◈仮面の下の素顔
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†side:仁王†
貰った弁当を有り難く頂きながら向かいの席で眠る副会長を見る。スヤスヤ眠る顔はあどけない。よほど疲れていたんじゃな。
弁当に箸を伸ばせば彩り綺麗に詰められたおかずをつまみ上げ食べる。
仁「美味い・・」
加「あやめは料理上手だからな!良き妻になるぞ!」
仁「そうかもしれんの。しかし、疲れているなら弁当くらい母親に作ってもらえばいいだろうに」
加「それは無理だな」
仁「?」
加「あやめは一人暮らしだからな」
仁「一人?」
加「両親は仕事で飛び回っていて、家に居ることが少なかったらしい。兄がいるが社会人になり別の場所で一人暮らしをしている。あやめが一人になったのは去年からだ」
仁「知らなかったナリ」
副会長さんの事はあまり知らん。あまり話さなかったし、関わることもなかった。
表情が乏しい女子生徒、くらいの情報だ。
加「あやめは人見知りなだけで、慣れると笑う普通の女の子だぞ」
仁「人見知りね・・」
加「まぁ、そのせいか。あまり男子とは関わらないからな。気付けばテニス部の奴等と仲良くなって、ファンの女子からは嫌みを言われる様になったが・・ι」
仁「そうなのか?」
加「柳や柳生はもちろん。真田や幸村、ジャッカルとも仲が良いから」
俺とブン太は同じクラスだったが、仲は良くも悪くもない。関わりがなかったからな。
しかし、ファンの女子から嫌味を言われていたとはの。それでも、変わらずにいるのはそれだけの信頼があるからなんだろうな。
加「なんだ? あやめが気になるのか?」
仁「まぁな」
加「ふふっ。詐欺師の仁王に興味を抱かせるとはあやめは凄いな!」
仁「面白い子じゃ。わざわざ手伝いしたってだけでクッキー貰ったしの。律儀な子だぜよ。騙したんにのぅ・・」
ペテンなんていつものこと。・・・・なんだが、罪悪感なんて抱いたのは初めてじゃ。
雑用なんて面倒を柳生と入れ代わることで回避するつもりでいた。実際、実行してみてバレてはいなかったし、上手くいったならそれで良かったはずなんじゃが・・。渡された包みが罪悪感を生んだナリ。
加「バレているぞ」
仁「・・・は??」
加「だから、入れ代わっていたのをあやめは気付いたんだ」
バレていた? 俺と柳生の入れ代わりが?
なんでバレた?
なんでバレたのにお礼だなんて寄越した?
一人、悶々と考えているとノックが聞こえて我に返る。
加「やぁ、柳生」
仁「よぉ」
柳「こんにちは。会長、仁王くん。 おや? 神崎さんはお休み中でしたか」
加「ぐっすりだ! あやめに用があったのか?」
柳「えぇ。次の授業、先生が急用の為。自習になったと。先程、言われましたので」
加「そうか。なら、チャイムが鳴ってもあやめが戻らなかったら、上手く言っておいてくれないか?」
仁「サボりか?」
加「たまにはいいだろう? 随分と疲れているようだからな」
柳「そうですね。分かりました。先生へは上手く言っておきます」
加「頼む。ああ、そうだ。さっきまであやめが入れ代わりに気付いていたと話していたんだ」
柳「・・・よろしいのですか?仁王くんにまでバラしてしまってι 神崎さんに黙っているように言われたのですが・・」
加「構わないだろう。もとより、ちゃんと約束を守らない仁王が悪い」
にこやかに笑ってはいるが、黒いもんが見えるぜよι
しかし、会長は騙せんと思ってはいたが。まさか、副会長さんにまで見破られるとは思っていなかった。
仁「何が決めてだったんかの?」
加「あやめ曰く、笑った顔が柳生とダブって見えたらしい。柳生は付き合いが長いからな。そのせいだろう」
仁「だったらなんでお礼なんか寄越したんじゃ?」
柳「約束を破った訳じゃないから、だそうです。仁王くんが雑用を素直にやらないのは知っている為か、来たということだけでも驚いた様ですよ。ですが、入れ代わりに気付いていても気付かないフリをしてくれたようで・・」
加「あやめなりに気遣ったんだろう。折角、手伝いに来たのが柳生だと分かっても指摘するには心苦しかったようだからな」
柳「申し訳ないです」
楽しげに笑う会長。気落ちする柳生。俺はというと、ぐっすり眠る副会長さんを眺めていた。
柳「騙されたままでいい、なんて言っていたんですよ」
仁「変わっとるの」
柳「優しい方なんですよ」
加「優し過ぎて損ばかりしているがな(笑)」
困ったものだ、なんて笑う会長。
柳生は先に教室へ。チャイムが鳴る頃には、会長も教室へと戻った。
生徒会室に二人きり。副会長さんは変わらずにぐっすり眠ったまま。起きる気配はないぜよ。
仁「(なんでバレたんかのぅ・・)」
俺たちの入れ代わりは完璧じゃ。テニス部以外で気付く奴はいない。特に、女子は珍しいくらいだ。柳生と親しいとは言え、俺の姿をした柳生に気付くとは。信じられんナリ。
スヤスヤ眠る副会長さんは可愛いと思う。
優しい風が彼女の髪を撫で、無防備なその髪に手を伸ばして、掬い上げるとさらりと流れてすり抜けた。
変な気分じゃ。女子なんて面倒で外見が良けりゃ誰でもいいだけ。そう思っていたからかのぅ。こんなにも彼女を知りたいと思う自分が自分じゃないみたいで変ナリ。
仁「(悪い気はせんな・・)」
■□■□■□
『ん・・・』
ゆっくり上体を起こして回りを確認した。
会長の席に加奈子は居らず、時計を見れば授業中。起こさずに授業をしているだろう親友に頭を抱えた。授業をサボってしまったコトへの反省をしていれば。
ククッ、
喉を鳴らし笑う人物は、向かいの席ではなく。何故か、私の隣に座って此方を見ていた。
仁「おはようさん」
『おはようございます。まだ居たんですか?』
仁「なんだ、居ちゃダメだったか?」
『起こしてくれても良いのでは?』
仁「会長が寝かしとけって言ったんじゃよ。俺は次いでにサボれるから居たナリ」
加奈子の気遣いに感謝したいけど、ずっと居たのが彼なのは何故か、いい気がしない。
仁「副会長さんでもサボるじゃな知らなかったぜよ」
『これが初めてなんですけどね』
ニヤニヤと笑う彼に溜め息が出る。
からかう気満々だ。男子のこういう所が嫌いだ。そうとは知らずに仁王くんは続ける。
仁「そういえば、俺たちの入れ代わりに気付いたらしいのぅ」
『(喋ったのね・・)』
仁「笑った顔が柳生に見えたらしいが。柳生のコト、好きなのか?」
『人として好きですよ。異性としては友人として好きです』
仁「恋ではないと?」
『そうですね』
仁「ふーん。お前さんは案外鈍いのかも知れんの」
『私が柳生くんを好きにならないとおかしいんですか?』
なんだか、段々、腹立ってきたんだけど。茶化して、からかって、何が楽しいのか分からない。分かりたくもない。不快だ。
仁「柳生との入れ代わりに自信があるんでな。バレた理由が納得いかないんよ」
『たまたま柳生くんだっただけじゃないですか。逆の入れ代わりなら気付けないでしょうし』
仁「・・・怒っとる?」
『そうですね。少し、不快です』
仁「素直じゃな」
そう言って笑う彼にまた、溜め息。
不快だと言われても笑っているあたり、悪いとは思ってないのだろう。彼は悪戯好きな面があるとは聞いているけど、他人の反応を見るのが好きなだけじゃないか。悪趣味な人と関わった自分にも溜め息が出た。
『(次の授業は出ないとね) 仁王くんは次もサボりですか?』
仁「次の授業は出るよ。小テストじゃき」
『そうですか』
仁「大丈夫なのか?」
『はい。寝たのでスッキリしてます』
仁「そうか」
それきり、続ける会話もなく。チャイムが鳴った。
ーーーーーーー・・・
授業が終われば、帰宅や部活へとそれぞれ向かう生徒たち。賑やかになる教室で私は帰り支度をする。勿論、帰宅する為ではなく、生徒会室へ向かうために。お昼休みに先生に頼まれた仕事を済ませなくては。
?「神崎さん」
『柳生くん。今から部活?』
柳「はい。体調はどうですか?」
『寝たから大丈夫。心配してくれてありがとう(微笑)』
柳「いえ。あまり無理をなさらないでください」
『はい』
柳「では、失礼します」
『頑張ってね』
去り行く背中を見つめながら、ふと、加奈子と仁王くんの言葉を思い出した。
"柳生が好きなのか?"
人として、友人としては好きだ。
優しいし、真面目だし、紳士と言われるだけあって女子なら誰もが惹かれると思う。私だって・・・。
とはいえ、彼を異性として意識したことはない。仲は良い方だけど、いい人止まり。柳生くんには私みたいな意地っ張りは似合わないもん。もったいないし。
鞄を肩に掛け、教室を出た。
加奈子のクラスを通り掛かろうとした時。教室から生徒が出て来た。
仁「副会長さんか。生徒会室に行くんか?」
『はい。仁王くんは部活でしょう。急がなくていいんですか? 柳生くんは先に行きましたよ』
仁「う~ん。なんか、気分が乗らなくてな」
気分が乗らないからサボる気なのか?
よくそれでレギュラーになれたなぁ。真田くんなら怒り狂いそうな理由だ。まぁ、初めてではないんだろうけど。なんというか、野良猫みたいな気ままな性格だよね。
仁「そうじゃ。この間の詫びに手伝いするぜよ」
『サボる理由にする気ですか?』
仁「気にしなさんな。行くぞ」
気にした方がいいと思うんだけど・・ι
先に行く背中は猫背で、尻尾がゆらゆら揺れてた。何となく可愛く見える。
「仁王~・・」
猫なで声で呼ばれた本人は表情を変えずに足を止めた。呼び止めた女子生徒は可愛らしい子。
珍しくもない。彼の回りにはいつもいるし、見慣れた光景だ。彼の特別になりたい女子は多く、アタックしている。本人は全くその気がない。話す女子生徒に適当な相槌の彼。その奇妙な光景を無視して先に行く。
『(まぁ、愛想笑いも出来ない私が言えたことでもないけど・・)』
仁「無視するコトないだろ?」
『わざわざ声かけたら私が睨まれるじゃないですか。怖いので無視しました』
仁「ホントに素直じゃな」
『そうですか・・』
素直って、褒めてるようには聞こえない。馬鹿にしてるのか。または、からかっているのか。どちらにしてもあまり気分の良いものではない。
『会長? 何してるんです?』
加「あやめ。いや、さっきな。家庭部の生徒から調理室の備品を頼みたいと言われたんだ」
『今から話し合いに?』
加「ああ。しかし・・。
いつからそんなに仲良くなったんだ?」
『・・・・・何をどう解釈したらそう見えるの?』
加「なんとなく!」
はぁ~ぁ・・・。頭が痛い。
仁「この間の詫びに手伝いに来たんよ」
加「そうか!それは助かる! 後輩二人が不在でな。 おっと、いかん。後は任せるぞ!」
ニヤニヤ笑いながら去る会長にイラッとしたのを隠し、生徒会室へと入る。
机の上には何やら大量の紙の山があった。
やっぱり、頭が痛い・・・。
『(そういえば・・) 休むと伝えなくていいのですか?』
仁「ああ。さっきメールしたぜよ」
『そうですか』
鞄を指定席に置いて、ホチキスと替えの芯を用意した。
『じゃあ、仁王くんにはホチキスでとめてもらっていいですか』
仁「了解ナリ」
紙の山から一枚ずつ取っては重ねを繰り返す。単純な作業ではあるけど数があるから面倒だ。
カサ・・・パチン・・・
無言の室内に響く紙の擦れる音とホチキスの音。黙々と作業をしていた仁王くんが口を開いた。
仁「なぁ、副会長さんや」
『なんですか?』
仁「好きな奴居るんか?」
『・・・・居ませんよ』
唐突な質問に一瞬手が止まったじゃないか。
仁「じゃあ、俺のコト嫌いか?」
完全に手が止まった。
いきなりの質問に不快感。だって、直接聞くことじゃないでしょう? そんな答えにくい質問の意図が分からない。また、からかいたいだけなんじゃないかと思うと不愉快だ。
『好きでも嫌いでもないですよ。そもそも、私は仁王くんを知りません。噂は聞きますが、嘘か本当か判断できませんし。
なので、分からない。が、答えです』
仁「なんじゃ、つまらんのぅ。これでもモテるんじゃが?」
『見かけで落ちる程単純に出来ていませんから』
仁「じゃあ、どんな男がタイプなんだ?」
『質問の意図が分かりません』
仁「好奇心ぜよ」
『そうですか』
なんか面倒だ。
からかいたいだけであんな質問して、内心笑ってるんだろう。ホントに悪趣味な人だ。
なのに、テニスをしている時は真っ直ぐでカッコいいとか。ズルいね。
仁「質問の答えは?」
『そうですね・・。甘えさせてくれる人、ですかね』
仁「意外じゃな。甘えたとはのぅ」
『ご満足頂けましたか?』
仁「やっぱり、お前さん。俺のコト嫌いだろ?」
『からかわれるのは嫌いですね』
止めていた手を動かして視線を外した。
『何故、そんなに私を気にしているんですか? 何処にでもいる普通の女子でしょう』
仁「入れ代わりに気づいたってのもあるが・・。なんでかの?興味がわいた」
それは、困る。彼に関われば絶っっっ対!!ファンの女子に目を付けられる。それだけは嫌だ。
『私なんかよりも周りに女子ならいくらでも居るじゃないですか』
仁「あんな女どもめんどくさいナリ。化粧や香水がキツいし、纏わりつかれるのもキモいぜよ」
『・・・・・』
なんでこの人がモテ男なんだろう?
そんなコト思いながら適当にあしらってたんだと思うと良い男とは言えないなぁ。
だからと言って、直接言ったら泣かすだけだし・・。適当にあしらうのが最善の選択なのかもしれない。
仁「なんだ? 幻滅したか?」
『別に。逆の立場なら私も同じ選択をしたでしょうから』
仁「・・・・」
それから、ぱたりと会話がない。
黙々と作業を進められるから私としては助かる。あのまま続けたら余計なコト言いそうだし、何よりも、彼の好奇心をこれ以上煽る様な真似はしたくない。
『これで最後です』
重ねた紙の束を渡すと、何故か、手首を掴まれた。流石に驚くよね。うん。
『あの、離してもらえませんか?』
仁「・・・俺と付き合ってみんか?」
『・・・・・・・・・はい??』
あまりにも唐突に言われたもんだから思考回路が一瞬停まってしまったよ。
いきなり意味が分からない。からかいたいだけだとしても、これはタチが悪いだろう。
なんか、ムカついてきた。
仁「お前さんなら楽しめーー・・・・副会長さん?」
見下ろす彼の顔はやっぱり騒がれるだけあって綺麗でカッコいい。しかし、今の私には通用しない。彼の頬に手を伸ばして。
頬をツネってやった
仁「・・・・痛いナリ」
『そうでしょうね』
机に突っ伏して頬を擦る彼を尻目に最後のホチキスをとめて束ねた。
仁「そんなに嫌か?」
『好きでもないのに付き合う方がおかしいと思いますけど』
仁「付き合ってみたら好きになるかもしれんよ?」
『どうして私なんですか?仁王くんなら選び放題でしょう。言いましたよね? からかわれるのは嫌いだと』
仁「本気ならいいのか?」
『お断りです』
仁「つれないのぅ。優しくするぜよ」
頬杖しながら微笑む仁王くんに溜め息が出た。
どこまでが本気なのか全く分からない。そもそもなんで私なんだか。誰でもいいワケではないんだろうけど。私のようなタイプは多くいる。そんなに珍しくもない。寧ろ、可愛らしい子だっているくらいだ。
何を気に入られたのか検討もつかない。
『自分を安く売る様な真似はしない方がいいですよ』
仁「・・・・」
『折角のイケメンが台無しです』
仁「ほぉ、副会長さんでも俺をイケメンだと思ってたとはの。どこがイケメンなんじゃ?」
『どこがって・・・』
人並みの感性はあるつもりだけど。どこが?と聞かれると・・・。どう答えたものか。
『イケメンは関係なくてもいいですか?』
仁「よかよ。(どんなコト言うか。予想出来んな)」
『外見は勿論、声も魅力的ですよね』
仁「そうか?」
『銀髪も似合っていますし、尻尾が可愛いです』
仁「尻尾?」
『結ってる髪がゆらゆらしていたので可愛く見えたんですよ。
後は、一見チャラそうだけどテニスをしている時は真っ直ぐでカッコいいですよね』
仁「・・・・・」
『それからー・・・仁王くん?』
あれ? 何故か、机に突っ伏してしまっている。
首を傾げていると会長が戻って来た。
加「ん?仁王はどうしたんだ?」
『さぁ? コレ、先生に持っていくね』
加「ああ」
生徒会室を出て職員室へ向かう。
†side:仁王†
加「で? どうしたんだ?ペテン師と名高い仁王がポーカーフェイスも忘れて赤面なんてして」
仁「しとらん・・///」
加「お耳が真っ赤だぞ?」
仁「・・・・///」
加「珍しいコトもあるものだな。仁王が照れるとは」
仁「プリッ」
俺だってこんな照れるとは思ってなかったぜよ。まさか、あんな風に言われるとは・・・。素直だとは思っていたが、あそこまでとは予想外ナリ。
仁「副会長さんは素直な子じゃな・・・」
加「そうだな。それがあやめのいい所だ。優しいし、面倒見もいい。
まぁ、意地っ張りなのが短所だな」
仁「意地っ張り?」
加「あまり頼らないんだ。自分が頼まれたコトは一人でやる、とな。なんでだ?と聞いたら。前に一度、男子に頼んだらお前が頼まれたコトなんだか自分でやれよ。と言われたらしい。以来、頼むコトが出来ないみたいでな」
仁「ほぉ~。それで、ウチのメンバーが頼りやすいワケはなんじゃ?」
加「頼っていないぞ?」
仁「は?」
加「あやめがああいう奴だから無視できないんだろう。お前や丸井以外は紳士的だからな」
仁「ふーん・・」
なんか、面白くないぜよ。
別に頼って欲しいとかではない。雑用なんて面倒だからな。ただ、彼女といるのは心地いいナリ。
飾らず、ベタベタしても来ない。素直でさっぱりした性格だからかの。一緒にいてもいいと思えるのは。
加「惚れたのか?」
仁「どうかのぅ。一緒にいて気楽だとは思っているが・・惚れたかと聞かれると、まだかの」
加「なんだ、可能性はあるのか」
仁「なきにしもあらずナリ」
加「意外だな。あの手のタイプは興味ないのかと思っていたぞ」
仁「副会長さん限定ぜよ」
正直な所。地味で目立たないタイプは話しかけてくるコトもないから分からん。俺の周りに寄る女子が怖いからかもしれんがな。
副会長さんもそうだ。俺が興味があると言ったら迷惑そうな表情をしてたからな。
嫌われてるワケでも好かれてもいないとはっきり言われた時は流石に驚いたぜよ。絶対、嫌われていると思っていたからな。
加「あやめも面倒な男に興味を持たれたもんだな(微笑)」
仁「迷惑そうだったがな・・」
加「なんだ? 意外に凹んでるのか?」
仁「別に。そんなんじゃないぜよ」
凹んではいない、と思う。
別に嫌われていようが気にしない。噂のせいもあってあまり良い印象がないだろうからな。
セフレが何人もいるとか。泣かした女は数知れずとか。ヤったら捨てるとか。あることないこと言われとるから仕方ない。
加「(なんとも面白いな! 仁王が女子に興味を抱くとは。これは、もしかすると・・もしかするかもしれないぞ!)」
カチャ、
『戻りました・・・』
加「どうしたんだ?そんなに疲れて」
『疲れた・・・。赤也と舞花に捕まったのよ』
仁「赤也と知り合いだったのか?」
加「舞花と付き合ってるのが切原なんだ」
仁「それは知っとるぜよ。副会長さんとの接点なんてあったか?」
赤也の彼女のコトはよく聞いてる。生徒会役員は顔が知られとるからな。特に、赤也の彼女は男子の注目の的にもなっとるし。俺は興味がないナリ。
俺の興味は副会長さんに向いとるぜよ。だからこそ気になった。赤也と名前で呼ぶ程の関係に。
加「二人がケンカをする度にあやめを頼るんだよ(苦笑)
可愛い後輩だから無下にも出来ないらしい」
『仕方ないでしょう。可愛い後輩なんだもん』
加「またケンカしたのか?」
『違う。舞花がラブレター貰ったらしくてソレを見つけた赤也がヤキモチ焼いてケンカになりそうだった所に私が通りかかって捕まったのよ・・』
加「独占欲の塊だな。というか、切原は部活はいいのか?」
『部活を忘れてケンカしようとしてたみたいよ。慌てて行った』
仁「赤也らしいのぅ」
今頃、真田からキツいお説教されとるだろうな。
仁「赤也は名前なんじゃな」
『本人の希望です』
加「気に入ってるからだろう(笑)」
『可愛い後輩だからね』
仁「可愛い後輩か・・」
分からんでもない。素直で人懐っこいヤツだからな。この感じだと、赤也とも仲がいいんだろうな・・。
仁「(なんか、面白くないぜよ)」
加「(あからさまに拗ねてるなι あやめは気付いていないが。
しかし。仁王は妬いてると分かっているんだろうか?)」
『(・・・・気のせいかなぁ。仁王くん機嫌悪い様に見えるんだけど?)
あ、図書室行くの忘れてた』
加「そう言えば、新しい書籍のリストだったか」
『そう。要望があったから先生と話す約束だったの忘れてた。
それと図書室でお手伝いしてくる』
加「了解した。なら、仁王もお手伝いしてこい」
仁「分かったぜよ」
『(まだ手伝わせる気ねι)』
立ち上がり。副会長さんと並んで図書室へ向かう。
『すみません。余計に手伝ってもらって』
仁「そのつもりだから気にしなさんな。遠慮はいらんぜよ」
『・・・・ありがとうございます』
今の間はなんだι
意外なのは分かるが、俺ってそんなに頼りにくいだろうか?
どうも遠慮がちじゃな。仕方ないか。俺みたいな男は嫌いだろうからな。
「あ、仁王~vV」
途中、呼び声に足を止めた俺とは逆に先に進む彼女の背を見つめた。
「あれ副会長だよね? 仁王、仲良かったっけ?」
仁「会長の手伝いしとるんじゃよ」
「へ~。副会長って暗くない?なに考えてるか分からないよね~。表情ないしさ」
仁「・・悪いが暇じゃないんでな」
それだけ言って彼女の後を追った。
■□■□■□
私は、仁王くんを知らない。
彼がどんな性格で、どんな表情を見せるのか。遠目から見ただけの彼しか私は知らなかった。一生関わらずに終わると思っていただけに今の状況が奇跡にも似ている気さえする。それだけ、彼は遠い人だった。
『(それがまさか、一緒に本の整理をしているとは・・)
何が起こるか分からないなぁ・・』
仁「何が?」
『人生』
仁「生きてりゃ色々あるぜよ」
『なんだか、悟った様な言い方ですね。同い年ですか?』
仁「別に悟ってなんかないぜよ。
ただ、何も起こらない生き方はつまらん。良くも悪くも何かは起こる」
『そうですね』
良くも悪くも、か。何もないよりはいいだろうけど、ありすぎても困るだろうなぁ。贅沢な悩みか。
仁「副会長さんにとってはどうなんかのぅ?」
『わたし?』
仁「俺と関わるのはどっちなのかと思っての」
どっち。・・・どっちだろう?
良いコトなのか、悪いコトなのか。
良いコトを上げるなら?
噂は当てにならないと分かった。遊び人みたいに言われているのはデマだったようで派手な見た目から言われるみたい。話してみると普通の男の子で少し大人びてるだけだった。
悪いコトを上げるなら?
からかうのが好き。相手の反応を見て楽しむ辺り悪趣味だ。まだ、知られてはいないけど。彼のファンに目をつけられる可能性がありそうで怖い。
結果、現段階ではー・・・
『どちらとも言えない、ですね』
仁「また曖昧じゃな」
『そうですね。仁王くんのファンなら、かなり嬉しい状況なんでしょうけど』
仁「ファンの女どもには興味ないぜよ」
『そんなに悪い子ばかりですか?中には気の合う子もいるのでは?』
仁「可愛いだけの女の何がいいんじゃ?」
『さぁ?生憎、男ではないので分かりません。
なら、どんな子ならいいんですか?』
仁「ん?なんだ、俺に興味持ったのか?」
『失言でした』
ニヤニヤと笑いだした仁王くんに"しまった!"と思い訂正してその場を離れた。
別に興味があるワケではなく、なんとなく話の流れで聞いてしまっただけだ。綺麗な子も可愛い子もダメならどんな子ならいいのかと、気になったんだけど・・・好奇心です。
自分から種を蒔きに行ってどうするのよ・・・。
『(あ・・・・届かないι)』
背伸びしても届かない場所とは・・ι
踏み台あったかな?
キョロキョロしていたら、
仁「どこだ?」
『あそこに・・』
仁「此処な。まだあるんか?」
『後、少しかな』
仁「なら、早く終わらせるぜよ」
『はい・・』
あれ? あれ~・・ι?
何、何なの?なんで・・・なんで、ドキドキするの?
しかも、心なしか頬が熱い様な・・・///
『(見た目だけじゃないのね///)』
こんな雑用なんて嫌いなクセに真面目にやってるし。私が届かないとさりげなく気にかけてくれるとは・・。意外と紳士なのかも?だからと言って、そう簡単にトキメクとは思わなかった。だって、柳生くんとも図書室でのお手伝いはしたことあるけど、トキメキはなかったし・・・。
『(あんなこと言われたせいで変に意識してるだけね)』
付き合ってみないか、なんて。
あんなこと初めて言われた。まったく、口が上手いと言うか、口説くのが上手いと言うか。興味を持たれただけで何故、あんなことが言えるのか・・・分からないわ。
何気なく見た窓の外。仲良く下校する男女の姿が目に入った。
笑い合いながら寄り添う姿がなんだか、羨ましく見える。頼れる彼氏が居たら、寂しさも埋められるのかなぁ。
「あの、神崎さん」
『? どちら様ですか?』
声をかけてきたのは見知らぬ男子生徒。
見覚えがないから学年違いだとは思うけど。
「三年の鹿嶋なんだけど・・」
『鹿嶋先輩? 私に何か?』
「その、さ・・・・///
・・・俺と、付き合って下さい!」
・・・ーーーはぃ?
「ずっと気になってたんだ///」
『・・・・』
「いきなりでごめんι 俺のコトは付き合って知ってもらえればいいしさ!」
・・ーーー呆れた。
心底、どうでもいい。人の良さそうな顔して性格は良くないとわね。
『"また"ですか・・』
「え?」
『後ろにお仲間が見えてますよ』
「!?」
『先輩で三度目です。この手の嫌がらせは・・』
何が楽しいのか。無表情で有名のせいなのか。罰ゲームで私に告白してくる男子はこれで三度目だ。
だから嫌いなんだ。からかいたいだけの男子って。いい加減にしてもらいたい。
「なぁんだ。バレてんのかよ。つまんねーな」
『(ウザい・・)』
「折角、告白してやってんのに何その反応。可愛くねー女」
『・・・・』
止めていた手を動かそうとしたら、掴まれてしまった。今回の相手はしつこそうだ。
『用はお済みですよね?』
「つーか、そんな無表情でよくあのテニス部レギュラーを手玉に取ったな」
『・・どういう意味ですか』
「有名じゃん。無表情の副会長はテニス部のイケメン好きだってな。なぁ、あのお堅い真田や柳生をどうやって落としたんだよ?」
嗚呼、周りから見たら私ってそう見えるのか・・。
少し気落ちして俯いていれば、掴まれていた手が離されて、代わりに仁王くんが先輩の手を掴んでた。
「に、仁王・・ι」
仁「何しとん?」
「な、なんでもねーよι」
そそくさと逃げるように去っていく先輩とその仲間に呆けてしまった。
『ありがとうございます。助かりました』
仁「構わんよ。三度目って言っとったが?」
『何が面白いか、あの手の罰ゲームが流行ってるみたいですよ』
仁「知らんかったナリ」
『知っていたのかと思いましたけど、違ったんですね』
てっきり、面白半分だと思ってた。
仁「罰ゲームに告白するなんざ、最低だろ? そんなコトすると思われるとは心外ナリ」
『・・すみませんでした』
詐欺師なんて呼ばれてるから、そういうコトもするのかと・・・。
一応、美学があるのか。意外だ。
『これで終わりです』
仁「ん。お疲れさん」
『ありがとうございます。助かりました』
仁「(笑ってはもらえんか・・)
しかし、あんなことがあったのによく平気でいられるな」
『・・・平気に、見えますか』
仁「・・!?」
『気にしていないワケではないですよ。不快であることには変わりないですから・・』
泣きたくなるコトもあった。
今更の話なんだよ。中学の時にもあったから。生徒会役員という肩書きで彼等と関わるのをよく思わない生徒もいる。
その気持ちが分からないでもない。地味で普通の私が肩書きなくして彼等と関わるコトはなかっただろうから。だけど、大人しいタイプの子からもよく思われてはいないし・・。
妬みだと分かってはいても辛い時だってある。でも、可奈子がいつも一緒にいてくれたから、楽になったんだよね。気にすることはないと。誰も悪くないと。誰と関わるかは本人の自由なのだから、と。
その言葉に救われた。
生徒会役員として認められるようになってからは女子からの妬みは減った。けど、気が付けば上手く笑えなくなっている自分がいた。人見知りも手伝って、私はあまり親しいワケじゃない相手には私の表情筋は硬直してしまうらしい。お陰で色目を使ってるなんて言われるようになってしまった。気にしてはいない。するだけ無駄だから。
仁「意外だな。涼しい顔で流してると思ってたぜよ」
『そうですか。私はそんなに、強くはないですけどね』
仁「そら、すまんのぅ。印象だけでは分からんモンじゃ」
『そうですね。印象や噂は当てになりませんね』
仁「だが、それが本当の俺を隠す。嘘も本当も真実は藪の中ってな」
『本当の、自分・・』
他人が付けた勝手な印象。重ねれば重ねる程に自分という存在を作り上げる。知らずに本人がその通りにハマってしまう。
私が、そうであるように・・・。
仁「本当の副会長さんはどんなんなのか、気になるぜよ」
『簡単に教える程、安くはないですよ』
仁「(挑発的じゃな。そんなコト言われると、益々、)
・・ーー知りたくなるぜよ」
『別の方にしてください』
変だ。自分じゃないみたい。苦手な筈なのに、ドキドキしてる。
こんな自分は知らない。これが恋のだと言うのなら、秘めておこう誰にも知られないように。
◆◇◆◇◆◇◆◇
あれから。仁王くんは私に声をかけるようになった。別にそれはいいんだけど・・・。
荷物を運んでいれば・・・
仁「なんだか、重そうじゃな。副会長さんは力持ちやのぅ」
掲示板の貼り紙を変えてれば・・・
仁「もうちょっとが届かんのか。可哀想じゃのぅ」
・・ーーーと、まぁ、冷やかし紛いの言葉にイライラしながらも流す毎日。何がしたいのか、ただ、冷やかしたいだけなのか。分からない。
ほら、今日も来たーー・・・。
仁「なんだ、また運んでるのか。宅配業でも始めたんか?」
クスクス笑いながら言った。
わざわざ、私を見つけては冷やかしに来るんだから暇なんだろう。だとしても、今は余裕がないんだよ。
いつものように先生に頼まれて仕方なく運んでる私に周りの女子から出た言葉は、
「副会長さんって力持ちよね~。私には無理だわ~」
出所は仁王くんなのは確かだ。彼に言われた時、近くにいたんだろう。彼が余計なコトを言わなければこんなにイライラするコトもなかったのに・・・。
『いい加減にしてもらえませんか?』
仁「・・・」
『毎日毎日、冷やかしに来て楽しいですか?バカにしてます?こっちは必死で運んでるのに何が宅配業ですか。
さっき、女子に言われました。副会長さんは力持ちだと・・』
仁「!?」
『仁王くんが言ったのを聞いていたんでしょうね。アナタの影響力は凄いですね』
仁「・・・すまんのぅ。お詫びにそれ、運ぶぜよ」
『結構です。仁王くんに運ばせたなんて知られたらなに言われるか分かりませんから。
冷やかしたいだけなら、声をかけないで下さい。迷惑です』
仁「・・・・」
言い過ぎた、かもしれない・・・。でも、ああでも言わないと冷やかしに来るだろうし。彼のファンに何を言われるか分からない。
そうよ。言い過ぎじゃないわ。必死な相手に労いではなく、冷やかしを言う方が悪いのよ!大体、冷やかしに来るくらいなら俺が持つよ、とか言えないわけ?
マジで、馬鹿にしてんじゃないわよね?
『・・・?』
?「また随分と重い荷物ですね」
『Σ柳生くん?!』
柳「神崎さんは少々人が良すぎます。この荷物、女性が持つには重いですよ」
『あははι 気合いで持って来たんだけど・・・流石に腕が限界だったから助かったよ』
柳「後は私が、運びますね」
『ありがとう。柳生くん(微笑)』
柳「いえ」
いきなり軽くなったから驚いたけど。まさか、柳生くんが持っていたとは。私がやっとの思いで運んだ荷物を軽々と持つ姿にやっぱり男の子だなぁ。なんて、思いながら彼の隣を歩いた。
仁「(怒らせるつもりは、なかったんじゃが・・)
難しいモンぜよ。素直に行動するのは・・」
私はまだ知らない。
後ろに佇む彼の本当の気持ちを・・・。
