を命が止める。
『屏風ヶ浦さん、大丈夫大丈夫。ちゃんと暖かい布団で寝ようね』
「で…でも」
『逆に野宿する方が怒るからね』
「はいぃ…」
少し圧をかけると、涙目になりながらもやっと止まる帆稀。
とりあえず帆稀の野宿は食い止めることができたが、話し合いは平行線を辿っていた。
「皇后崎!もうお前、先生と同室でいいべ!」
四季はずっと無言を貫いている皇后崎を
すると、彼は一言だけ返答した。
「俺は一人でいい」
はぁ?
たった一言だが、四季達男性陣の神経を逆撫でするには十分の威力を持っていた。
「アイツ空気読めなさすぎだろ」
「一人"で"じゃなく、一人"が"いいのに」
「あいつ絶対カラオケで洋楽歌うタイプだな」
口々に皇后崎への不満を漏らす四季達に対して、命は心配そうに皇后崎を見つめる。
視線に気づいた皇后崎と一瞬目が合うが、すぐに逸らされてしまう。
『(京夜さん心配してくれてたの見ると優しい子なんだよなぁ…なんとか打ち解けてほしい)』
京都での一件で、根は良い子なのだとわかってから気になって仕方がない。
彼のような子供に共同生活は必要なのだと、命は考えた。
「もう俺らで同じ部屋になるか?」
「あ?」
「僕は?え?ハブるの?」
一方で3人は話し合いを続けていた。
四季の提案で一組決まるかと思われたが…
「ふざけんな!俺は一人じゃねーと嫌だね!」
『今の流れで断るんだ』
「お前も空気読めねーな、バカなん?」
矢颪が断ったことで、再び振り出しに戻る部屋決め。
遊摺部はハブられたことに落ち込み、机にあごに乗せていじけていた。
「今軽くハブられた…?」
「あ…あの」
そんな遊摺部にロクロが歩み寄って話しかける。
「よかったら僕と同室にならない…?漣さんちょっと怖くてさ…」
小心者のロクロにしては珍しく、自ら同室になることを申し出る。
水鶏は無陀野の元で、ロクロと同室になれないことを不服として抗議していた。
ロクロの提案に、遊摺部はパアと表情を明るくさせて彼に近づくと肩に手を添える。
「手術岾君…リア充に同情させるのが一番腹立たしいんですよね。なんですか?あれですか?非リアに対して毎日のS○Xライフの話でも聞かせてくれるんですか?そうやって地道にメンタル殺りに来る寸法ですか?」
「ひぃぃ…!」
『やめろって、この拗らせバカ』
眉をひそめ、青筋を立てたすごい形相でロクロを睨みつけてる遊摺部を命が間に入って止める。
同室を断られたロクロは、その場に項垂れてしまう。
「はは…きっと僕はこうやって孤独死するんだ…」
「安心しろ、ウチがいるだろ」
「リア充が…」
『(ダメだこりゃ)』
ペッと唾を吐き捨てて悪態づく遊摺部。
まるで進まない部屋決めに、命は半分諦めモードだった。
「決まんねぇな」
「いやお前が先生と一緒になれば?」
「嫌だよ!俺だって寝る前に恋バナとかしてぇし!」
『女子か、君は』
「誰もしねぇよ」
そもそも四季に恋バナをするほどの恋愛経験があるのかすら疑わしいが、本人はノリノリだった。
「中学の時は停学中で行けなかったし、高校は行く前に退学になっちゃって修学旅行に憧れてんのよ」
「四季君って高校行ってたの?」
「え?逆に行ってねぇの?」
「僕は早いうちに覚醒して行けてないから羨ましいなー」
「俺もだ。行ってねぇし行く気もねぇ」
「(知らなかった…ここにいる全員色々あんだな)」
遊摺部と矢颪の話を聞いて、みんな複雑な事情を抱えているのだと知った四季。
彼は傍らに立つ副担任にも聞いてみた。
「チヨ先も?」
『そうだね。両親がかなり警戒してて、覚醒してからはずっと田舎で学校にも行かずに生活してたな』
「徹底してるな」
『…おかげで生きてこれたよ』
小さく呟く横顔が、少し寂しげに見えたのは気のせいではないと四季は思った。
すると一向に進まない部屋決めに、ついに無陀野が痺れを切らした。
「無駄にダラつくな、ジャンケンでさっさと決めろ。女子はペア、男どもはあと2分で決めろ」
『ほら、早く決めないと勝手に決められちゃうよ』
「こーなりゃグッチョッパーで決めるか」
こうしてジャンケンでペアが決められることになった。
「「「「「グっチョッパ!」」」」」
1回目で綺麗に分かれて、パー二人、グー二人、チョキ一人となった。
チョキは遊摺部である。
「はびゃびゃー」
遊摺部、牢獄行き確定!
「はは…いいさ、先生と一緒ってことはもう一人遊びも不可能…ティッシュの使用量が減ってエコって考えれば…」
『(この子…顔は割と整ってるんだから、普通にしてればモテると思うのに。普通にしてれば)』
床に膝と手をついて絶望する遊摺部を冷たく見下ろす命。
一方で四季はグーの形のまま片手を掲げて勝利宣言をしていた。
「よっしゃー!牢獄回避ぃ!」
喜びも束の間、隣で手をグーにしている皇后崎を見て四季は同居人が彼であると理解する。
「!?」
その瞬間、顔を歪めて頭を抱え出す四季。
「最悪だぁぁ!こいつと一緒とか…全然楽しくねぇ!」
「ふん」
対して皇后崎は軽く鼻を鳴らすだけで何も言わずにいる。
彼は視線だけ四季に移して、彼を見据えながら京夜の言葉を思い出していた。
ー四季君は鬼神の力を継ぐ鬼神の子だよ
彼は知っているのだ。四季の正体を。
京都で彼が唾切を倒したこともあり、皇后崎の四季への対抗心は以前より増していた。
そして彼は四季に言い放つ。
「鬼神の子だか知らねぇけど、調子乗んじゃねーぞ」
「(え?なんであんな喧嘩腰なん…?)」
『はーい、喧嘩しないの。無人さんに怒られるよ』
色々あったものの、無事に部屋決めが完了したのだった。
結果
Aー1号室 屏風ヶ浦帆稀&漣水鶏
Aー2号室 蝶世命
Bー1号室 無陀野無人&遊摺部従児
Bー2号室 一ノ瀬四季&皇后崎迅
Bー3号室 手術岾ロクロ&矢颪碇
となった。
「チヨ先だけ一人部屋とかズリィ!」
『仕方ないでしょ、最大で二人部屋しか無いんだから。卒業すれば部隊で一人部屋もらえるよ』
「ちぇ…早く大人になりてーな」
『…ゆっくりでいいよ』
「え?」
『ゆっくり、大人になってね』
命は願いを言葉にしながら、四季の頭を優しく撫でた。
