第一話
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
教室から移動して訪れたのは、学校から南にある「新羅の森」と言われる森林。
普段は立ち入り禁止のため、柵で囲われ施錠されている。
「1時間以内に俺と命に捕まらずに戻れ。今から俺達は敵だ」
「普通だな」
「1つルールがある」
そう言って無陀野が取り出したのは、2つのカラーボールだった。
「ゴールするにはこれが必要だ」
ビュン
彼はそのボールを新羅の森に目掛けて思い切りぶん投げる。
ボールは遥か彼方まで飛んでいく。
「ボールを持ってないとゴールしても無効だ」
ルール
○無陀野か蝶世に捕まったらその場で拘束
○全員拘束されたら終了
○ボールがないとゴールできない
○制限時間1時間
四季はルールを覚えきれないのか、頭を抱えている。
命は見ていられず、ルールを簡潔に教えてあげることにした。
『私か無人さんに捕まる前に、ボール探してちゃっちゃとゴールすればいいんだよ』
「つまり先生達から逃げつつ、同級生とも競うってことですね!」
「そう、ちなみに言っとくが…ゴールできなかった奴は"即退学"だ。1」
説明をしながら無陀野は器用に腕立て伏せをしている。
それも左手を後ろに回し、残った右手の人差し指に全体重をかけてだ。
尋常じゃないトレーニングに命は尊敬を通り越してどんな指してるんだ、と疑問すら持っていた。
一方でゴールできなければ即退学と通知された生徒達には動揺が広がっていた。
「は!?退学!?」
「最低3人は退学になる。2」
「んなすぐ退学って意味わかんねぇよ!」
四季の抗議に、無陀野は腕立て伏せを止めて顔を上げる。
「わかれ。ここが普通の学校と思ってるなら一回死ぬか?」
冷たい目で生徒達を見据えながら無陀野は立ち上がる。
「この鬼ごっこは突発的なメンバーでも連携をとるための訓練だ。判断力、統率力、決断力を養う。こうやって戦いを学び卒業後、お前らはそれぞれの部隊に入り最前線で桃太郎機関と戦うことになる。無論命懸けだ。こんな所で躓く奴は消えてもらう」
冷徹なようだが、卒業後すぐに戦場に駆り出される生徒達のことを考えると今の内に厳しく接しておいたほうがいいのかもしれない。
命は無陀野の教官としての有能さに感服しつつ、自分には無理かもしれないと引け目を感じていた。
「俺達は血を使わないがお前らは好きにしろ。ただお前らが暴走したら俺も血を使う。1…」
今度は指一本で逆立ち腕立てを始める無陀野。
だからどんな指してるんだよ、とツッコミたくなるのを命は喉元まで出そうになったのを耐える。
するとずっと黙って話を聞いていた皇后崎がこんな問いをぶつけてきた。
「あんたとその女を殺しちまったら?血ぃ使わない舐めプして向かってくるならそーなるぞ?」
「殺す…か」
皇后崎の問いに対し、無陀野は腕立てを止め命の方へ視線を向けた。
その意味を瞬時に理解した命は視線を合わせると小さく頷く。
「殺す気で構わない。もし俺か命のどちらかを殺せたら即卒業、希望の部隊に所属させてやる」
『……』
命も子供に殺されるつもりはないが、100人殺しの異名を持つ無陀野を殺すなど、攻略不可能のラスボスを相手にするようなものだ。
勝ち目など端からない。
ボールを見つけてさっさとゴールするのが賢明だ。
しかし、皇后崎は俄然やる気になったのかみるみるうちに殺気が溢れている。
『(若いな…)』
というより幼い、命は呆れ半分に息をついた。
「チヨ先でもいいのかよ、大丈夫か?」
「言っておくが、命は数日前まで戦闘部隊で最前線を戦ってきた優秀な戦闘員だ。お前達とは格が違うぞ」
『無人さんにそう言ってもらえるなんて光栄です』
「マジかよ!?」
『そっちが殺す気ならいいよ。こっちも殺すつもりで行くから』
そう言って命は皇后崎を睨みつける。
一瞬たじろぐ様子を見せるものの、またすぐに殺気を出して威圧して来ようとするのを見て命は野良猫の威嚇を思い出した。
猫にしては可愛げの欠片もないが。
「お前らも目的があってここにいるんだもんな。成し遂げたいなら、勝ち続けろ。これから何回もお前らに壁をぶつける、乗り越えられない奴は散るだけだ。覚悟はできてるみたいだな少年少女。1人違うみたいだが…やめるか?」
無蛇野は四季を横目に言い放つ。
ここは普通の学校ではない。
その事実が鬼になったばかりの四季の心に重くのしかかる。
「…ふざけんな!男が
どうやら腹をくくったらしい。
「それじゃあ組み合わせを発表する。1組目は…屏風ヶ浦帆稀、一ノ瀬四季、皇后崎迅」
2組目
矢颪碇 遊摺部従児
3組目
手術岾ロクロ 漣水鶏
という組み合わせで決まった。
すると皇后崎が気に入らない四季が抗議の声をあげた。
「厨二マスクと一緒とか絶対無理だわ!」
「じゃあ退学だ」
「え!」
『もう諦めなよ、1時間の辛抱なんだから』
退学と言う無陀野と呆れ半分な命を前に四季は渋々引き下がる。
そんな四季に屏風ヶ浦が恐る恐る近づいていく。
「あの…屏風ヶ浦帆稀です…邪魔にならないよう気を付けますので…」
不安げにペコペコと頭を下げる屏風ヶ浦。
随分控えめ…というより、覇気のない子だなというのが命から見た印象だった。
しかし、四季は数年振りに話しかけてきた女子相手にテンションがぶち上がっていた。
「俺が守る!」
「え!?そそ…そんなめっそうもない…多分落ちるの私なので…本当…邪魔にならないことを第一に…そのすみません」
謙虚を通り越して自分を卑下し過ぎではないかと命は一部始終を見ながら心配になる。
しかし、四季はそこにグッときたのか拳を握りしめて喜びに浸っていた。
『(おめでたい頭だな)』
すると、屏風ヶ浦は今度は皇后崎の方へ歩み寄っていく。
彼にも挨拶をするらしい。
「よ…よろしくお願いします…」
「…」
四季と同じく頭を下げる屏風ヶ浦だが、皇后崎は明後日の方向を向いたまま彼女に振り向きもせずにいた。
その様子を見た屏風ヶ浦の瞳がみるみるうちに潤んでいく。
「すみません、私みたいなドブが話しかけてしまって、もう土に還ります…!」
泣きながら土下座を始める屏風ヶ浦。
それを見た四季が即座に皇后崎を責め立てる。
「泣かした!死ね!」
「…」
それすらも無視する皇后崎を放って、四季はうずくまる屏風ヶ浦に話しかける。
「泣くなって、な!可愛い顔が台無しだぞ!いや泣き顔も可愛いな!でも笑顔のが可愛いぞ!」
「可愛いって言わないでください…」
四季のめちゃくちゃな励ましに元気をもらったのか、次第に顔を上げていく屏風ヶ浦。
「協力して俺ら二人でクリアしようぜ!」
「そんな…私なんてどうせ足を引っ張るだけなんで…」
『(自己肯定感低すぎない?)』
どうしてこんな子を連れてきたのだろうと無陀野を見るが、相変わらず表情1つ変えずにいる。
命は仕方なく、彼の隣でその時を待った。
「残念だったな、お前はここで終わりだ!」
「いちいち絡むなよ、かまってちゃんか?」
「あ!?」
「どうせ退学なら痛い目見る前に消えろよ」
いつの間にか四季がまた皇后崎に絡み、勝手にキレている。
最早仲が良いのではとすら思えてしまう。
「ふざけんな!目的があんだ!やめてたまるか!」
「どうせくだらない目的だろ」
「…は?」
皇后崎は四季の地雷を踏んでしまったらしい。
四季は瞳孔を開いて彼を睨みつけていた。
「お前らが入った15分後に俺達が入る」
そう言いながら無陀野は森へ続く扉へ手をかける。
「それではスタート!」
扉が開いた瞬間、生徒達が動き出した。
退学を賭けた戦いが今…幕を開けようとしていた。
続く
