◈恋愛初心者
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†side:仁王†
仁「何、しとんじゃ‥俺」
上履きのまま走り出した神崎を追うことが出来ず、げた箱の前で佇む。
こんなことするつもりはなかった。ただ、なんで屋上に来なかったのか知りたくて追いかけた。一週間も避けられれば流石に気になる。
しかも、クラスメートの女が屋上に来るようになって神崎が遠慮したと聞いたが、彼女は断る理由がなかったと言っていたの。理由があれば、断るつもりだったのか?それは分からんが。
今は‥神崎を泣かせた事実だけが残されたぜよ。
仁「(しょっぱい、な)」
二度目のキスは涙の味がした。
泣かせたのは俺。
教室であの女との会話を聞かれた時は焦ったぜよ。誤解を解くつもりが、問い詰める口調になってしもうた。俺自身、かなり焦ってたらしい。
神崎の泣き顔を見たら一瞬躊躇って力を緩めた。が、すかさず追いかけて今度は閉じ込めた。
聞き出すことには成功したが、目を合わさない神崎に苛立って無理矢理キスをした自分の行動に驚きだ。
ひっぱたかれた頬がまだ痛い。真田に比べたら力はないが、心に突き刺さったような気分ぜよ。
「仁王くん?どうしたの、いきなり走り出して‥」
仁「別に」
「‥あ、はい!鞄持って来たから一緒に――‥
仁「ありがとさん‥じゃあな」
ちょっ、仁王くん?!」
鞄を受け取りさっさとその場を後にした。何を勘違いしとるかしらんが、あの女は勝手に彼女になった気でいるらしい。好きだとも言ったことがないのに纏わりつくとか、ありえん。
さっきだって、神崎が居るのかと思って教室を覗いただけじゃ。なのに、安心するだの自分にキスしろだの。
身勝手もいいとこじゃ。まぁ‥勘違いさせるような言動をした俺にも責任はあるがの。
仁「冷たいぜよ‥」
春とはいえ、まだ肌寒いし、雨降っとるから更に寒く感じる。
冷たい雨の中を傘も差さずに走った彼女は大丈夫だろうか?
風邪引いたりせんか?
そんな心配をしながら、びしょ濡れのまま帰宅した。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
真「仁王!!遅刻とは何事だぁ―――!!」
仁「うるさいのぅ。だから、謝ってるだろ‥」
気だるい体を起こし時計を見れば朝練遅刻が決定していた。
案の定、俺を見るなり説教を始める真田に耳を塞ぐ。大体、副部長じゃないのに何だって説教されとるんじゃ。罰としてランニング50周なんて言いよるし‥最悪ナリ。
仁「(神崎は来とるんかな‥)」
次第に登校して来る生徒に気付き、彼女を探す。いつもなら登校してもいい時間になっても彼女の姿は見つからなかった。
ランニングを終えてコートに戻れば、柳生が女子と話してた。
柳「神崎さんが?」
ぴくっ、
その名前に反応して聞き耳を立てる。
「そう。昨日傘も差さずに帰ったらしくて風邪引いたって」
どうやら神崎は風邪を引いたから姿がなかったようだ。
「なんだか元気なかったんだよね‥」
心配する女は最近柳生が付き合ってる彼女で、神崎とは友人らしい。胸の辺りがモヤモヤした。
散々、避けられた挙げ句‥あんなことになってしまったからの。
柳「悩み事は聞けましたか?」
「うん。悩みと言っても恋愛についてだったみたい(微笑)」
柳「恋愛?好きな男性が出来たと?」
「結論はそうだね。
ただ、自分の気持ちに気付いてなかったみたいで悩んでたらしいι
あやめは鈍いからね」
聞き耳を立てたことを後悔。
神崎には好きな男がいた、そのことが突き刺さる。
柳「聞き耳を立てるのは、あまりいいとはいえませんよ。仁王君」
仁「プリッ。たまたまぜよ」
柳「確信犯でしょう。何をやらかしたんです?」
仁「やらかした前提か」
柳「遅刻はいつものことですが、素直に謝るのは珍しいですからね」
よく見てるのぅ。流石、親友といった所か。
柳「神崎さんとはお知り合いで?」
はぐらかすのも面倒で素直に話した。
仁「ちょっと前に屋上でな。一人で飯食ってた」
別に珍しいワケじゃない。
一人で食ってたって気にしないときもある。が、その日は何故か気になった。暇つぶし程度で声をかけただけ、別に深い意味はない。
その日はまたまた言い寄って来た女から逃げたくて屋上に行ったんじゃ。
見るからに大人しい女で、よくジャッカルと話すのを見かけたから名前は知ってた。なんとなく退屈しのぎに話しかけてみたら‥これが案外面白かったナリ。
コロコロと変わる表情にいつの間にか笑みを浮かべる自分がいた。
仁「あんなに素直な女は初めてだ」
柳「君の周りは派手な方が多いですからね」
仁「なんとかして欲しいもんよ」
ふと、自分の手を見る。
仁「(一生懸命な手、ね)」
そんな風に言われたのは初めてだ。綺麗だとか、指が長いとかはよく言われたが嬉しくはない。
だから、神崎の言葉が嬉しいと思った。
柳「本気、ということですか」
仁「ピヨッ」
柳「仁王君が本気になるのは滅多にあるものではないですからね」
笑みを浮かべる柳生に照れくさくなり頭を掻いた。
仁「泣かせたんよ‥(ポソッ」
柳「‥‥」
仁「初めはただの好奇心。
それが、毎日になって‥いつの間にか習慣になっとっての」
こんな話、柳生が相手じゃなきゃ絶対しないぜよ。
仁「知っての通り、俺は直球勝負が出来ん。しかも言わせたい方じゃき‥焦り過ぎた結果がそれだ」
自嘲気味に笑って言えば、隣の紳士は盛大な溜め息を吐きよった。
柳「場合によっては直球勝負しなければならないことくらい仁王君なら分かった筈です。
なのに、君ときたら‥呆れますよ」
仁「プリッ」
柳「ちゃんと謝って、話をしてみては?きちんと誠意を持って」
仁「了解ナリ」
練習を終えて授業へと向かう。
仁「(柳生にはああ言ったが‥参ったのぅ)」
謝りたくても避けられるだろうな。
泣き顔が頭から離れん‥。
――――――――――‥
「あ!仁王くん、おはよー」
仁「おはようさん」
朝一番で声をかけて来た女に内心溜め息を吐きながら、当たり障りなく対応する。
「次の休み行かない?映画!」
仁「すまんが、休みはゆっくりしたいんでな」
彼女でもないのによくもまぁ堂々としてるのぅ。
休みくらい寝ていたい俺の気持ちを察しろ、とか言いたくなるぜよ。
「そっかぁ‥」
あからさまに残念がるソイツを無視していれば、制服を掴まれ足を止める。
鬱陶しいとは思いつつも顔に出さずに。
仁「なんだ」
「あ、あのね///
映画がダメなら‥仁王くんの家に、行きたいなぁ‥て///」
仁「(うわぁ‥何だ、この女)」
頬を赤らめながら上目遣いに見上げている女にドン引きナリ。
付き合ってもいないのに家に来たいとか、頭大丈夫か?
そもそもそんな権利ないんだがのぅ‥。女ってのは恐ろしいぜよ。
仁「のぅ、付き合った覚えないんじゃが‥お前さんは何なんだ?」
「え‥?」
仁「勝手に彼女面せんで欲しいぜよ。一応、好きな奴居るんでな」
制服から手が離れ俯いた女。
どうせ泣いてるんだろな‥と思いながら、さっさとその場を離れた。教室に入って席に着けば、頭の中は神崎のことばかりだ。
仁「(初めてじゃな。女を可愛いって本気で思えたのは)」
見かけだけならそういう女もいたが、反応というか性格が可愛いと思ったのは神崎が初めてだ。
コロコロ変わる表情を見てるのは飽きんし、純粋な彼女に惹かれる。控え目で友達思いで。
そんな些細なことに笑ってる自分がいたのも事実だ。一緒に居て安心するとか、今までなかったからのぅ。
仁「はぁ‥。
(どうしよもなくおまんに逢いたいぜよ‥‥あやめ)」
授業そっちのけで机に突っ伏した。
――――――――――‥
昼休みになると、購買で適当にパンを買って屋上へ行く。
あやめが居なくても屋上へ行くのが習慣になってるじゃよな‥。
「仁王!」
足を止めて振り返れば、女が怒りながら駆け寄って来た。
仁「なんかのぅ?」
「何じゃなわよ!千夏のこと泣かせたでしょう!」
仁「千夏?‥‥あーぁ、アイツか」
最近付き纏う女か、なんて納得していれば目の前の女は苛立ちながら怒鳴り始めた。
「千夏が鬱陶しい行動をしたのは悪いと思うけど、言い方があるでしょう!!」
仁「勝手に話に割り込んで怒鳴らんで欲しいぜよ。
大体、付き合ってもいないのに家に行きたいとか、何様なん?」
あの女が勝手に屋上に来ては、勝手に話すだけのつまらん関係じゃ。
それを、どう勘違いしたらあんな積極的になるだ?
「仁王だって、曖昧な態度とってるから勘違いされるんじゃない!!」
仁「‥だったらなん?
ハッキリ切り捨てれば泣くし、適当に流せば勘違いするとかありえんぜよ。
身勝手な勘違いに振り回される俺の身にもなって欲しいナリ」
「う゛ッ‥」
睨んで言えば言葉を詰まらせた。
背を向けて屋上へと歩く。
扉を開ければ暖かい陽射しが眩しいぜよ。
いつものように座り、空を見上げた。
正直食欲が湧かん。気分も最悪ナリ。
仁「(寂しいな‥柄じゃないが)」
似合わんもんよ。
コート上の詐欺師ともあろうモンが、寂しいとか。しかも‥好きな女が恋しいなんてな‥笑えるぜよ。
恋なんて本気にならんでも勝手に女から寄って来るモンだ。そう思ってた。
男が恋するとか、ないと思ってたからのぅ。色恋は女から寄って来て始まるモンだろう、くらいにしか考えてなかった。
男が女を欲しいと思うのは性的欲求を満たしたい時だけだしの。
だから、こんなにも人を恋しいと思ったのは初めてナリ。
乙女ってこんなんかのぅ?
居ると安心して満たされる、居ないと寂しくて穴が空いたような感じじゃ‥。
どうやって意識してもらえるのか分からんくて‥泣かせて。
膝枕もキスも、全部あやめに意識してもらいたくてやったことだったんだがな。
仁「失敗ばかりじゃな‥」
“好きだ”
その言葉が言えそうで言えなかったぜよ。素直になるってのは詐欺師の俺には難しい。
言わせることにこだわって、自分の気持ちを言わないであんなことすれば嫌われても仕方ないの‥‥。
仁「(あやめ、好いとうよ)」
想うのは簡単なのに、届くには時間が掛かるし、なかなか伝わらない。たった三文字を言葉にすることが出来ないとか、情けないぜよ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「仁王くんが好きっ///!」
仁「朝も言ったが好きな奴が居るけぇ、付き合えん」
「あ、遊びでいいのっ///」
仁「‥‥」
放課後に呼び出され面倒だと思いながらも出向いた。
断るなり遊びでもいいなんて言いよる目の前の女に呆れる。
じゃが、そんなにも真剣で真っ直ぐ伝えられることが出来る女は凄い、そう思えた。
仁「お前さんには、俺が遊ぶような最低な男に見えるのか?」
「ぇ‥ぁっ‥それは―‥」
言葉に詰まる女に内心溜め息。
そう思われても仕方ない噂が流れとるからな。自分で言うのもあれだが、髪色のせいかチャラそうと言われるし望まなくても女が寄って来る。
そのせいで、二股三股当たり前のモテ男とか言われてるナリ。実際はかなり違うんじゃがな‥一途じゃき。
自分で撒いたようなもんだがのぅ。泣かれるのは苦手で、怒らせるのは面倒。だから、当たり障りなく対応してたらこのザマじゃ‥。
「やっぱり‥神崎さんが好きなの‥?」
仁「‥‥」
「どうして‥あんな子より私の方がずっと仁王くんのこと見てたんだよ‥。
それに、神崎さんは仁王くんのこと何とも思ってないから代わってくれたんだし!」
ズキッ、
胸が痛んだ。
あやめが俺を好きだという確証はない。俺が一方的に好きだっていうだけだからな。
「私‥っ!!」
仁「お前さんが俺を見てるように、俺はあやめを見てるんよ」
それだけ言って学校を出た。
途中、ブン太にゲーセンに誘われたが気乗りせんくて断りひとり帰り道を歩く。
「あはは!」
「笑うなっ!!」
前を歩くカップルを見ながら自分もあんな風になれたら‥なんて思って笑った。
女なんて自分の都合で振り回すだけで、こっちの気持ちはお構いなし。面倒なだけだろう、そう思ってたが‥。
まさか、自分がこんなに恋い焦がれるとは思わなかったぜよ。
仁「(明日は来るかのぅ)」
来たらなんて声をかけよう?
避けられるだろうか?
好きだと言ったら、迷惑か?
色んな疑問が浮かんで苦しくなる。本当に、初めてばかりだ。
仁「‥‥神崎」
赤信号で止まり、向かい側を何気なく見たら彼女がいた。青信号になり気付いた彼女は驚いて逃げるように走り出した。
仁「(またか‥)」
なんて思いながらも俺は走り出す。今度は逃がさないと呟きながら‥。
仁「あやめ!」
追いついて手を掴む。
『はぁ‥はな、してっ‥』
仁「嫌だ」
たった一言‥。
仁「好きって言うてくれたら‥離す」
■□■□■
昨日、雨の中傘も差さずに上履きで駆け出した私は案の定風邪を引いて学校を休んだ。
ベッドに潜ったまま1日を過ごす。家にはひとりだから静かで寂しくなる。
目が覚める頃にはお昼を過ぎてて、お母さんが作ってくれたお粥を食べ薬を飲んだ。また、ベッドに潜り目を閉じる。
浮かぶのは銀色の髪とキスの感触だった。
『(好きって言ったら‥何か変わったのかなぁ)』
唇に触れながら布団を被る。
『(変わるわけないよね‥)』
からかわれただけのキス。
もし、あのキスが想いの通じたものだったらどれだけ‥嬉しいだろう。あの笑みに あの手に あの優しさに“恋”をした。
“私なんか”と諦めてきた初恋は、心に突き刺さるような痛みを生んだだけ‥。
『(嫌だなぁ‥こんなに、好きなんて)』
酷いことをされてもまだ、彼が好きだと想う私は未練がましいのだろう。
恋人にして欲しいなんて言わない、特別じゃなくてもいいから傍に居たい。
友達になれたら、それだけでいい―‥。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
『お帰りなさい』
「ただいま。具合はどう?」
『うん、大丈夫』
「なら良かった」
お母さんが帰って来たのに気付き下に降りる。
時計を見れば3時を過ぎてた。
「あら、やだ!醤油忘れた」
『買って来ようか?』
「大丈夫?」
『ずっと寝てたから気分転換になるし』
「そう?じゃあお願い。
使うのは足りるから急がなくていいわ」
『はぁい』
部屋に戻って着替え、外に出る。
少しひんやりする空気が気持ちぃ。気だるいさを感じつつも近くのスーパーへと歩く。
途中赤信号で止まって、青に変わりいざという時―‥。
?「神崎?」
自分の名前を聞いた気がして顔を上げた。
目が、合った―‥。
考えるより先に私は渡る筈の横断歩道を行かずに走り出してた。
『はぁ‥はぁ‥』
見間違うことなんてない。
銀色の髪なんてそうはいないから‥。
仁「あやめ!」
また、捕まる。
こんな時自分の運動神経の無さを恨んだ。
『はぁ‥はな、してッ‥』
仁「嫌だ」
強く掴まれた手に期待してしまいそうになる‥。
『(期待しちゃダメ)』
そう自分に言い聞かせていれば、彼の口から意外な言葉が出た。
仁「好きって言うてくれたら、離す」
『‥‥え?』
一瞬、何を言われたのか分からず、彼を見た。
仁「あやめが‥俺のこと好きって言ったら‥離す」
『‥な、それ‥』
またからかっているのだろうか?
その疑問を確かめる為に彼の顔を見る。いつも余裕の表情をしてる彼が、俯いてた。
微かに赤い頬に驚いて、更に混乱。
『(真剣、なの‥?)』
聞きたいのに、聞くのが怖い‥。
何も言わずにいれば、痺れを切らした彼に強い力で手を引かれ‥腕の中へ。
『Σちょっ!!離っ―‥‥仁王、くん?』
抵抗しようとして気付いた。
抱き締める彼の腕が震えていることに。
仁「すまん‥。少し、このままで話し聞いて?」
耳に近い位置から聞こえる低い声に抱き締めるこの状態に、恥ずかしく思いながらも仁王くんの言葉を待つ。
仁「なんて言ったらいいかの‥。
まずは、あやめを傷つけてすまん」
『‥‥』
仁「お前さんの気持ちも考えんと軽率な行動取って、泣かせて‥本当に悪かったと思ってる」
腕に力が入るのが分かった。
少し苦しいけれど、仁王くんの言葉に耳を傾ける。
仁「傷つけるつもりはなかった‥ただ―‥」
『(仁王くん‥?)』
言葉に詰まる彼が珍しい。
腕の力や震え、必死に“何か”と向き合って伝えようとしてくれている、それは分かった。
仁「どうしたらいいか分からんかったんじゃ‥」
『え?』
仁「あやめが‥“俺を意識してくれる方法が”」
『!?』
驚いた。それが素直な感想だ。
仁「初めは、気まぐれで声をかけたんじゃが‥いつの間にか居心地が良くてな。
気が付いたら、あやめのことを―‥‥
好きになってたナリ」
言葉が、出ない。
だって“私なんか”相手にされないって、からかわれただけだって思ってたから。
好きなんて、言ってもらえるわけないって‥。
仁「上手く、言えなくてあんなズルいこと言ったんじゃが‥本当に好いとうよ」
『‥‥』
仁「膝枕もキスも、あやめが好きじゃからした」
優しいその声に涙が零れた。
『‥‥わた、しも‥』
仁「ん?」
ゆっくり背中に腕を回した。
『私も‥好き‥』
仁「‥うん」
やっと言えた。通じ合えた。
それが嬉しくて、静かに涙を流した。
どれくらいそうしていただろう?
流石に恥ずかしくなってきた。
『ぁ、あの‥そろそろ離して///』
仁「無理」
『Σえぇっ!!』
仁「情けない顔しとるけぇ、見られたくないぜよ」
『で、でも好きって‥言ったら離すって///嘘つきですよ』
仁「詐欺師じゃき、嘘はおてのもんナリ」
『う゛~‥』
口で彼に勝てる気がしないι
だからといってこのままで居るわけにもいかない。
お使いもまだだから‥ι
『なら‥』
仁「ん?」
彼を見上げる。
『好きって言ったのも嘘なんだ‥///』
仁「Σそれは嘘じゃなか!」
『だって、嘘はおてのもん‥て』
仁「ホントに‥好いとうよ」
『///!?』
腰を引き寄せられて、唇が重なった。
仁「好き、好き‥あやめ」
『ん‥ぁ‥‥ンン‥ッ///』
仁「好いとうよ、あやめ」
そう言った仁王くんに私は熱を上げたように熱くなった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
『ケホッ‥』
「まったく。帰りが遅いと思ったら友達とお喋りして、挙げ句には熱ぶり返すとは‥」
『ごめん、なざい‥ι』
呆れ顔のお母さんに謝れば大人しく寝てるように言われ、仕事に行った。
『はぁ‥(結衣ちゃんにメールしよ)』
枕元の携帯を取り出し、打つ。送信を確認して携帯を枕元に置き目を閉じる。静か過ぎる家の中に取り残された気がして寂しくなってきた。
『(今頃授業中かなぁ‥)』
――‥会いたい。
布団に潜りながら彼を思い浮かべてまた、寂しくなった。しばらくそうしていたら携帯の着信音が響き。
『誰だろ?
――‥ぇ?』
ディスプレイには“仁王”の文字が出ていた。昨日、アドレスを交換したんだっけ、なんて思い出しながら電話に出た。
『仁王くん?』
仁[おはようさん。起きとったか]
『うん。今、授業中じゃ―‥』
仁[早退したぜよ]
『早退?具合悪いの?』
仁[そりゃあお前さんだろ]
『ぁ‥ι』
向こう側で小さく笑っているのが分かる。
仁[外見てみんしゃい]
『外?』
言われるままカーテンを開けて外を見た。
『仁王、くん‥』
家の前に銀色の彼が手を挙げて立っているのに気付いて慌てて階段を下り、玄関を開けた。
仁「よっ」
『‥どうして』
仁「柳生が教えてくれてな。熱ぶり返して休みだって」
そこで結衣ちゃんが柳生くんに話したと分かった。
仁「んで、寂しがってるだろうと思って具合悪いって言うて早退したって訳じゃ」
自信満々に言う仁王くんに驚きながらも嬉しくなって笑った。
『ありがとう///』
仁「プリッ。ほら、寝とらんと治らんよ」
『うん‥///』
仁「おっと、忘れてた」
『?』
仁「見舞い品。適当にゼリーとかヨーグルト買ったから食える時に食べ」
袋を受け取れば何種類か入っていて、また嬉しくなる。
仁「じゃあな」
くぃ―‥
仁「あやめ?」
『ぁ、あああの‥ね///
迷惑じゃなかったら‥も少し、居てくれない‥かな///』
帰ろうとした仁王くんの制服をつまみ、俯いて言えば‥
ぽふっ―‥
仁「よかろう」
頭を撫でながら頷いてくれた。部屋へと案内して私は布団に入る。
仁「大丈夫か?」
『うん。薬も効いてるから、大丈夫』
優しくおでこに触れる大きな手が冷たくて気持ちぃ。
仁「熱いな」
『仁王くんの手は冷たくて気持ちぃね』
仁「役に立ったか?」
『凄く。ありがとう///』
さっきまで感じた寂しさが嘘みたいに消えて、幸せな気分。
仁「なぁ、さっさと治す方法あるんじゃが試してみるか?」
『どんな??』
ニヤリと妖しく笑う彼に危機を感じたι
ギシッ、
身を乗り出した重みでベッドが軋み距離が近付く。
『ぁ、あああのっ///ι』
仁「なん?」
『な、治す方法って///』
仁「あ―ぁ、それはな―‥」
こつん―‥
おでこをくっつけ吐息がかかるくらい近くなる距離に風邪とは違う熱が上がった。
仁「俺に移せばいいんじゃよ」
『そっ―‥ンッ!!』
仁「‥心配せんでも移ったらあやめが看病してくれるだろ?」
『それは‥‥します』
仁「ならよかろう?」
再び唇を重ねようとする彼に口を塞いで抵抗したら―‥
仁「‥(ムスッ」
『‥‥ι』
拗ねてしまった‥ι
『あの、ね‥その‥き、キスっが嫌とかじゃなく。
仁王くんに移したくないワケで‥ι』
仁「あやめが看病すればいいだけぜよ」
『う゛ι』
それを言われると、頭の中で考えた言葉が無意味でしかないι
どうしようか、と悩んでいたら頭を撫でられた。
仁「移ったっていいから、キスしたいっていう男心を察してくれ」
『///!!』
困ったように笑った仁王くんにキュンてした私は口元まで布団を被り言う。
『心配する女心も察して下さい///』
仁「分かってるよ。
それでも、キスしたい」
『~~~///』
こんなに直球に求められたら、頷くしかない。
『‥い、よ///』
仁「好いとうよ、あやめ」
フッと優しく笑って唇が重なった。
触れるだけの優しいキス―‥‥
だけかと思いきや、いきなり深くなった。
『Σンンッ///!!』
抵抗しようと肩を押すも力で勝てず、両手を押さえられてされるがままに咥内を荒らされる。
仁「ん‥はぁ‥」
『はぁッ‥はぁ‥‥///』
仁「可愛い」
艶やかな笑みを浮かべながら自分の唇をペロッと舐める。
その一連の仕草にまた熱くなるのが分かった。
仁「なんだ、もっとか?」
ニヤニヤしながら迫る彼に、私の頭は考える力をなくしてしまい、自由になった手を伸ばして首に回した。
『もっと、して下さい///』
仁「‥ホント、可愛すぎナリ」
『ん‥‥はぁ‥んっ///』
好きな人とするキスは魔法にかかったように私を幸せにしてくれた。
不器用な君と臆病な私の“初恋”
(ケホッ‥)
(やっぱり移っちゃったねι)
(ん‥あやめのだったら歓迎じゃき、気にするな)
(でも‥)
(なら、キスしてくれるんか?)
(う゛‥///)
(くくっ、冗談じゃ)
((してあげたいんだけど‥ね///))
(あやめが居るから今は十分ぜよ)
(仁王くん///)
(その代わり、治ったらさせてな?キス)
(‥‥ぅん///)
(ありがとさん/微笑)
((早く治ってね?‥‥雅治くん///))
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