◈痛む傷
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「あやめ」
『加代』
「一気に寒くなったね」
『冬も近いからね』
冷たくなった空気に色付く木の葉。暑かった夏も終わり秋へと変わった今日この頃。
私は前と変わらず加代と一緒に学校に通っている。生徒会長が宣言通り虐めをなくしたのだ。まとめられた報告書は全校生にも回り私たちだけじゃないことを知った。
教室という小さな箱庭は私たち生徒にとっては当たり前で、当たり前であるが故に不満やストレスを抱えているんだと思う。何がキッカケなんてどうでもいい‥ただ、憂さ晴らしがしたいだけ。それが、虐めだ。からかって、いじる‥それだけのことが当事者には辛いものでしかないことに気づくべきだろう。
「誰も傷つかないってこと‥ないんだよね」
『加代?』
「傷つかない‥自分さえよければいい‥そう思ってあやめを裏切ったけど‥いつも罪悪感で一杯で。辛かった」
『そっか‥』
「難しいね‥人と付き合うっていうのは」
『うん』
放課後の図書室は凄く静かで、まるで別の世界にいるようだ。
『でも、加代は強くなったよ』
「そうかな?」
『うん。
‥傷ついたり傷つけたりしたならその分優しくも強くもなれると思う』
「そうだね」
自分がされて嫌なことは相手にしない。そう大人は言ってるけど、結局最後はみんな自分さえよければ‥そう思ってしまうものだろう。
自分の評価を気にして、世間体や周りの目。そんなものの為に傷つく人がいることに気づいて欲しい。
「柳生くんたちそろそろかな?」
『ミーティングだけだって言ってたし、多分』
「あ!噂をすれば」
迎えに来た仁王くんと柳生くんに気づいて鞄を手に立ち上がる。4人仲良く歩く帰り道。
小説の話しで盛り上がる加代と柳生くんを後ろから見ていると私まで嬉しくなる。
仁「なんだ、笑って」
『加代が楽しそうだから、つい』
仁「親友のことを見るのはいいが、少しは俺のことも見て欲しいのぅ」
『うぇ///』
仁「くくっ。明日、たっぷり堪能するがの」
『///』
悪戯な笑みを浮かべる彼に私まだまだ勝てそうにありません。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
翌日、約束通り仁王くんのお家に来た私は部屋に通され緊張したまま座っていた。
『‥‥ι』
飲み物を取りに行った仁王くんを待っているものの落ち着かない。
男の子の部屋って片付いてないイメージがあったけど、仁王くんは几帳面な所があるみたいで綺麗に片付いてる。彼らしいシンプルな部屋だろう。着飾らない感じがして私は好きだな‥なんて///
『これ、なんだろ?』
テーブルに置かれた冊子。
悪いとは思いつつ手を伸ばして開く。
『写真だ』
それも、部活の。
練習風景やちょっとした場面が写されてるソレは、私がいつも図書室から見ている風景だった。
『ふふっ』
真剣だったり、無邪気だったり。色んな彼がソコにはいた。
何より、本当にテニスが‥仲間が大好きなんだって分かる写真だ。
仁「お待たせ」
『あ、うんι』
仁「写真見てたのか」
『‥ごめんなさい』
仁「構わんよ。見てもつまらんだろう?」
テーブルにお盆を置いて、隣に座る彼に私は首を振った。
『そんなことないよ。仁王くんの色んな表情見れるから‥///』
仁「色んな表情ねぇ。そんなに変わった表情しとるかのぅ」
『‥変わった、というよりは‥自然な表情だと思う』
仁「自然?」
『うん』
写真に写る仁王くんは、楽しそうで‥凄く、幸せそうに見える。
仲間とテニスが出来ることを誇りに思って、大事にしてるのが伝わってくる。
クールでミステリアスって言われる彼にも中学生らしい子供っぽい所がちゃんとあるんだ。
『ちょっと、羨ましいな』
仁「何が?」
『仁王くんを笑顔に出来るチームメイトが』
そう私が言ったら彼は照れたように視線をそらしてた。
小さく笑ってまた写真を見る。
『(私も、笑顔にしてあげられるかな‥)』
自分に自信がないからこその不安。
秀でたモノが私にはない。至って平凡な女の子だから、出来ることが見当たらない。
仁「そんな不安な顔しなさんな」
『え?』
仁「あやめが居るだけで幸せナリ」
『仁王くん‥』
仁「まぁ、傍に居るだけじゃなくスキンシップも大事じゃな」
『へ?』
言うや否や、肩を抱かれ手にキスをした。
まるで、王子様のように‥。
『‥///』
仁「残念なことに、俺は待ってやれるほど気が長い方じゃないけぇ‥覚悟しといて欲しいナリ」
『はぃ‥///』
仁「いきなりは襲わんから安心しんしゃい」
『‥///』
優しく笑ってくれる仁王くんは本当に私を想ってくれていて、大切にしてくれる王子様。
こうして温もりを感じていられることが幸せだ。
こつん―‥
『Σに、にぉ‥くん///』
仁「キスしたい」
『え///』
仁「ダメか?」
『ダメ‥じゃないよ///
私も、して欲しいから‥』
額をくっつけ鼻先が触れる距離。唇が触れるまで数㎝。
ドキドキと破裂しそうな胸の音が聞こえないか心配になりながらも、ゆっくり、目を閉じた。
仁「好いとうよ、あやめ」
『ん‥///』
重なる唇に感じる愛しさや想いを受け止める。
仁「この先も一緒に生きような」
『‥はいっ!』
人は、臆病者。
人は、偽善者。
人は、嘘つき。
良いことも悪いことも区別が出来ていながらも声を上げる勇気のない意気地なし。
人は慣れてしまったんだ。他人との付き合い方に嘘を重ねることに‥。
好きでもないものを好きと言って共感し、違うと分かっていながらも肯定することで成り立つ人と人との関係。
考え方も趣味もみんな違うのに、それを否定するだけで虐めの対象になってしまう。
なんとも理不尽な社会だ。
教室という小さな世界は視野を狭めてしまうのかもしれない。誰だって波風立てずに済むならそれがいいに決まっている。
が、それも時と場合によるだろう。虐めを否定したいけど出来ない子はたくさんいると思う。
初めは小さくでいいんだ‥小さな声を上げれば、聞いてくれる子はいるはずだから。教室の外にまで視野を広ければ、必ず居るんだ。
今は、そう思える。
仁「なんだ?」
『‥生きてて良かったです。
こうして、仁王くんと一緒に居られるから///』
仁「ピヨッ」
癒すのは人の優しさ
(また一緒だねあやめ!)
(良かったぁ)
(あ!二人も?)
(えぇ。一年間宜しくお願いします)
(柳生が一緒じゃサボれんぜよ‥)
(サボらせませんよ!)
(はぁ‥。あやめが居るから我慢するぜよ)
(////)
(愛されてるねvV)
(加代///!?)
(愛してるからな)
(仁王くんまで///!?)
(おやおや)
(ふふっ)
(プリッ)
(もぅ///)
