◈恋愛初心者
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『え?』
「だから、柳生くんに告白したらOK貰えたのvV」
『そう、なんだ‥良かったね』
「うん!!」
嬉しそうに笑ってる親友の結衣ちゃんに私は内心、嫌な気持ちになってた。
『はぁ‥(お昼休みもひとりか)』
高校に上がって数カ月が経つのに私は馴染めないままだ。
おまけに、引っ込み思案で人見知りも手伝ってなかなか友達か出来ず、今に至る。
結衣ちゃんは中学から一緒でクラスは別。教室に居る私はかなり浮いてると思う。
『(恋‥か)』
クラスの女の子たちを見ても、髪型やメイク、小物まで可愛く揃えてる。積極的でノリもいいから男の子も楽しいんだろうね。色めき立つ高校生活は私には無縁のものでしかない。
『(嫌な子だなぁ)』
自分自身のことが凄く嫌になる。
妬み 嫉妬 劣等感 虚しさ
そんな嫌なモノが鉛のようにいつも重くのし掛かるのだ。自分にないものを羨んでは“私なんか”そう思って、勝手に諦めるんだけどね。
―――――――‥
『(お昼だ‥)』
午前の授業を終えて、お昼休み。購買に行く人や友達とお弁当を広げる人で賑わい始める教室内に何となく居心地が悪くなって教室を出た。逃げるように‥。
行き着いたのは屋上。あまり人が来ないこの場所は私にとってはオアシスで唯一、落ち着く場所でもある。
『いただきます』
お母さんが作ってくれたお弁当に感謝して食べる。
賑わいが遠くに聞こえて、この屋上だけが別世界のように切り離されてるように感じた。
『(親友より彼氏なんて‥)
当たり前、だよね』
好きな人と付き合えたならもっと一緒に居たいだろうし、初彼なら尚更だ。嬉しそうな結衣ちゃんに嫉妬してる自分が一番最低だよ‥。
?「ひとりか?」
『え?』
?「お前さん、ひとりか?」
『まぁ‥そう、ですけど‥』
いきなり声をかけられて驚いた。見上げた先には銀色の髪を揺らしてる男の子に見下ろされてた。
『(確か、テニス部の――‥何だっけι)』
名前が出て来ない‥。
女の子が騒いでいたのは覚えてるんだけど‥名前だけが出て来ないι
思い出そうと記憶を探る私にその男の子は喉を鳴らしてしゃがんだ。
?「俺のこと知らんの?」
『すみませんιテニス部、とまで覚えてるんだけど‥名前まではι』
素直にそう言えば、名前を教えてくれだ。
仁「仁王 雅治じゃ」
『あ‥どうも。神崎 あやめです』
反射的に自己紹介をしたら“知ってる”そう言ってまた笑った。
『(話したことあったかなぁ?)』
名前を知ってると言われて私は首を傾げるだけだった。
仁「いつもひとりなんか?」
『ぇ‥あ、うん。いつもなら友達と食べてたんだけど‥。彼氏が出来たがらそっちに行っちゃって』
仁「ふーん。友達より彼氏を取ったんか」
『‥仕方ないよ。
好きな人と一緒に居たいって思うのが普通だし』
自分で言っといてなんだけど‥‥虚しくなってきた。
仁「普通ねェ。女の友情は案外脆いぜよ」
『‥』
仁「友達思いなら一緒にとか言わんか?」
『‥私が、断ったから。何だか、気まずくて(苦笑)』
チクッと痛い。
ホントは一緒になんて一言もなかったから‥。仁王くんの言ってることも分かる。
だからといって、幸せそうな結衣ちゃんに詰め寄るようなことは言えなかった。
それは私の我が儘でしかないから‥。
仁「お前さん、他に友達居らんの?」
『う゛‥ι
(そこには触れないで‥)』
仁「‥‥すまんι」
『い、いえι
(謝られてもなぁ‥)』
気まずい。
チラッと隣を見る。
綺麗な銀色の髪に整った顔。華奢そうに見えてしっかりした体つき。
男の子を近くで見ることがなかったというか‥なるべく関わらないようにしてたから分からなかったんだけどι
こうして見ると手も大きくて、男の子よりは男の人なんだなぁと思う。
仁「なん?」
『へ?』
仁「俺のことじっくり見てたろ」
『Σうぇ!?』
仁「くくっ。そんなに見られたら穴あきそうぜよ」
喉を鳴らしながら笑う仁王くんに頬が熱い。
『ご、ごめんなさい///!!』
恥ずかしくて視線をお弁当へと戻した。心臓がバクバクとうるさい。
仁「見られるのは慣れとるけぇ気にしとらんよ」
『はぁ‥///』
仁「で?なんでじっくり見てたんじゃ」
『う゛っ///』
仁「言いんしゃい」
詰め寄るように顔を近付けられて少し引いたけど、後ろはフェンスで丁度角近くのため横に逃げることも出来ない。
隅っこが安心するって理由だったり‥ι
仁「白状しんしゃい」
『~~///』
仁「じゃないと、キスするぜよ」
『~~分かりました!!言いますから離れてっ///!!』
そう言えば、ニヤニヤと笑いながら離れてくれたι
お弁当を素早く片付け脇に置き深呼吸。
『‥男の子とこんなに近くで話したことないから‥‥その///』
いざ言葉にしようとするも恥ずかしくて上手く言えない。
『手‥大きいなぁ、と‥///』
恥ずかしさで逃げ出してしまいたい///
仁「ほぉ‥。まっ、女よりはデカいな」
言うや否や、私の手を取り、合わせた。
仁「ほら」
『‥ぁ‥』
比べて見るとよく分かる。大きさも形も違う。
仁王くんの手は指が長くて綺麗だけど、ゴツゴツしてて少しマメが出来てる。
『一生懸命な手だね』
仁「なん?」
『マメが出来るくらい一生懸命なんだなぁと思って』
仁「ありがとさん」
『ぁ‥いえ///』
パッと手を離してまた、俯いた。
つん―‥
『?‥‥!?』
軽く髪を引かれた感覚に気付いて隣を見たら、少し癖のある私の髪を手で掬って顔を寄せる仁王くんに驚いた。
仁「いい匂いするナリ」
『へっ‥匂い‥?』
仁「落ち着く匂いじゃな」
そう言ってふっと優しく笑う彼に私はただ、真っ赤になった顔を見られたくなくて視線を前に戻して俯いた。それから何も言わず、チャイムが鳴るまで私は仁王くんに髪をいじられていました///
『(優しい手だったなぁ)』
授業中に自分の髪に触れながら思い出す。彼の手の大きさや温もりを。
『(また、話せたらいいな‥///)』
小さな音が鳴る。とくんっ、その音は淡く広がる恋の鼓動。
私はまだ、その小さな恋に気付かずに変わらない日常を過ごす。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
それからも、お昼休みには屋上に行った。
仁「よっ」
『ぁ‥仁王くん』
必ず、仁王くんも来て一緒に食べるのが当たり前に。
仁「はぁ~、腹減ったぜよ」
『体育だったんだ』
仁「あぁ、バスケじゃ。おかげで腹減りすぎて死ぬぜよ」
『大袈裟なι』
いつものように隣に座る仁王くんに私は嬉しい気持ちを抑えながらお弁当を広げた。
仁「おっ、美味そうやのぅ」
『ありがとう。ぁ‥じゃあ、お裾分け』
仁「いいのか?」
『うん‥あ!箸ないよねι』
いつも購買のパンを食べる仁王くんに箸がないことに気付くのが遅れた。
『購買で箸貰って来るね』
仁「いらんよ」
『え?でも‥』
仁「神崎のがあれば問題ないぜよ」
『??』
首を傾げる私に仁王くんは笑って教えてくれた。
仁「だから、神崎が食べさせてくれればいいだけだろ」
『Σなっ///!!』
仁「ということで、あーん」
『ぁ、はい』
ぱくっ、
仁「美味い」
『ありがと‥‥Σ~~~!!』
声にならない叫びを上げる。
反射的におかずを食べさせてしまった///
いくら色恋沙汰に疎い私でも間接キスくらい知ってる。
『(どうしよ~~///)』
仁「くくっ」
『Σわ、笑わないで下さい///!!』
仁「すまんすまん。神崎があんまり真剣に悩んでるからつい、な」
『う゛~‥///』
余裕の仁王くんを見ていると間接キスくらいどうってことないんだろうなぁ‥とか、思ってしまう。こんなにカッコ良ければ付き合ったことがあるだろう。むしろ、ない方が不自然だよね。
あ‥なんか、嫌な気持ちになる。
仁「神崎ならよかよ」
『へ??』
仁「間接キス。相手がお前さんならいいよ」
『///!!』
ふわりと優しい笑みを浮かべながら言う仁王くんから目が離せない。私ならいい、その言葉の意味がよく分からないけど‥箸でおかずを取り口の中へ。
仁「間接キス成功じゃな」
『(恥ずかしい///)』
そう思う反面、何故か幸せな気持ちになった。
それからも、からかわれながら彼の口におかずを運んだ。
仁「ご馳走さん」
『は、はぃ///』
何というか、終わった方が恥ずかしさが増す気がする///
仁王くんは相変わらず気にもしてない様子だ。
それを見ていたら何だが虚しくなってくる。こんなに意識してる自分が‥。
お弁当を片付けて空を見上げる。
『(付き合ってないんだから当たり前じゃない)』
たまたま此処に来て、何となく話して、何となく一緒に食べてるだけなんだから‥。
“期待しちゃダメ”
仁「どうした?」
『ぁ‥なんだか眠くなってきただけ(苦笑)』
仁「そうじゃな。腹も満たされたし、昼寝するか」
ごろんと寝転んだのはいいが、何故私の膝に頭が??
所謂、膝枕だ。
『ぁ、ああのっ///』
仁「ん?‥あ―ぁ、膝借りるぜよ」
『ぁ、はい‥‥Σじゃなくて///!!』
仁「なんだ、ダメなのか?」
『ぃ、いえ‥そうではなく///こういうものは普通、彼女にしてもらうものではないかと‥///』
見上げる瞳にダメとは言えず、当たり障りなく言えばあっさり言葉を返された。
仁「彼女なんか居らん」
『Σえぇっ!!』
仁「驚き過ぎじゃ。
‥彼女は居らんが好きな奴は居るよ」
『(え?)』
一瞬、思考が停止した。
『な‥なら、尚更よくないよ。誤解されたら―‥』
仁「ダメじゃないならいいだろ」
『‥‥』
仁「心配せんでも、そんなヘマはしないぜよ」
それだけ言って目を閉じてしまった。
『(丸め込まれたι)』
仁王くんには口で勝てる気がしないなぁ、なんて笑って眠ってしまった彼を見つめた。
『(好きな子居るんだ‥)』
どんな子かな?
やっぱり、美人だったり可愛い子かな?
先輩、それとも後輩?
同級生、クラスメート?
疑問ばかり浮かんでは嫌な気持ちになる。
それが何なのかも私には分からないままチャイムが鳴った。
――――――――――‥
『へ‥?』
放課後の教室で私は素っ頓狂な声を出した。
「だ、だから‥仁王くんと付き合ってるの?」
『ぃ、いえ‥付き合ってないです』
話しかけてきたのはクラスメートの女の子。どうやら、よく屋上でお昼を食べてるのを見られたらしい。彼女なのか、という確認をしに来たみたいで違うと答えればホッとしていた。
「いつも一緒みたいだから付き合ってるのかと思っちゃった」
『‥‥』
「あ、あのね!神崎さんが良ければ‥その、明日は‥私が屋上に行っていいかな///?」
『(え?)』
恥ずかしそうに仁王くんが好きだと明かすその子の言葉が聞こえない程動揺していた。
必死に話す彼女は可愛らしく頬を染めていた。
『(断る理由がない‥)』
こんな可愛い子に私はかなうはずもない、と諦めていた。
仁王くんには好きな子が居て、もしかしたらこの子かもしれない。
なら、返事は決まってる。
ズキンッ―‥
苦しくなる胸を押さえながら私はふたつ返事で頷いた。
『‥‥』
嬉しそうに笑って去った彼女に私は上手く笑えただろうか‥。
ひとり残る教室は凄く広く感じて、取り残されたような寂しさを感じた。それと同時に後悔が襲う。
『(明日から、また‥ひとり)』
ポロポロ―‥
涙が零れ落ちる。
何が悲しいのかもよく分からないけど、涙は止まることなく零れた。
ダメと言えたら、ちゃんと断れたら‥そんなことを思っても意味はなくて‥。
それ以前に、断る理由が私にはないんだ。
『(私‥なんなんだろ‥)』
友達とも胸を張って言えなくて、ただ、屋上で会ってお昼を食べるだけの私たちの関係はあまりにも曖昧で‥簡単に終わりを迎えてしまうように脆い。
少なくとも私は一緒に居ることが嬉しかった。結衣ちゃんの代わりに知り合えた仁王くんと、もっと仲良く、友達になりたかったよ‥。
涙を拭って教室を出た。
あんまり遅いとお母さんを心配させてしまうから。
『(あ‥)』
ふと足を止める。視線の先にはテニスコート。練習に汗を流す仁王くんの姿が見えた。
『かっこいい‥』
一生懸命にひたむきに頑張る姿が素直にかっこいいと思えた。
『!?』
目が、合った。
私に気付いた仁王くんは汗を拭いながら笑って手を振ってくれて、私も手を振って返す。
そのやり取りにとくんっ、と胸が鳴った。
『(私、仁王くんに――‥)
まさかね』
そう呟いて再び足を運ぶ。
テニスコートに背を向けた私は気付かなかった、彼が見つめていることに‥。
浮かんだ可能性が確信に変わるまであと少し。
それは、私と彼が近付く為の距離でもある。
近くて遠く感じる私たちの距離が少しずつ、近付くことが出来たらな‥そう、僅かな可能性を祈りながら家に帰る。
翌日。お昼休みになるなり私は屋上ではなく図書室に向かった。
『(え―と‥)』
とんっ―‥
『あ、ごめんなさい』
?「いえ、こちこそすみません」
本を探していたら手がぶつかり慌てて謝ると丁寧な口調で返された。
誰だろと顔を上げたら結衣ちゃんの彼氏の柳生くんだ。
柳「結衣さんのお知り合いでしたね」
『ぅん。神崎 あやめです』
柳「これはご丁寧に。柳生 比呂士です。結衣さんとお付き合いさせて頂いてます」
優しい人だなぁ。学校で知らない人は居ないと言われるぐらいの有名人なテニス部。
それぞれが競争率高いとか、結衣ちゃんが言ってたっけ。
柳「神崎さんに謝りたいことがあります」
『え?』
柳「結衣さんとの時間を奪ってしまい、申し訳ありません」
頭を下げて謝る柳生くんに慌てる。
『気にしてないから!頭上げて、ねι!』
柳「ありがとうございます」
『(本当に優しい人)
‥確かに、ちょっと寂しくなってはいたけど‥結衣ちゃんが幸せならそれでいいの(微笑)』
付き合う前、よく結衣ちゃんの口から柳生くんの名前が出ていた。その時の表情は凄く嬉しそうで可愛く見えて、眩しいとさえ思った。恋をしてる女の子は輝いて見えるもの!なんて聞くけど、本当だ。
一生懸命努力して可愛くなろうとする姿は輝いて見える。
柳「結衣さんはよく貴女の話しをするんですよ」
『私の??』
柳「えぇ。優しくて良き理解者だと」
『そう、なんだ‥ちょっと恥ずかしいな///』
そう思ってもらえてるのに、私はあの時嫌な気持ちを抱いてたんだから‥。
柳「では、私はこれで」
『うん』
柳生くんが去った後に残る静けさ。お昼休みだから来る生徒はいない。本を取り席についてはみたものの、開く気になれないでいた。
『(今頃仲良くお昼ご飯か‥)』
教室を出るとき、嬉しそうに駆け出した女の子を見た。本当に仁王くんが好きで、キッカケが欲しかったんだろうね。
あんなに可愛い子なら‥仁王くんも、嬉しいよね。
勝手にそう言い聞かせて、俯いた。
『(嫌、だなぁ‥私)』
モヤモヤする。自分のことなのに、全然分からない。
そのまま、本を開くことなくチャイムが鳴った。
――――――――――‥
「あやめ‥」
『結衣ちゃん。どうかしたの?なんだか元気ないみたいだけど』
放課後になり、帰宅や部活で出て行くクラスメートたちは逆に入って来た友人に首を傾げる。
「柳生くんがね。あやめに悩み事があるみたいだって言われて‥心配になったの」
『そうなんだ‥。ありがとう、結衣ちゃん』
笑って言ってはみたものの、柳生くんに気付かれたことに少なからず動揺した。
けれど、打ち明けることが出来ず“大丈夫”そう言った。
『言える時が来たら‥聞いてくれる?』
「もちろん!!」
『ありがとう(微笑)』
それから二人で校舎を出た。
結衣ちゃんは柳生くんの応援にテニスコートに行くのでそこで別れる。手を振って駆け出した結衣ちゃんに笑みが浮かぶ。
好きな人との時間はきっと家族や友達とは違った幸せがあるのかもしれない。
『(羨ましいなぁ‥)』
まだ、恋をしたことがない私には眩しく見える。
心のどこかで“私なんか‥”そう思ってしまうから諦めてるんだ。
?「あやめっ!」
『ぇ‥‥
Σキャッ!?』
佇んでいたらいきなり名前を呼ばれて、振り返る間もなく肩を抱かれ驚いた。
?「間一髪」
『‥仁王くん?』
声の主を見上げれば、ラケットを握る仁王くんがいた。
仁「はぁ~。ボールが当たる所だったんじゃよ」
『へ??』
仁「どこぞのアホが思いっきり打ち上げての、ほれ」
そこには確かにテニスボールが。
全然気付かなかったと呟けば、ぼんやりしとったからなと言われてしまった。
『ありがとう』
仁「‥礼なら――‥」
ちゅっvV
『ぇ‥?』
仁「コレで十分じゃき、気をつけて帰るんじゃよ」
ヒラヒラと手を振って部活に戻る仁王くんに対して、私は呆然と立ち尽くした。
『(今の、て‥)』
手を動かし唇に触れた。
薄くて少し冷たい感触を思い出し、体中が沸騰したみたいに熱くなる。
『(キスされた///!!)』
やっと状況を理解すると周りの視線が気になって逃げるように学校を出た。
整理しようにも出来なくて、思い出すだけで顔が熱くなる。
『初めて、なのに‥///』
ファーストキスは好きな人と、そう思う女の子の気持ちを私だって抱いてはいた。
けれど、周りからしたらあんなにカッコイイモテる男の子にキスされたら喜ぶべきだ!と怒られてしまいそうだι
『どういう気持ちでキスしたのかな?』
付き合ってるワケじゃないし、知り合い程度の浅い付き合いだ。好意があってじゃないことは分かる。
なら、本当にお礼のつもりで?
否、それなら唇じゃなくてもいいのでは?
あるいは―‥
『(それだけはないと信じたい)』
誰にでも出来る、なんて‥思いたくないけど、特別でもないのも事実なんだよね‥。
なら、どうして?
混乱する頭を働かせても答えは見つからないまま。家に着いてベッドに寝転んで、無意識に唇に触れる。
『(まだ、残ってるみたい///)』
とくんっ、また小さく胸が鳴った。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
それから一週間が経ち。
私は屋上へ行くこともなく過ごしていた。仁王くんともあのキス事件(私にとっては事件です)以来、会っていない。
というか―‥
柳「仁王くん!貴方また騙しましたね!」
仁「プピーナ」
『!?』
柳「――‥と、どうかしましたか?」
仁「否、なんでもないぜよ」
胸をなで下ろし、息を吐いた。
『(避けてどうするんだ‥ι)』
廊下で仁王くんを見かけては避けまくっているのだ。気まずさよりは私が一方的に意識してしまってるだけで‥。
キス事件の翌日は恐ろしい視線ばかりで泣きそうになったくらいだ。
『(何やってるんだろ‥)』
自分ばかり意識して、避けて。何だか虚しくなってきた。
「あやめ?どうしたの?」
『うん‥ちょっと、自分一人じゃ辛くなっちゃって(苦笑)』
放課後。私は結衣ちゃんのクラスに行き、相談というか‥愚痴を聞いてもらうことにした。
「恋じゃない!」
『ぇ‥恋ι?』
「そうだよ!絶対!」
『そう‥かな‥ι』
話しを終えるなりそう叫んだ結衣ちゃんに驚きながら少しずつ霧が晴れて行くような気がした。
「あやめが意識してるんだから絶対に恋だよ(微笑)」
『‥///』
嬉しそうに笑って言い切る結衣ちゃんに恥ずかしくなる。
「問題は相手がどう思ってるか、だよね」
『なんとも、思ってないよ‥きっと』
「そんなの分からないよ?
心までは見えないんだから。あやめは諦めるのが早過ぎるの!」
『う゛っ‥ι』
返す言葉も御座いません。
「あ!柳生くんと待ち合わせの時間た!」
『今日は部活ないんだ』
「そう!委員会があるって言ってだけど終わったみたいだから行くね」
『うん、ありがとう結衣ちゃん』
「絶対諦めちゃダメだからね!」
『うん‥(苦笑)』
足早に出て行った結衣ちゃんに笑って、残された教室で溜め息を吐いた。
『やっぱり、恋なんだ‥』
気付けて良かったような悪かったような、複雑な気分。
仁王くんは好きな人が居るって言ってたし、それが自分なら―‥なんて淡い期待もしてる。
けれど、その一方で疑問が浮かぶ。
好きな人がいながら何で公衆の面前でキスをしたのか?
そんなことすれば、嫌われてしまうのに‥。それが不思議だった。
『(誰にでも出来るのかな‥)』
そんな不安を抱きながら教室を出た。
外を見れば雨が降り出している。天気予報通りだ、なんて思って廊下を歩けば‥
「あはは!」
『(まだ、誰か居るんだ)』
自分のクラスから笑い声が聞こえた。
「仁王くんって面白いね」
『(ぇ‥?)』
その名前に反応して足を止めた。
そっと中を覗けば、仁王くんとあの子が仲良く話してる。それを見て、胸がチクリと痛んだ。
仁「そうかのぅ」
「‥私、仁王くんはてっきり神崎さんが好きなのかと思ってたんだ」
ドキッとした。自分の名前が出たことに。
仁「ふーん‥」
「だってキスまでしちゃうんだもん。ちょっと妬いたよ」
仁「そーかそーか」
「もうっ!でも、こうして一緒にいてくれるから安心してるの///」
そう言って赤らめる彼女に会話を聞いて納得した。二人は付き合っているんだ。
私は恋に‥自分の気持ちに気付いたことを後悔した。気付かなければ、こんなに苦しい思いをすることなかったのに‥と。
「でも、なんでキスするかなぁ」
仁「したかったから」
「何よそれ。私にすればいいじゃない」
仁「試しじゃよ」
『!!?』
ズキズキと痛い。
私は最初から遊ばれていただけなんだ‥全部、嘘だった。
ポツリ、
涙が零れ落ちる。
彼の言葉や仕草に期待した自分が愚かだ。“私なんか”相手にされる筈ないじゃない‥。その場から動けず涙を拭って顔を上げた。このまま立ってたら誰か来るかもしれない。
早く帰ろうと足を一歩前に出した時、不意に視線を感じて教室を見てしまったことを後悔。
仁王くんと目が合って一目散に走り出した私を追いかけて来た。
『はぁッ‥』
仁「神崎っ!」
テニス部である彼にかなうはずもなく、呆気なく手を捕まれてしまった。
『嫌ッ!!』
仁「あやめっ!」
『ッ!!?』
声を荒げながら名前を呼ばれ肩が震えた。
仁「‥‥」
『‥‥』
お互い無言のまま、掴まれたそこが熱い。
『は‥離、してッ』
仁「嫌じゃ」
『どうして‥?』
泣き顔だけは見られたくなくて俯いたまま。
仁「逃げるだろ」
当たり前だ。あんなこと言われて、今更普通に話すことなんて出来るはずない。
それに、私に関わる必要もないのにどうして?
疑問や分からないことばかりで頭の中がグチャグチャだ。
仁「なんで屋上に来ない」
『‥‥』
仁「他の女が来たのは?お前さんが遠慮したって聞いたが」
『‥‥』
仁「何とか言ったらどうなんじゃ?」
声は落ち着いていても掴まれた手は痛いくらい力が入っていた。
『なんで‥なんで仁王くんが怒ってるの?』
仁「‥‥」
『怒られることした?
私‥何もしてないじゃないッ』
腕に力を入れてもビクともしなくて、ただ、足掻くだけ。虚しくて、悲しくて、惨めで涙が止まらない。
『っ‥離、てよっ‥‥うっ‥ヒック』
仁「っ!?」
そっと手が離された隙に走り出す。捕まらないように、ひたすら校舎内を走ってげた箱に着けば靴を取り出そうとした。
けれど―‥
『!?』
横から伸びた手によって制されてしまった。振り返らなくても分かる。
『手、退けて下さい』
震える声を絞り出して言えば、手を退けてくれた。
それにホッとして手を伸ばしたら、いきなり肩を掴まれ向かい合わせに。両腕に挟まれて逃げ場がなくなった。
『何、するんですか‥』
仁「あやめと話がしたい」
『話す、ことなんかないです』
視線をそらしながら言う。
合わせてしまったら、負けてしまいそうだから‥。
仁「なんで屋上に来なかった」
『‥‥』
仁「ホントのことを言ってくれんか」
『さっきの子に、代わってと頼まれました‥』
仁「行きたくなかったのか?」
『‥‥断る理由がなかった』
あの日以来、お昼は食べなくなりお母さんに心配された。
教室で一人で食べるのも気が引けて、結衣ちゃんの所にも行けず。お昼を抜くようになかったくらいだ。断れるなら断りたかった。
そうしていたら、屋上でお母さんの作ってくれたお弁当を食べていたかもしれない。
でも、理由がなかったんだもん。
『もぅ、いいですか‥』
仁「こっち見んしゃい」
『‥‥』
仁「あやめ」
『見たくありません』
視線を合わせないようにそらす。
仁「なら、意地でもこっち向かせるだけじゃ」
『Σ!!?』
顎を掴まれ、また、キスをされた。触れるだけの優しいキスじゃなく、噛みつくような荒っぽいキス。
抵抗するように彼の肩を押したけど無意味に終わり。舌が唇に触れて必死に噤んで抵抗した。
仁「‥‥」
『はぁ‥っ』
やっと離れたと安心して空気を吸い込んだその瞬間を狙って再び唇が重なり舌を入れられてしまった。
『んんっ///!!』
歯列をなぞるように動き、舌同士が触れて逃げるように引いた私の舌は簡単に彼の舌に絡め取られた。
『んっ‥はぁッ、ヤダっ‥んんっ!!』
仁「はぁ‥ん‥」
嫌なのに体が上手く動かない。
どれくらいそうしていたか分からないけど、やっと解放されたと同時に私は手を振り上げていた。
パァーンッ!!
仁「ッ‥」
『はぁッ‥はぁ‥‥っそんなにからかって楽しい?!』
仁「‥‥」
『試しにキスするなんて、こんなっ!!』
最後まで言うこともなく、私は雨が振る外へと上履きのまま走り出した。
唇に残る感触を振り払うように、忘れてしまいたくて走った。
それでも、涙は止まることなく雨に溶け消えた。
