第三話
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命は泣き続ける芽衣に歩み寄ると、両膝をついてその小さな体を抱きしめる。
『辛いよね…ごめんね、ご両親を助けられなくて』
胸が張り裂けそうな思いになり、耐えるように目を閉じると彼女の脳裏に忌まわしい過去が蘇る。
ーお母さん…?お父さん…?
今でも鮮明に覚えている両親の最期…思い出す度に体が震えて、悲しくてやるせない気持ちが心にのしかかる。
「チヨ先…」
「命ちゃんも、芽衣ちゃんと同じだからね。痛いほど気持ちがわかるんだよ」
「え…」
京夜から話を聞いた四季は驚いて目を見開く。
芽衣と同じ…つまり、命も両親を桃太郎に殺されているということだ。
「そうだったのか…」
厳しくて冷徹な無陀野と対照的に、いつも自分に優しく笑いかけてくれる命。
中々ツノを消せない自分に挫けず、最後まで向き合ってくれた彼女の思いがけない一面に、四季は言葉が出なかった。
「……」
京夜達の話に聞き耳を立てていた皇后崎は、命の姿を凝視していた。
実は彼は、さっき命が京夜に話していたこともコッソリ聞いていたのだ。
「(なんであの女なんか気にしてんだ俺は…大体あいつの過去なんて俺には関係ないだろ)」
出会った日からやたら気にかけてくるウザいペーペー教官。
どれだけ悪態をつこうと、少し不満げな表情をするがすぐに仕方ないな、と言いたげに微笑を浮かべてくる。
変な女、それが皇后崎から見た命の印象だった。
「(くそっ…)」
苛つきを抑えるように頭を掻き、皇后崎はその場から離れていくのだった。
……____。
命は芽衣を落ち着かせると、両親の遺体が横たわる布団の横に座らせる。
芽衣は泣き止んだものの、まだ立ち直れずにいた。
『京夜さん…芽衣ちゃんのご両親はもう少しあのままで…』
「そうだね。他のご遺体から運ぼう…2人も手伝ってくれないかな?四季君は抵抗あるかもだけど」
『了解です。四季君、無理しないでいいよ』
「いや…手伝うよ…」
芽衣を置いて、他の遺体を火葬場へ移動させようと3人が背を向けた時だった。
ピクッ
『!?』
部屋を出る前に命がチラッと後ろを見たと同時に、芽衣の父親の指が僅かに動いた。
命が混乱していると、父親は起き上がって娘であるはずの芽衣の首を絞めはじめた。
「かふっ…!ぱ…ぱぱ…」
『芽衣ちゃん!』
「おい生きてたのか!?」
四季と京夜も異変に気づき、父親に近づいていく。
「つーかあんた娘に何して…」
四季が芽衣から父親を引き離そうとするが、かなり強い力でびくともしない。
そんな中で命と京夜はすぐに理解した。
これは桃太郎である唾切の能力だと。
「四季君、芽衣ちゃんに目隠し頼むよ」
「え?なんで!?」
『いいから早く!』
「わ…わかったよ!」
四季は指示に従って芽衣の目を手で覆う。
それを確認した京夜は、メスを取り出した。
「芽衣ちゃん、ごめんね」
トッ
芽衣に謝罪を述べてから、父親の左右側頭部をメスで刺した。
途端に父親の手が離れて、芽衣が解放される。
「ゲホッゴホ」
「京都の桃太郎、唾切は死体を操る能力がある…止めるには脳を破壊するしかない。首をはねるだけじゃだめなんだ」
「うお!」
側頭部から流血しながら力なく倒れ込む芽衣の父親を、四季が支える。
「ぱ…ぱぱ…?」
『芽衣ちゃん、大丈夫…大丈夫だからね』
苦しそうにえずく芽衣に命が寄り添う。
倒れた死体を見つめながら、京夜は悲しげに言った。
「顔を綺麗なままにするにはこれしかなかった…ごめんね、芽衣ちゃん…」
ガッ
唾切の冷酷な所業に、四季は怒りを拳にして畳に打ちつける。
「唾切って奴糞野郎すぎだろ…!」
『あ…!』
命はあることに気づいた。
運ばれた遺体は芽衣の両親だけではない。
だとしたら…。
『京夜さん!運ばれた遺体の数って…』
「30人近く運ばれ…」
京夜も気づいた様子だった。
「みんな!運ばれた死体は…」
その時、四季の背後にあった芽衣の母親の遺体が動き出した。
『離れて!』
命が警告すると同時に、芽衣の母親が四季をヘッドロックして首を絞め始めた。
「ママァ…」
「ダメだ…芽衣…危ねぇ…」
それを合図に、死体が次々と動き出して援護部隊の隊員を襲い始める。
「きゃあ!」
室内は一気にパニックになる。
『(運ばれた死体全部、唾切に操られてる…!)』
推測は正しかったのだ。
これだけの数を、しかも遠距離で操る唾切の能力に命は戦慄した。
「ママやめてよ!芽衣だよ…!」
「近づいちゃだめだ…!」
「四季君今助け…うぉ!」
四季を助けようとする京夜にも複数の死体が襲いかかる。
「モテモテかよ…クソ…!」
命は我に返ると、ホルダーからナイフを取り出して四季と京夜どちらを先に助けるか考えた。
瞬時に優先順位は戦闘力の低い京夜と定め、命は四季に叫ぶ。
『四季君!あれ使って!』
命に言われて、四季は首を絞められながらあるものを取り出した。
それはハンドガンだった。
京都に来る前に、フェリーで無蛇野から支給されたものだった。
四季の血が込められた弾丸が入ったそれは、通常の銃より遥かに威力がある。
『躊躇しないで!頭よ!』
「芽衣…悪い…少しだけ目…瞑っててくれ…」
ドンッ
四季は芽衣の頭を自分の胸に押しつけて、ノールックで的確に芽衣の母親の額を撃ち抜く。
解放された四季は言いようのない表情で一点を見つめていた。
ドゴッ
一方で命は京夜に襲いかかる死体を蹴り飛ばしたり、掌底打ちで吹っ飛ばして京夜から引き離す。
そして死体が起き上がる前に掴みかかり、頭に向けてナイフを突き立てた。
『ごめんなさい…』
頭にナイフが突き刺さると、その死体は動かなくなった。
他の死体も、解放された四季が頭を撃って止めることができた。
命は京夜に駆け寄り、体を起こすのを手伝ってあげる。
『京夜さん、大丈夫ですか!?』
「ありがとう…援護部隊は戦闘はからっきしなんだ」
『知ってます!』
「えぇ…」
京夜を起こしてから、彼女は改めて周囲を見渡した。
多くの死体が援護部隊の隊員に襲いかかっている。
このままでは二次被害が出てしまう。
『(数が多すぎる…私一人じゃ対処できない)』
被害を抑えるために、命はある決断をすることにした。
『死体の対処のため、生徒に戦闘許可を出します。いいですね?』
「患者を安全な部屋に避難させたい。頼むよ」
『芽衣ちゃんをお願いします』
確認し合うと、2人はそれぞれ援護部隊と生徒に指示を出した。
「援護部隊!早急に患者の避難と二次被害の回避に努めろ!」
『羅刹学園生徒!緊急事態により血の使用及び、戦闘許可を出します!私と共に唾切に操られてる死体の対処をしてください!』
指示を出すと、すぐに四季を含めた生徒達が死体を相手に戦い始めた。
室内の死体を生徒に任せて、命は部屋の外に出ていった死体の対処をすることにした。
『胸糞悪い…』
援護部隊の隊員を襲う死体に向かって走り出す命。
唾切への怒りに燃えながら、彼女は同志だった者の頭にナイフを突き刺していくのだった。
つづく
