◈仮面の下の素顔
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『ん・・・』
アラームより早く起きた朝。
まだ、覚めきらないまま天井を見ていると。
?「はよ」
『(嗚呼、温かい・・)』
シングルのベッドに二人は狭いけど、くっついていられるから私は好き。抱きつく私の頭を撫でる彼は同級生の仁王 雅治。私の恋人だ。付き合って3ヶ月になる。週末は私の家に泊まりに来るのが決まり事。だったのだけど、私が一人暮らしで気楽に来れるからか、週末だでなく彼の気分で来る様になった。
優しい温もりに幸せを感じながら、今日までの経緯を振り返ったみた。
◊◈◊◈◊◈◊◈◊◈◊
『は?』
それは、ある暖かな春の日のコト。
副会長の私は朝早くから生徒会室に来て仕事をしていた。生徒の登校は少なく、部活動の生徒しかいない校内は静かなモノだ。いつもの騒がしさがないこの時間は私のお気に入りだった。
そんな時。私と同じように仕事をしていた会長で親友の三嶋 加奈子が言った。
「今日から知人を匿うのに生徒会室を使うぞ」
いきなりの発言に意味が分からず、
『は?』
それしか出なかった。
そんな私を楽しげに見ながら会長は言った。
「仁王 雅治を知っているだろう?」
『会長のクラスメートですよね。テニス部の』
「そうだ。実はな、仁王は凄くモテるんだが。毎回しつこい女子のせいで昼休みも落ち着かないらしくてな。友人としては何とかしてやりたいのさ」
『それで、生徒会室を避難所にしたいと?』
「察しが良くて助かるよ。勿論、タダではないよ。雑用を手伝って貰うからね」
凄く友人思いなコト言ってるけど、そっちが本命だろう。相変わらずの腹黒さに慣れた自分にため息。
『私は構いませんよ。他の役員の子には言ったんですか?』
「勿論。了解は得ている(ニヤッ」
『(あ、なんか余計な付け足しをしたのね)』
「とりあえず、仲良くしてやってくれるかい?」
『騒がしくしないなら私は気にしませんよ』
「それは良かった。(あやめは優しい子だからな)」
男子と話すコトなんてあまりない。まぁ、友人自体少ないけど。
苦手、なんだろう。流行りに疎いし、化粧や香水は匂いが苦手だからしない。女子高校生とは言っても私は地味だろう。真面目と言えば聞こえはいいが、一緒に居てもつまらないタイプだ。
まぁ、会長の加奈子は変わってはいるから一緒に居ても気が楽なんだけどね。
『(会長は何を企んでるのやら)』
成績優秀で人当たりも良い。男女問わず慕われる彼女は会長に相応しい人物だと思う。
ただ、たまに腹黒さが出るのが問題でもあった。話術が上手いというか、教師でさえも言いくるめてしまう為、何かと迷惑を被るのが私なのだ。
今回もどう他の役員の子達を納得させたかは気になるけど、何を言っても聞かないので諦めている。口では敵わないし。彼女が決めたことなら間違いはない。そう思えるのは一緒に生徒会として仕事をしてみて分かったコト。
とりあえず、私には関係ないコトだ。
そう、思っていたーーーー。
ーーーーーー・・
昼休み。私は決まって生徒会室で過ごす。どうも、賑やかに馴染めないし、一緒に過ごすのは加奈子だから生徒会室でいいかといつも二人で過ごすのだ。
『そういえば、今日はもう一人来るんだっけ・・』
仁王 雅治。
テニス部レギュラーで女子から絶大な人気のアイドル的存在。中学から既にモテている彼だが、特定の彼女はいない。そのせいか、告白やラブレターが絶えるコトなく続いている。・・ーーーらしい。
休み時間に加奈子にそう説明を受けたのだ。
私としてはどうでもよかったんだけど。何やら、ニヤニヤ笑いながら話す彼女には思惑があるようでため息が出た。
『(知らない訳ではないんだけどね・・)』
彼とは中学の時に同じクラスだった。けれど、話したことはない。私みたいな地味で大人しいと言われるタイプは関わり合うコトなんてないもん。それに、そんなコトがあった日には彼のファンに何されるか・・・。女の嫉妬は怖いから。事実、私の様なタイプの子が仲良く話しただけで、数人のファンに呼び出されて脅迫まがいのコトを言われた、と、噂になったくらいだしね。
相手の迷惑とかは考えないのだから、恋の力は凄い。
コンコンコン、
『どうぞ』
?「失礼します」
『柳生くん』
柳「こんにちは、神崎さん」
『こんにちは。どうしたの?』
柳「会長から昼休みに二人で来る様に言われまして」
『会長はまだだけど。 二人って?』
柳「あ、すみません。さぁ、仁王くん」
そう柳生くんに促されて入って来た銀色がトレードマークの仁王くんはどこか気まずい顔をしていた。
まぁ、生徒会役員でもなければ、委員会にも入っていないだろう彼には立ち入らない場所だから仕方ない。
『どうぞ。会長から聞いていますから、座って下さい』
柳「ありがとうございます。
すみません、私用で此処をお借りしてしまって」
『大丈夫だよ。職員室でもないし、私達もお昼休みに使うから。それに、友人思いの会長の頼みだからね』
雑用やらせる気満々だったけど。とは言えない。
当人は全く喋らないけど、無口だったっけ?
何とも言えない空気になったと思ったらまたノックされ、返事をすれば。
「神崎先輩、こんにちーー・・・」
『?』
柳「お邪魔しています」
「・・・・・・」
入り口で固まる後輩二人。生徒会役員の書記と会計の一年生。舞花と智は何故か、驚きと動揺、それに顔を赤らめて固まっている。意味が分からない私達は首を傾げた。
とりあえず、ドアを閉めてはくれないかなぁ。仕方なく席を立ち、ドアを閉めた。
「「神崎先輩」」
『Σはいッ!? いきなり、何ι?』
驚く私を見ながら二人が同時に言った。
「「仁王先輩とはいつから付き合ってたんですか!!?」」
仁・柳「「は?」」
『はぁ~・・・』
「会長から聞きました!お二人が密かにお付き合いされていると!」
「しかも、なかなか会う機会がないからお昼休みを二人で過ごせる様にしたいと言われたんです!」
「会長ってば友人思いの優しい人ですよね!」
友人思いならまず私に相談とかしませんか?
と突っ込んでやりたいところだけど、堪えよう。
ニヤニヤ笑ってたから企みがあるのは気づいてたけど。まさか、そんな嘘で後輩を丸め込んだとは・・。頭が痛い。
とりあえず、理解はした。となれば、私が付け足すとすれば・・・。
『(これ以上の詮索をさせないコト、ね)
すみませんが、言いたいコトはあるでしょうがあの子達を帰してからにしても構いませんか?(ヒソ』
柳「分かりました」
二人に向き直り、好奇心満々の目にため息しか出ない。
この場にいない加奈子に怒りを向けたところでしれっと言い返されるだけなので内心でぼやくしかない。
『会長が言ったコトは本当ですよ。ですが、会長は他に何か言っていませんでしたか?』
「他ーー・・・あ!」
「すみません。神崎先輩が詮索をされるのが大嫌いだと」
「ごめんなさい」
『分かってもらえるのなら許します。
ですが、この事は他言無用ですからね?
もし、破られるコトがあればーー・・二人なら分かりますよね?』
「「はい・・ι」」
『そういえば、用があったのでは?』
「あ! これ、まとめ終わりました」
『ご苦労様です。目を通しておきますね。二人もお昼にしないと終わっちゃいますよ』
「はい。失礼しました」
パタン、
仁「で、いつからお付き合いしてたんかの?」
『・・・・すみませんでした』
仁「!」
『嘘とはいえ、不快な思いをさせました』
柳「そんな、頭を上げてくださいι!神崎さんのせいではありませんよ!会長にお考えあってのコトでしょう」
『ですが・・・』
仁「謝るな。別に怒ってる訳じゃない。からかっただけなんじゃが、悪かった」
仁王くんを見れば、どこか罰が悪そうで。
柳生くんは困った様に笑っていた。
とはいえ、本当に困った会長ですよね。
なんだって、こんなコトに・・・。まぁ、他に知られるコトはないだろうけど。厄介なコトにならなければ、私は気にしないんだけどね。
『そういえば、お二人とも、お昼はどうされるのですか?』
柳「私は教室に戻りますよ。付き添いで来ただけなので」
『そうでしたか』
柳「では、仁王くん。神崎さんにご迷惑を掛けないで下さいね」
仁「ん・・」
柳「失礼します」
パタン、
『(気まずいなぁ・・。とりあえず、お昼にしよう)
仁王くん、お昼は?』
仁「ないぜよ」
『え?』
仁「購買行こうとしたんじゃが、纏わり付かれての。行けなかったんよ」
成る程。会長から聞いてはいたけど、相当な苦労なんだろうね。
そう思うとなんだか可哀想に見えてしまう。
『よかったら、食べますか?』
仁「弁当? お前さんのだろ?」
『いえ、こっちは会長に作って来たモノで自分のもありますから』
仁「いいのか?」
『はい。会長から今日は此方に来れないとメールが来ましたから』
仁「・・・有り難く頂くナリ」
『そうして頂けると助かります』
まったく。今日は此方に来れないって、誰が頼んできたのよ。何がしたいのか全く分からない。分かったとしてもどうすることも出来ない様に丸め込まれるんだろうな。
仁「美味い・・」
『それは良かった』
仁「自分で作ったのか?」
『そうですよ』
仁「朝早いだろ? 今日は朝から服装検査してたし」
『はい。なので、会長の分も作るのが当たり前になりました』
仁「大変じゃな」
『好きでやっているコトですから、気にしてはいません』
仁「成る程な」
会話が続かない。そもそも、男子とまともに話す機会が少ない私にはこの状況は辛い。自分から会話を振るなんて出来もしないのに話題を探してみたり。結局、無理と諦めてお弁当を黙々と食べ進めるしかなかった。
そういえば、こんな近くで彼を見たのは初めてかも。クラスが一緒だっただけで、直接関わるコトもなかったし、ましてや、話すなんてコトすら記憶にないくらいだ。
女子から絶大な人気だけあって、そこいらのアイドルよりも格好いいとは、思う。見た目はチャラそうなのにテニス部のレギュラーでスポーツマン。意外としか言いようがない。見た目で判断しちゃいけないけど、銀色が目立ち過ぎるからそうは見えないよね。
『(ホント、別の世界の人だな・・)』
仁「柳生と仲良いんじゃな」
『え・・?』
仁「親しげに話してたし。笑ってた」
『何かと助けて貰っていますから。風紀委員ですし、同じクラスというのもありますが』
仁「ふーん。無表情で有名な副会長さんがのぅ」
痛いとこ、突かれた。
無表情ではないんだけど、人見知りのせいか。苦手な人とか、初対面の相手には表情が固くなり無表情になってしまうのだ。そのせいか、友達を作れない時期もあった。
仲良くなりたくても上手く行かなくて諦めるようになり、今は、あまり気にしないようにしている。今では、副会長という立場もあってか。お堅いイメージが定着してて言われなくなってた。
感情がないワケじゃないのに・・・。いつの間にか、無表情で有名になっていたとは。溜め息が出る。
仁「意外な一面じゃな」
『誰だって、いつもヘラヘラしているワケではないでしょう?』
仁「そうだな。気を悪くしたなら謝る。すまん」
『いえ、気にしていませんよ・・』
疲れてしまったんだ。愛想笑いをしながら人の顔色を窺うコトに。生徒会役員をしていると必要以上に関わらずに済む。何かと雑務が多いから友達と過ごすよりも生徒会室-ココ-にいるコトが多い。
加奈子といるのは気楽だ。気を遣うコトもないし、私らしくいられるから。
仁「ご馳走さん」
『お口に合いましたか?』
仁「うん。美味かったナリ」
『ありがとうございます』
仁「また食いたいって言ったら迷惑か?」
『そんなコトはないですよ』
仁「なら、また頼む」
『分かりました』
それっきり、仁王くんは腕を枕に机に突っ伏して寝てしまった。時間はあるからいいけど、起きれるのだろうか?
『(起こせばいっか)』
なるべく音を立てないように、さっき預かったモノに目を通す。
廊下のざわめきが遠く、静かな教室。心地よい風が入っては目の前に座る彼の銀色を撫でた。不思議な感覚だ。嫌じゃない。寧ろ、とても穏やかで好きだ。なんだか、私まで眠くなってしまう。
『(不思議な人だなぁ・・)』
男子なんてデリカシーのない生き物だと思ってた。実際、女子に対して気を遣う男子は少ないだろう。柳生くんの様に紳士なのは珍しいし、仁王くんの様に察しが良いのも珍しい。それが、モテる理由の一つなのかもしれないね。
『はぁ~・・・』
少し疲れたかも。
今日は、三階の美術室の電球交換頼まれてたなぁ。後、掲示板にポスター貼るように頼まれたか。
生徒会は便利屋じゃないんだけど・・・ι
仁「ん・・」
『おはようございます。そろそろ、お昼休み終わりですよ』
仁「ふぁ~ぁ。そうか・・」
『寝不足ですか?』
仁「いや。朝練がハードだっただけじゃよ」
『お疲れ様です』
仁「・・放課後、部活休みじゃき。雑用の手伝いするぜよ」
『助かります』
仁「んじゃ、放課後にな」
パタン、
仁王くんが去った部屋はなんだか、寂しく感じる。
『一人は慣れないな・・・(ポツリ』
立ち上がり教室へと戻る。
賑わう廊下を歩きながら小さく溜め息が出た。最近、溜め息が増えたかな。
『(今日は、早目に寝よう・・)』
ーーーーー・・・
放課後になり、役員みんなが集まる。
しかし、議題は昼休みのコトだった。
舞「会長はご存知なんですよね!?」
智「告白はどちらからなんですか!?」
加「うーん・・ι」
『はぁ~・・・』
かれこれ10分、この調子で先に進まない。そもそも議題ですらないんだけど。
コンコン、
会長が返事をして開かれたドアから姿を現したのは、今議題に上がる人物だった。
加「やぁ、仁王。部活が休みの時にすまないね」
仁「約束じゃからな。で、談話中か?」
加「気にしなくていい。あやめとポスター貼りを頼むよ」
舞「行ってらっしゃいvV」
智「・・・・///」
仁「なんだ?」
『気にしないで下さい・・ι』
ポスターを抱えて部屋を出る。
まだ、少し残る生徒の視線が痛いのは気のせいと念じながら廊下を進む。勿論、沈黙ですよ。こんな雑用面倒でしょうからね。普段なら真っ先に逃げるでしょうし。早目に切り上げるとしますか。元々は生徒会の仕事ですからね。
黙々と作業すること数十分。抱えていたポスターは全て貼り終えるコトが出来た。
仁「後は?」
『今貼ったので終わりです。助かりました』
仁「大したことはしとらんよ」
『そんなコトありませんよ。生徒会に身長の高い人はいませんから助かります』
仁「役に立てたなら何よりぜよ。他は?」
『・・・?』
あれ? 意外と律儀に手伝ってくれるのかな?
てっきり、会長がポスター貼りとしか言わなかったからさっさと帰ると思ったんだけど。
『なら、もう一つ・・お願いしてもいいですか?』
仁「構わんよ」
『ありがとうございます』
美術室の電球交換を手伝ってもらえるのは有り難いけど・・。
・・ーーーなんだろう?
違和感があるような、ないような。
仁「これで大丈夫じゃな」
『ありがとうございます』
仁「どういたしまして(微笑)」
優しく微笑む彼に別の人が重なって見えた。
『(あ~、柳生くんに似てるのか)』
仁王くんがこんな風に笑うなんて、ないわよね。
そもそも、仁王くんと柳生くんは入れ代わるコトがあると柳生くん本人から聞いたことがあった。なんで、私が気付けたのか、分からないけど・・・。
ここで柳生くんだと言ってしまったら隠してる彼に申し訳ないから、気付かなかったコトにしよう。
『(やっぱり、逃げたんだ。分からなくもないけど・・・)』
私の中で、仁王 雅治という男子生徒は悪印象に傾いた。約束を破った、とは言えないけど。他人に押し付けるとは・・まぁ、そういう人よね。
仁「他はないのか?」
『はい。ありがとうございます。折角の部活休みにすみません』
仁「いや、こっちこそ迷惑掛けてすまんの」
立ち去る彼の背を見ながら溜め息が出た。
生徒会室に戻りながら寄り添い歩くカップルを見かけた。
楽しげに笑い合う姿は微笑ましくて、羨ましい。幼い恋だとしても、今だけしか味わえない青春だから価値がある。別に、恋だけではない。部活だったり、何気ない友達との日常も青春だと私は思う。とはいえ、無表情で有名な私には縁遠い。だから、恋は諦めて、生徒会の仕事に青春しているのだ。青春と呼べるかは疑問だけどねι
『ただいま』
加「お帰り。仁王はどうした?」
『帰したよ。頼むことなかったから』
加「そうか。頼りになるだろう?」
『そうね。仁王くん本人じゃなかったみたいだけど』
加「Σ気付いたのか?!」
『なんと、なく・・・ι 笑った顔が柳生くんとダブって見えたから。てか、気付いてたならなんで手伝いさせたのよι』
加「いやぁ、柳生だとはいえ、追い返すのも可哀想でなι」
『私もι 避難場所にするのは構わないから条件ナシにしたら?毎回、柳生くんにさせるのも悪いし』
加「それでは、他の生徒に悪用されるだけだろう?」
ごもっともです。サボり場や溜まり場にされても困る。条件はその為のモノだ。だけど、避難しているのは本人で、手伝いをするのは身代わりというのも・・・。
加「とりあえず、仁王には私から言っておこう」
『そうしてください』
席に座り、先生から頼まれた資料作りの準備をしていると加奈子が言った。
加「あやめは柳生が好きなのか?」
『・・・・は?』
加「いや~。あの二人の入れ代わりを見破れる女子って居ないんだ。私を除いては初だからな!」
『それが何?』
加「好きな相手なら違和感に気付けるだろう?いつも、いつでも、眺めていれば!」
『人をストーカーみたいに言わないでよι
そもそも、柳生くんに恋愛感情はない。同じクラスで気が合うってだけ』
生徒会役員でもあるから何かと関わりがあるだけだし、仲の良い友達だと思ってる。困ってると声を掛けてくれる親切な優しい男の子だけど、恋愛感情を抱いたことはなく、何で見破れたかは自分でも分からない。
加「なら、仁王は?」
『見かけで恋するほど単純じゃないんだけど?』
加「あはは。そうだったな!」
『まったく・・・』
加「(ふむ。しかし、なんで気付いたのだろうか?無意識、なのか)」
『何よ?』
加「いや。早く終わらせて帰らねばな」
『そうだね・・・』
別に、帰りが遅くても心配してくれる家族は家に居ないけどね。
ーーーーー・・・
下校時間になり校舎を出る。帰路が逆の加奈子と別れて一人歩きながら、夕飯をどうするか考える。両親が留守で一人暮らし。仕事で飛び回る事が多い両親は私が高校に上がると家を空けるようになった。まぁ、心配しているのは変わらないけど、高校生だからなのか。心配半分、安心半分と言った感じだ。
たまに帰って来てはお土産を抱えてながらだし、二人仲良く飛び回ってるから本当に仕事なのかと幼い頃は思ったりもした。
『あ、お兄ちゃんからメールだ』
五つ離れた兄は東京で一人暮らし。両親に変わって私の心配をしてくれる優しい兄。仕事で疲れているだろうから心配しなくていいと言うのが決まり文句になっていた。
私の家族は自由人だ。楽しくやっているならそれが一番だとは思う。
ただ、私が"寂しがり屋"でなければ。
『ただいま・・・』
明かりのない部屋に響く自分の声に虚しさが広がる。
当たり前のコトなのに、いつになっても一人は慣れない。学校は一人でいることがない。基本的に加奈子といるし、常に生徒会室にいるけど誰かしらいるので一人じゃない。
とはいえ、流石に家で一人なのはどうしよもないのだ。
『お風呂入ろ・・・』
夕飯は作り置きがあるからすぐ出来るから大丈夫。
ゆっくり湯船に浸かりながら今日を振り返る。とはいえ、思い返すのは初めて話した仁王くんのコトだ。
テニス部レギュラーは有名人みたいな存在で、女子からしたらアイドルと言っていいほど。中学の頃から騒がれていて、ウチの生徒で知らない人はいないだろう。
中でも、一番のモテ男の仁王くんは悪い噂が絶えず、真偽は分からないけど本人は否定も肯定もしない。素性が分からないミステリアスな彼は女子からすると不思議な魅力があるようだ。
『テニスは真剣なのにね・・・』
テニス以外のコトには興味がないのか。
加奈子との交換条件を守ったとも言えない。話を聞いたときからやるとは思ってなかったけど、ちゃんと放課後来てくれたから少し見直したのに。結局、本人じゃなかったし・・・。柳生くんもなんで、断らなかったんだろう?
『はぁ・・。考えても仕方ないか。柳生くんにお礼しなきゃね』
入れ代わってたとはいえ、手伝ってもらったんだもんね。
『さて、やることやらないと!明日も服装検査で早いし』
今週の風紀委員の活動が朝の服装検査。生徒会も参加で行われている。とはいえ、検査が済めば元通りだから、あまり効果がない。校則とはそんなもの。無駄とはいえ、真田くんと柳生くんのお陰で女子は意外と服装の乱れが減ったと加奈子が笑っていた。
ホント、テニス部レギュラーの影響力は凄い。
『お礼は・・・クッキーでも焼こうかな』
髪を結ってキッチンへ。
こうして料理してる時が意外と安心出来るから。
□■□■□
翌朝。いつものように少し早い時間に家を出て学校に向かう。加奈子の分のお弁当を持ち、青色のラッピングをしたクッキーも忘れずに。
人通りの少ない時間帯だから静かだ。この時間帯が好き。ゆったりしてて、清々しい朝の散歩のよう。目的地は学校なんだけどね(笑)
『おはよう』
加「おはよう、あやめ」
舞「おはようございます!」
智「おはようございます、神崎先輩」
生徒会室には先に来てた加奈子たちがいた。
変わらない朝の光景に自然と口許が緩む。一人の家とは違って、居心地がいい。
加「さてと。諸君!服装検査に行くぞ!」
『楽しそうね・・・ι』
舞「会長に捕まるともれなく雑用付きですからね~(笑)」
智「効果は絶大ですけどねι」
加「代償は必要なのだよ!」
『はぁ~・・・』
確かに代償・・罰は必要だろうけど、何故か容易く捕まえては雑用を押し付けている我が生徒会会長様はかなりの腹黒だ。だけど、智の言うように効果絶大。女子の服装の乱れはなくなり、派手な化粧をした子もいない。男子も乱れも減った。まぁ、捕まれば雑用員決定だしね。しかも、逃げようとすれば放送で呼び出しするから逃げられない。
『(放送で相手の恥ずかしいネタをバラされればね・・・)』
何処からの情報かは分かっているが、何も全校生徒にバラさなくても、と思うが成果に繋がっているから仕方ない。こんなやり方してても先生が口を挟まないのは成績トップの優等生だからかな。信頼されているからっていうのもあるか。
何にせよ、腹黒生徒会長様であることにはかわりないけどね。
校門に向かえば既に風紀委員が立ってた。
真田くんと柳生くんの姿もある。模範の様な二人はこんな朝早くでも、凛々しく見えるのは気のせいじゃないな。
『(それにしても・・) はぁ~・・・』
なんだか、疲れがとれないなぁ。
テストも近いし、生徒会の仕事も多い。困った会長の世話もある。お陰で私の苦労が絶えない。
なんというか、たまにはサボってみたいとは思う。思うだけで実行には移さない。生徒会副会長がサボりなんてあってはならないだろうしね。溜め息は尽きることなく吐き出され。同時に幸せも逃げているに違いない。
?「神崎」
『柳くん、おはよう』
蓮「おはよう。溜め息が絶えないが、何か心配事があるのか?」
『ないない。ただ、少し疲れが取れないだけι』
蓮「そうか。あまり無理をするなよ?」
『うん。ありがとう(微笑)』
何故、柳くんがいるかと言うと。彼も生徒会の役員だからだ。けれど、部活が忙しい彼は特例で部活を優先している為。会議の時位しか参加はしていない。それで許されるのは彼が頭の良い優等生だからだ。
『今日は参加なんだね』
蓮「ああ。朝練がないからな。特例とはいえ、生徒会役員にはかわりない。参加出来る時はするつもりだ」
『多いに助かってるから服装検査に参加しなくてもいいのに』
蓮「気にするな。気晴らしの様なモノだ」
『気晴らしってι』
蓮「時間だ。始めるとしよう」
柳くんまで楽しそうに笑わなくてもι
いけない、いけない!私も持ち場があったんだった。校舎裏にある裏門へと向かう。服装検査がある時は利用されない裏門も生徒が通るのだ。数は少なくはなったけど、まだ掻い潜ろうとする生徒がいる為見張るのだ。
『まさか、まだ通る生徒がいるとは・・・』
もういないと思ったんだけど、まだいた。しかも、制服を乱しながら。
捕まえた彼。仁王くんは悪戯な笑みを浮かべて言った。
仁「残念。昨日は捕まらんかったんじゃがな」
『そうですか。会長に捕まらなくて良かったですね。 ネクタイ直してください』
仁「見逃してくれんか?」
『却下。 一応、直してください』
仁「どうせ戻すならいいだろ?」
『ですから、一応と申し上げているんですが・・・』
駄々をこねる子供みたいな仁王くんに溜め息。さっさと済ませて戻りたいのに。すると、そこに柳生くんが。
柳「神崎さんの帰りが遅いと思ったら、仁王くんを捕まえてしまいましたかι」
仁「捕まったナリ」
『運が悪かったみたい(私の)』
柳「神崎さんを困らせないで下さい。それから、ネクタイを直してもらえますか」
仁「副会長さんも柳生も、お堅いのぅ」
柳「『服装検査ですから』」
仁「ハモったの」
『はぁ~。柳生くん、ちょっと持ってて』
柳「はい」
仁「なんじゃ、直してくれるんか」
『言っても直さない様なので。それと、』
彼の前に立ち、ネクタイに手をかけて・・・。
『次いでに制裁を』
仁「Σンッ!!?」
キツく締めてやった。
なんか、イラッとした。彼のファンが見たら抗議されそうだけど。裏門に他の生徒の姿はないから大丈夫だろう。ネクタイを緩めて整える。
仁「Σ絞めるヤツがあるか!?」
『ちゃんと締めないからです』
仁「殺意があったじゃろ・・」
『なんか、イラッとしたので』
仁「しれっと認めるなι」
『制裁だと先に言いましたよ』
仁「はぁ~・・・柳生よ。 いつまで笑っとるつもりぜよ」
柳「す、すみませんっ・・ふっ、つい・・」
爆笑している。あの紳士の柳生くんが。珍しいなぁ。
そんなに笑えるとこあっただろうか?
それにしても、こんなにも正反対の二人が入れ代わり出来るのは不思議だ。
あれ? もしかして、逆?
じっと見比べるけど、逆ではないみたい。
あ、そうだ。いま渡しちゃおう。
柳生くんに預けた手提げを受け取り、中を漁り取り出した。
『二人とも、手を出して下さい』
柳「? これでよろしいですか?」
仁「今度は何するつもりぜよ?」
『何もしませんよ。 ・・ーーはい』
青色の小さな包みをそれぞれの手に乗せた。
仁「なん?」
柳「神崎さん。これは?」
『クッキー。お手伝いしてくれたお礼』
柳「何故、私の分もあるのでしょうか?」
『この間のお礼と日頃の感謝です(微笑)』
仁「・・・律儀じゃな」
『気持ちは大切ですから。要らなければ捨てるなり、誰かにあげるなりしてください』
食べ物だから捨てるのはどうかと思うけど。迷惑なら仕方ない。そもそも、昨日手伝ってくれたのは本人ではなかったんだけど、私に見破られたとあってはプライドを傷つけるだけだ。それなら、知らなかった振りをした方がいい。どのみち、そう関わる事はないだろうしね。
『さて、戻らないと。仁王くんも急がないと遅刻ですよ』
仁「そうじゃった。先に行くぜよ」
走り去る背中を見送り、柳生くんが口を開いた。
柳「よろしいのですか?」
『ん?』
柳「会長から聞きましたが、神崎さんは私たちの入れ代わりに気付いていたと。私が言える立場にはないですが、彼は約束を守らなかったんですよ?」
加奈子め。黙っていればいいのに。
申し訳なそうな柳生くんに一息吐いて言う。
『初めから手伝うと思っていなかったよ。中学の頃、同じクラスだったけど。面倒な雑用は他人を丸め込んでやらなかったから』
柳「では、何故お礼などと・・」
『中身は違えど約束を破った訳じゃないしね。なら、騙されたままの方がいいじゃない』
柳「・・気分のいいモノではないでしょう」
『そうだね。でも、騙す方も同じじゃない? まぁ、彼は気にしないかもしれないけど(笑)』
柳「そうですね。(騙されたままでいい、とは。仁王くんを気遣ってのことでしょうね。優しい女性-ヒト-だ)」
チャイムが鳴り、服装検査は終わった。
教室に入ればいつもの賑わいがある。変わらない日常の始まり。
授業が始まれば教室を埋め尽くすのは賑わいではなく、教師の声とノートを走るシャープペンの音だけ。
そんな中、ふと、窓の外を見ると体育の授業をやっているクラスが。加奈子のクラスだ。何故か、1時間目から体育になったと朝笑って言ってたのを、思い出した。
先生の都合なんだろうけど、朝から体育は嫌だなぁ。ま、私と違って加奈子は運動するの好きだかいいんだろうけどね。
『(ほんと、目立つなぁ)』
銀色の彼は見つけやすい。
しかし、スポーツマンのわりには気だるげな姿だ。とはいえ、強豪のテニス部レギュラーとあって運動神経は抜群だね。サッカーの授業でリフティングをする彼を女子の熱い視線が注がれている。
『(なんというか。人をイラッとさせる人だよね)』
会話するのが面倒だなんて初めて思ったよ。生徒会でも関わるのは委員長や部長をやってる生徒がくらいだし、服装検査でいつも捕まえるのは柳生くんだった。私が彼と関わる機会はなかったもんなぁ。
そもそも、苦手だ。
飄々としていて、何を考えているか分からない。人を騙しては笑っている様な悪趣味な彼だけど。一度だけ用があってテニスコートに行った時、彼が部活で見せる笑顔に私は、数秒見とれてしまったことがある。彼にとって部活の仲間は自分らしくいられる場所なのだろう。とはいえ、ファンクラブまであるテニス部の詐欺師と呼ばれる彼のファンは美人が多いらしく、目をつけられると厄介だと人伝に聞いた。あまり関わりたくはない。女の嫉妬ほど怖いものはない。
ーーーーーー・・・
チャイムが鳴り、授業が終わればざわめく教室。小さく息を吐く。
『(疲れた・・)』
?「神崎さん」
『柳生くん』
柳「大丈夫ですか? お疲れのようですが・・」
『うん。少し、疲れが取れなくてι』
柳「あまり、無理をなさらないで下さいね。出来る事があれば遠慮なく言って下さい」
『ありがとう(微笑)』
柳生くんの優しさに感謝しながら次の授業の準備をした。
ーーーーー・・
お昼休みになった頃には私の疲れは眠気となり襲ってきた。
『(ダメだ。お弁当食べないで寝よう・・)』
そう決意して生徒会室へと向かった。
途中、先生に捕まり頼まれ事を聞いてしまった自分に溜め息を吐いて早足で生徒会室へ。
コンコン、
ノックをすれば先に加奈子が来ていた様で返事があった。
加「遅かったな」
仁「よぉ」
『こんにちは、仁王くん。来る途中で先生に捕まってたのよ。会議の資料の冊子を頼まれた』
加「またかι 生徒会は便利屋じゃないんだが・・」
『ホントに・・』
仁「お疲れじゃな、副会長さん」
『少し。仁王くん、お昼は?』
仁「ない」
どうやら、今日も購買へは行けなかったようだ。学食もあるけど、落ち着かないだろうなぁ。私としてはお弁当が無駄にならずに済むので助かる。
『では、これを』
仁「お前さんは?」
『お弁当より眠気の方が優先なので。私は少し寝る・・・』
加「分かった(苦笑)」
腕を枕に机に突っ伏して、目を閉じた。
