第五話
夢小説設定
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ドドド
ボッ ボッ ボッ
四季は機関銃で連射するが、唾切は素早い動きでその全てを避け切る。
「いいのかい?そんな連射しちゃって」
「!?」
その時、四季に異変が起こる。
突然体がぐらァっとふらつき、その場に膝をついて倒れてしまう。
「(体が動かねぇ…銃も出せない…?)」
「あんな高濃度の血を連射したら底尽くでしょ」
ーお前はまだ血のコントロールができない
「くそ…」
無蛇野の言葉を思い出し、四季は自分の血が枯渇してしまったことに気づいた。
「鬼神の子といっても血が使えないなら雑魚同然だね。ここも崩壊しそうだし、終わりにしましょ」
四季がもう戦えないと悟った唾切は、警戒することなく彼に近づいていくと、とどめと言わんばかりに倒れている彼に重力をかける。
ズンッ
「ガハッ…!」
その重圧で、彼はまた血を吐き出す。
最早彼に抗う力は残っていない。
『……』
その様子を静観していた命は、カッと目を見開くと唾切に向けて睨みを利かせる。
次の瞬間…
キィィン
彼女の瞳の奥に淡い燐光が宿る。
その手には唾切が自分を刺したナイフが握られていた。
『(重心が右に傾いてる。右に避けるか…)』
動きを予測して、命は唾切に向けて思い切りナイフを投げる。
シュッ
「おっと!」
見立て通り唾切は右に避ける。
命はそれを逃さず、瞬時に2本目のナイフを唾切に向けて投げる。
シュッ
キィン
2本目は唾切が持つナイフで防がれてしまう。
しかし、完全に防いだわけではなく唾切の手にナイフが当たりかすり傷を負わせることができた。
「!?」
『私の…私の生徒をこれ以上傷つけるな!』
命は力一杯に叫んだ。
淡く光る彼女の瞳を見た唾切は、納得したように声を上げた。
「僕の動きを予知したのか…やはりすごいな、"邪眼の鬼"よ」
『……!』
唾切の言葉に命は全身が凍りつくような感覚になる。
それは…桃太郎に知られていないはずの情報だった。
『な…んで、それを…!』
「少し前から桃太郎機関で話題になってたんだ。白髪に紫色の目、君の容姿がある鬼の特徴と一致してるって」
「(邪眼…?)」
命は鬼神の子ではないが、ある特異な鬼の血を引いている。
数千年と続く鬼の歴史の中で、かつて突然変異した鬼の一族がいた。
通常の鬼よりも高い身体能力を持つ彼等は、特に目が特別だった。
本質を見抜く洞察力、視線を外さずに持続して鮮明に認識する動体視力、その2つの能力がずば抜けて良いその鬼達は予知能力に長けているとされ、こう呼ばれていた。
"邪眼の鬼"
無論そんな特徴を持つ鬼を桃太郎が放っておくわけがないので、まあ狙われる狙われる。
結局、"邪眼の鬼"は桃太郎総出で殲滅され、唯一生き残っていた鬼も戦争で命を落とした。
しかし、その鬼は亡くなる前に人間の女性との間に子を成していた。
それが命だった。
鬼機関でも一部の関係者しか知らない情報であったのだが…。
「まさか20年以上前に滅んだはずの鬼の生き残りがいたなんてね」
『……』
「やっぱり殺すのは勿体ないなぁ。そうだ、鬼神の子と一緒に連れて帰ってその目を抉り出して研究しよう」
『ゲスが…!』
「まだまともに動けないでしょ。こっちが終わったらその足切り落としてあげるよ、アキレス腱だけじゃなく全部ね。そしたら次は…そこの子供でも殺そうか」
唾切が視線を向ける先には、様子を見に来たであろう芽衣が襖の影から顔を出していた。
「!?」
『芽衣ちゃん!』
「逃げ…ろ…!」
「一匹も逃さないよ…ん?」
甚振られ、ボロボロの四季と命を見て芽衣は顔を青ざめながら唾切に問いかけた。
「そうやって…パパとママも…殺したの…?」
「ん〜?どれのこと?蛆虫殺すのに記憶力って使わないからさ〜」
あまりに無慈悲な言葉に、芽衣は襖縁を強く掴む。
「ひどい…パパもママも何もしてないのに…すごく…優しかったのに…」
「いや鬼のくせに親子愛ごっことか鳥肌たっちゃうよ」
「黙れ…カス…!芽衣…お前は早く逃げろ…」
四季は床に突っ伏した状態で、芽衣に逃げるように促す。
命は芽衣の安全を確保するために、足を引きずりながら彼女に近づいていく。
「芽衣…?芽衣…芽衣…」
一方で唾切は芽衣の名前を何度も呟くと、思い出したように声を上げた。
「あれ!?君の親ってもしかしてあれじゃない?坊主に髭の旦那の夫婦でしょ?」
「「『!?』」」
「芽衣って言ってたわ!いや〜そうか〜あれは笑えたな〜必死に叫んでたよ」
彼はさも楽しげに芽衣の両親の最期を話し始める。
「子供だけは助けてくださいって頭こすりつけてさ、だからわざと逃がしてあげたのよ。安堵した顔してたから、こう言ってやったらガラッと表情変えたよ。お前ら殺した後ちゃんと同じ様に殺してやるって。お前らの大事な子供は一人怯えて逃げ回った挙句死ぬんだよ」
まるで悪魔の言葉を聞いているようだった。
死ぬ間際の両親の計り知れない絶望を知り、芽衣はその場に崩れ落ちた。
唾切は追い打ちをかけるように続けた。
「想像しろ、お前らの子供が死ぬ瞬間の表情を。"パパママ!"って泣き喚きながら死ぬ瞬間を。その時お前らは手を握ってやることもできない!はは!鬼がまともに死ねると思うなよ!」
芽衣は耐えきれずに声を上げて泣きじゃくる。
芽衣に近づいていた命も、流石に怒りを抑えきれなかった。
『いい加減にしろよクズ野郎!!』
彼女が動きを止めて、唾切に向いて啖呵を切ろうとした時だった。
「うわあぁあああぁぁああぁあああぁああ」
四季が雄たけびにも近い大声で叫び、そのまま立ち上がる。
「芽衣!泣くんじゃねぇ!こいつが喜ぶだけだ!こいつ負かして、一緒に泣いてやる…!だから…そんなところで一人で泣くな…!」
重力に抗いながら立ち上がった四季も、芽衣と同じく大粒の涙を流していた。
それを見た唾切は彼を小馬鹿にしたように笑う。
「はは!君も泣いてるじゃないか!どうして泣けるか理解できないね」
「うるせぇ!心があるからだ…!本当は…芽衣の絶望から目を背けたいって思った…わかるから…わかり過ぎるから…なぁ芽衣、大事な人が死ぬって…辛いよなぁ…」
四季自身、養父を殺されたばかりだ。
親が死ぬ悲しみを理解できないわけがなかった。
その心情を悟った命も、うっすらと涙を浮かべる。
「心があるから、芽衣の痛みも…両親の無念も理解できる…だから涙が出るんだ…!それが理解できないなら…多分、本当の鬼はお前らの方だ…!」
「なんだと…?鬼が心を語るな!」
ズン
その言葉が癪に障ったらしく、唾切は再び四季に重圧をかけ始める。
「その薄汚れた心ごと潰れろ!お似合いだろ!」
「グギギ…ッッ!」
「君はそこで見てなよ。あの子が潰れて行く姿を」
「!」
『(まずい!)』
「やめろぉぉ!」
「はは!空っぽだから頼りの血も使えないだろう」
死体の片手が芽衣に向けられると、命は四つん這いで芽衣の元へ急ぐ。
情けない姿だろうが、それでも構わなかった。
ー逃げて命!
ーただの人の分際で鬼など庇うから死ぬのだ
過去の記憶が蘇る。
全てを失った日…悔しくて、辛くて、桃太郎に怒りを覚えた。
もう二度と、あんな思いしたくない。
『(間に合って!)』
命は芽衣へと手を伸ばすが、まだ距離がある。
それでも必死に手を伸ばした。
唾切の魔の手が芽衣に迫っていたその時だった。
