仁王
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私の学校にはアイドル並の人気を誇る人たちが居る。
個性的でカッコ良くて、色んな噂が流れるその人たちはテニス部レギュラー陣。女子なら誰でも憧れる男の子たち。
私には雲の上の人たちだから関わりはない。
地味で目立たない空気みたいな存在。だからといってイジメられてはいないし、嫌われもしない。普通の女の子。
変わってるとすれば、それは―‥恋を知らないってこと。
これは、そんな私と子犬のような彼の焦れったくも甘い恋物語。
――――――――――‥
『よし‥あ!楓ちゃん』
楓「あら?まだ残って居たんですか?」
『うん。委員会長引いちゃってι
保健室寄ってから帰るとこ。楓ちゃんも委員会?』
楓「はい。これから部活です」
『そっか、頑張ってね』
楓「はい(微笑)」
やっぱり楓ちゃんは笑うと可愛いなぁ。優しいし頭もいい彼女は誰からの信頼も厚い、憧れる女の子。
それに比べて私はというと、これと言って取り柄がなく地味で人見知り。男子とは関わらないから好きな人も居ない。引っ込み思案で積極性も欠けてる。そんな私を楓ちゃんがいつも励ましてくれるのが嬉しい。
『あ‥先生出張で居ないんだι
連絡しといて欲しいなぁ、もぅ』
今更だから気にしたら負けだよねι
ガラッ―‥
?「あ」
『へ?』
?『「「‥‥‥‥‥」」』
パタン―‥
『‥‥ι(ガーン』
あまりの驚きに閉めちゃった―ι!
気まずいよ!かなり気まずいよ!
『(どうしよι)』
中に居たのはアイドル並の人気を誇るテニス部レギュラーの仁王君に丸井君だった。怪我の手当てをしようとしてた所だったみたい。
結構酷いのかなぁ?
保健室に来るくらいだし‥行った方がいいかな?
でも、傷の手当てなら誰でも出来るし‥ましてや、入りずらいしι
それに―‥
ガラッ!
丸「何やってだ?」
『え!‥いえっ‥その‥‥』
丸「まぁいいや。お前さ、保健委員?」
『(まぁいいやってι)
はい、そうですけど‥』
丸「助かったぁ!アイツが怪我してさ、手当てしてくんねー?」
『え?』
丸「やってやろうとしたら痛いッ!ってうるさくてよ」
仁「ブンちゃん!」
丸「事実だろぃ。
そういう訳だから頼んだぜ☆」
『(えぇぇーッ!?)』
そんな爽やかに去って行かないで下さい!
明らかに面倒だからじゃない!
『‥‥‥』
チラッと仁王君を見れば、確かに膝を擦りむいていて痛そうだ。手当てしないと可哀想だと意を決して中に入って仁王君の前にしゃがんだ。手には脱脂綿と消毒液。
いざ手当てをしようとしたその時、身構えるように握られた手に気づいた。
『(そういえば!)』
丸井君の言葉を思い出した。
痛いと言って手当てが進まなかったと。この傷に消毒液をつければ相当痛いと思う。そう思ったら我慢して、なんて私には言えないから、前に保健の先生に聞いたやり方を実行することにした。
『ぁ、あの‥』
仁「なん‥?」
『あっち‥向いてて、もらえ‥ますか?』
仁「‥‥わかった」
そう言って窓の外を見る仁王君の手は依然キツく握ったまま。表情も言葉とは裏腹なその手に何故かホッとした。
『ぁの‥』
仁「なんじゃ‥」
『テニス、って‥楽しいですか?』
仁「何でそんなこと聞く?」
『ぇ、と‥私‥運動音痴だから‥テニスしたことなくて‥‥どんな所が楽しいの、かなぁ‥て』
おかしな子って思われたよねι
仁王君と話したことなんて一度もない。それどころか、クラスも同じになったこともないから接点なんて全然ないし、あったとしても関わったりしないと思う。私なんかとは違って輝いてる人だから。
仁「楽しいぜよ」
『へ?』
仁「テニス。楽しくなかったら辞めてる」
『‥‥』
素っ気ない答え方だけど、なんだか嬉しい。
仁「お前さんは部活やってないんか?」
『私は‥何も、取り柄がないから(苦笑)』
仁「ふーん。つまらなくないんか?」
『そうでもない、かな。部活は入ってないけど、楓ちゃんがよくテニス部の話をしてくれるから』
仁「楓ちゃんってマネージャーの?」
『うん。私のよき理解者で親友なの』
仁「どんな話しとるんじゃ?」
『えーとね‥』
何気ない話をしながら手当てをしていく。
気にもならないくらいに話し込んる内に気づいたことがある。時々、赤面したり困った顔をしたりと百面相をする仁王君がいた。
そんな彼と普通に会話する自分に驚く。
仁「楓ちゃん酷いナリ‥」
『あははι‥はい、手当て終わったよ』
仁「へ?」
『え?』
仁「‥‥痛くなかった」
『えーと、保健の先生が教えてくれたの。
怪我から視線をそらさせて、何でもいいから話をする。そうすると、怪我から意識がそれるって。
小児科でよくやるみたいだよ』
仁「子供扱いしとったんじゃな」
『Σご、ごめんなさいっ!』
しまった!余計なことを言って‥怒ってるよね?怒ってるよね?!
怖くて顔を上げられないでいたら頭を撫でられた。
仁「あ、ありがとさん‥」
『(へ?)』
恐る恐る顔を上げると意外な彼がいた。
仁「気ィ遣ってくれたんじゃろ?だから、その‥ありがとうナリ///」
『///!』
仁「じゃッ!」
パタン―‥
彼が出て行った後、そっと自分の頭を撫でながら顔が熱いのがわかる。静まり返る保健室に響くのはやたらと大きくなった私の胸の音。
どうやら私は恋をしたらしい。相手はやたらモテる詐欺師―‥‥の筈が、同一人物とは思えないくらい見たことのない表情をする仁王 雅治君に。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
『あ!楓ちゃんおはよう』
楓「おはようございます、あやめちゃん」
?「お前さん昨日の保健委員」
『Σ!?』
楓「そういえば、昨日はありがとうございます。手当てしていただいて」
『ぅうん、気にしないで』
仁「ありがとさん。あやめちゃん」
『Σぃ、え‥///』
素敵な笑みに見ていられず視線を落とした。
仁「あやめちゃん」
『は、はい!(ビクッ』
仁「そんな驚かんでもι」
『ごめんなさい‥ι』
楓「あやめちゃんはちょっと人見知りなんですよ」
人見知りというか苦手なのだ。人気者とか派手好きな子とか‥正直怖い。
だから私はどちらかというと着飾らない子の方が合う。
楓ちゃんは美人さんだけど着飾らない自然な子だから仲良くなれた。
それに、テニス部レギュラー陣にはファンクラブがあり目をつけられると厄介なのだ。
仁王君に大意はないんだけど、あまりややこしいことには関わりたくない。
丸「おっす!何やってんだお前ら」
楓「おはようございます」
仁「おはようさん。世間話ぜよ」
丸「世間話に見えねーよぃ。そいつ怯えてるし」
『‥ι(ビクッ』
丸「なんつーか、あれだな。
大型犬に睨まれた子猫みたいな図」
楓「わかりやすいですね(笑)」
わかりやすいだろうかι?
仁王君ってどちらかというと猫みたいなイメージで犬には見えない。私が子猫っていうのもちょっと‥ι
仁「睨んどらん」
丸「目つき悪いんだよ。つーか、大型犬には突っ込まねーのかよι」
仁「‥‥どうせ、ヘタレだよ(ムスッ」
『(ヘタレ?仁王君が?)』
丸「怒るなって!そんなに知る人いねーんだからよ」
仁「あやめちゃんにバラしたぜよ」
丸「あ‥」
『え?』
私?っていうか、仁王君がヘタレ?どこが?全然見えないけど?なんて疑問を並べていたらチャイムが鳴った。
教室に入れば、殺気の混じりの視線に寒気が走る。視線の先は私のクラスの派手好きなグループ。あまり関わりたくない子たち。
かなり怖いです。
凄く怖いです。
殺される勢いですι
『(怖いよぉ~(グスン』
ウルウルと視界が涙でゆらゆら揺れてる。
楓「大丈夫ですか?」
『楓ちゃ~ぁん(泣)』
楓「よしよし。はい、どうぞ」
私の好きなポッキーを出してくれた。
ぱくっ
楓「仁王君からです」
『‥‥えぇっ!?』
楓「迷惑料、らしいですよ。
彼なりに気遣ったんだと思います」
『‥‥迷惑料』
ポッキーを見つめながら自分が恥ずかしくなった。彼は普通に話しかけてくれたのに、周りの目を気にして‥気を遣わせてしまった。そう思ったら、自分がかなり恥ずかしい。
楓「お礼してはどうですか?」
『したいけど‥‥上手く、話せないし』
楓「気持ち伝えるは言葉だけではありませんよ?」
『あ!』
楓「ふふっ。頑張って下さい」
『うん!』
そうだ。言葉で直接言えないなら手紙で言えばいいんだ。誰かを頼ってちゃいけない。仁王君は私にってくれたんだし、楓ちゃんを通したのはこれ以上迷惑にならないようにって考えてくれたんだと思う。
鞄からメモ用紙を一枚取り、お礼の一言を綴り、部活であろう彼にもう一言付け足し名前を―‥‥そこで手が止まる。
『(もし誰かに見られたら‥)』
そう思ったら名前が書けなかった。
少し言葉を交わすだけであの殺気だ、ポッキーをもらったなんて知られた―‥‥怖い。何をされるか、考えただけでも寒気が‥。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
『結局、書けなかった‥』
何度も書こうとしたけど出来ないまま放課後になってしまった。誰も居なくなった教室を手紙と買って置いたスポーツドリンクを持って出た。
クラスは知ってる、席は楓ちゃんが教えてくれたから大丈夫。
しかも、仁王君が部活を遅れるからちゃんと渡ると後押しまでしてくれた。
後は机に置いてくるだけ。
それだけなのにドキドキする心臓がうるさい。
「途中まで手伝うよ」
仁「ありがとさん」
教室から出て来たふたりに気づきとっさに隠れた。
「さっさと運んで部活行かないと幸村君が怒るんじゃない?」
仁「幸村よりも真田のが怖いぜよ」
「あはは!確かに!」
楽しげなふたりの姿に小さな痛みを感じた。
私もあれくらい自然に話せたら―‥‥なんて思った所で変わるなんて出来ない。
こんな私でも昨日はちゃんと話せたんだもん、大丈夫。
誰も居ないことを確認して、意を決して教室に入る。
『確か、窓際の一番後ろ』
歩み寄ればテニスバックが机に寄りかかっている。
戻って来ない内に手紙とペットボトルを置いて教室を出た。
いまだにうるさい心臓の音を聞きながらポッキーの箱を見つめる。こんなにも仁王君に惹かれている自分に驚く。色恋沙汰には鈍い自分が初めて言葉を交わした仁王君に恋をするなんて。彼に恋をする女の子は大勢いる。美人さんや可愛い子がほとんど。けど、いくら告白されてもことごとく振っている。
なら、本命が居るのか?
それについては秘密らしい。
なんとも彼らしいと思う。
『帰ろ‥』
鞄を持って教室を出る。
部活がない生徒は帰宅してるから校舎内は静かだ。靴を履き替え歩いていれば、ちょうどテニスコートが見える。
マネージャー業に勤しむ楓ちゃんを心の中で応援。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
翌日。登校してみれば、下駄箱の中に手紙‥というか、メモ用紙が入ってた。
『これっ!』
そこには、ドリンクありがとう、の文字。それだけで差出人がわかった。まさか、返って来るとは思わなかったから凄く嬉しい。下にまだ文字が付け足されてた。
“メモ用紙でいいから文通せんか?”
その言葉が嬉しくてそのメモ用紙を大切にしまって教室に向かった。
楓「おはようございます、あやめちゃん」
『おはよう楓ちゃん』
楓「何か良いことありました?」
『えっ!?』
楓「嬉しそうな顔してますよ」
『えーと、あのね―‥‥これ』
楓ちゃんにメモ用紙を渡したら良かったですねって笑った。
『で、でもね‥なんて書いたらいいか分からなくて‥‥』
楓「思うがまま書いたらいいと思います。
きっと、答えてくれますから」
『思うがまま‥‥』
その言葉に後押しされながらシャーペンを取った。
何を書いたらなんてよくわからないけど、ちゃんと話すことが出来ないんだからせめて、紙の中でくらいお話出来たら嬉しい。
こうして始まったメモ用紙の文通。
書いたらお互いの下駄箱に入れていくようになってからというもの、休み時間には必ず下駄箱に行くのが習慣になっていた。学校では関わらなし、話さない。
けれど、たった一枚の小さなメモ用紙が私たちを繋ぐものになっていた。
『あった!』
下駄箱を開けるが楽しみになるにつれて、彼に対する気持ちもまた膨らむのを感じ始めた。
†side:仁王†
「仁王くぅんvV」
「ねっねっ!ウチらと遊ばない?」
仁「悪いが部活じゃき」
気持ちの悪い猫なで声、やたらキツい香水、塗りたくったような化粧‥俺の周りはこんな女の子ばっかりじゃ。
正直―‥怖いっ!!
怖いぜよっ!!
妖怪じゃぁ~~~‥ッ(泣)!!
柳「おや、仁王君」
仁「やぎゅ~(泣)」
柳「どうしたんです?半べそかいて」
なんか、凄いめんどくせぇな、って顔しとるよ?
紳士にあるまじき顔だよ?!
仁「女の、子がぁ‥‥(泣)」
柳「はいはい。わかりましたから、とりあえず詐欺師演じて下さい」
仁「‥ぅん(グスン」
やぎゅが言ったように俺は俺自身を演じている。
コート上の詐欺師と呼ばれるミステリアスでクールなポーカーフェイスな男の子―‥‥じゃが、本性はこの通り。
丸「よぉ!って、なんだ、またお前泣いたのかよぃ?」
そんなん、仕方ないんじゃ‥怖いんやし‥ヤバい、また泣けてきた。
柳「例のごとく、女性が怖かったそうです」
ジャ「それは、大変だな」
ジャッカル!!優しい奴じゃ!!
丸「とりあえず練習するぜぃ」
ジャ「そうだな」
柳「仁王君、行きますよ」
仁「ま、待ってくんしゃいι!」
ラケットを持って部室を出たらイリュージョン開始。
コートの周りにいる女の子の黄色い悲鳴に顔が引きつる。
それだけじゃなか!
Σ体も思うように動かん!?
逃げ出したい‥けど、練習せんと真田に怒られる‥ι
柳「ほら、行きますよ!」
仁「おぅ」
気にしない、気にしない‥‥
気にしない気にしない気にしない気にしない気にしない!!!!
「仁王くぅんvV!!」
ズシャァァ―‥‥!!
柳「仁王君!!」
仁「ぃ‥‥いった―‥ムグッ!?」
丸「こッんのヘタレ!バレんだろうが!!」
ジャ「ヤバいぞ‥ι
女子が手当て、もとい、仁王目当てに騒ぎ出したぞ!!」
丸「先手必勝!保健室にダッシュだ!!」
ブンちゃんの肩を借り、保健室に猛ダッシュι
チラッと見た女の子たちは鬼のような形相でかなり怖いっ!!捕まったら喰われる!!絶対喰われるぅ!!
丸「はぁ‥大丈夫そうだな。
つーか、先生居ないのかよぃ」
仁「‥(ガタブル」
丸「Σうわっ!?真っ青!」
仁「怖いぜよ‥しかも、痛い‥‥(ウルッ」
丸「(男の涙ってキモイな‥)
手当てしてやっから、泣くな」
そう言って取り出す消毒液に体が強張る。
じゃて、痛いんよ?
かなり、痛いんよ?
明らかにしみるんよっ!?
バシッ!?
仁「痛ッ!!」
丸「全部口に出てるよ!
つーか、男なんだから我慢しろ!」
仁「ブンちゃん酷いナリ(泣)」
丸「ったく。しっかりしろ―‥
ガラッ―‥
ーーーあ」
『へ?』
丸・仁『「「‥‥‥‥」」』
パタン―‥‥
えぇーーーッ?!なんじゃ?!なんで閉める?!
いきなりドアが開いてヤバいなんて思ったら間を置いてドアが閉まるってι
マンガじゃなか?
見ちゃいかんもを見た~、みたいな?
丸「なんだ?」
仁「さぁ?」
丸「此処に来たってことは保健委員か」
仁「怪我はしとらんかったからのぅ」
なんか、ヤな予感がするぜよι
ドアに近づくブンちゃんを止められず再び開いてしまった‥。
丸「お前さ、保健委員?」
『はい、そうですけど‥』
丸「助かったぁ!アイツ怪我してさ、手当てしてくんねー?
やってやろうとしたら痛いって言ってうるさくてよ」
仁「ブンちゃん!」
丸「事実だろぃ」
事実かもしれんが、イメージ崩れるじゃろ?!
ただでさえちょっと崩れるだけで騒ぐのに‥‥バレた‥怖いナリ。
幸村に消されないか‥‥あぁ~~!!ブンちゃんのせいにしてやる!!
仁「‥!」
躊躇いながら俺の前にちょこんとしゃがむ女の子。どこかぎこちない動作で手当てをしようと手にした脱脂綿と消毒液にまた体が強張る。表面はクールに決めつつ、内心は泣きわめきたい気持ちでいっぱいナリ(泣)
『ぁ、あの‥』
仁「なん?」
早よ終わらせてくんしゃいっ!!
『あっち、向いてて‥もらえ、ます‥か?』
仁「わかった」
なんでもえぇから早くして欲しいぜよ!?
このままじゃ醜態晒しかねんのじゃぁ?!
『ぁの‥』
仁「なんじゃ?」
『テニスって‥楽しい、ですか?』
仁「なんでそんなこと聞くん?」
『私、運動音痴だから‥テニス、したことなくて‥‥楽しいのかな‥て』
変わっとる子じゃな。今までの女の子とは違う、それはよくわかった。
仁「楽しいよ」
『え?』
仁「テニス。楽しくなかったら辞めとる」
『そっか‥』
仁「お前さんは部活やっとらんの?」
珍しく興味が出た。
いつも寄って来る女の子とは違うからやと思う。
『私は‥何の、取り柄もないから(苦笑)』
仁「ふーん。つまらなくないんか?」
いつの間にか詐欺師を演じながら彼女を知りたい自分に気づいた。
こんな控え目な女の子初めてナリ。こういった女の子は近寄ることすらないの。
『そんなことない、かな。部活は入ってないけど‥楓ちゃんがテニス部の話をしてくれるから』
仁「楓ちゃんってテニス部の?」
『うん。私のよき理解者で親友なの』
そういえば、よく一緒に居る子がいたな。
仁「どんな話しとるん?」
『えーと‥。
丸井君が仁王君のポッキーを食べて‥それを見てた真田君が鬼の形相で丸井君を追いかけた、とか』
Σ楓ちゃ―んッ!
詐欺師のイメージ守らんでえぇのかっ!!
『後は‥仁王君が猫好きで、野良猫を見つけては嬉しそうな顔をするって』
仁「楓ちゃん酷いナリ‥」
幸村に知れたら何されるかわからんのにっ!!ヤバいぜよ!?
言葉とは裏腹に頭ん中は非常警報が鳴り響く。
『あははι‥はい、終わったよ』
仁「へ?」
『え?』
仁「痛くなかった‥」
いつの間にか丁寧に手当てされ、膝に貼られた絆創膏にびっくりじゃ。魔法使いかと思うくらい全然気にならんかった。
その後彼女の言葉から俺がかなり我慢してたのに気づいてた、とわかった瞬間カッと頬が熱くなった。子供扱い、なんて言えば頭を下げて謝られたナリ。
よく見れば、背は平均より少し低めで真っ黒な艶のあるセミロング。スカートの丈は校則を守っている、かなり珍しいタイプ。そんな子と普通に話せた自分にも驚きじゃ。
ちゃ、ちゃんとお礼せんと。
仁「ぁ、ありがとさん‥」
Σってぇ!?いきなり頭撫でるとかセクハラじゃなか!?
アカンのに‥妙に触り心地の良い髪から手が離せんかった。今かなり真っ赤になってるのは自分でもわかる。
ゆっくり顔を上げた彼女の視線に耐えられず逃げるように保健室を出た。
仁「‥///」
ギュッてなる胸の苦しさと同時にドキドキしてるナリ///
コートに戻る為に歩きながらも頭ん中はあの子のことが気になって仕方なかった。あんなにも苦手にしてた女の子との会話が楽しかったなんて‥///
どうやら、俺はあの子に恋をしたらしい。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
翌日。学校で楓ちゃんに会って、挨拶するなりあの子の姿を探してた。無意識に///
それに気づいた楓ちゃんが笑ってて恥ずかしくなってたらあの子が来た。嬉しくなってるのを隠しながら平静を装い声をかけた‥‥が。
仁「あやめちゃん」
『は、はぃ(ビクッ』
仁「そんなに驚かんでもι」
楓「あやめちゃんは人見知りなんですよ」
人見知り、はいいとして‥昨日とは全然違うぜよ?
俺が声をかけるとビクッてなるし‥‥嫌われた?イメージと合わんから?ヘタレやからか?
丸「おっす!なにやってんだお前ら」
楓「おはようございます」
仁「おはよーさん。世間話ぜよ」
丸「世間話には見えねーだろぃ。そいつ怯えてるし」
確かに‥なんでか怯えてるぜよ‥。
『‥ι(ビクッ』
丸「なんつーか、あれだな。
大型犬に睨まれた子猫みたいな図」
楓「わかりやすいですね(笑)」
仁「睨んどらん」
丸「目つき悪いんだよ。つーか、大型犬には突っ込まねーのかよι」
仁「‥‥どうせ、ヘタレだよ(ムスッ」
そんなに怖いだろうか?
やっぱり、カッコイイ方があやめちゃんも好きなんかのぅ‥‥。
丸「怒るなって!そんなに知る人いねーんだからよ」
仁「あやめちゃんにバラしたぜよ」
丸「あ‥」
『え?』
チャイムが鳴り、教室に入ったあやめちゃんを見送った。ブンちゃんも先に教室に行くと言っていない。
楓「泣きそうな顔しないでくださいな(苦笑)」
仁「じゃって‥」
ちゃんと話せんかったし、怯えてたし‥‥めげそうなんじゃもん。
楓「よく見てください」
楓ちゃんに言われるまま教室を覗いた。
楓「あやめちゃんみたいに大人しい子が仁王君と話すだけで彼女たちは嫉妬するんです。テニス部ファンの女子は怖いですから」
仁「そやったな‥」
鋭い視線が怖いのか机に伏したあの子が可哀想になる。せっかく、仲良くなれる子やったんに‥自分が恨めしい。
いっそのこと髪黒く染めるか?目立つなら目立たなくなれば‥あやめちゃんと話せるかも。
楓「あやめちゃんは仁王君のこと嫌いではないと思いますよ」
仁「そうかのぅ?」
楓「詐欺師ではなく“仁王君”としてお話してみては?」
仁「嫌いに、ならんかのぅ‥」
楓「やってみなくてはわかりませんよ」
優しく笑って言う楓ちゃんに頷けばチャイムが鳴った。
仁「コレ、あやめちゃんに‥迷惑料ナリ」
楓「わかりました。あやめちゃん喜びますよ」
仁「ホントに?」
楓「ふふっ。あやめちゃんも好きなんですよ?ポッキー」
仁「!?」
あやめちゃんも好き///
その日1日、その言葉が頭から離れなかったナリ!
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
放課後になって部活に行こうとしたら担任に荷物運びを頼まれた。今日の授業上の空だったから、だそうだ。面倒と思ってたらクラスメートの女の子が手伝うと言われとりあえず頼んだ。不本意ぜよ。
荷物は重いわ、女の子が怖いわで泣きそうになりながら教室に戻れば、机の上にスポーツドリンクとメモ用紙があった。そこには丸目の可愛い文字で“ポッキーありがとう”と書かれてたから差出人がパッと出た。
仁「あやめちゃんから‥///」
そして一言“部活頑張って下さい”そう書いてある。さっきまでの暗い気持ちが一気に晴れたナリ!
それに、嫌われてなかったことが凄く嬉しい。メモ用紙を大切にしまい、ドリンクを持って部活に出た。
幸「おや?なんだか嬉しそうだね仁王」
仁「うん(満笑)」
楓「あやめちゃんですね」
仁「うん!あんな、ドリンクと手紙貰ったんじゃ!」
楓「良かったですね。それをきっかけに文通でもしてはいかがです?」
仁「文通?」
楓「互いの下駄箱をポスト代わりに。休み時間を利用して」
仁「文通‥」
あやめちゃんと話したい‥けど、あやめちゃんが傷つくのは嫌じゃ。だけど、もっと仲良くなりたい‥。
仁「やってみるぜよ」
楓「はい」
幸「(上手くいきそうかい?)」
楓「(おそらくは。いい加減演じさせるのも可哀想ですから)」
幸「(そうだね)」
なんて。二人がテレパシーで話してるとは気づかない俺はあやめちゃんとの文通に心躍らせていた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
翌日の朝。テニス部は朝練の為早めの登校。部室に向かう前に昨日書いたメモ用紙をあやめちゃんの下駄箱(楓ちゃんが教えてくれたナリ)に入れた。
仁「(文通せんか、って変かの///)」
ラブレターでもないのに妙に緊張する。
それから、毎日のようにメモ用紙でのやり取りをした。授業中のことや部活、お気に入りの店やハマっているもの。そんな話をするのが楽しくなっとって、色んなことをあやめちゃんのことを知りたくなる。直接は話せんから、こんな小さな紙切れ俺たちを繋いどるんじゃ。
ホントはわかってる。女の子が抱くイメージを演じて、好かれても虚しいってことを。
去年付き合った女の子が居ったがヘタレに気付いたら“イメージと違う”そう言われて別れた。やめようと思った‥それでも演じてるのは‥怖いから。ホントはこんなに臆病者で泣き虫で情けないくらい弱い。それが仁王 雅治なんだと言えるほど強くないから‥‥あやめちゃんに嫌われたくないから‥。けど、少しでも気づいてくれたから‥ホントの俺を見て欲しいって今は思うぜよ。
仁「‥あったナリ」
枚数が増える度に、あの子に対する気持ちも増えて行くようじゃ。
◇◆◇◆◇◆◇
あれから一週間。
毎日続けた文通も、もう何枚目かわからないくらいになった。
初めは戸惑った返事も今ではスラスラ書けるようになり、少しずつ仁王君がわかるようにもなった。
例えば、猫は好きだけど犬が苦手
(小さい頃に追いかけられたらしい)
ニンジンが嫌いで偏食
(朝昼はあまり食べないらしい)
甘いものは嫌いじゃないけどポッキーぐらいしか食べない
(甘さがちょうどいいらしい)
ホラー系が大嫌いでファンタジー系が好き
(前に見て大泣きしたそうな)
ホントはカッコ悪いと彼が綴る文字が少し震えてるのがわかった時、遠くに感じた距離が近いた気がした。
私が恋した彼は―‥‥
『‥よし(微笑)』
「あれ?神崎さん」
『へ?』
「何してるの?そこは雅治の下駄箱だよ」
『佐々木さん‥』
振り返った先に居たのは小学生の時仲の良かった友達で、去年まで仁王君の彼女だった子。
「最近、雅治が手紙の交換してるって噂ホントだったんだ。
しかも、相手がアナタなんて‥笑えるわね」
『‥っ‥』
言い返せないのは私が弱いから。俯いて、スカートを握り締めて耐えるだけ。
「ちょっと来て」
『ぇ‥っ!?』
手を引かれながらついて行く途中で朝練終わりの仁王君たちとすれ違った。そのまま連れてこられた屋上で手が離され、次の瞬間―‥‥
パァァンッ!?
『‥‥』
一瞬何をされたかわからなくて、ジンジンする頬を押さえた。見つめた先の彼女は泣きそうになりながら怒りをむけている。
「なんで、アナタみたいな子なのよっ!」
『‥‥』
「確かに別れた私が言うのも変なのはわかる‥けど、好きなのっ!」
『!?』
「変わってくれるって思ったけど、見向きもしてくれない‥いつの間にか他の子ってあり得ないよ」
何も言えない。
だって私は彼女の言う“変わって欲しい”がわからないから‥。
『何を、変えて欲しかったの?』
「‥‥ヘタレなとこっ!好きなら、変わってくれると思って別れようって言った‥けどっ!」
『好き‥なら、受け入れてあげても‥』
「カッコイイって望んじゃいけない?!」
『それは‥』
「アナタみたいな地味な子にはわからないわよね。
派手な子苦手だったもんね、雅治とだってどうせ断れなかっただけでしょう?」
『違ッ!?』
違う‥違うよ?
私、地味で臆病者だけど‥文通したいって思ったのは私自身がそれを望んだからだよ‥そう言いたいのに言葉が上手く出てこない。
「アナタだってカッコイイから仲良くなったんでしょう?
ちょっと優しくされてその気になって」
『‥‥』
「アナタだって私と変わらないじゃない」
『‥‥で‥』
「何よ?」
『一緒にしないで!!』
「Σ!!」
情けなくても、格好悪くてもいい、みっともないのはわかってる。
それでも―‥
『確かに、派手な子苦手だよ。
私‥地味で可愛くないし‥仁王君とだって、あの日保健室に行かなかったら卒業するまで関わらなかったと思う‥』
頭に血が上る。
涙が止まらない。
悔しい‥‥そう、思う。
『カッコイイって望むのが悪いなんては言わないよ?
だけど、仁王君は佐々木さんにだけ素の自分を見せたんじゃないの?』
「それ、は‥」
『私はカッコイイ仁王君を望んでない‥。
だって‥私は詐欺師な仁王君じゃまともに話せないから』
そう、私は詐欺師な仁王君だと何故か身構えて、緊張してしまう。けれど‥素の仁王君とは普通に話せる。
『恋人って、人を好きになるって‥着飾らないとダメ‥なのかな?』
「女の子なら可愛いって思われたいでしょう」
『でも‥私は、ありのままの私を好きって言ってもらいたい。自然な形で付き合いたいから』
可愛いって言ってもらいたいのはわかる。褒めてもらいたい、言葉で好きって言ってもらいたい、その気持ちもわかるよ?でも、無理に着飾って、演じて。そんなの虚しいだけだよ‥。
『私が好きなのは‥‥泣き虫で情けないくらいカッコ悪い‥けど、温かい優しさを持ってる人‥‥』
たった小さな紙切れに詰まった言葉たちがホントの彼。
『ヘタレな仁王君だから‥』
震える手をギュッと握り締めて、真っ直ぐ彼女を見る。
「何、よ‥アナタなんかッ―‥
?「そこまでじゃ」
!?‥雅治っ」
『‥‥』
突然の登場した仁王君に驚いたまま動けない。
仁「‥‥文通を持ち掛けたんは俺ぜよ。あやめちゃんは悪くなか、文句あるなら俺に言ったらいいだろ」
「私を避けてたのは雅治でしょう!!私はずっと好きだったのに!」
仁「ふざけんなッ!」
「Σ!?」
『(仁王、君‥)』
珍しい、仁王君が声を張り上げて怒鳴るなんて。
仁「変わって欲しかった?別れ話は冗談やと?
何様じゃ!」
「‥ッ‥」
仁「詐欺師を演じてるのは正直苦痛じゃ‥だからせめて、彼女の前くらい素で居たいと思ってちゃアカンの?」
「ぁ‥」
仁「自分勝手なこと言ってるんはお前さんぜよ。
‥‥あやめちゃんは違ったんよ。
詐欺師な俺には怯えるが、素の俺とは話してくれる」
こうして聞いていてどれだけ彼が苦しんでいたか、よくわかる。
仁「俺は、お前さんのこと好きじゃない」
「ッ!?」
『ぁ‥』
走り出した彼女を止めるなんて出来なかった。
仁「『‥‥‥‥』」
沈黙が続く中仁王君が歩み寄って来て、赤くなってる頬を撫でる。
仁「ごめんな‥俺のせいで」
『そんなこと言わないで!』
仁「Σ‥あやめちゃん」
『誰も、悪くない!だからっ‥』
視界がゆらゆら揺れる。溢れる涙は頬を伝わっては落ちていく。
仁「な、泣かんで!」
『ひっく‥っ‥』
仁「あやめちゃんっ」
ギュッ―‥
『(温かい)』
抱き締めてくれる仁王君は少し震えてて、そんなことさえ愛おしく思う。
こんなに近くに居るのが夢みたいで、目を開けるのが少し‥怖い。
仁「あやめちゃん、泣かないで」
優しい声が響いて、目元に唇の感触、そして‥頬を零れる涙を柔らかい何かがすくう。
『にぉ、くん‥///(ビクッ』
恐る恐る開けたら、ちゃんと仁王君が居て‥零れる涙を舐めとってる。恥ずかしくて押し返すけどびくともしなくて、その場に尻餅をついてしまっても仁王君は離れなかった。
その姿がどこか弱くて、テニスをしてる時とは違って小さく見えて‥‥愛おしくなる。
仁「!?」
『私は‥今の仁王君が好き、です///』
仁「えっ///!?」
やっと見れた仁王君の顔は真っ赤に染まってて、同じくらい私も真っ赤だ。
仁「ホントに?」
『‥ホントに///』
仁「ヘタレでも?」
『ヘタレな仁王君に恋したの///』
仁「もう離さん、よ?」
『離さないで下さい///』
仁「大好きじゃよ‥あやめちゃん///」
『ぅん///』
額をくっつけながら見つめる彼の瞳の中に私が映って嬉しくなる。
ゆっくり瞳を閉じたら“いいよ”の合図。そして、重なる唇。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
仁「あやめちゃーんvV!」
『うきゃっ!?』
仁「はぁ~あやめちゃんの匂い落ち着くナリ」
『ぁぁあのっ///!!』
仁「ん?」
『こ、ここ‥廊下///』
仁「そうじゃな」
『恥ずかしい‥です///』
仁「ダメなんか?(ウルッ」
『だっ―‥‥めじゃないです///』
パァァァッ☆
仁「やった!!」
最近、変わったことがあります。仁王君が詐欺師を演じるのをやめました。初めは女子が卒倒したり、号泣したりで大騒ぎでしたが、今では受け入れてもらえました。
まぁ‥モテるのは変わらないんですがι
嫉妬することはない‥というか、暇がないです。休み時間は必ず来てくれるし、お昼は一緒に食べてるし、帰りも一緒。
しかも、所構わず抱き締めてくるので嫉妬してる余裕がありません///
恥ずかしいやら嬉しいやらで何度も“ダメ”と言おうと思っても泣きそうな顔を見ると言えなくて、甘やかしてしまう///
それに、あんな満面の笑顔見せられたら許しちゃいます(苦笑)
仁「あんな‥あやめちゃん///」
『何?』
仁「その‥な///」
『??』
お昼休みを屋上で過ごすのが日課になった今日この頃。お弁当を食べ終えてのんびりしていたら、どうかしたのか?と心配になるくらい真っ赤になりながら俯いている仁王君。食べてる時もそわそわしてたなぁ‥なんて思いながら次の言葉を待った。
仁「に‥日曜日っ暇‥かの///?」
『(それって///)暇、です‥』
仁「ホント!」
『ぅん///』
仁「じゃ、じゃあ‥で、でで、デート‥したい///」
『私も、したい///』
初デートってなんか緊張する///というか、今この状況も緊張してるけど///
『どこ行く///?』
仁「ブンちゃんに聞いたら映画や遊園地って教えてくれたぜよ///」
『人混み苦手じゃ‥』
確か前に、彼女と遊園地行ってやたらと見られるし、女の子に声かけられて怖くなって走って帰った(彼女置き去りで)って。
仁「あやめちゃんとのデートの為なら頑張る!」
『‥‥///』
その言葉の一つ一つが私をドキドキさせるって知ってるかな?
『映画や遊園地もいいけど‥私は、公園とか静かな方が‥いいな///』
仁「公園?」
『うん。お弁当持ってお散歩するの‥ダメ、かな?』
仁「ダメじゃなか!!」
『良かった。仁王君?』
あれ?なんだかうなだれてしまったようです。
仁「ごめんな‥気ぃ遣わせたナリ」
『そんな‥』
仁「ヘタレじゃなきゃ‥ちゃんと恋人っぽいこと出来るのに‥(ウルッ」
『丸井君に何か言われた?』
よしよしと頭を撫でながら聞いてみる。
仁「ブンちゃんがちゃんと恋人っぽいことしないと嫌われるって‥(グスン」
丸井君‥余計な一言を付け足さないで欲しいです。というか、お節介です。迷惑です。付き合ってわかったことですが、仁王君は恋愛に対して奥手でネガティブになりやすい。だから、いつも私を喜ばそうと一生懸命なんです。
それも愛おしく思うのは、私自身ベタ惚れなんだと思う///
『丸井君の言葉はあまり信じちゃダメです』
仁「‥‥」
『私たちは私たちのペースでいいんだよ?頑張らないで?
私は仁王君がデートに誘ってくれただけで嬉しいから///』
仁「ホント‥?」
『ホントだよ///』
ギュッと手を握り笑えば、手を引かれて抱き締められた。
仁「やっぱり、あやめちゃんが大好きじゃ///」
『ん‥///』
仁「公園デートしよな?」
『ん///』
仁「弁当に卵焼き入れてな?」
『ぅん///』
仁「それから、手繋いで散歩しよな?」
『うん///』
仁「楽しみナリ」
『私も(微笑)』
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
日曜日。
『ごめんなさい。待たせちゃって』
仁「そんなん待っとらんよ。ほら」
『///』
手を繋いで公園デート。
私服初めて見たからか、学校とは違った仁王君にドキドキ。お喋りしながら歩いて、ベンチに座ってお弁当を食べて、何故か膝枕をご希望されてしまった///
仁「すぅ―‥」
『寝ちゃった///』
よっぽど疲れてるのかもしれない。部活の方もハードだし‥貴重な休みにデートして余計疲れちゃったよね。
『お疲れ様、仁王君』
柔らかな銀色の髪を撫でると、閉じられた瞼が開いた。
仁「ん~‥」
『ごめん、起こしたね』
仁「Σあぁッ!?寝てしもうた!?ご、ごめんなι」
『ふふっ。気にしてないよ』
仁「じゃけど‥土日なんてなかなか休みないし。もっと、あやめちゃんと居りたいのに‥」
寝てしまったことを酷く後悔する仁王君がまた愛おしくなる。私の為でもあるだと思ったら‥キス、してた。
仁「あやめちゃん///!!」
『え、と‥そのッ‥‥したく‥なって‥つい///』
自分でも大胆過ぎる行動なのはわかってる、けど、こうする以外に思いつかなかった。
言葉じゃ足りないくらい、幸せなんだもん。
仁「移動するぜよ」
『‥どこに?』
仁「俺ん家」
『えぇッ///!!』
なんか急展開!?
いきなりでは!?ドキドキする私をよそに気づけば仁王君の家に到着。誰もいないらしく、上がるなり部屋に案内され。
『仁王君///』
仁「あやめちゃんとイチャイチャしたくなった///」
『イチャイチャって///』
仁「あそこじゃあやめちゃん嫌じゃろ?
だから‥俺の部屋に連れてきた///」
後ろから抱き締められたまま仁王君の体温だけがはっきり伝わる。
仁「心配せんでもキス以上のことはしない」
『‥』
仁「あやめちゃんがいいって言うまでしない。キスはさせて?」
『‥‥///(コクン』
時々ホントにヘタレなのかわからない。
今だって真剣な声ではっきり言うし、どっちがペテンかわからないよ///
仁「あやめちゃん」
『ん‥っ///』
仁「大好き」
『ふっ‥‥んん‥ぁっ‥///』
仁「はぁ‥ん‥」
いつもとは違ったキスに腰が抜けて、二人揃ってベッドに倒れ込んだ。
『はぁ‥///』
仁「はぁ‥可愛い///」
『んんっ‥恥ずかしいよぉ///』
仁「ははっ。俺も恥ずかしいぜよ///」
こつん―‥
仁「『大好き///』」
私の恋人はヘタレだけど、素敵な王子様です。
オマケ
幸「上手くいったね」
楓「えぇ。
彼女なら適任だと思ったので良かったです」
幸「これで部活中も安心かな」
楓「そうですね」
幸「毎回毎回半べそでいられても邪魔だし、面倒だったんだよね(黒笑)」
楓「言い過ぎですよ」
仁王は知らなかった。
面倒になっていたヘタレには飼い主が必要だった。ただ、ヘタレをバラすだけじゃ意味がないからである。
以後、ヘタレなわんこの頼る場所は彼女になり、部員一同喜んでいた(笑)
