仁王
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去年の冬
貴方に告白したのは私。
ダメ元での告白は、意外にもふたつ返事だった。
こんな地味な私を貴方は好きだと言ってくれた‥それが、何よりも嬉しくて泣いてしまいそうだった。
高校に上がっても変わらない想いを信じてた。
けれど‥
変わってしまった―‥
いつしか距離が出来て、下校も知らない女の子と仲良く帰っている姿を見かけるようになってた。
どんなに待っていても、貴方は気づかないフリをして‥教室の窓からいつも見てる私に。
でも、仕方ないと思う。
私は綺麗でもなければ、可愛いわけでもない‥自分に自信がなくて、不安で、苦しい‥。
それは彼も同じだと思う。
自分を好きだと言ってくれて、両想いになれたのに‥気の利いた会話も出来なければ、彼が望むことも叶えてあげられない。
好きなのに‥大切なのに‥私がしてあげられることが、見つからないの‥。
なんでも器用にこなす貴方だから、私なんかじゃ‥満たしてあげられないんじゃないかって‥‥
もっと、貴方の周りにいるような女の子のようだったら‥何度そう願ったか。
周りの子にも、不釣り合いって言われたけど‥そんなの私が一番わかってるの。彼には、私なんかよりも可愛い子が集まるんだもん‥嫌でも比較しちゃう。
何度も泣いた‥
何度も叫んだ‥
何度も願った‥
でも―‥
気づかなかった
聞こえなかった
届かなかった
ほら、今だって‥想いは届かない。
窓の外には、愛した銀色の彼。
傍らには、見知らぬ彼女の姿。
寄り添うように、手を繋ぎながら帰って行くふたつの影。周りからみれば恋人同士。
別れたわけじゃないから‥浮気、になるのかな‥?否、もう別れたも同然なのかもしれない。
でも‥後悔はしてない。
少しの間でも彼の心の片隅に残っていられるなら‥私はそれだけいい。
幸せには変わりないから‥。
こんな私を好きだと言ってくれてありがとう‥。
私はいまでも貴方が好き―‥
貴方に告白したのは私。
ダメ元での告白は、意外にもふたつ返事だった。
こんな地味な私を貴方は好きだと言ってくれた‥それが、何よりも嬉しくて泣いてしまいそうだった。
高校に上がっても変わらない想いを信じてた。
けれど‥
変わってしまった―‥
いつしか距離が出来て、下校も知らない女の子と仲良く帰っている姿を見かけるようになってた。
どんなに待っていても、貴方は気づかないフリをして‥教室の窓からいつも見てる私に。
でも、仕方ないと思う。
私は綺麗でもなければ、可愛いわけでもない‥自分に自信がなくて、不安で、苦しい‥。
それは彼も同じだと思う。
自分を好きだと言ってくれて、両想いになれたのに‥気の利いた会話も出来なければ、彼が望むことも叶えてあげられない。
好きなのに‥大切なのに‥私がしてあげられることが、見つからないの‥。
なんでも器用にこなす貴方だから、私なんかじゃ‥満たしてあげられないんじゃないかって‥‥
もっと、貴方の周りにいるような女の子のようだったら‥何度そう願ったか。
周りの子にも、不釣り合いって言われたけど‥そんなの私が一番わかってるの。彼には、私なんかよりも可愛い子が集まるんだもん‥嫌でも比較しちゃう。
何度も泣いた‥
何度も叫んだ‥
何度も願った‥
でも―‥
気づかなかった
聞こえなかった
届かなかった
ほら、今だって‥想いは届かない。
窓の外には、愛した銀色の彼。
傍らには、見知らぬ彼女の姿。
寄り添うように、手を繋ぎながら帰って行くふたつの影。周りからみれば恋人同士。
別れたわけじゃないから‥浮気、になるのかな‥?否、もう別れたも同然なのかもしれない。
でも‥後悔はしてない。
少しの間でも彼の心の片隅に残っていられるなら‥私はそれだけいい。
幸せには変わりないから‥。
こんな私を好きだと言ってくれてありがとう‥。
私はいまでも貴方が好き―‥
「また、見てるの?」
『ん‥。私には、この距離がちょうどいいみたい』
「そう‥」
茜色に染まる教室。
冬に入ったから日が沈むのが早くなった。
「健気ね。私には出来ないわ」
『‥‥どうしたらいいかなんてわからないの。別れようって言えば済む話なのにね』
「優しいんだから、あやめは。辛いのにアイツのことばかりなんだから」
『そうだね。‥好きだから、仕方ないないのかもね(苦笑)』
本音を言えば、別れたくない‥けど、これ以上彼を縛りたくない。肩書きだけの彼女が居たら迷惑でしかないと思うから。
私は幸せでした。
掴みどころのない彼の優しさが何よりも嬉しくて、傍に居られるだけで満たされた。
普段は飄々として、周りにイタズラする彼だけどコートの中では真剣な眼差しでテニスに打ち込む姿が輝いて見えた。
そんな彼に私は恋をしました。
無謀もいいとこ、彼と私じゃ‥天と地の差。そう思って笑ったのを覚えてる。それだけ彼は手の届かない人だった。本当に付き合ってたのかは正直わからない。
手を繋ぐことも、デートをすることも、ましてや、お昼を一緒にすることも下校も‥何ひとつとしてしたことがない。
別に嫌なわけではない‥でも、彼はいつもお昼は部活のメンバーと過ごしてるし、放課後は知らない女の子と居るから‥私は、肩書きだけの彼女だったんだろう。それでもいいと望んだのは私自身‥彼は、悪くない。
『明日、言わなきゃ‥』
これ以上は縛りたくない‥彼の幸せを願うからこそ、私は別れを告げることを決めた。
短い間の小さな幸せをくれた‥それだけ幸せでした。
精一杯の感謝とサヨウナラの言葉を‥。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
どんよりとした曇り空。
なんだか雪が降りそうだな‥なんて考えながら授業を受ける。
いつもと変わらない日常は退屈ではあるけど、彼を見ていられるから結構好きだったりする。前の席の銀色を見ながら小さな幸せを感じた‥。本当に、私は彼が好きなんだと思い知らされる。
「お昼、空き教室で食べない?」
『そうだね』
親友のアキラは何かと私を気にかけてくれる優しい子。
今も、クラスに居ずらいと思ってた私を心配して誘ってくれる。
チラッと見れば、仁王君と丸井君の周りに集まる女の子たち。一瞬目が合ったけど直ぐに逸らされた‥胸に小さな痛みを感じて笑った。別れようって決めたのに‥心のどこかで彼を求める自分が凄く滑稽に見えた。
お昼のお弁当を広げながら、何気ない会話をする。アキラが気を遣っているがわかる。
「でねぇ―‥
ガラッ―‥
‥‥仁王?」
入り口を見れば、仁王君と腕を組んだ見知らぬ彼女の姿。
どうやら浮気現場を目撃したらしい‥対して驚いた様子のない彼に胸がチクッと痛かったけど、今に始まったことじゃない。
仁「なんじゃ‥先客か」
「ホント。‥どうする?雅治」
「あんたッ‥
『此処、使うの?』
‥‥あやめ」
『‥食べ終わったから、どうぞ』
お弁当の入った手提げを持って立ち上がった。アキラは何か言いたそうだったけど、私を思って何も言わずにいてくれた。申し訳ない気持ちと感謝でいっぱいだ‥。
すれ違う瞬間、ありったけの気持ちを込めて‥“アリガトウ”と“サヨナラ”を告げる。
卑怯だけど、向かい合って言うことが出来ないから‥臆病な私を許して下さい。
心から貴方のこと愛してました―‥
「あやめ‥」
『いいの‥。‥これ以上彼を縛りたくないから‥短い間でも、私は幸せだったよ』
「‥あやめが決めたなら何も言わないよ」
『ありがとう‥アキラ』
午後の授業が始まっても仁王君は戻らなかった。
胸に感じる痛みに苦しくなる‥自分で決めて別れを告げたのに、悲しいなんてね‥。
授業が終われば、いつものように教室から外を眺める。馬鹿なことしてるとはわかっているけど‥簡単に消せる程私は強くないから。
視界に入った綺麗な銀色の彼は今日は部活のメンバーと帰るらしい。賑やかな声が聞こえてきそうだ‥なんて、思っていたら彼が振り返った。
『‥‥“サヨナラ”‥』
それが、彼と交わした最後の言葉。
帰り道。
ひとりになりたくてアキラとは別れて帰る。
時折吹く風は冷たくて、吐く息は白くてそろそろ雪が降りそうなほど寒い。手袋を忘れたのは失敗だ、かじかんできた。
『あ‥』
通り過ぎようとした脚が止まる。
そこは、私が仁王君に告白した場所‥想いが通じた公園だった。懐かしさを感じてちょっと寄って行くことにした。
陽が暮れた公園に子供たちの姿はなく、静まり返っていた。まるでそこだけが別の世界みたい。ブランコに座りながら空を見上げれば、白い羽根がふわりと舞い落ちるのが見えた。
『雪‥』
ふわり、ふわりと降り積もる雪を見ながら‥銀色の彼を思い出して涙が出た。
不安で、不安で‥どうしたらいいかわからなくて、寂しくて‥。伝える術がなかった私に愛想を尽かしたのだと、わかってる。けれど、ホントに好きなんです‥仁王君のことが―‥。釣り合わないってわかっていても傍に居たかった‥大切だから、失いたくなかった‥。
舞い落ちる雪に彼を重ねた。次第に染まっていく風景は綺麗な銀色の世界。
『綺麗‥』
彼に抱かれないなら、せめてこの雪に埋もれてしまいたい。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
『ケホッ‥』
「ちょっと!大丈夫なの学校に来て!?」
『微熱程度だから大丈夫だよ』
「無理しないでね?」
わかった、と笑って言えば呆れ顔の彼女も笑ってくれた。
昨日、雪が降り続ける中ずっとブランコに座ったまま動けずに随分遅くまで公園に居た為に風邪を引いた。さっさと帰れば良かったんだけど‥どうしても、動けなかったの。
窓の外を見れば、一面銀色の世界に染まってる。
丸「おっす!仁王」
仁「おはよーさん」
聞き慣れた声に振り返ることはしない‥。
もう、私と彼はただのクラスメートだから‥こんなに切なくて苦しくなるのだって時間が過ぎていけば消えるんだから‥。
それでも、泣きたくなるのは‥私が未練たらしいから?
いつものように女の子たちが集まる。
当てつけのようにこっちを見ては笑ってるんだろうね‥‥馬鹿な女、なんて思いながら。辛くなって、机に伏せた‥惨めな自分に笑えてくる。
丸「マジかよぃ?!」
仁「マジじゃよ。あっちから告白してきたからのぅ」
丸「御坂先輩ってマドンナじゃん!!狙ってる奴多いって聞いてたけど、まさか仁王が本命とはな。付き合うのか?」
仁「さて、どうするかのぅ」
「あれ?でも、雅治って‥」
本当に、当てつけのようだ。
そこまで言って区切るなんて嫌みだよ‥大体、彼女だって認めてなんかいないじゃない‥‥なんで、こんな惨めな私が晒されなきゃならないの?
今はこの席になったことすら恨めしく思う。
仁「別れたんじゃよ」
丸「ぉ、おい‥ι」
「嘘、ごめんね?神崎さん」
『何が?』
「え?」
なんだろう?
私の中で何かが切れた‥。
『初めから付き合ってないよ?』
丸「なっ!?神崎、何言って‥」
『一緒に居たの見たことある?』
「そういえば、ないよね?」
「確かに」
これ以上惨めな思いしたくないから、私は嘘をつく―‥.。そうでもしなきゃ、教室にすら居ずらくなる。クラスメートの前で堂々と破局を宣言する仁王君には、私の今の気持ちはわからないみたい‥。
そのまま、授業が始まってそれ以上は話さなくて済んだ。
自分で言って心が痛むなんてね‥馬鹿みたい。
初めから、付き合ってなかったんだよ‥私の勘違い、想いが通じたってだけ‥なん‥だから‥‥。
泣きそうになるのを堪えて、窓の外を眺める。
『‥‥きれ、い‥』
頬に一筋の涙が伝う。
重ねては辛くなって‥苦しくて‥だけど、愛しくもあるからか、優しい気持ちにもなる。
少しでもいい‥ほんの少しだけ、貴方のことを好きになった女の子が居たことを覚えていて欲しい。
心の片隅で構わないから‥私を、忘れないで‥それ以上は、望まないから‥。
その後、私は机に伏せて眠りについた。
◆◇†side:仁 王†◇◆
「熱があるのに無理したのね。担任の先生には言っておくから、目が覚めるまで居てくれる?」
仁「わかりました」
保健医の先生が出てった後、ひとつのベッドに歩み寄り傍にある椅子に座った。
規則正しい寝息だけが響く。
時折額のタオルを濡らしながら替えてやる。
『ん‥』
苦しそうじゃな‥。
そっと、頬を撫でれば気持ちいいのかすり寄ってくる。
二時間目が始まった時、出席確認の時寝てた神崎を起こすように言われたから、正直気まずさがあったがとりあえず揺すったが起きんかった。ぐっすりじゃな‥なんて思ったら、やたら赤い顔をして苦しげなことに気づいて額に手を当てれば、案の定熱が出てた。
横抱きにして、保健室に運んだのがついさっき。
仁「付き合ってない‥か。当たり前じゃな」
恋人同士なのに、それらしいことなんかしとらんからな‥。
さすがに、お前さんにはっきり言われたときはグサッときたナリ。それ以上に神崎は辛かったんじゃよな‥俺も傷つけてばかりで、幸せを与えてやれなかったからな。いつも、放課後見とったのは知ってたぜよ。だがな‥綺麗すぎるんじゃよ、お前さんは‥。
寄って来る女をとりあえず相手した‥体を重ねたりもした。それでも満たされなくて、荒れてた時お前さんに出会った。
『これ、使って?』
誰も気づかなかった小さな傷に気づいて絆創膏をくれたのが神崎やった。
真田たちですら気づいてなかったのに気づいてくれたお前さんが気になって、柳生から色々と聞いた。
良く花壇の世話をして、本が好きで図書室に居る。
偶然を装って会いに行けば、柔らかい笑みを浮かべて迎えてくれる。そんな彼女に惹かれた‥あの日一緒に帰らんかと誘えば頷いてくれた。帰りに寄った公園で告白された時は嬉しかったんじゃよ?
でも、わからなかったんじゃ‥。俺の知る女は、化粧が厚くて香水臭い‥媚びるだけの奴ばかりで、お前さんみたいに綺麗な女は初めてでどうしたらいいかわからんかった。本当に好きになったんは初めてじゃけぇ‥結局、その辺の女を相手して神崎をほおってしまった。そんな俺を、お前さんは見てるだけ‥何も言わずに。
仁「ごめんな‥」
本当に好きじゃった‥本気だったんじゃ‥だから‥どうしたらいいかわからんかった。神崎を傷つけてばかりで、俺にはお前さんを愛してやる資格すらない‥。
だから、サヨナラぜよ。
俺じゃない、いい奴を見つけんしゃい。
仁「じゃあな‥あやめ」
保健室を出た後、その足で空き教室に行くことにした。その途中、御坂先輩に会ってふたりで向かう。
馬鹿なことしとるのはわかっちょるが、簡単に止められないのは満たされたいから‥。どんなに女を抱いても満たされないんじゃよ‥本当に欲しい温もりを手放したのは自分なのに。
「仁王君///」
仁「良くしちゃるよ、御坂先輩」
どんなにこの手に女を抱いても、脳裏に浮かぶのは‥彼女の柔らかな笑顔だった。
「仁王‥くん‥ッ///」
違う。聞きたいんはこんな声じゃない‥
『仁王くん』
あやめ‥。どうして、今頃お前さんのことばかり思い浮かべとるんじゃろな‥。
満たされるのは、あやめと居った時だけじゃよ‥嘘じゃなか、本当に‥お前さんと居った時は穏やかな気持ちになるんじゃ‥。
もし、もう一度チャンスがあるなら‥今度はちゃんと向き合いたいぜよ。本音をさらけ出すのは苦手なんじゃけどな‥お前さんになら‥さらけ出すのも悪くない。
「告白の返事もらえる?」
仁「あ~‥。お断りするぜよ」
「なんで?」
仁「お前さんに興味ないんでな」
「ッ///!?」
パァンッ―‥
「最低ッ//!!」
ヒリヒリする頬を撫で、溜め息。
最低、か‥今更じゃよ。
どれだけ最低のことをしてるかなんて言われんでもわかる。あんなに優しい彼女を傷つけてきたんじゃからな‥。
仁「あやめ‥」
『‥はい‥』
仁「Σ!!?‥ぁ‥」
入り口に立つ彼女から目が離せない。まだ、赤い顔をしてるのに‥無理して‥此処に居る。
触れたい‥けど、ついさっき違う女を抱いた俺にその権利はないな‥。
仁「何してるんじゃ‥」
ごめんな‥
ーーーーーー
目が覚めた時‥一瞬、なんで自分が此処に居るのかわからなかった。
ぼんやりする頭に乗せられたタオル、周りを見渡して此処が保健室だと気づいた時に先生が入って来て状況を教えてくれた。
授業中に意識を失った私を仁王君が運んでくれた。
それを聞いた時少し驚いた。
先生に今日は帰るように言われ、鞄の用意を済ませた時には教室に彼は居なくて、お礼は言っておきたいから帰る前に空き教室に来て見れば‥御坂先輩が走り去ったのが見えた。中を覗いてみれば、銀色の彼が居た。
名前を呼ばれて思わず返事をしちゃった。
『先生が、運んでくれたのは仁王君だって‥』
仁「わざわざ礼を言いに来たんか」
『ん‥。ありがとう』
仁「‥早く帰りんしゃい」
『‥‥うん‥』
久しぶりに交わした会話‥もう少し、話していたかったけど‥ぼんやりする頭じゃ、どうしたらいいかわからなくて‥帰るしかなかった。
『本当にありがとう‥。
名前、初めて呼んでくれたね』
仁「‥‥‥」
『嬉しかった‥』
そう言って、教室を出た。良かった‥少しでも、彼の記憶の中に私は居たんだ。
『良かっ‥た‥』
ゆっくりと帰路を歩く。
熱があるせいか、冷たい空気が心地良く感じる。
ぼんやりと考えるのは彼が見せた寂しげな表情だった。
彼もきっと何か辛いことがあるんだと思う。なんでも器用にこなす彼だからこそ、本音を言うのが苦手なんだとずっと見てきてそう思った。
もし、もう一度チャンスがあるなら‥私から話してみようと思うの。少しでも、彼が本音を言えるように‥。
『今もまだ、貴方が好き‥‥』
こんな寒空の下、貴方は何を思っていますか?
私は今も貴方を想っています―‥。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
家に帰って、着替えを済ませすぐに眠りについた私が起きたのは、ちゃうど3時を回ったところだった。
両親はふたりで親戚の結婚式に行ってて家には私ひとり‥。風邪を引いてると人が恋しくなるって言うけど、本当らしい。
『さみしい‥』
気が付けば、コートを羽織りマフラーを巻いて外に出てた。
いつの間にか降り出した雪を眺めながら、公園に来てた。無意識に彼を求めてたのかもしれない‥初めて名前を呼んでくれたのが嬉しかったからかな‥。
ブランコに座りながら降り積もる雪を眺める。
しん‥と静まり返った公園に取り残されたように感じて、また寂しくなる。
『‥‥涙‥』
いつの間にか泣いていたみたい‥今なら、泣いていい?ブランコから立ち上がってゆっくり歩き出したけど、フラついた足じゃ上手く歩けなくてその場に座り込んだ。
このまま、雪に埋もれてしまいたい―‥
本音を言えば、愛されたい‥好きになった人にそう望むのは普通でしょう?物分かりがよくたって、周りから不釣り合いだって言われたって‥愛されたいよ‥。
彼に、触れて欲しかった‥
笑いかけて欲しかった‥
気づいて欲しかった‥
『ふっ‥‥ヒック‥ぅ‥』
貴方に、愛されたい‥。
でも、もう叶わない願いなら、雪に貴方を重ねることを許して下さい。
せめて、雪の中だけでも‥貴方を感じていたいから‥例えそれが幻想でも構わないから‥想うことを許して‥。
『‥‥好、き‥』
今もまだ、貴方が‥仁王君が好きです―‥
?「だれが?」
『‥ぇ‥??』
バサッといきなり頭から被された布を退けると見覚えのあるカラシ色のジャージだった。後ろを振り返れば‥ずっと想ってた愛しい銀色の彼が居た。
『どう、して‥』
仁「こっちのセリフぜよ。熱があるってのになんでこんな所に居るんじゃ」
状況が整理出来ないのは熱のせいかなぁ?ただ、彼を見上げていたら溜め息をついた後手を引かれて立たされた。
仁「濡れとるな。ほら、送ってやるけぇ、帰るぞ」
『‥いや』
仁「いやじゃなか。お前さん、自分が風邪引いてるのわからんのか」
『それでも、いや‥』
仁「何がいやなんじゃ?」
『‥寂しいから。‥誰も、いない‥から‥ッ』
止まった筈の涙が零れる。
ひとりになりたくない‥駄々をこねる子供のように首を横に振りながら‥。困らせるだけだってわかってるけど‥ひとりにされるくらいなら此処に居たい。
『‥ヒック‥‥優しく、しないでッ』
仁「‥‥」
『ひとりにするくらいなら‥優しくしないでッ』
仁「‥ッ‥」
握られた手が熱い‥初めて触れたその温もりに、また泣けてきた‥。
『お願い‥離して‥』
仁「離さん」
『離して‥ッ。じゃないと私‥』
仁「離さんよ。もう二度と、離したりせん」
真剣な瞳に視線が外せなかった。コートの中でしか見たことがなかったその瞳に何も言えずにいれば、歩き出した彼について行く形になった。
無言の彼に手を引かれ、私は俯いたままどこに行くのかもわからずについて行くだけ‥。
しばらくすると、ふと、足を止めたから顔を上げるとホテルだった。しかも、そういうことの為のホテル。意味がわからずに混乱する私をよそに部屋を決めると奥へと進み、部屋に入る。
仁「先に風呂入りんしゃい」
『‥ん‥』
言われた通りにお風呂に入った。
冷え切った体にしみるけど、気持ち良くてホッとする。
お風呂から上がって、近くにあったバスローブを着て‥仁王君が居る場所に戻る。
仁「上がったんか」
『うん‥』
仁「なら、俺も入るかのぅ」
そう言ってお風呂に向かった仁王君は一度も私を見てくれなかった‥。
残された私はベッドに寝ころんでぼんやりとする頭を働かせるけど‥眠くなるだけだった。
でも、彼を待つと決めて‥ただ、天井を見つめた。
此処に来たのは私がひとりになりたくないって言ったからだろうけど‥何故、彼は私を離さないって言ったんだろう?
わからないことばかりだよ‥。
仁「なんじゃ、眠れんのか」
『‥仁王君のこと、待ってただけ』
仁「‥‥」
体を起こして、見上げる。
いつも縛ってる銀色は解かれ、色気が増してる気がする。あんまり綺麗だから無意識に手を伸ばしてた。その手を一回り大きな骨ばった手が包んでくれる。
仁「寂しいって言うから連れて来たんじゃけど‥」
『どうして‥』
仁「‥お前さんと同じで未練があってな」
『同じ‥』
仁「遊んでたのは、悪いと思ってる。‥今まであんなことばっかしとったから‥お前さんにどう接したらいいかわからなかったんじゃ‥」
彼もまた、苦しんでいたんだね‥。
仁「その辺の女ならホテル連れ込んで終わり‥じゃが、お前さんにはそんなことしたくなかった」
『‥‥‥』
仁「初めて本気で好きになったから‥大切にしたくて、空回りした挙げ句、ほったらかしにして‥。他の女抱いてたんだからな」
自嘲気味に笑う彼を抱き締めた。
仁「神崎‥」
『私‥大切にされてたんだね‥。なのに、気づかないで‥苦しんでることにも気づけなくて‥ごめんなさい』
仁「えぇのか?知らん女を抱いた俺でも」
『うん‥。そうすることで貴方は傷ついた』
仁「‥お人好しじゃな、相変わらず」
私たちに必要だったのは、お互いの気持ちを話すことだったんだね。こんなにも簡単なことに気づかなかったなんて‥それでも、もう一度やり直せばいい。喧嘩したって、不安になったって‥本音でぶつかることが大切なんだと改めて思う。
仁「本当にいいのか」
『うん‥。私の初めては仁王君がいいから‥///』
仁「具合悪くなったら‥」
『大丈夫だよ‥。優しいね、仁王君』
仁「お前さんにだけじゃよ」
『嬉しい‥///』
仁「愛しとるよ‥あやめ」
『私も、愛してる‥雅治』
初めて重ねる口付けは、優しく甘く‥心を満たしてくれる。こんなにも幸せを感じてるのに‥夢なんじゃないかと思えてきて、仁王君が‥‥雅治が離れて行ってしまいそうで怖い。
仁「あやめ?」
『少し、怖い‥』
仁「止めるか?」
『違うの‥。‥雅治が、消えちゃいそうで‥これは夢なんじゃないかって思ったら‥怖くて』
今触れ合う温もりが夢で‥目が覚めたら、またあの辛く切ない日々に戻ったらと思うと怖くて‥苦しくて‥。
そっと手を伸ばして頬に触れれば、手を重ねて伝わる温かさにホッとする。
仁「俺は、此処に居るナリ。あやめに触れたくて仕方なかった」
『私も、触れて欲しかった』
仁「夢なんかにされてたまるか。やっと、愛し合えるんじゃからな」
『うん‥。雅治が愛してくれるなら‥私も精一杯の愛を貴方にあげます』
笑いあって、重ねる唇。
触れ合う温もりに幸せを感じる。こんなにも簡単なことに気づかなかった私たちはまだ幼いのだろう‥けど、互いを愛しく思うことを再確認出来た。
雪に埋もれることは出来なかったけど‥その代わり、愛しい銀色の彼の温もりに抱かれた私はすごく、幸せです。
身も心も通じ合ったあの日から私たちは変わった。
朝練のない日は一緒に登校して。
休み時間もお互い離れずに居る。
昼休みは私が作って来るお弁当を一緒に食べて(←雅治の希望なの(微笑))
部活が終わるのを教室で待って、一緒に下校。
部活がない休日は出掛けたりするけど、家で過ごす方が多い。
雅治も遊びをピタリと止め、私だけを愛してくれる。ちょっと恥ずかしいけど(照笑)ところ構わず抱き締めてくるから、心臓が保たない。
いつも背後から静かに来るからかなり心臓に悪い‥けど、その時の雅治の顔は無邪気で愛しく思うからあまり強く怒れない(苦笑)
ギュッ―‥
『キャッ!?』
仁「ククッ。毎回驚くのぅ」
『静かに来ないでって言ってるのに‥///ι』
仁「あやめが可愛い反応しよるからじゃよ」
『もぅ~‥//』
こう言われちゃうと許してしまう私は、彼に対して甘いんだと思う。
肩に回された腕にホッとする。
『終わり?』
仁「今日もハードじゃったよ」
『お疲れ様です』
仁「あやめのその笑顔だけで癒やされるナリ」
『ふふっ。それは良かった(微笑)』
教室を出て、指を絡めて繋ぐ手にくすぐったく感じながら一緒に歩く。
そろそろ冬も終わる。綺麗な雪が見れないのは寂しいけれど‥隣には綺麗な銀色の彼が居るから寂しくない‥。
仁「明日オフじゃからどっか行きたいとこあるか?」
『特に、ないι』
仁「久々のオフじゃけぇ、あやめのワガママ聞いてやろうと思ったのに」
『ふふっ。ありがとう‥なら』
仁「ん?」
『1日雅治と一緒に居たいな』
仁「それなら、すぐ叶えてやるよ」
『え?』
仁「家に誰も居らん。みんな出掛けてな、1日一緒に居られるぜよ」
『ふふっ。実はね?私の両親も出掛けて居ないの』
仁「考えることは同じか」
『そうだね』
おかしくなって笑いあった。
雅治のことだから、初めからお泊まり前提で考えてくれたんだよね。
私も家にひとりで居るのは寂しいから誘うつもりだったのに、同じこと考えてたんだと思うと嬉しくなる。
仁「覚悟しときんしゃい」
『なんの?』
仁「寝かしてやれる程優しくないんでな」
『///!!?』
仁「拒否権はないぜよ」
『‥‥ぅん///』
耳元で囁かれる甘く、媚薬のような雅治の声に酔わされる私はもう彼から逃げられない。
伝わる温もり、触れ合う肌、響く声、彼の匂い全てが私には媚薬だから‥ほら、もう煩いくらいに鳴り響く胸の音がその証拠。
仁「ククッ。あやめちゃんエッチナリ」
『なっ///!?違ッ//!!』
仁「心配せんでも離してやらんから安心しんしゃい」
『安心出来ないよ、それ//!!』
仁「お―おー。‥真っ赤ぜよ?」
『~~~///』
仁「そんな可愛い顔しなさんな。我慢出来んじゃろ?」
『Σ///!!‥雅治のエッチ//』
仁「ほぉ~‥(妖笑)」
『(聞こえたι!?)』
仁「楽しみじゃのぅ、1日一緒に居るんだからな(妖笑)」
『まさか‥ι』
仁「明日の心配はしなくても平気だし、楽しまないとな」
いけない‥頭の中で警鐘が鳴ってる。私、生きて帰れないかも‥ι
でも‥。
なんだか嬉しそうな彼を見たら、諦めて身を捧げるのも悪くないかもしれない。
貴方の温もり
(雅治?ご飯出来たよ)
(‥‥)
(雅治?)
(いや、新婚さんみたいじゃと思ってな)
(新婚さん///)
(みたいじゃなくて、そうなるけどな)
(それ、プロポーズ?)
(あやめは俺じゃ嫌?)
(ううん、すごく嬉しい///)
(‥‥‥)
(雅治//?)
(飯の前に‥)
ヒョイッ―‥
(え//?)
(あやめを食べるぜよ)
(えぇ――‥///)
(愛しとるよ)
(卑怯だぁ///)
(詐欺師じゃき、諦めて食べられるナリ)
((あんな嬉しそうにされたら理性保つわけないじゃろ)
