第一話
夢小説設定
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しばらくした頃だった。
突然扉の方から凄い音がしたかと思えば、一人の男の子がなだれ込むように入室した。
命は瞬時に理解した。彼が鬼神の子ー一ノ瀬四季なのだと。
無陀野はというと、廊下で誰かと電話しているらしい。
「いてて…あいつ泣かす…ん?」
四季は起き上がり、教室内を見渡す。
数人の新入生と教壇に立つ命の存在に気づいたのだろう、彼の表情に驚きが浮かぶ。
そしてさっき床に顔をぶつけたのか、鼻血が出て痛々しい。
「うわっ!鼻血出てんじゃん!ダサッ!」
四季本人も鼻血に気づき、大げさなリアクションをしている。
普通の男の子、それが命の四季に対する第一印象だった。
「なぁお前!お前ティッシュ持ってんだろ!マスクしてるし花粉症とかだろ?ティッシュちょうだい!」
四季は教壇にいる命をスルーして一番端に座る皇后崎に声をかける。
一方の皇后崎は四季をチラ見することもなく、ポツリと一言だけ言った。
「話しかけるな」
さっきの命への態度とまるで同じだった。
皇后崎は四季に見向きもせずに素っ気なく吐き捨てた。
一方の四季はにこやかだった顔がみるみるうちに怒りに染まり皇后崎を睨みつける。
「てめぇ随分な口聞くじゃんか…」
「はぁ…」
四季のメンチ切りにも構わず、皇后崎はわざとらしくため息をつく。
その態度が更に四季の怒りを増幅させた。
「ん?ププー!お前ツノねぇじゃん!まだ覚醒してない赤ちゃんか?知ってっか?訓練で消したり出したりできんだぜ!」
「こんなもん出してる奴はルーキー丸出しの馬鹿だろ」
そう言ってツノを出す皇后崎。
彼が既にツノの出し入れができると察した四季は流石に何も言えずに黙り込んだ。
「おい、その"馬鹿"ってのは俺も含まれてんのか?」
すると彼らの後ろに座っていた矢颪が反応した。
皇后崎は振り返りもせずに、彼の問いかけに答える。
「逆になんで含まれてないと思えるんだ?」
「男ならその喧嘩"買う"一択だろ」
皇后崎の挑発に、立ち上がり喧嘩腰になる矢颪。
「はは!やれやれ!」
「胃が痛い…胃がん?死ぬのか…」
「……」
『(無人さん…早く来てください。私には手に負えません)』
カオスな教室内に命は既に心が折れそうだった。
しかし、この状況に物申す人物がいた。
「お三方!これ以上規律を乱すのはどうかと思います!」
ずっと官能小説を読んでいた遊摺部だった。
命は少なからず彼に感謝した。
「ハンケチーフなら僕が……」
四季にハンカチを貸そうとポケットを探る遊摺部だが、どうやら今日に限ってハンカチを忘れたらしい。
ならば、と彼は私物の官能小説に手をかける。
「この本を破るしか…」
「いやいいよ!」
「遠慮は無用!これで規律が保てるなら…!もう78回読んだ」
ビリィッ
四季が止めるのも無視して、遊摺部はページを一枚破り取った。
「いやいい…あーあ」
「使ってくれ!」
「それ詰めたら痛そうだからいいや」
なんだか可哀想になってきた命は遊摺部に近づくと、軽く肩を叩いて慰める。
そしてちょうどポケットティッシュがあったので、四季に歩み寄りそれをスッと差し出した。
『はい、これ使っていいから』
「え?」
『ティッシュ欲しかったんでしょ?あげる』
ふんわりと微笑むと、四季はポカンとした間抜け面を浮かべた後パアと表情を明るくする。
「天使…!」
『鬼だよ、君と同じ。副教官の蝶世命です。よろしくね、一ノ瀬君』
鬼の証であるツノを出しながら自己紹介をする。
「サンキュー、チヨ先」
『あだ名付けるの早いな、別にいいけど』
「つーか、俺の鼻血はもういいんだよ」
『いや、よくないでしょ』
ティッシュを受け取ると、四季は皇后崎が座る席の机に腰掛けて正面から彼に睨みつける。
「お前の見下し感ムカつくんだよ」
「実際見下してんだよ、鼻血君」
「あぁ?」
『こら、喧嘩しないの』
命は再びいがみ合う二人の間に入り、仲裁しようとするが…。
「黙れよペーペー教官」
『なっ!?』
「気づいてねぇと思ったか?バレバレなんだよ、下っ端根性が」
『(こんのクソガキ…!)』
皇后崎のナメた態度に流石の命も怒りで拳を震わせる。
一回痛い目を見せてやろうか、と考えた時だった。
「おい、ここに遊びに来た訳じゃないよな?」
いつの間にか教室に入っていた無陀野が皇后崎の背後に立ち、机に座っていた四季を隣に座らせていた。
今度は無陀野の目が命を見据える。
その目が「教卓に戻れ」と言っていて、命は渋々教卓に戻った。
一方で皇后崎と四季の二人は何が起こったのかわからない様子で、冷や汗を流している。
「どうした?そんな顔して。何か驚くことでもあったか?」
無陀野の恐ろしく温度の低い声に教室内に緊張が走る。
誰もが口を開こうとせずにいる中で、一人だけ空気を読まずに抗議の声を上げる者がいた。
四季だった。
「席替わる!コイツ嫌い!」
「そうか、仕方ない」
何を思いついたのか、無蛇野は教卓に戻ると命の隣に立ち生徒達を見据えて言い放つ。
「本来今日は学校説明と案内だが…別のことをやるか」
「何すんだ?」
「お前ら鬼だろ?じゃあ"鬼ごっこ"に決まってるだろ」
「え?遊ぶの?」
『とりあえず鼻血拭きなよ、みっともない』
四季はわかっていないが、無蛇野の宣言で命は確信した。
退学者が出る…と。
