◈仮面の下の素顔
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†side:仁王†
昨日、彼女と帰ろうと教室に行ったら。女子が彼女に話しかけていたのを見た。邪魔するのも悪いと思い、出直そうと踵を返した時に自分の名前が出てきて、足を止めた。
言いがかりをつけに来たファンの女かと思い、中を覗いたら。
仁「(知らん女じゃな)」
見覚えがない女は俺と彼女の仲が気になったと話した。どう答えるのか気になった俺は様子を見ることに。表情変えずに淡々と答える彼女に感心。臆するコトもない堂々とした対応に女も驚いてた。
俺のコトを好きなのかと聞かれても“分からない”そうハッキリ告げていた。
仁「(分からない、か。俺はもう気づいちまったんじゃがなぁ・・)」
話し終えて出て来た彼女は俺に気づくなり呆れ顔だった。一緒に帰ろうと言えば嫌々ながらも了承してくれた。
名前呼びすれば疑問を持たれたが素直に返さない俺に“回りくどい” “話していて疲れる”そう言われた時、何かが芽生えた。愛想笑いも。合わせることも、しなくていいのかと。そう思ったら気が楽になっとったぜよ。同時にもっと早く、関わっていたらと言えば“ファンが怖いから逃げる”なんて言われて。流石に凹んだ。柳生がお似合いなんて思ってもいないコト言って誤魔化して・・。
仁「(俺じゃダメなんかのぅ・・)」
そう思った時。彼女の言葉を思い出した。
俺達はお互いをよく知らない。だからと言って、可能性はゼロじゃない。
気づいたら彼女の小さな手を握ってた。慌てる様を見ながら必死に手を振り払おうとする彼女。離さないように指を絡めれば、真っ赤になりながら動揺してた。
涙で潤んだ瞳。恥じらう仕草。弱々しい声。そんなの見せられたら我慢出来ん。キスして、告白までするとは自分でも思わなかったぜよ。
仁「(避けられると思ったが、案外気にしてないんかの?)」
朝早いと会長から聞いてたから、朝練次いでに彼女を待った。いつもならギリギリまで寝てるか。遅刻するか。なんだが・・。少しでも長く彼女と居たかった。
いつ出てくるかも分からない彼女を家の前で待つ。こんな行動するとは自分じゃないみたいで不思議な気分だ。
仁「(出てきた時、かなり驚いてたしな)」
避けるコトも、嫌がるコトもなく。一緒に登校出来た。部活中も機嫌良く見えたらしく柳生にからかわれたナリ。
仁「(まぁ、それも校舎に入ってから下がったがの・・)」
聞こえてきたのは彼女に対しての悪口。
俺と一緒にいたせいだ・・。何も知らんクセに好き勝手言ってる奴等がムカつく。じゃが、相手が俺だからだと思うとなにも言えん。俺が庇えば余計に反感を買うし、その矛先は彼女へと向く。それは避けたい。
仁「(俺が好きになるのは迷惑なのかもしれんな・・・)」
『仁王くん?』
仁「副会長さん」
『どうかしたんですか?今朝とは違ってしょんぼりして』
しょんぼり・・・そう見えるのかの?
というか、俺のコト心配してる?
じっと見つめてくる彼女が可愛く見えてしかたない。抱き締めてしまいたいが、嫌われたくないから我慢ナリ。
口を開こうとしたその時。周りの奴から冷やかしが飛んできた。
「副会長も顔に似合わず面食いだな!」
「仁王、物好きだなっ!」
「バカか?仁王が相手してるだけだろ?」
「あ?それもそうか、ワリィな!」
笑って去る奴等を殴り飛ばしたい衝動に駆られた。だが、それは意味がない。そもそも、俺が曖昧にしてきたツケが帰ってきただけだ。勝手なイメージだけで決めつけて。さも彼女が言い寄ってる様に決めつける。
彼女が悪い訳でもないのに・・・。
便乗するように女子のヒソヒソ話も聞こえる。
仁「・・・すまん。俺のせいで・・」
『なら、昨日のアレは忘れた方がいいですか?』
仁「それは・・・」
イヤだー・・。フラれるならまだしも。なかったことにはされたくない!
仁「忘れて欲しくないぜよ・・」
『分かりました。なら、謝らないで下さい。言いたい奴には言わせておけばいいんですよ』
仁「じゃが、辛くないか?」
『言われ慣れてますから平気です。
それに、周りがどうこう言う権利はないですよ。仁王くんが誰を想っていても。誰を好きでも。それは仁王くん自身のコトであり、他人が口を挟むことではありませんしね』
そうハッキリ告げた彼女の言葉に周りは罰が悪そうに顔を背けた。
真っ直ぐな瞳に曇りはない。彼女の言葉に凹んでた気分がゆっくり上がるのが分かるナリ。
どんなに周りが騒いでも彼女は俺を突き放しはしない。
今なら、会長が言っていた“あやめは優しい子だ”の意味が良く分かったぜよ。
仁「ありがとさん(微笑)」
『っ・・・いえ・・///』
仁「昼飯、屋上で食べないか?」
『構いませんよ。今日は天気も良いですからね。集まりもないですし』
仁「昼休みが楽しみじゃ」
『まだ早いですよ』
仁「そうじゃな」
本当に楽しみじゃ。彼女との時間が何よりも大切な時間だからな。
チャイムが鳴り、お互い教室に戻った。俺のクラスは教師の都合で自習。代わりの教師も早々に退室したため騒がない程度に話し出していた。
加「自習とは、退屈だ」
幸「生徒会長が言っていいのかい?」
加「会長とは言え、私も生徒だからな!」
幸「あははι」
マイペースな会長さんぜよ。幸村を困らせるとはの。侮れんナリ。
なんて思いながら、窓の外を見ていれば。比較的仲の良い男女が集まり、副会長さんとの関係を詰問された。
いつから仲良くなったのか?
一緒に登下校したのか?
お昼も一緒なのか?
しまいには、
副会長の何が良いのか?
無表情で怖くないか?
イケメンしか興味ないからターゲットにされたのか?
よくもまぁ、次から次へと出てくるもんじゃの。面白がってからかいたいだけなのがバレバレぜよ。
ハァ~、ほっといて欲しいナリ。
□■▣■▣■□
やっと昼休みがきた。周りの質問攻めも会長の一声で止んだのは助かったな。まぁ、黒いモン放ちながら、
加「あやめの何が気に食わないのだ?成績優秀で家庭的な普通の女子だろう?無表情だって人見知りからくるものであって感情がない訳でもないのに。随分と好き勝手言ってくれるな?(黒笑)」
そう言われて返す勇者は居なかったな・・。
敵に回すと怖い奴じゃ。
自販機で飲み物を二本買い、屋上へ。
キィィーー・・・
『いい加減にしてもらえませんか』
仁「(あやめの声。・・ーーー男?)」
ドアの隙間から覗くと、彼女と見知らぬ男がいる。
告白か? とも思ったが。告白する罰ゲームが流行っていると言っていたのを思い出した。
どうしたものか・・。割って入るのは不粋じゃが、迷惑そうな彼女をほおって置くのも嫌じゃし。
仁「(折角の二人きりの時間がなくなるのは嫌だしな)
・・・ーーなんだ、取り込み中だったか?」
『いえ、もう済みましたから』
「Σなっ!? 神崎ッ、俺は本気なんだ!!」
『なら、ハッキリ申し上げますが。
私は貴方を知りません。貴方も私を知らないのに何を好きだと言うんですか?』
正論じゃな。関り合いもないのに相手の何を好きだと言えるんか。俺も分からん。告白はされる方だが理解できん。
まぁ、俺も告白したらバッサリ切り捨てられるんだろうな。凹むかもしれんぜよ。
「ッ!! 結局、顔がよけりゃ誰でもいいんだな!噂通りだったワケだ」
『否定も肯定もしません。私が何を言おうと誰も聞きやしないと知っていますから。もういいですか?お昼休みが終わってしまうので』
仁「それは困るぜよ。腹減っとるのに飯抜きはキツいナリ。行くぞ」
『!?』
彼女の手を取り、陽当たりの良い場所へと移動。男は逃げるように消えた。
仁「お茶でよかったか?」
『・・・ありがとうございます。
すみません、待たせてしまって・・』
仁「構わんよ。今回は罰ゲームじゃなかったみたいじゃな」
『そうみたいですね。でもまぁ、不快なコトには変わりませんけど』
仁「副会長さんらしいの」
機嫌が悪いのか、少しムスッとしている。表情はあんまり変化はないけど、なんとなくナリ。
『はい、どうぞ』
仁「ありがとさん。美味そうじゃ。いただきます」
蓋を開ければ彩り良く盛り付けられたおかず。箸伸ばして食べれば、美味い。黙々と箸を進めていれば、隣から小さな笑い声が聞こえた。
仁「? なんじゃ?」
『いえ、お腹空いていたんだなぁと思って』
仁「!?」
『ご飯粒付いてましたよ』
仁「・・・すまん//ι」
ヤバイぜよ。カッコ悪い。しかも、ご飯粒を取った彼女はそのまま食べるし。無防備過ぎる。昨日のコト忘れとるんかのぅ。
『仁王くんにも子供っぽい所があったんですね』
仁「そりゃあ、あるだろう。まだガキじゃし」
『そうですね』
仁「あやめにはないんか?」
『私は・・・。そうですねぇ・・。一人が苦手な所ですかね』
仁「じゃあ、一人暮らしは寂しいだろう?」
『まぁ、心配性な兄が何かと連絡をくれますから。多少、気は紛れていますよ』
そうは言うが、寂しいんだろうな。強がってるだけで。
仁「俺ならずっと一緒に居てやるのにな」
『意外と彼女思いなんですね』
仁「一途じゃき。まぁ、頼られる男ではありたいからの」
『仁王くんの彼女になる方は幸せ者ですね』
仁「なんじゃ、あやめがなってくれるんじゃないのか?」
『好感度が下がりました』
仁「酷いぜよι 」
難しいのぅ・・。周りの女なら簡単に落ちるんじゃが。あやめはそうはいかん。どんな言葉を並べても届かないんじゃ意味がない。信頼がなけりゃ受け取っても貰えんしな。
仁「どうしたらお前さんに本気だと伝わるんかのぅ?」
『さぁ、分かりませんね』
仁「他人事じゃないんだがι」
『残念なことに私は恋したことがないんですよ。こんなんですから諦めていましたし、からかうような男子は嫌いでしたから』
仁「成る程な。なら、なんで柳生は対象外なんじゃ?」
俺が言うのもおかしいが。アイツ程女に優しい奴はいないだろう。紳士と言われるだけに。
『何故でしょうね。イイ人止まりなんですよねぇ。そもそも、私には勿体ないです』
仁「そうか?お似合いじゃと思うが」
『私、我が儘で嫉妬深い上に独占欲強いんですよ?束縛されたいなんて人居ないでしょう』
仁「意外じゃな。確かに束縛されるんは嫌だな。振り回されるんは俺らしくないからの」
『そうですね』
仁「だがな。恋人っていう肩書きが付いた時点で束縛みたいなモンじゃないか?」
『あ・・・確かに。他人でもなければ友達でもない。それよりも近い関係なら変わらないですね』
仁「だろ? 相手を傷つけるやり方じゃなければ束縛にならんのか。分からんが。
一つだけ確かなコトがあるぜよ」
『何ですか?』
仁「俺はあやめになら束縛されてもいい、と思ってる。それは確かじゃ」
相手に合わせるとか詐欺師と言われる俺らしくはないが。彼女の前ではただの男だ。素の自分ならそれも悪くないと思ってるナリ。
『物好きですね・・///』
仁「そうかもな」
『・・・嫌いじゃ、ないです(ボソッ』
仁「! 今、嫌いじゃないって言ったか?」
『言いましたよ///』
仁「・・ははっ!真っ赤ナリ!」
『なっ、笑わないで///!』
仁「すまんすまん!」
嗚呼、彼女はこんな風に照れたり、怒ったりするんじゃな。普通の女の子だ。
少しは意識してくれたんだろうか?
"分からない"から"嫌いじゃない"に変わった。なら後はーーー・・。
仁「絶対に好きと言わせちゃるき。覚悟しときんしゃい(微笑)」
『~~・・知りません///!』
◊◈◊◈◊◈◊◈◊◈◊
仁「あやめ? なに考えとるんじゃ?」
『雅治と付き合った経緯』
仁「なんだ、思い出か。それは語り合いたい所だが、部活があるぜよ」
『そうだったね。遅刻したら怒られちゃう』
ベッドから体を起こして言えば、優しく頬に触れる大きな手。気づけば唇は塞がれ、啄む様なキスを何度か繰り返して離れた。
仁「名残惜しぜよ」
『私も。だけど、今日は休日だし部活も午前中でしょう?お昼ごはん用意して待ってる』
仁「ああ」
こうして彼と過ごすようになって私の生活は変わったと思う。
二人分の食事と買い出し。スポーツマンの彼に合わせた料理。一番はコレだ。いつの間にか彼中心になった私の生活。
一人だった頃とは違い。安心出来て、幸せだ。
ギュッ、
『支度できた?』
仁「ん。あやめは今日は行かんのか?」
『今日は集まりないから行かない』
仁「残念ナリ」
『私も残念』
仁「帰ったら甘やかしちゃるき。イイコにしててな」
『ふふっ。はーい』
甘やかすと雅治は言うけど、いつもだと思う。背中から抱き締める大きな温もりに抱かれる度に彼に溺れていく。離れるコトが出来ない。束縛だ。
『雅治は私といて幸せ?』
仁「幸せ過ぎて怖いくらいぜよ」
『良かった』
仁「不安にさせたか?」
『ううん。雅治からの愛情はちゃんと感じてるよ。ただ、相変わらずモテるからいつか飽きられるかもと思うとコトは増えたかな』
私達が付き合ってるのはウチの生徒なら知っている事実ではあるのだが・・。相手が私だからなのか。雅治への告白はなくならないのだ。恋するのは分からなくもないのだけど、彼女としては不安材料でしかない。
仁「同じじゃな」
『何が?』
仁「俺も同じコト思っとった。告白される度にあやめを不安させてないか。他の安心させてくれる奴に心変わりしないか。毎日不安での。こうして傍にいられる時は一秒でも離れたくないんよ」
『だから、週末だけのお泊まりがほぼ毎日になったのね』
仁「あやめを一人占め出来るからな」
『そうだね。私も、雅治を一人占め出来るし一石二鳥だね』
普段はクールな雅治もウチに帰って来ると甘えてくれる。抱きついて離れないし、じゃれるようにキスしてくる。猫みたいで可愛い姿は私だけの特権だと思うと嬉しくなる。
朝ごはんを済ませて、雅治を見送る。
この瞬間がいつも寂しさを感じさせるけど、だからといって引き止めたい訳じゃない。雅治にとってテニスは大事なことだもん。私もテニスしている雅治を見るのが好きだ。寂しいけど、此処に帰って来るんだから大丈夫。
仁「じゃあ、行ってくる」
『ん。あ、ちょっと待って』
やっぱり、寂しいからおまじないしておこう。
襟元を掴み、引き寄せて唇を重ねた。薄い唇を啄み、離れる。驚いた雅治はほんのり頬を染めて笑ってた。
仁「イイコにしとるんじゃよ」
『うん。行ってらっしゃい』
手を振り、ドアが閉まるまでその背を見つめた。
『さて、雅治が帰るまでにやること済ませておかなきゃ』
髪を纏めて、エプロンをする。洗濯機を回して、掃除機をかけて。昼食の支度と動き回っていれば時間はあっという間だ。やることを終えて一息。カフェオレを淹れてまったりしていると。
『あーやっぱり降ったか』
天気予報ではお昼に雨マークが出てたから洗濯物を出さなくて正解だった。窓の外を眺めながらふと、雅治が傘を持っていないコトに気づく。
『置き傘してるなんて聞いてないしなぁ。迎えに行く・・・のは、面倒か』
騒がれるのは困るけど、雅治が濡れて帰って来るのも可哀想だし・・。誰かに傘借りれればいいんだけど。
『そう言えば。雅治がウチに来たのも雨の日だったっけ』
あの時は驚いた。びしょ濡れの雅治が雨宿りしてて、風邪引くと思って家にあげてんだよね。告白の返事もその時だったなぁ。懐かしい。
お昼休みを一緒に過ごすのが当たり前になってからは雅治が何かと私を助けてくれたんだよね。からかわなくなったかわりに手助けしてくれるようになったし。一緒にいる時間も長くて。気が付けば、私の隣にはいつも雅治がいた。
周りの冷やかしはなくならなかったけど。一緒にいるコトが大事に思えるようになってからは気にもならなくなったなぁ。
『・・・迎えに行こうかな』
会いたくなった。なんて、単純な自分に笑った。傘を持って外へ。雨音が響く外は人通りも少ない。休日とはいえ、天気も悪いからだろう。学校へと歩きながら雅治の驚く顔を思い浮かべて笑う。
いつだって私の頭の中は雅治のコトでいっぱいだ。こんなに想っているなんて本人は知らないだろうけどね。
私が想っているくらい、雅治も想っていればいいんだけどなぁ。こればかりは分からない。どんなに想っても足りない。触れていても、欲しがってしまう。
でも、満たされないくらいが丁度いいのかもしれない。だって、満たされてしまったら終わってしまいそうだから。
『(当たり前の中に大事なことがあるんだろうね)』
こうして迎えに行くのも大切な思い出になるだろう。一つ一つの日常が愛しい思い出になる。欲は尽きることはないけど、同時に相手への想いも募るばかりだね。
『私には勿体ない人だなぁ・・』
カッコ良すぎて隣にいるのが申し訳なく感じる時がある。まぁ、言えないけど。釣り合わないとか思っていたりすると何故か察する雅治が拗ねてしまうのだ。
『(まぁ、拗ねながらも抱き付いて離れないから可愛いんだけど)』
付き合ってみて分かるコトもある。
大人びた印象の彼だけど、意外なことに子供っぽいのだ。邪魔はしない程度に傍にいるし、まったりしてる時は必ず後ろに座り抱き付いてる。甘えただとは思わなかった。イメージないしね。
『あ、メールしとかなきゃ』
・・・ーーーー雨も悪くないな。
†side:仁王†
あやめの家を出て学校へと歩く。
いつもなら、彼女も一緒に行くことが多いが今日は一人。隣が寂しいナリ。
仁「(不安にさせてたとはの・・・)」
付き合ってると分かっていながら寄り付く女は後を絶たん。見せつけるようにくるし。
学校じゃ気にした素振りはしないから気付かんかったぜよ。
彼女と付き合うようになってから知ったコトがある。
会長が言ったように寂しがり屋だった。帰り際は特に。笑ってはいるが、玄関が閉まる直前に寂しげな顔を見た時は直ぐにでも抱き締めたくなった。とはいえ、一応はまだ学生じゃき同棲するわけにもいかんから、いつも後ろ髪引かれる思いだ。
一緒にいる時は甘えたナリ。お互いに離れないとばかりにくっついとる。何気ない話をしたり、テレビを見たり。デートはしないな。二人きりがいいから。依存しとるのかもしれんの。
仁「(あ~ヤバイな。あやめに会いたくなってきたぜよ)」
柳「おはようございます。仁王くん」
仁「おはようさん」
柳「遅刻せずに来れましたか。感心です。
これも、神崎さんのお陰ですね」
仁「そうじゃな。お陰で毎朝スッキリしとるよ」
柳「良いことです!」
俺が彼女の家に泊まっていると知っとる奴は少ない。知られれば副会長という立場が悪くなるからな。
柳「そういえば、予報では今日は雨が降るそうですよ」
仁「朝から降ってれば休みだったな」
残念ナリ。折角の二人きりの時間が減るのは嫌だ。だが、テニスを捨てられもしないんじゃがの。あやめがカッコいいと褒めてくれたから尚更だ。
「あ!仁王くんに柳生くん!今から部活?」
柳「はい」
「頑張ってね!」
柳「ありがとうございます」
仁「(流石は紳士。流すことなく対応するのぅ)」
知らん女からの言葉に笑って対応するパートナーに感心するぜよ。彼女がいないからなのか。大抵、一人でいたり部活のメンバー、特に柳生といる時に声を掛けてくる。面倒ではあるが、適当にあしらって彼女の元に行くのが当たり前になったぜよ。
柳「おや、おはようございます。幸村くん」
幸「おはよう。柳生、仁王」
仁「おはようさん」
いつもと変わらない部活の始まりじゃ。
部室に行けば、相変わらず朝早い真田が着替えを済ませとったぜよ。参謀も早いのぅ。暫くすればブン太とジャッカルが来た。しかし、これまた相変わらず遅刻する赤也はまだ来ないの。外周30か。増やされるか。毎度毎度、走るのが好きな奴じゃな。
仁「(まぁ、俺も少し前は走らされてばかりだったがの)」
彼女と知り合ってから毎日一緒に登校してるし。付き合ってからは泊まるコトも増えて起こしてもらえるしの。朝飯も用意してくれるし、昼も夜も彼女の手料理。幸せだ。
何よりも、エプロン姿の彼女が可愛いナリ。束ねた髪から覗く項がたまらん。つい、後ろから抱き締めてしまう。初めは危ないと注意されたが、やめない俺に諦めたのか今では当たり前の様に抱きついとる。
幸「仁王が惚気とか。意外だな(笑)」
仁「・・・・口に出しとらんはずじゃが」
幸「出てなかったよ」
仁「そうか・・・ι」
突っ込んだところで意味はないな。
相手は神の子だ。最早、不可能なんてないんじゃないか? 恐ろしいぜよ。
仁「(意外、か。そうかもしれんな。俺自身、こんなにも溺愛するとは思ってなかったからな)」
決め手だったのは。多分、あの日じゃな。
雨に濡れた俺を家に誘ってくれた日。
あの日に俺は彼女を可愛いと強く思うと同時に守りたいと。傍に居たいと思ったぜよ。
◊◈◊◈◊◈◊◈◊◈◊◈◊
その日もいつものように慣れない早起きをして、彼女の住むマンションの前で待ってた。
『おはよう、仁王くん』
仁「おはようさん。なんだ、眠そうだな」
『ぅん。生徒会の仕事で寝るの遅くなっちゃったから』
仁「夜更かしはお肌の敵ぜよ?」
『見た目にこだわりないから大丈夫です』
仁「プリッ。じゃが、あまり無理せんようにな。心配じゃき」
『ありがとう』
毎日のように彼女と過ごしているからか。いつの間にか敬語をやめて、普通に話すようになった。最近じゃ、笑ってくれもするナリ。近付いた距離感に嬉しい反面。もっと彼女の近くに居たいと思うようにもなったぜよ。
一つ満たされると次が欲しくなるんだから、人間の欲とは恐ろしいモンよ。親しくなれても恋人ではない。嫌われてはいないが、あくまでも友人レベル。欲深くあっても彼女に嫌われるようなコトはしたくないナリ。
仁「(とはいえ。傍にいるのに触れられないってのは辛いぜよ)」
『どうかしたの?』
仁「いや。あやめが好きすぎて我慢できないなぁ、と思っとっただけじゃよ」
『・・・よくサラッとそんな甘いセリフ言えますね///ι』
仁「素直に伝えとるだけぜよ」
『じゃあ、何を我慢してるんですか?』
仁「言ったら許可してくれるんか?」
『内容による』
仁「ずるいのぅ」
下手なこと言ったら嫌われそうじゃな。
さて、どこまでなら許してもらえるのか?
仁「ん~・・。迷うのぅ。でもまぁ、強いて言うならーー・・」
『何ですか?』
仁「早く俺を好きになって、彼女にしたい。じゃな。
他にもしたいことはあるが、彼女じゃなきゃ出来んしな」
『・・本当に物好きだね』
仁「可能性がゼロなら諦めて違う女を探すんじゃがなぁ」
なんて、心にもないコトを言う自分の幼稚さに笑えるの。
少しでも気を引きたくて意地悪を言っては彼女が冷めた返事を返すのがお決まりなんだが・・。返答がない。
仁「(しまった、怒らせたかι)」
気になって彼女を見れば、複雑そうな表情をしてた。
仁「あやめ?」
『仁王くんなら直ぐに見つかるんだろうね。違う女の子』
仁「どうかの・・」
やってしまった、そう思った頃には学校に着いていた。
仁「はぁ~・・・」
最後の最後で無言とはな。
あのあと、彼女が何か言うことはなかったぜよ。校舎に入れば、彼女は生徒会室。朝練のない俺は教室へと別れた。自分の席について項垂れたの言うまでもない。
仁「(難しいモンじゃな。あやめを落とすのは・・)」
近寄ってくる女なら簡単に落ちる。まぁ、そういった女は勝手にその気になっとるような奴じゃが。
あやめは違う。思わせ振りな態度はしない。だからと言って、自分からグイグイ来るような女でもない。ちゃんと相手を見てる。外側じゃなく、内側を。だから不安になるんじゃ。俺がどう思われてるか。ちゃんと俺の気持ちが届いてるのか。毎日不安になるぜよ。
仁「(確証が欲しいの・・・)」
俺は彼女の何なのか?
女々しい自分に溜め息しか出ないぜよ。
仁「(こんなに恋い焦がれるとは思ってなかったナリ)」
彼女の笑顔が見たい。
彼女の声が聞きたい。
彼女の気持ちが知りたい。
出来ることなら、
彼女に触れたい。
彼女に触れられたい。
彼女に愛されたい。
嗚呼ー・・狂おしい程に彼女に溺れてる。
どうしたら伝わる?
どうしたら手に入る?
どうしたら俺だけを想ってくれる?
どんなに自問しても答えは出るはずがない。彼女の気持ちは俺には分からん。それでも、自分だけと望むのは傲慢なのかのぅ。
仁「(欲深いな。彼氏でもないのに欲しがってばかりじゃ。情けないぜよ・・)」
?「おはよう、仁王。今日も早いな」
仁「おはようさん。会長も早いのぅ」
加「今日は日直だからな。
・・ーーで?朝から項垂れてどうかしたのか?」
仁「別に」
加「隠すことないだろう。あやめのコトだと分かりきっているんだから」
仁「プピーナ・・」
本当に情けないだろう、俺。
詐欺師と呼ばれとるのにバレすぎやせんか。会長ならまだいいが、幸村だったら最悪じゃ。
加「何を考えていたんだ?あやめも随分と仁王に気を許してるだろう。毎朝一緒に登校しているしな」
仁「俺が待ってるからだろう。ホントのところは迷惑かもしれん」
加「あやめの性格上、ホントに嫌ならハッキリ告げるだろう。もしくは、無視すればいいだけだし」
仁「それはそうじゃが・・」
加「はぁ~。あやめは案外、分かりやすいタイプだと思うぞ」
仁「・・・どこがだ?」
思い返してみたけど、全く分かりやすくないぜよ。
そりゃあ、会長は付き合いが長いし友人だから分かるだろうが・・俺には分からんナリ。
加「約束もなく、毎朝迎えに行くお前に合わせてるだろう」
仁「元々、早いんじゃないのか?今日も生徒会室行ったし」
加「あのなι 生徒会は部活じゃないぞ。服装検査がある日は早いが大抵は普通に登校してる」
仁「! じゃあ、なんで・・」
加「だから、お前に合わせているんだろう。朝練のある日ない日なんて知らないからな」
それもそうか。俺も朝練があろうがなかろうが毎朝同じ時間に行ってただけだし。彼女も何も言わずに出て来る。気にもしてなかった。それだけ浮かれてたのかもしれんな。
加「まぁ、あやめの方も気になることはあるようだ」
仁「なんじゃ?」
加「ふふっ。悪いことじゃないぞ。
朝練のない日くらいはゆっくり寝てたいんじゃないか、と気にしていた」
仁「・・・・」
加「いつものお前なら遅刻ギリギリまで寝てるだろう」
確かに。前の俺ならそうだった。
だが、彼女と知り合ってからは会いたい気持ちだけが強くて早起きも苦ではなかった。
加「気になるならちゃんと話したらどうだ?」
仁「そう出来たら苦労しないナリ」
加「素直じゃないからな、お前は(笑)」
そう、素直じゃない。駆け引きを楽しみたいってのもあるが。あやめには逆効果だ。
加「・・・(苦笑)」
仁「なんじゃ・・?」
加「いや。仁王でも、恋をするんだと思ってな」
仁「俺も普通の男子高校生なんじゃけど・・」
加「そうなんだが・・。
どちらかと言えば、好きになられる方が多いだろう? 自分から行かなくても勝手に寄ってくるしな。だから、恋してますっていう仁王は初めて見る!」
仁「・・・//ι」
自分でも変なのは分かってる。待ち伏せするし、休み時間は彼女を探し歩くし。ストーカーと言われても否定出来んぜよ。そう考えるとカッコ悪いのぅ。
加「ストーカーに近いがな(笑)」
仁「(ハッキリ言いよったな・・ι)」
『加奈子、おはよう』
加「おはよう、あやめ。相変わらず朝早いな」
『まぁね。予算報告書の作成始めないと間に合わなくなるから。柳君には昨日電話で伝えといたよ』
仁「・・・(ピクッ」
電話で? 参謀と?
加「(あ、妬いてる)
流石は副会長だな!頼りになる! ところで、今日も仁王と登校か?」
『? そうだけど?』
加「仲が良くてよろしい!友人として嬉しいが、連絡先の交換くらいしたらどうだ?」
仁「Σ!!」
『連絡先?』
加「相手が病欠だったらお互い困るだろう。連絡出来ないと待ちぼうけだ」
『あ~ぁ、それもそうか。じゃあ、仁王くんの連絡先教えて』
仁「・・・よかろう」
加「いかん!日誌を貰いに行って来なくては!また後でな、あやめ」
『はいはい』
忙しい会長じゃな。だが、そのお陰で彼女と連絡先の交換が出来たワケじゃが・・・カッコ悪い気もするの。会長のお膳立てだし。妬いたコトに気付かれたしな。
仁「(詐欺師の名が泣くぜよ・・)」
『本当に仲が良いね』
仁「会長か? まぁ、気が合うというか。他の女と違って気楽だからかのぅ」
『確かに』
仁「なんだ、妬いとるんか?」
『・・さぁね。ただ、お似合いだなぁって改めて思っただけ』
仁「!?」
そう言って去る彼女に掛ける言葉が見つからなかった。
授業が始まっても、俺の頭の中は去り際に言われた彼女の言葉がグルグルと巡っていた。
会長は喋らなきゃ美人と有名だが、性格がアレじゃからな。告白する男は勇者じゃ。一時期、付き合ってるのかと聞かれたコトがあった。他の女子と違って気楽に話せるし、煩くもない。仲が良いと言えば良いと思うが、あくまでも友人としてだ。特別な意味はない。
そもそも、会長相手に恋愛感情を抱いたコトがない。
それは俺の方だけで、会長は違った。告白された時はかなり驚いたからな。そんな素振りはないしいつも普通だった。だからかの。断っても変わりなくいられるのは。
仁「(改めてって、前から思ってたのか。だから信じられないんかのぅ・・)」
会長じゃなく自分が選ばれたのが不思議で。信じられなくて。分からないから信じて貰えないんじゃな。
見た目で選ばないが、会長とは仲が良いからな。そう思われても仕方ないのは分かってるつもりだ。じゃが、彼女にそう思われてるのは、何か、切ないぜよ。
仁「(どうしたらいいのかのぅ・・・)」
好きになって欲しい。俺だけのモノにしたい。俺だけ見ていて欲しい。そう思うのに・・彼女の心だけが分からない。こんなに彼女の一言で一喜一憂するってのに。
どれだけ好きにならせるつもりなんじゃ。
仁「(ズルいナリ・・)」
押してダメなら引いてみろ、とは言うが。そんなことして離れていかれたら意味がないぜよ。そもそも、彼女との時間が減るのは嫌じゃ。ただでさえ少ないのに自分から減らせる筈もない。
加「おーい、仁王ー。いつまでそうして突っ伏しているのだ?」
仁「なんじゃ・・」
幸「朝からずっと上の空じゃないか。何か心配事でもあるのかい?」
加「心配事じゃなくて、あやめの事を考えてるだけだろう」
幸「恋の病じゃ仕方ないね」
加「だが、授業は聞かなくてはダメだぞ」
仁「プリッ」
まったく、この二人には遠慮という気遣いはないのか。彼女の名前を出したとたんにクラスの空気が変わったぜよ。まぁ、この二人には勝てる気なんてないがの・・。
幸「仁王が恋しているのは初めて見るしね」
仁「一応、普通の男子高校生なんじゃけど(二度目ナリ)」
幸「そうだね。でも、一途に想い続けるタイプだとは思わなかったから。珍しくてね」
加「だな。柳なんかデータ取ってたしな!」
なんか、物珍しいのは分かるが。楽しんでるように見えるのは気のせいか?
仁「酷い奴らじゃのぅ。人がこんなに悩んでるのに楽しみよって・・」
加「そんなに悩むコトでもないだろう? あやめは自分が嫌いだから、お前が好きだと言うのを信じられないだけだ」
仁「・・・・」
加「まぁ、誰にでもあるコトだ。自分なんか、と言うのはな」
幸「神崎さんは少し鈍いと思うけどね」
加「確かに(笑)
それでも、気を許しているのは確かなコトだぞ。何も悩むことなんかない。普通に接していればあやめも気付く筈だ」
仁「だといいんじゃがな・・」
気長に待てば。そう思ったりもするが、焦るんじゃよ。柳生と笑い合ってるのを見ると。
いい人止まりとは言っていたが、気付いていないだけで可能性がないワケじゃない。柳生だけじゃない。彼女に告白する奴らもいる。だから、焦る。
仁「(本気は辛いのぅ・・)」
『仁王くん?』
仁「副会長さん・・!」
『具合でも悪いの?』
仁「大丈夫ナリ。どうしたんじゃ?」
『英語の辞書持ってたら貸して欲しいんだけど』
仁「あるぜよ。わー・・」
いかんいかん。忘れたんか?なんて聞いたらからかったみたいになるところだったぜよ。間一髪で飲み込んだってのに、冷やかしたいクラスメートが、
「副会長が忘れ物かよ!」
なんて笑いながら言いやがった。折角、彼女が来てくれたんに水差しやがって。
なんて内心腹立てる俺とは逆に幸村が口を開いた。
幸「珍しいね。神崎さんが忘れるなんて」
『忘れたというか。返ってこなかったんだけどねι』
幸「貸してたのかい?」
『うん。赤也に・・ι』
幸「困った奴だね(苦笑)」
仁「なんじゃ、赤也に貸してたんか」
『そう。なのに赤也ときたら。返すの忘れてた挙げ句に自分の家に忘れて来たなんて言うし・・ι』
仁「災難じゃな。ほれ、辞書ぜよ」
『ありがとう。加奈子に聞いたら英語の授業ないから持ってないって言われるし。仁王くんならあるかもって聞いたから。助かったよ』
仁「お役に立ててなによりじゃ」
お礼を言って笑う彼女に気分が良い。なにより、彼女の役に立てたことが嬉しいぜよ。
幸「ふーん」
仁「・・・プピーナι」
幸「神崎さんの前だとあんな顔するんだな」
仁「どんなだι 別に普通じゃろ?」
幸「その割にはニヤけてただろう?」
仁「プリッ・・ι」
そんなに分かりやすく出てただろうかι
接点が少ない俺には、些細なコトでも嬉しい。彼女から話し掛けてくれることがないからの。
「つーか、副会長のどこがいいんだよ?」
「仁王なら選びたい放題だろう。見た目なら会長の方がいいし」
仁「俺が誰を好きだろうと俺の勝手じゃろ?おまんらにどうこう言われる筋合いないと思うが?」
「・・だ、だってさ~。副会長って顔良きゃ誰でもいいって噂あるしι」
「柳生と付き合ってるとか、なぁι」
何が言いたいのか、分からん。
聞いてるだけでさっきまでの良い気分が台無しだ。いつの間にか女子まで便乗してるし。うるさいナリ。
チャイムが鳴って話しは中断。戻ってきた会長に。
加「また、随分と機嫌が悪いが何かあったのか?」
幸「実はねー・・」
加「成る程な。物好きと言うか。からかいたいだけなんだろうが、いい加減にすればいいのに」
幸「好奇心旺盛なんだよ」
仁「いらん世話じゃ」
加·幸「「(やれやれ・・ι)」」
授業そっちのけで突っ伏したのは言うまでもない。
