第七話
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HRが終わり、生徒がそれぞれの寮の部屋に向かった後、命は一人職員室のデスクに座っている。
彼女は頬杖を立てて、指に摘んだ小さな小瓶を揺らしていた。
京都から羅刹に帰還した夜のこと、命は自分の正体が桃太郎機関にバレてしまい、そのために無陀野が自分を除隊させたことを彼から打ち明けられた。
「お前の安全を最優先した。無理に除隊させて悪かった」
『…仲間を守るためとはいえ、目を使い過ぎちゃいましたね。きっと、それで気づかれたんだ』
「お前の容姿は特徴的だから、そこも相まってだな」
"邪眼の鬼"は皆、白髪に紫の瞳を持っており容姿が特徴的だった。
何より、1人でも仲間を死なせたくないという思いから戦場で邪眼を使いまくっていた命。
その姿を桃に目撃されて噂が広がったのだろう。
結局…自分で自分の首を絞めていたというのが真実だった。
「京都の件もある、当分は前線に出るのは控えろ」
『……』
「命?」
『私は…この先ずっと無人さんや他の人達に守られてばかりなんですか?』
「……」
『それは、すごく嫌です』
「なら強くなれ、守られる必要がないくらいに。それなら俺も何も言わない」
無陀野らしい返答だと思えた。
ならば、と命は行動に移すことにした。
『(ウミヘビがいてラッキーだったな)』
早朝、鬼門島の海岸を散歩していた時にたまたま打ち上げられていたウミヘビを見つけた命は、捕まえて毒を採取していた。
彼女は血蝕解放をした状態で毒を混ぜれば、上手いこと調和してその毒を取り込むことができる。
そしてその毒の特性を使えるようになるのだ。
しかし、毒を体内に入れるので多少のリスクはある。
なので混ぜる時は少しずつ、時間をかけてだ。
この方法で命は強い毒も使えるようになったのだが…
『(絶対に無人さんにバレないようにしなきゃ)』
この行為は絶対に無陀野にバレるわけにはいかない。
何故なら一度、やらかしたことがあったからだ。
羅刹に在学中、毒の量を間違えて倒れてしまったことがあった。
幸い、すぐに対処してもらい一命は取り留めたが…その後が修羅場だった。
ー君の保護者みたいな子達だからね
と、校長が無陀野、京夜、真澄に連絡してしまったことで、3人に毒を血に混ぜていることがバレてしまった。
多忙にも関わらず、鬼門島に来て見舞いに来たと思えば、3人からこんこんと説教を聞く羽目になった命。
特に京夜の怒りが凄まじかった。
この人こんなに怒るの?ってぐらいブチギレられた。
医者である彼からすれば、命の行いは自分の体を無下にしているように見えたのだろう。
ー次やったらわかってるよね?
圧がこもった笑顔で言われた時は、縦に頷くしかなかった。
『まぁ、やるとしたら自室でだよね。一人部屋でよかった…』
その時、廊下を車輪が滑る音が聞こえてきた。
こちらに近づいているとわかった命はまずいと思い、咄嗟に小瓶をデスクの引き出しに入れて隠す。
同時に、職員室に無陀野が入ってきた。
「…どうかしたか?」
『いえ、何も』
ニッコリと笑って、平然を装う。
内心は心臓バックバクだが、バレてないと自分に言い聞かせる。
無陀野はしばらく訝しげに見つめてきたが、すぐに止めて隣のデスクに腰かけた。
「今度の部隊の見学についての打ち合わせを始めるぞ」
『わかりました』
とりあえずバレてない様子で一安心する命。
今日は無理と悟り、無陀野がいない間に小瓶を回収しようと密かに画策していた。
『見学かー、懐かしいですね。行き先はどこですか?(杉並辺りかな…)』
「練馬だ」
ガシッ
練馬と聞いた瞬間、命は無陀野の腕を掴んだ。
そして引き攣った笑顔で彼を見上げる。
『…信じられないほどの野暮用を思い出したのでお休みしていいですか?』
「ダメだ、お前も引率で参加しろ」
まさか、自分の元職場とは思わず命は頭を抱えた。
今練馬にどうしても会いたくない人がいるのだ。
『待ってください、ただでさえ練馬出る時になんの挨拶もできなかったんですよ。今あの人に会ったらマジで詰められます。それでデコピン10回の刑です』
「逆にそれで済むのか。連絡先は知ってるだろう、報告は?」
『電話は怖いからメッセ送ったんですよ、でも既読無視されてるんです』
「ハァ…副隊長には会うだろうが、あいつには会わないぞ」
『…ほんとですか?』
「無駄なスケジュールは組まない」
ホッと胸を撫で下ろす命。
ふと、彼女を見据えていた無陀野の、墨を落としたような真っ黒な瞳が細まる。
「少し疲れたか?」
『え?』
「顔色が悪いぞ」
『不慣れなことで少し寝不足だけど…大丈夫です!早く教官の仕事を覚えて、無人さんの役に立てるように頑張ります』
「……」
無陀野は何か言いたげだったが、それ以上の追及はせずに打ち合わせを再開した。
結局、見学の事で頭がいっぱいになり小瓶の毒のことを図すっかり忘れてしまった命。
そのままほったらかしにしてしまうのだった。
