第六話
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その後他の生徒達と合流して鬼が経営する旅館に避難した一同。
命も一室に連れられ、京夜の治療を受けることとなった。
「うん、アキレス腱も繋がってるし問題ないね」
『ありがとうございます』
「二人にしてくれ」
隣で治療を傍観していた無陀野が京夜に言うと、彼は意味深な笑みを浮かべてそれに従った。
京夜が去ると、部屋は無陀野と命の二人きりとなる。
「命」
『…ごめんなさい』
「何故謝る?」
『私、無人さんに援護部隊の警護を頼まれたのに、守るどころか生徒に助けられちゃって…教官失格ですね』
「…唾切の能力はお前にとって相性が最悪だった。それだけだ」
確かにそうだ。
でも四季に助けられたのも事実だ。
守ってあげなきゃいけない子を、あんなになるまで戦わせたのは自分の落ち度だと、命は自己嫌悪に陥った。
そんな命の気持ちを悟ったのか、無陀野は彼女の背中に腕を回しギュッと抱き寄せた。
『……っ///』
突然の抱擁に命は頬を熱くした。
無陀野は抱きしめたまま、彼女の耳元でポツリポツリと話し出した。
「…本部に着くまで、気が気じゃなかった。生きているお前を見た時は心から安心した」
『……』
「俺の方こそ、守りきれなくて悪かった」
ぎゅうっと強く抱きしめられて、彼の感情が痛いくらい伝わるようで命は泣きそうになる。
ふと、上を見上げた命の目に無陀野の頬にある二本線のタトゥーが映った。
彼は仲間が死ぬ度に、全身にタトゥーを彫っている。
仲間を忘れないためか、自分への戒めかは定かではないが、きっとこの京都で死んだ仲間の分も刻まれるのだろう。
それが悲しくもあり、羨ましくもあった。
『…無人さん』
「どうした?」
『私が死んだら、何処にタトゥーを彫ってくれますか?』
「……!」
命の願望だった。
もし死んだら、自分が生きていた証がこの体に刻まれる。
そんな幸せなことがあるだろうか。
命は淡い期待を寄せながら無陀野に問いかけた。
しかし、無陀野の返答は命の予想に反するものだった。
「彫らない」
『え…』
「お前は絶対に俺より先に死なせない。だから、この体にお前を刻む場所はない」
やはり、彼は優しい人だ。
彼の一部になれないのは残念だが、応えないわけにはいかない。
『わかりました。絶対に…無人さんより長生きしてみせます』
「いい子だ」
無陀野は命の前髪を手で避けると、彼女の額に自分の唇を押し当てる。
不意打ちのキスに体を強張らせながらも、命はそれを目を閉じて受け入れた。
しばらくして唇が離れると、命の体も解放される。
「俺は四季の元に行く。…今夜はゆっくり休め」
『…はい、おやすみなさい』
「おやすみ、命」
無陀野は部屋を後にしていった。
残された命はその場で膝を立ててうずくまると、キスをされた額に手を当てた。
『(好きだな…)』
芽生えた恋心は、未だに消えることもなく胸に居座り続けている。
だが、結ばれたいとは思っていない。天下無双の無陀野の足枷にはなりたくないからだ。
『(叶わなくていい…それでも、この恋慕の情だけは許してください)』
命は立てた膝に顔を埋める。
甘く疼く感情は高ぶり、彼女は眠れぬ夜を過ごすのだった。
………_____。
「おやすみ、命」
無陀野が部屋を出ると、京夜が壁にもたれかかりながらニヤニヤと悪戯っ子のように笑みを浮かべていた。
「もうちょっと二人きりを楽しんだらいいのに〜」
「これ以上は時間の無駄だ」
それだけ言い切ると無陀野は廊下を歩きだす。
京夜も彼についていくように隣を歩き始める。
「あの子、すごく頑張ってたよ。おかげで助かった」
「命に言ってやれ」
「にしても"邪眼の鬼"のこと、桃に知られてるなんてね。俺達が必死に守ってきたものが全部パーじゃん」
「バレてしまった以上は仕方ない。手元で守るだけだ、その方が効率が良い」
「ダノッチ、それで命ちゃんを連れてちゃったの?」
「許可は得ている。問題ない」
「気持ちはわかるけど、ちゃんと本人に説明してあげなよ。落ち込んでたよ、可哀想に」
四季達が入学する少し前のこと。
命が"邪眼の鬼"であるという事実が桃太郎機関に漏洩したという情報が無陀野にまわってきた。
大事になる前に保護しようと無陀野は命が所属する戦闘部隊に向かったが、到着早々聞かされたのは命が捕まったという知らせだった。
急いで部隊とともに救出に向かったが、既に桃は全員死んでいて、立っていたのは命だけだった。
無事が確認できて安心したのも束の間、命の姿を見て流石の無陀野も心臓が凍る思いをした。
綺麗にハーフアップにした髪は引っ張られたのかグシャグシャで、隊服も攻撃を受けてボロボロだった。
それを見て、無陀野は命を羅刹に迎える決意を固めたのだった。
「心配なのはわかるけどさ、あの子ももう大人なんだから話せばわかってくれると思うよ」
「そうだな。…羅刹に戻ったら説明する」
「ほんっと…大人になったよね、命ちゃん」
「……」
ー私は1人でも平気、だってお姉ちゃんだもん!
凄絶な経験を経た彼女がとった、悲壮なまでの覚悟は若かりし無陀野に強烈な印象を与えた。
その芯の強さに…惹かれたのだ。
「経緯はどうであれ、同じ職場になったんだしもう一緒になったら?俺2人のこと応援してるんだよ」
「ダメだ」
「ダノッチ…」
京夜の提案に、無陀野は真っ向から否定した。
無論、それは命への気持ちを否定したわけではない。
「俺は、あいつを幸せにできない」
「そんなことないよ。ダノッチなら大丈夫」
「絶対はない」
戦いに身を置く以上、いつかそういう日も来るかもしれない…。
その時に、命を必要以上に苦しませたくないという無陀野の願いからだった。
「平和になった世界で、俺じゃない誰かと幸せになってくれればそれでいい」
「一途だねぇ…ダノッチも、あの子も」
「(そのためなら、この命に代えて守り抜く)」
それが…無陀野が命にできる最大級の愛情表現であった。
