◈仮面の下の素顔
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
†side:仁王†
正直、女なんて面倒だと思っとった。
自分勝手で我が儘。この外見だからか、派手な女ばかり寄り付くし。ウザい。
テニスを優先させたい俺としてはお荷物でしかないぜよ。
だが、そんな俺が今、気になって仕方ない女が一人いる。
「副会長ってホント無表情だよな」
生徒会副会長の神崎 あやめは無表情で有名じゃ。会長曰く、人見知りらしく親しくない奴には表情が固くなるらしい。
柳生の隣によくいる女子。最初はそんな程度の認識だった。真面目そうな女。無愛想。関わりたくはない相手だったんじゃがの・・。事実、中学の時は一切関わっとらんぜよ。
関わってみて知ったこともある。
人見知りもその一つじゃが、素直で優しい。料理が美味い。普通の女だってコト。
嫌がらせを受けてると知った時は流石に驚いたナリ。そんな素振りを見せず、気にしないフリをしてた。強いのかと思ってたら違ってた。平気でいられる。そう言った俺に彼女が見せた表情に気づかされた。泣くのを堪える様な表情。あんなコトされて傷つかないワケなかった。からかわれるのが嫌いなんだからの。分かっていたのに、結局、俺もからかって怒られたぜよ。
あれから2日。気まずさもあって生徒会室には行ってない。お陰で毎日昼飯抜きぜよ。
?「なぁに、黄昏ているんだ?」
仁「会長か」
加「悩み事か?」
仁「いや。反省してただけぜよ」
加「あやめのコトか」
仁「・・・まぁな」
この会長は腹黒いだけじゃないから困る。やたら鋭いからな。思い当たるのがもう一人いるが、ソイツよりはまだマシじゃがの。
加「意外だな。仁王が反省する程気にかけるのは」
確かに。いつもなら大して気にもしなかったぜよ。詐欺師と言われとるからか、周りも流すからの。怒られて凹むとは思わんかった。
加「あやめの何が良かったんだ?」
仁「どういう意味かのぅ」
加「好きなんだろう?」
仁「さぁな、どうかの?」
加「素直じゃないなぁ~。認めない気か?」
仁「分からんモンは答えられんぜよ」
加「(鈍いのか?)
なら、私とあやめの違いは?」
仁「・・・・」
違い、か・・・。
加「こう言ってはなんだが。私はそこそこモテる。だが、お前にはフラれた」
仁「そんなコトもあったのぅ」
中学の頃に確かに会長から告白されたナリ。けど、その時は即座に断った。部活に集中したいのもあったが、そもそも会長が彼女ってのがピンと来なかった。一緒にいて気楽だとは思ってはいたがそういった感情は抱かなかったのぅ。友人が丁度いい。だから、フラれても変わらずにいられるんだろうがな。
加「別に不満はないぞ?私も彼氏としてではなく。友人としてだったのだと気づいたからな!」
仁「さよか」
加「だからこそ、気になるのだよ。お前が私の親友にちょっかいを出すのがな」
仁「自分でも分からん。副会長さんを見つけると話し掛けたくなるが、普通に声を掛けられん。だから、ついからかうようなコトを言ってしまうんじゃよ」
女子に自分から声を掛けるのはあまりないしな。あっちから勝手に来るし。
だが、副会長さんは違う。俺から行かないと機会はない。友人でもないから当たり前なんじゃが。怒らせた手前、どうしたらいいのか悩み中ナリ。
加「それで怒らせた挙げ句、生徒会室に来づらくなった、と」
仁「プリッ」
加「お前が反省しているのは分かった。なら、気にせず来たらいいだろう?」
仁「・・・・許してくれるかの」
加「・・あやめが心配している、と言ったらどうする?」
仁「は?」
なんで、副会長さんが俺の心配なんか・・?
加「お昼抜いてるんだろう?」
仁「いつものコトぜよ」
加「あやめが気にしていたぞ。自分が言い過ぎたから来れないんだとな。言われても気にせずに顔を出すと思ってたみたいでな。お前が来ないこの2日、お弁当を欠かさずに用意しているんだよ」
仁「!」
加「体調を崩さないか、心配もしていた。
ホントに優しい子だ」
誇らしげに言う会長。
俺は、驚きを表情に出さずに視線を移した。
意外ぜよ。あんなにハッキリ言ってたのにのぅ。俺のせいで嫌な思いさせたのに、弁当を用意してたとは・・・しかも、2日も。それだけで、嬉しいと思ってしまったナリ。
加「あやめはな。あー見えて寂しがり屋なんだぞ」
仁「意外ぜよ」
加「だろう? 普段があんな感じだからな。学校では見せないが、プライベートの可愛らしい一面は彼氏の特権だな!
家事も得意だから彼女にする男は幸せ者だろう!」
仁「そうじゃな」
彼氏、か。
彼女の隣に男がいると考えただけでモヤモヤするぜよ。これが、嫉妬なんかの?だとしたら俺は副会長さんが好きってコトか・・。
加「今日は来るのか?」
仁「いや、明日にするぜよ」
加「そうか。昼休みは屋上に居るんだろ?」
仁「ああ・・」
加「(あの詐欺師が恋とはな~。これは、友人として力にならねば!)
お、そろそろ授業だな。サボるなよ」
仁「プピーナ」
正直、サボりたいが。会長に言われたら従うしかない。後でなに言われるか分かったもんじゃないからな。
チャイムが鳴り、教室へ入ろうとした時。不意に副会長さんが視界に入り、そちらを見た。
仁「(隣にいるのは・・幸村か)」
仲良さげな二人にどす黒い感情が胸に広がっていくのが分かるぜよ。笑みを浮かべる副会長さんが遠く感じる。俺には笑ってくれんからの・・。
仁「(認めるしかないな・・)」
無表情で真面目。頼まれると断れず、料理が美味くて優しい。それが、俺の好きな女ナリ。
□■▣■□■▣
昼休みになれば俺は屋上へと向かう。
相変わらず、飽きもせずに寄って来る女にうんざりするぜよ。どうせなら、副会長さんがいいとか思ってる俺はどうかしてるだろうな。
仁「はぁ・・・」
モテるコトが嬉しいとか思ったコトは一度もない。むしろ、迷惑じゃ。俺の何を好きだと言えるのか分からん。見た目がよけりゃ誰だっていいクセに。付きまとわれるのも嫌になれば、居場所は決まってくる。屋上はもちろん。空き教室もそうだ。朝練がキツいから昼休みくらいゆっくりさせて欲しいぜよ。
『あ、いた』
女の声が聞こえる。無視してやろうかと思ったが、その声の主は間違いなく副会長さんの声だ。声のした方へと視線を移すと、困った様な表情をした彼女がいた。
仁「何か用か?」
嬉しさと緊張でそう言うのが精一杯。
副会長さんはというと。少し躊躇ってから隣に座った。肩が触れそうな位近いぜよ。ドキドキする俺を悟らせないように表情に出さず、言葉を待つ。
『この間は、ごめんなさい。少しキツく言い過ぎました』
仁「あれはからかうようなコトを言った俺が悪いんじゃし、副会長さんが謝ることないぜよ」
『・・・加奈子に仁王くんが屋上にいると教えて貰ったんです。お弁当、作って来たので』
仁「(今日も・・・)」
驚いた。流石に2日も来なければ諦めるだろう。作る手間を考えれば。来なければ無駄になるし。なのに、ちゃんと俺の分を用意してくれていたとは・・。
『迷惑かとも思ったんですが、一応、仁王くんの分も用意したので一緒に食べませんか?』
遠慮がちの副会長さんは不安そうに俺を見てる。流石に、マズイ。顔がニヤけそうぜよ。嬉しい。俺の為に用意された弁当も、俺のコトを気にしてくれる優しさも。堪らなく嬉しいナリ。
仁「迷惑なんて思っとらんよ。むしろ、有り難い」
『なら、良かった』
仁「!」
笑った・・? 小さくじゃが、笑ってくれた。
少しは仲良くなれたんかの。
渡された弁当を開ければ彩りよく詰められたおかずが現れた。本当に家庭的な女の子じゃな。それに、美味いし。
仁「面倒じゃないか?俺の分も詰めとるのは」
『一つ詰めるも二つ詰めるも変わらないですから。たまに、加奈子のも詰めてましたから苦ではないです。それに、私としても助かりますし・・』
仁「助かるんか?」
『休みの日に作り置きしとくんですが、一人じゃ処理しきれないので・・・』
仁「そうか」
一人暮らしとは言ってたが、寂しくはないんかの?
会長は副会長さんを寂しがり屋だと言ってたが、そんな風には見えん。だが、隠してるだけでホントの所は見せてないのかもしれんのぅ。
仁「副会長さんは優しいの」
『お節介なだけですよ』
仁「ククッ。てっきり俺は嫌われとると思ってたぜよ」
『分からないと言ったじゃないですか』
仁「分からんのに弁当用意してくれるんか?」
『仁王くんは、悪い人じゃないと思ったので・・。噂とは全く違う様に感じたから。
それに、柳生くんが仁王くんはよく朝食を抜くと言ってたので・・ちょっと心配で・・・』
仁「柳生も心配し過ぎぜよ。飯抜きなんか今に始まったコトじゃないのにのぅ」
『ハードな練習してるんですからちゃんとご飯は食べてください』
仁「見たコトあるんか?」
『生徒会室からよく見えるんですよ。後、真田くんの怒鳴り声も』
仁「そうだったんか」
見えてたとはの。だから、あんな風に言えたんじゃな。
不思議な感じナリ。
女がいるとうるさいだけだと思ってたんじゃが。副会長さんは違う。淡々と受け答えを返すだけじゃが、しつこくもなければ、うるさくもない。こうして一緒にいると心地よさを感じるくらいじゃ。
暫しの沈黙も穏やかに流れる。嫌じゃないナリ。
とん、
肩に重みを感じて、そちらを見れば副会長さんが寝てた。
仁「(疲れとるんかのぅ。忙しいのは分かるが・・・)
・・ーーー無防備ナリ」
まったく。男の前だってのに寝るとは・・。襲われても文句言えんぜよ。
ぐっすり眠る副会長さんを見つめながらそっと髪を撫でればさらりと流れ、ふわりと香る匂いに誘われる。彼女の隣に居られるのが自分だったらと思ってる俺は、恋をしとるんだろうな。
決定的だったのはなんだろうか?
まともに話したのはここ最近じゃし。話してみると冷めた反応で嫌われとると思ってたんじゃが。分からんて言われたの。ちゃんと俺のコトを知ろうとしてくれた。その優しさに惹かれたんだろうな。
仁「(俺は、お前さんの隣に居られるんかのぅ・・)」
俺の周りにいる女は自分中心のワガママな奴ばかりじゃ。相手の気持ちなんか考えない様な。そいつらにとって俺はただのお飾りだ。モテるんじゃない。自分の為のお飾りにしたいだけ。芸能人と付き合ってる、みたいな自慢が欲しいだけのな。ホントに好きになった訳じゃない。そんな奴に時間を割く位ならテニスしてる方がいいナリ。
じゃが、副会長さんは違った。
無表情でお堅いイメージだが、それは人見知りだからだと知った。料理上手で面倒見のいい女の子だった。だからこそ、もっと話したいと思ってはみたものの。からかうようなコトしか言えない自分に笑うしかなかったぜよ。
それでも、こうして心配してくれる副会長さんに嬉しいとか、久々に思ったナリ。
仁「好いとうよ、あやめ」
眠り姫の手を取り、キスをした。
必ず落として見せるぜよ。他の誰でもなく俺のモノになるように。俺には頼れるように。
無理をしないように、の。
チャイムが鳴っても起きる気配はなく。そのままサボったと彼女が気づいたのは後数十分後の事だった。
□■□■□■
『(はぁ~・・。なにしてんのよ、わたし)』
今日という1日が終わった放課後。教室に残った私は反省していた。
お昼を食べたまでは良かったんだけど。暖かさのあまり寝てしまった・・。しかも、仁王くんの肩を借りてι
起こしてくれればよかったのに、と言ったら、
仁「寝顔が可愛くて。副会長さんが近くて得した気分じゃ」
なんて、微笑みながら言われたら怒るに怒れなかった・・。顔がいいってズルい。
ドキドキするようなコトを簡単には言ってしまえるのだからイケメンは怖い。
『(ちょっと、ドキドキしてしまった///)』
私に不釣り合いな彼は噂に反して、優しくて包容力がある男の子でした。彼の彼女になる子は幸せだろうな。女子が騒ぐのも仕方ない。
休み時間に加奈子といるのを見た時に思った。並ぶ姿がお似合いだと・・・。元々、加奈子はモテる容姿ではある。性格がアレだから意外かもしれないけど。黙っていれば美人なのだ。だから思う。何で加奈子じゃなく私なんだろうと。
『(誰でもいいって感じではなかったんだけど・・・あれ?)』
・・ーーー何でモヤモヤするんだろう?
『(期待した? なんて、そんなワケないか・・・)』
不釣り合いなんだから。
私と彼が並ぶなんてない。そんなことになれば彼に想いを寄せる女子に恨まれてしまうι
『(でも・・・。一緒にいると、落ち着く・・)』
寂しさよりも穏やかな気持ちになれる。恋人同士ってこんな感じなのかなぁ。
家に帰れば一人で、寂しい。ご飯もテレビも。一人だと何も感じない。ただ、寂しさだけ。強がって、意地張って・・。
『(バカね・・・。私は、我慢ばかり・・)』
・・ーーー私は私が、キライだ。
「・・・あの、神崎さん」
『・・そうですけど、何か?』
「・・~~~ッ。に、におーくんと付き合ってるのッ!?」
『・・・・はぃ??』
「今日・・・2人が屋上から出てきたから・・」
あ~・・あれか。厄介だなぁ。幸い、彼女一人だし、派手なタイプではないけど。
『(何を言いふらされるか、分からない)
それを聞いてどうするんですか?』
「え?」
『付き合っていると聞かれましたね。私は彼と付き合ってはいませんよ』
「そ、そうなんだ!」
なんと分かりやすい反応を。安心しているんだろうけど、まだ気になるようだ。
こういったコトは面倒でしかない。さっさと切り上げないと。
『私に確認するよりも仁王くんに聞いたらいいのではないですか?』
「それは・・そう、なんだけど・・」
『例え、私が彼を好きだったとして。貴方に何の関係があるんですか?』
「え・・」
『私が誰を想っていようが関係ないでしょう?
彼が私を好きだとても言いましたか?』
「・・・・」
『貴方が確認すべきは彼の心でしょう』
「ッ・・・神崎さんは、どうなの・・」
私の気持ちはーーー・・。
『分かりません』
「へ?」
『仲がいいワケではないですから。とはいえ、好意を抱かないかと言われると分からない』
「じゃあ・・」
『そんな簡単なことではないでしょう。恋をするというのは(微笑)』
「(あ・・・)」
『お話は以上で宜しいですか?』
「・・・神崎さんて、すごいね」
『え?』
「私ね。仁王くんとは親しいワケじゃないんだ。ほら、仁王くんの周りには派手なタイプ多いでしょう? だからいつも遠くから見てるコトしか出来なくて・・・。
友達にも言ってないんだ。言ったら笑われそうで(苦笑)
だから、ちゃんと自分の意見を言える神崎さんが凄いと思ったの」
『凄くなんてないですよ。ただ、誰を想うかは本人の自由であり、他人が笑っていいものではないです。想うだけならタダでしょう?』
「そうだね。ごめんね、こんなことで引き留めちゃって」
『いえ』
「じゃあね」
『はい』
感じのイイコで良かった。
さて、私も帰ろう。今日は役員会はないし、加奈子は早々に帰ったしね。
『あ、柳生くんに話があったんだ。今日はテニス部オフだっけ。一緒に帰れば良かったなぁ。仕方ない、明日でいっか・・・・
・・ーーいつからいたんですか?』
教室を出て直ぐに足が止まった。壁に寄り掛かる人物がいたのだ。それだけなら、大して気にしないのだけど・・。つい先ほどまで議題に上がっていた人物本人となれば話しは別だ。なんと間の悪い。
頭を抱える私に仁王くんが口を開いた。
仁「一緒帰ろうと思っての。待ってたんじゃが、俺の名前が出たから様子を見てたんじゃよ」
『そうですか。というか、今まで待ってたんですか?』
仁「担任に手伝い頼まれての。まだ居って良かったぜよ。一緒帰らんか?」
『・・・・はぁ~。分かりました。ファンの子が怖いですが、待っていたなら仕方ないですね』
仁「イヤイヤじゃな。心配せんでもちゃんと守るぜよ」
『お願いします』
校内に生徒は少ないから大丈夫だろうけど、出れば見られるのは確実ですよね~・・。
それにしても、ずっと待っていたとは。はじめから声をかけていてくれてらいいのに。まぁ、断ったでしょうけど。
ただでさえ、気にしてる女子が居ると分かったばかりだと言うのに。本人が悪いわけではないんだけどね。
仁「迷惑だったか?」
『どうですかね。でも、仁王くんが悪いワケではないですから気にしないで下さい』
仁「・・さっきの言葉じゃが」
『?』
仁「副会長さんが俺を好きになるコトはあるんか?」
『黙秘します』
仁「なんだ、可能性はゼロなんか?」
『それを聞いてどうするんですか?私が仁王くんをどう思ってるかなんて私の勝手ですよ』
仁「そうじゃな。他の女なら気にせんが、お前さんにどう思われてるかは気になる」
気にしないで欲しい。私自身分からないのだから。
なんとも厄介な相手に興味を持たれてしまった。何を考えているのかさっぱり分からない。分かった所で素直に認めたりしないでしょうけど。
仁「しかし、副会長さんは素直じゃな」
『そうですか? というか、副会長はやめてください。学校の外なんですから』
仁「すまんな。なら、あやめでいいか?」
『・・・・お好きにどうぞ』
仁「ククッ。間がありすぎぜよ」
『~~・・・ι』
呼び捨てで来るとは思わなかったんだから仕方ないじゃない。男子に名前で呼ばれたことないから驚いたんだもの・・。
『何故、名前なんですか?』
仁「ん、嫌か?」
『普通呼ばないでしょう?』
仁「そうじゃな。仲良くても名前で女は呼ばんな」
やっぱり会話が面倒な人だなぁ。
答えが回りくどくて、疲れる。なんだってこんな会話の仕方なんだか。
仁「あやめ?」
『もういいです。回りくどくて話していても疲れるので』
仁「・・・・」
『こんな私でも素直だって言えます?』
仁「・・・すまん。俺は真っ直ぐに言葉を言えん。疲れるとは、初めて言われたぜよ。
それを言えるお前さんは素直な子ナリ」
そう微笑む仁王くんにドキッとしたのは秘密にしよう。
仁「やっぱりあやめといると落ち着くの」
『?』
仁「お前さんの前では詐欺師でいなくていいからな」
何が違うのだろうか??そもそも、私には詐欺師と呼ばれる理由さえ分からない。何も変わっていない気がする。
仁「不思議じゃな。中3の時同じクラスだったが、話したことなかったからの」
『そうですね』
その頃から仁王くんは注目の的だったからなぁ。
二連覇という偉業を成したテニス部のレギュラー。派手な髪色と不思議な魅力に女子は夢中だったし、彼を知らない生徒はいない。隙あらば彼に近付きたい女子はいっぱいいた。それこそ、下からも上からも、だ。
そんな人気者の仁王くんと同じクラスってだけで睨まれるのに仲良くなったりしたら・・・考えるだけで怖いわι
仁「もっと早く話してたら良かったぜよ」
『何故です?』
仁「あやめの傍は居心地が良いから」
『(意味が分からない・・)
そうなったとして、逃げますよ私。仁王くんファンが怖いので』
仁「ははっ、だよな・・。俺よりも柳生の方があやめにはお似合いじゃ」
笑って言ってはいるけど、少し寂しげに見えるのは罪悪感からだろうか?ちょっと言い方悪かったかも・・。
というか、何で直ぐに柳生くんが出てくるんだか。そんな風に周りからしたら見えるのかなぁ。話しやすい友人なんだけど。
なんて、一人内心で呟いていたら・・
ギュッ、
いきなり手を握られた。
『Σなッ///!?』
何するんですか!? と言いたいけれど、驚きと恥ずかしさから言葉がでない。自分の真っ赤な顔だと分かる程に熱い。
仁「手を繋ぎたくてな。まさか、そんなに照れるとは思わなかったぜよ」
『~~~ッ///』
清々しいまでにサラッとやってのけてしまう彼に恥ずかしさから手を振り払おうとブンブン振るも離れない。
『離してくださいッ///!!』
仁「イヤだ」
『こんなとこ誰かに見られたらっ///』
仁「俺は構わんよ」
『私が構うんです!大体、付き合ってもいないのに何で手を繋がなきゃならないんですか?!』
理解できない。好きでもないのに触れるなんて。誰でもいいなら私じゃない人にして欲しい!そう、思うのにーーー・・・。
『(何でこんなにドキドキしてるのよ///!)』
必死に離そうとする私に対して、仁王くんは離さないように指を絡めて握ってきた。所謂、恋人繋ぎというヤツだ。
『~~~・・・///!?』
仁「これなら、離せんーー・・・!!」
ダメだ。恥ずかしい。恥ずかしいのに、ドキドキとうるさい心臓の音が仁王くんにも聞こえてしまいそうで心配だ。抵抗も疲れるし、涙目になるし、繋いだ手の感触に震えるしで。もう、ダメ・・。
『はな、して・・・///』
仁「・・・・無理ぜよ」
『??』
その呟きに仁王くんを見つめれば。空いている方の手で、私の頬を撫でていた。
仁「そんな可愛い顔されたら。余計離せなくなるだろう?」
『////!!』
仁「離すつもりはないし。諦める気もないナリ」
近づく距離と、呟やかれた言葉に私の思考回路は考えるのをやめてしまった。
そして、違う感触に意識が集中する。
チュッ、
キスされたと分かった。分かってはいたけれど、突き飛ばすコトはないまま、そっと彼が離れた。同時に、私の胸の中に何かの感情が生まれてしまった。
仁「謝らんぜよ。俺は本気じゃ。あやめに本気で惚れとるんよ。だから、宣戦布告ナリ」
『~~~ッ////!!』
この男は分からない。いきなりの展開に付いていけない私は唇を手で覆い、握られた手を振り払うコトも、怒るコトも、しないで立ち尽くしていた。
だって、有り得ないでしょう?学校一のモテ男でファンまでいて、告白はしょっちゅうされてる。そんな人に惚れとるなんて言われるとは思わないもの。
そもそも、好意を抱かれること事態、初めてなのだから・・・。
仁「直ぐにとは言わん。じゃが、考えては欲しいナリ。俺のコト」
『・・・・』
仁「俺はあやめのコトばかり考えてとるからの」
『嘘じゃないって信じられるとでも?』
彼は詐欺師だ。真実さえ見えないのにどう信じればいいのよ。信じたところで私自身の気持ちも分からないままじゃ、先なんて見えやしない。
仁「直ぐにとは言わんって言ったろ?
俺の言葉は偽り混じりだからな。あやめが考えて、答えが出たら教えてくれ」
とりあえず仕方ないので頷いた。
『ところで、手は離して貰えないのでしょうか?』
仁「・・離したくないが、嫌なら仕方ないぜよ」
そう言ってほどかれた指はゆっくりと離れて、さっきまであった温もりが無くなった。自分の手を見つめながら、ふと、あの大きな手を思い出して思う。
仁「はぁ、寂しいとはのぅ・・・・(ポツリ」
『仁王くん?』
仁「何でもないぜよ。さて、帰るか」
そう言って歩き出した仁王くんの背を見つめた。
彼が何を思って私に惚れたと言ったのか分からない。つい最近、話すようになったばかりで。お互いよく知らないコトが多いのに。
こんなにも私は困惑しているのに、何であんな簡単に自分の気持ちに気付けるんだろう?
好きというモノ自体が分からないのに。
恋なんて、私は出来ないんだろうと思ってた。
自分のコトは分かってるつもりだ。だって、男子が苦手で、人見知りで、愛想笑いも出来ない。可愛げのない自分を好きになる物好きなんていないと思ってた。
まさか、学校一、二を争うモテ男に告白されるとは思っていなかっただけに、頭が真っ白ですよ。
『(一緒にいたら、分かるのかな・・。私の気持ちーー・・)』
仁「ん。どした?あやめ」
『ううん。何でもないですよ』
今はまだ、秘密にしよう。
仁王くんの表情が優しいコトも。
仁王くんが名前を呼ぶだけで胸が鳴るコトも。
仁王くんの隣にいると落ち着くコトも。
・・ーーーーー私だけの秘密だ。
◇◆◇◆◇◆◇◆
翌朝。案の定、昨日の帰り道。私達を見かけた生徒が居たらしく、あっという間に広がっていた。お陰で周りの視線が痛い・・。
加「なんだか、凄いことになってるな」
『そうね・・』
加「まさか、一緒に帰るほど仲良くなっていたとはなぁ」
『そうね・・』
加「・・? あやめ?どうかしたのか?」
『別に、どうもしないよ』
加「嘘を吐くな。私達は親友だろう? 何かあったのか?」
『・・・・・はぁ、ここだけの話よ』
私は今日あったある出来事を加奈子に話した。
ーーーーーー・・・
いつものように支度を済ませて家を出たら、
仁「おはようさん」
仁王くんがいた。
朝練があるから早いのは知っていたけど、何故私が住んでるマンションの前にいるのか不思議だった。
聞けば、いつもより早く目が覚めたから私を待っていたと笑って言った。有り難いような、そうでないような。複雑な気持ちのまま、一緒に登校した・・ーーーまでは良かった。
校門前にいた、朝練の女子生徒に見つかり。騒ぎ立てるように他の生徒にも見られ。教室に入れば、いつの間にか広まっていた・・。
冷やかしに妬みの嵐だ。教室にさえ居づらい。廊下を歩いていても聞こえてくるそれに気が滅入ってしまう。
「“副会長と仁王って接点あったっけ?”」
「“さぁ?でも、副会長ってテニス部と仲良いから狙ってたんじゃない”」
「“涼しい顔してあざといよね~”」
「“案外、ヤることヤってたりしてな!”」
「“副会長相手じゃな~。俺は無理だ(笑)”」
どうやら、私は周りの生徒からイケメン好きの遊び人の様に認識されているらしい。
ーーーーーー・・
加「成る程な。今までは相手が真面目だったから気にならなかったんだな。相手が仁王となれば話は別と言うわけだ」
『私より仁王くんに聞けばいいのに・・』
加「それは無理だ。アレは詐欺師だから。まともには答えんよ」
『はぁ~・・』
加「嫌だったのなら断ればよかっただろう?」
『家の前でいつ出てくるかも分からない中、待ってたのよ?無下には出来ないわ・・・』
加「あやめらしいな。
(何だかんだ言いながらも拒絶はしないんだよな。優しいから/苦笑)」
断る理由もないじゃない。行き先は同じなんだから。
それに、優しい微笑みで迎えられたら誰だって断らないでしょう?
登校中も大した会話はしてない。部活が大変とか、授業がどうとか。ありきたりな世間話をしただけだし。
だけど、仁王くんはずっと優しい微笑みを浮かべてた。つられるように私も穏やかな気持ちになれたんだよね。不思議な人だ。
チャイムが鳴り、お互い教室に戻って中に入ればコソコソと話す声が聞こえる。溜め息が出た。
柳「神崎さん、大丈夫ですか?」
『うん。言われ慣れてるから大丈夫だよ』
柳「仁王くんが気にしていました。自分のせいだと・・」
『優しいんだね、仁王くんって。
話したことなかったし、噂は聞いたけど悪くしか言われてなかったから、ちょっと意外』
遊び人の様な噂ばかりで、正直なところ、嫌悪感を抱いたくらいだ。
だけど、加奈子のお陰でその噂はデマだと知ることが出来た。見た目に反して、真面目で一途。詐欺師と言われてるのに誠実と言ったら矛盾だけど。普通の優しい男の子だった。
柳「彼は、自分を知られるのを好みません。必要以上に踏み込まれたくないからでしょうね。彼をよく知る女性は会長くらいです」
『仲良いもんね』
柳「ですが、私からすれば。神崎さんの方が彼は安心しているように思います」
『どうして、そう思うの?』
柳「入れ替わりを見抜いても貴方は騙されたままでいいと仰いました。その気遣いと思いやりに彼は詐欺師として負けてしまった様ですからね」
『? よく分からないです・・』
柳「クスッ。神崎さんはそのままでいいと言うことですよ」
聞き返そうと思ったら授業が始まってしまったから続きは聞けなかった。
分かった様な分からない様なでスッキリしない。
まぁ、一番親しい柳生くんが言うのだからそうなのかもしれない。
『(多分、私も同じだ・・)』
・・ーーー仁王くんと居ると安心している。
