◈優しい温もり
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‡side:仁王‡
「雨に濡れて冷え切ってましたから、熱が出たみたいですね」
仁「すまんな、朔夜」
「お気になさらず(微笑)」
幸「俺たちはこれで失礼するから、ちゃんと看病してあげるんだよ仁王」
仁「あぁ、わかっとるよ」
「食事は作ってありますから少しでも食べさせてください」
仁「ありがとさん」
バタンッ―‥
仁「ハァ‥‥」
幸村と朔夜を見送った後自分の部屋に戻る。ベッドには熱で苦しいのか荒い息遣いの彼女が眠っている。時折額のタオルを交換しながらベッドに寄りかかって彼女を見た。
仁「焦ったぜよ‥」
ミーティングを終えて彼女が雨の中走って帰る姿を柳生が見つけなかったら‥彼女をひとりにしまうとこじゃった。
柳「おや?」
仁「どうしたんじゃ、柳生」
柳「あれは、神崎さんですね」
仁「ホントだ。傘も差さずに‥何かあったな」
「どうしてです?」
仁「傘じゃよ。今日持ってたからの」
柳「なる程。なら、笠井君が関わっているかも知れませんね」
仁「教室に行ってみるかのぅ」
今すぐにでも彼女を追い掛けたいが、何があったのか知らんと傷つけかねないからな。
すると、教室から笠井とその友人の声が聞こえた。
「だから止めとけって言っただろうがι」
「好きなんだから仕方ないだろう‥」
「いきなり抱きついて突き飛ばされたら普通諦めるだろ
仁「なる程な」
‥!!」
「‥仁王‥」
彼女があんなにもがむしゃらに走っていたのはコイツのせいだったとはな‥‥一発殴らないと気が済まん、笠井の胸ぐらを掴んだ。
仁「お前、俺に言っただろう?神崎を悲しませたくない‥あの言葉はなんじゃ」
「‥ッ‥」
「仁王!止めろよ!殴れば騒ぎになるんだぞ!」
そういうことか‥。
振り上げそうになった拳をキツく握り締め、笠井を離す。後ろで赤也がキレてたが、ジャッカルやブン太が止めるじゃろ。
「殴らないのかよ?」
仁「部活の連中にまで迷惑はかけられんからな」
「俺なら、殴るけどな。結局お前の気持ちってその程度なんだろ」
そんなわけない。
こんなにも彼女に触れたコイツを許せないでいる。‥けど、幸村達にまで迷惑はかけられん。
悔しい‥テニスで負けるより悔しい思いをしたのは初めてだ。
パァンッ―‥
仁「朔夜‥」
「私がひっぱたく分には問題ありませんし、これ以上友人や仲間を傷つけるような言動を許せないので」
幸「クスッ‥。仁王は彼女を追い掛けるんだ」
仁「幸村‥。‥‥悪い」
幸村と朔夜に背を押されながら急いで校舎を出る。どこに居るかなんて検討もつかない。ただ、不安が俺を煽る。もし、またリストバンドの下に隠された傷が増えていたら‥という不安。自分自身を傷つけるようなことして欲しくないんじゃ。
仁「ハァ‥‥ハァ‥。どこじゃ‥‥ん?」
たどり着いた人気のない公園に彼女はいた。空を見上げる彼女に安心したのもつかの間、外されたリストバンドとカッターナイフが落ちているのに気付き、焦る。
まさか‥。
仁「神崎!!」
こっちに気付いた彼女はまるで泣いているようだった。
『に‥ぉ―‥‥』
手を伸ばす彼女が倒れる寸前で抱き止めた。思いのほか冷たい体に慌てて手を取った。
仁「‥‥はぁ~‥」
傷は増えていない。その事に酷く安心する。彼女を負ぶって自分の家に向かう。幸い、家族は今日は帰らんから大丈夫じゃろ。携帯を取り出し幸村に報告、ついでに朔夜に家に来てもらうように用件をすませた。流石に着替えをさせたのが俺じゃ、後が怖いからなι神崎よりも朔夜が‥‥ι
あの時‥倒れる瞬間に伸ばされた手は俺を必要としてくれたのだろうか。
仁「何はともあれ。見つけられて良かったぜよ」
不安で仕方なかった筈、そんな彼女をひとりになんてさせられんからな。どんなに強がっていても女の子じゃし、傷つきやすく優しい子だからな‥あやめは。
しかし、眠いのぅ‥あんな必死に走ったのはテニス以外じゃないからな(笑)
少し寝るか‥‥彼女の傍で。
ーーーーーー
彼は、いつも傍に居てくれた。こんな私の傍で笑いかけて、守って、安心を与えてくれる。だから、素直に笑えるんだ‥彼が、私の拠り所になっているから。幼なじみではなく、たったひとりの男の子に。
『‥‥ん‥』
目が覚めると見慣れない部屋に私は居た。彼が駆け寄ってからの記憶がない。あの後、気を失ってしまったのか。ゆっくりと上体を起こすと額のタオルが落ち、ベッドに寄りかかって眠る彼が居た。此処は彼の部屋なんだと理解して、周りを見渡す。何となく彼らしい部屋だと思う。再び彼に視線を戻し、綺麗な銀色の髪を撫でた。君が見つけてくれたのが嬉しかった‥‥あのままひとりで居たら私は、壊れてしまっただろう。
『ありがとう‥』
仁「どう致しまして」
『Σ!!?』
仁「お前さんが頭を撫でた辺りから目が覚めてのぅ」
『悪趣味‥ッ』
仁「具合はどうだ?」
『もう平気‥』
仁「お前さんの平気は怪しいから、今日は泊まっていけ。誰も居らんしの」
『‥‥でも‥』
仁「俺が、帰したくないんじゃよ」
また、この男は‥。
いつも真顔で告げてくるからどうしたらいいか悩む。‥‥でも。不思議と嬉しいと感じてる‥恥ずかしいけど。
『‥なら、居る‥』
仁「‥珍しいな。嫌がられると思ったんだが、どうしたんだ?」
『言ったでしょう‥。今の私は仁王君のこと、嫌いじゃない‥‥でも』
仁「でも?」
『白状するとね?‥‥私も、同じ気持ちだった』
仁「!!‥‥反則だろ」
ドサッ―‥
見上げれば視界には切れ長の鋭い眼差しで見下ろす彼の姿はドキッとする程綺麗で心臓が高鳴る。
『??‥‥何?』
仁「随分余裕なんだな。男に押し倒されとるんに」
余裕じゃない‥事実、心臓がうるさいくらい‥でもそれは、嫌じゃないから‥押し倒してるのが彼だから、動揺が表面に出ないだけ‥。
頬に触れてくる大きな手に小さく微笑む。初めて感じた彼の体温は、熱くなっている私の体温にとって冷たくて気持ち良かった。大分、熱は下がったみたい‥‥それにしても‥男に押し倒されて動揺しない子っているのかな?見てみたいわ。
それに、私は‥‥
『仁王君だから‥。じゃなきゃ今頃突き飛ばしてる』
ーーーー君が、好きだから
仁「嬉しいやらくすぐったいやらじゃな」
『でも、こういうこと、私たちには早いと思うけど?』
仁「そうじゃな‥。わかってはいるが、お前さんが欲しくてな」
親の保護の元で生きてる私たちが過ちを犯すのは流石にマズい。こんなにも恋しいのにね‥‥‥幼い私たちは、隣に居ることじゃ足りない。
初めは関わりたくなかったのに‥‥人間、変われば変わるものだ。
『‥キス』
仁「‥ん?」
『キスまでなら許されるかな?』
仁「さぁな。どうしたんだ?神崎からそんな言葉が聞けるとはのぅ」
『そうね‥。熱に浮かされてるのかもしれない』
きっと、今の私が望むのは‥心も身体も、彼で染まりたいんだ。私は‥彼が望むことをしてあげたい。
幼い恋だとしても‥きっと、愛に変わる日が来る。その時まではこの優しい恋をしていたい。彼は私から離れて行かない‥そう信じられる。
『‥‥貴方は私から離れて行かないって信じていい?』
仁「あぁ。お前さんを離したりしない」
『‥貴方の心が変わったりしないって信じていい?』
仁「お前さんにもう心は奪われとるよ」
『好きだよ‥雅治』
仁「フッ‥‥好いとうよ、あやめ」
触れ合った唇から溢れるくらいの愛しさに泣きたくなった。
ありがとう‥君の想いが、私を素直にさせてくれて‥‥。
『まったく。いきなり来たと思ったら、無理矢理連れ出して‥何かと思えば練習試合って‥。』
跡「アーン?文句でもあんのか」
『文句を言うだけ無駄だから止めとく』
「あはは☆景吾はあやめが心配なんだよ!」
跡「佳奈‥」
「おばさんがね、あやめに恋人が出来たらしいって聞いて自分の目で確かめないと嫌だったんだよね‥‥Σァイタッ!!」
跡「余計なこと言ってんじゃねぇよ」
「嘘じゃないし」
跡「アーン?‥‥待ちやがれ!!佳奈!!」
「ヤバッι!!逃げろー!!」
楽しげに走り出す佳奈、不機嫌ながらもニヤリと笑って追いかける景吾。心配‥かけて来たよね、ふたりには特に‥。私をよそに追いかけっこをしてるふたりに笑みが零れた。
『‥‥練習試合、仕切らなくていいのかなぁι?』
ふたりをよそに他の部員たちで練習試合を進めていた。
相手校は立海‥雅治もコートで試合してる。楽しんでるみたい‥本当にテニスが好きなんだね。
『ちょっと、妬くな‥』
跡「まさか‥お前の恋人が仁王だとはな」
追いかけっこは終わりか。
景吾を見て首を傾げる。
『おかしい?』
跡「お前みたいなのにはピッタリだな」
『私も、そう思う』
笑いかければ、景吾もまた柔らかく笑いながら頭を撫でてきた。
『ありがとう。いつも心配してくれて』
跡「佳奈がうるせーんだよ。あやめは大丈夫か、てな」
『大丈夫だよ。‥‥もう、傷は増えないから』
リストバンドを握り締めながら言う。
大丈夫‥例え不安になったとしても、彼が‥今の私を引き止めてくれる。凍りついた心が彼の優しさや温もりで満たされ、溶かされて行く。
跡「フッ‥。なら、そのリストバンドさっさと捨てろ」
『なんで?』
跡「男はな、惚れた女が別の男から貰った物を身に着けてるのが嫌だからな」
『そう‥』
跡「例えそれがなくなっても、俺たちは幼なじみとして離れて行ったりしねーよ」
『‥ん‥』
このリストバンドがなくなるのはやっぱり寂しい‥けど‥‥何も変わらないんだよね?
やっと、前を向いて歩ける‥‥だって‥。
仁「随分楽しそうに話してたのぅ」
『そうね、楽しい』
仁「‥‥」
『ふふっ。ただの幼なじみよ?』
仁「わかってはいるが‥。いい気はせん」
拗ねる彼が愛おしい。
私だけを見ていてくれていると改めて実感した。こんなにも私を喜ばせる彼に白状する。
『雅治だって楽しそう』
仁「確かに楽しいが、それとこれとは別」
『私にとっては同じ』
仁「‥?。‥‥テニスに嫉妬したのか?」
『私と居るより楽しそう』
仁「辞めろって言うなら、今すぐ辞めたるよ」
彼の優先順位はテニスよりも私が上らしい。きっと彼のことだから、私がそう望めば躊躇わず実行するだろう。
『ヤキモチは妬くけど‥辞めて欲しくはない』
仁「俺は構わんぜよ」
『嫌よ。‥‥テニスしてる雅治も好きだから』
普段は飄々とした、何を考えてるかわからない彼だけど‥コートに入ってテニスに打ち込む姿も私を魅了するの。真剣な眼差しの彼を見れるのはきっとテニスだけだろう。
仁「はぁ~‥。そんなこと言われたら辞めれんな」
『うん。辞めないで(微笑)』
仁「フッ‥。あやめにはかなわんな」
『今日、来るんでしょ?』
仁「あぁ」
日課になるこの会話。
いつの間にか、週に二回は私の家で夕食を食べる。コレが、すごく嬉しかったりする。
母さんに言ってあるし、父さんも初めは騒いでいたけど今じゃ温かく見守ってくれてる。
たまに、景吾たちも来たりするけれど‥ふたりきりの時間が私は嬉しい‥。
『どうかした?』
仁「幸せそうじゃと思ってな。良く笑ってるし」
『そうね。幸せよ』
仁「それはなにより」
『変なこと言うんだから。私に幸せを与えてくれるのは雅治なのに』
仁「‥‥そうか。」
包み込む温かさが愛おしい。
まだまだ幼い私たちだけど、今はもう少しこの優しい恋をしていたい‥‥君と。
