◈銀色の彼はー
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『此処だね』
いやはや、少し迷ってしまったのだよ。やっぱり迎えを頼むべきだった。
僕は神崎 あやめ。中学三年。一人称は僕だが、女子である。
今日は両親の傍迷惑な都合により転校を余儀なくされ、転校先である学校にきているのだ。因みに、此処、立海大附属中学校には親戚で同い年の男の子が通っている。今日はその挨拶も兼ねて参った次第、なのだが‥。
『どちらに行けばよいのやら‥』
夏休みとはいえ、部活の生徒は多いなぁ。其れにしても一際騒がしい場所があるみたいだが、何部なのだ?
とりあえずそちらに行ってみるとしよう。
『おや? テニス部だったのか』
成る程。聞いてはいたのだが、実際に見ると凄いのだ。芸能人ならテレビでみたりするが一般人の、それも学校でというのはそうあるもんじゃないだろうなぁ。何と言うか‥‥怖いのだ。
『(あっちも頑張っているかな‥)』
なんだろ‥? ちょっと、寂しいなぁ。
馴染めるかな? 今頃、転校なんてそうはないよね‥。やっぱり一人暮らしでもあっちに残れば良かったかなぁ。流石に中学生で一人暮らしはないから親戚の家に居候させてもらうコトになったけど、学校変わっちゃうし‥。うぅ~‥急激に寂しくなってきたのだ‥。
一人キョロキョロしていると見知った後ろ姿を見つけて一直線。
『ヒロくん!』
?「!?」
『う~‥』
?「あの、どちら様でしょうかι」
『どちら様は酷いのだ!イトコを忘れる、なん‥て?』
顔を上げて、首を傾げた。
抱き付いている人物は間違いなく今日からお世話になる親戚で同い年の男の子の筈‥なんだけど‥。何かが違う気がした。何がと聞かれても分からないんだけど。何かが違う。なので、確認してみた。
『あの、柳生 比呂士くんでしょうか?』
比「そうですよ」
『‥‥――あ!』
思い出したのだ!
前にヒロくんに聞いたことがあった。入れ替わりをするパートナーがいるって。確か名前は―――‥。
『にお、くん?』
比「!」
あれ? マジなの?
マジなのだ!?
『‥‥――――Σひゃわぁーーーッ///!?』
勢いよく後退り、涙が視界を揺らしていた。
そりゃそうですよ。だって、不安で寂しくて心細くてヒロくん見つけて抱き付いたのに、人違いなんて‥。
仁「泣くんじゃなかι」
『ごめ、なさぃ‥』
仁「柳生なら今、呼んじゃるけぇ。ちょっと待っとってくれんか?」
『でも、部活中‥』
仁「‥‥なら、俺の話し相手してくれんか?」
『‥?』
キョトンとしたのだ。
涙も引っ込んでしまうくらいに。
部活中じゃないのかなぁ?
迷惑じゃないかなぁ?
オロオロしてる僕にニオくんは小さく笑って手を握り歩き出してしまった。
引かれて付いて行くと人気のない裏庭に着いた。
仁「此処ならええか」
『‥‥わぁ』
仁「なんじゃ?」
『銀髪‥』
仁「珍しいか」
『それもあるけど―‥。
とっても綺麗なのだ(満笑)』
仁「!‥ぁ、ああ。ありがとさん///」
ヒロくんに聞いてはいたけど、本当に銀髪だし、綺麗だし、カッコイイと思う。
仁「自己紹介がまだったな。仁王 雅治じゃ」
『神崎 あやめです。さっきも言ったけど、柳生 比呂士のイトコで立海に転校して来ました』
仁「珍しいのぅ。こんな時期にとは」
『親の都合でι 両親が海外赴任でヒロくんの家に居候させてもらうの』
仁「大変じゃな。いきなり抱き付かれ時は驚いたぜよ」
『ごめんなさい。
ちょっと、寂しくなっちゃったのだ(苦笑)』
仁「否、入れ替わってた俺が悪いからの」
そう言って小さく笑ってるニオくん。
なんだか、悪戯好きな男の子だとはヒロくんから聞いてたけど、憎めないなぁ。
仁「そろそろ戻らんとな。柳生には伝えとくぜよ」
『ありがとです!』
ニオくんの後を付いて行き、テニスコートから少し離れた場所から眺めながらヒロくんを待つ。
黄色い声が響く中で、僕の目は銀髪の彼を追ってた。もちろん、入れ替わり中のヒロくんだ。なんとも不思議な気分だなぁ。ぱっと見じゃ分からないのだ。スゴいなぁ。
『(あれ? よく考えたら僕、初対面の男の子に抱き付いて‥‥Σッ////!?)』
Σなんてコトをしたのだ~~~///!? というか、なんて恥ずかしいコトをッ////!
ニオくんはなんともなさそうだったなぁ。まぁ、僕みたいなのに抱き付かれてもなんとも思わないか。←切り替え早い
それから、部活が終わったヒロくんが凄く驚いてた。事情を話していればレギュラー陣に囲まれて流石に困ってヒロくんのジャージを掴んだつもりがニオくんで焦ったのだι
初めて話すけど、聞いてはいたから慣れれば大丈夫かもしれない。とはいえ、いきなり囲まれると怯えてしまうのだ。
幸「神崎さん、前の学校は?」
『青学です』
全《‥‥‥‥》
やっぱり、こうなったか…。
試合で負けたとは知ってる。ヒロくんから聞いたし。そもそも僕はテニス部のマネージャーだったから。立海戦は体調を崩して見れなかったのだι
比「あやめはテニス部マネージャーをしていたのですが、私達との試合は風邪でいなかったんです」
柳「マネージャーだったとはな」
幸「へぇ、意外だな。じゃあ、レギュラー陣とは仲が良いんだ」
『良い、かなぁ?』
比「名前で呼んでいるではありませんか」
丸「マジ!? 手塚も?」
『国光だよ』
ジャ「ある意味スゲェなι」
そう、だろうか。
まぁ、国光はちょっと近寄りがたい所があるけど話してみると面白かったりするんだけど。珍しいといえば珍しいかもしれない。名前で呼んでる女子なんて僕以外にはいないのだから。
それから、少し話して帰路を歩く。ヒロくんはもちろん、ニオくんもいる。親友って前に聞いてはいたけど、全く正反対な二人なのだ。
比「どうしました?」
仁「面白いか?」
『スゴいなぁと思って。全く正反対なのにあんなにそっくりだから不思議で』
比「そうですか。驚かせてしまってすみません。私もあやめが仁王くんに抱き付いた時は流石に我を忘れましたよ‥」
『ゔ‥///』
仁「なんだ、柳生の彼女だったのか?」
比「Σ親戚ですよ! 」
ニオくんにからかわれるヒロくんを見てるとなんだか微笑ましく思う。
そういえば、英二達も仲が良かったなぁ。やんちゃな弟に手を焼く兄、みたいだったけど(笑)この二人もそうかも。
あ、でも――‥。
『ねっねっ、ヒロくん』
比「なんですか?」
『ヒロくんとニオくんは――‥
恋人同士なのだ?』
比「Σなっ!!?」
仁「なんじゃ、バレたか」
比「Σ仁王くんッ!!?」
慌てるヒロくんを無視して、肩を組みながら不敵に笑って言った。
仁「柳生は俺のモンじゃき、渡さんよ」
比「‥‥ι(真っ青)」
『‥‥分かったのだ!』
仁「は?」
『なるべくヒロくんを頼らないようにするのだ!』
仁「あ~‥ι」
『あ! 恋人同士なのは誰にも言わないから大丈夫だよ!』
好きな人が女の子といるのは嫌だと思うのだ。だから、自分でなんとかしなきゃ!ヒロくんを頼っていてはダメだもんね。よし! 頑張るのだ!
比「仁王くん‥」
仁「すまんι まさか、あんなに信じやすいとは思わなかったんじゃι」
比「まったく…。 あやめ」
『ん?』
比「よく聞いて下さい。
まず、私達は恋人ではありません」
『Σ違うのッ!??』
比「違います!!
仁王くんにからかわれたんですよ」
『そうだったのか‥。 嫌な思いをさせてごめんなさいなのだ‥』
ぽふっ、
『‥?』
仁「謝るのはこっちじゃ。すまんの」
比「そうですよ悪いのは仁王くんなんですから。
これに懲りてあやめにはペテンは使わないで下さいね?」
仁「気を付けるナリ」
比「使う気ですかι」
仁「心配せんでも傷つける様な真似はせんから安心しんしゃい」
比「貴方って人は…ι」
『大丈夫だよ! ちゃんと気を付けるから!』
ペテンがどんなモノかはよく分からないけど、ニオくんは悪い子ではないみたいだし、僕が気を付けていればいいのだ。 頑張るのだ!
仁「何となくだが、お前さんが心配するのが分かったぜよ」
比「助かりますι」
仁「(幼稚園児みたいじゃな。何をどう頑張るんかのぅ) ‥―――面白い子ぜよ」
比「(これは珍しいですね。仁王くんが女性に興味を示すのは)」
ニオくんと別れて、ヒロくんのお家へと歩く。
比「あちらの方々にはちゃんと挨拶したのですか?」
『うん!夏休みは少し残ってるから明日にでも顔出して来る!』
比「急でしたから寂しいでしょうね」
『そうでもないと思うよ? 寧ろ、僕の方が寂しくて泣きそうだったしι』
比「成る程。だから、見間違えて抱き付いたんですね」
『ぅん…』
比「やれやれ。大丈夫ですよ。慣れるまでの短い間だけで、直ぐに馴染めます。私もいますから大丈夫ですよ」
『‥うん!』
優しい手で頭を撫でるヒロくんに笑って返した。不安はあるけど、ヒロくんがいるし、ニオくんも優しそうだから。大丈夫!
『ニオくんって優しいね』
比「優しい、ですか?」
『うん! あのね、ヒロくんじゃないって分かった後にニオくんが人がいない所に連れて行ってくれてね。話を聞いてくれたのだ! だから、ニオくんは優しいのだ』
比「(騙されたコトに怒らず、そんな仁王くんを優しいと言ってしまう貴女の純粋さが凄いと思うのですがね)」
『ヒロくん?』
比「いえ、親友を褒めて貰えるのは嬉しいモノです。仲良くして上げて下さいね?」
『うん!仲良くしたいのだ!』
比「(これは、もしかすると‥もしかするかもしれませんね)
‥―――私としては嬉しい限りですが‥(ポツリ」
『ヒロくん!早く早く!』
ヒロくんの呟きが僕には聞こえなかったけど、なんだか嬉しそうなヒロくんに私も笑っていた。
小さい頃からお兄ちゃんみたいなヒロくんはいつも僕を心配しながら手を差し伸べてくれた。寂しくなれば頭を撫でて慰めてくれた。優しいイトコで僕の―――‥。
『アズちゃんに会いたいなぁ』
比「彼女も同じこと言っていましたよ」
『大好きだからね!』
比「それは良かった」
アズちゃんはヒロくんの彼女さん。優しくて可愛いのだ。ヒロくんのお家に遊びに来た時に会って意気投合してからお友達になった。あ、ならニオくんと恋人同士じゃダメだねι
それから、ヒロくんのお家に着いて、おばさんに挨拶。荷物を片付けて見つけたアルバムを開いた。
『懐かしいなぁ‥』
青学での思い出がソコには詰まっていた。ほとんど部活中に撮ったモノばかり。楽しい時間だったのだ。色々あったけど、テニスにかける情熱は強く。負けず嫌いばかりのチーム。毎日が賑やかで‥‥。
ぽた、
あ~あ、弱いなぁ…僕。周りには大丈夫とか強がって、結局、寂しくて不安になって泣いてるし…。
~~♪
『電話?‥―――もしもし?』
?[泣いてたの?]
『‥ちょっとだけ。栞こそどしたの?』
電話をくれたのは青学での親友‥佐倉 栞。
栞[乾に言われたの。あやめのコトだから今頃寂しくて泣いてるだろうって。で、気晴らしに電話してみたのよ]
『流石データマン。貞治にはお見通しか~』
栞[乾だけじゃなく不二や手塚もよ]
『‥‥僕って、そんなに分かりやすい?』
栞[かなりね]
なんか、恥ずかしいなぁ…///
でも、嬉しいのだ。
栞[何かあったらいつでも連絡して来なさい。アイツ等もそう言ってたわよ]
『ありがと…。 ちょっとさ、アルバムを見てたら寂しくなってね‥』
栞[うん]
『色々考えてたら不安で、ね‥』
栞[うん]
『ヒロくんに迷惑かけないように頑張るって言っておいて不安で‥』
栞[分かってるよ。強がりだって。大丈夫、何があっても私はあやめの味方だから。アイツ等もね]
『ぅん‥。ありがと‥』
僕は幸せ者だ。心配してくれる親友がいる。みんなも。大丈夫! 僕は一人じゃないのだ。
コンコンッ、
『どうぞ!』
比「失礼します。お電話は終わったんですか?」
『うん! 栞が心配して掛けてくれたのだ』
比「そうでしたか。 やはり、急な転校は不安になりますよね」
『こんな時期に、だしね。仕方ないのだ』
比「‥‥」
『不安はあるけど、ヒロくんもアズちゃんもいるから頑張るのだ!』
比「我慢せずに頼るんですよ?」
『ありがと、ヒロくん』
比「では、お茶にしましょう。母さんがケーキを焼いたそうなので」
『うん!』
みんなの優しさがくすぐったいけど、凄く嬉しいのだ。
明日、みんなに会ったらからかわれそうだけど、会ったら元気を貰えそうだし楽しみだ!
夜にはおじさんも帰り、妹の早苗ちゃんと一緒に夕飯の準備をしながらお世話になります、と挨拶すれば優しく笑って迎え入れてくれた。これから新しい生活だけど、両親に心配をかけない為にもしっかりしなきゃ。
◆◇◆◇◆◇◆
翌日。僕は一人、電車に乗り青学へと向かう。家を出る時、ヒロくんに遅くならないように言われた。ヒロくんも夕方まで部活らしく、連絡する様にと念を押されたのを思い出して笑ってしまったのだ。本当に心配性なお兄ちゃんだよね。
『おはようございます!』
竜「おや? どうしたんだい?」
『顔出しです。みんなはランニングですか?』
竜「ああ。しかし、全国前に転校とはなぁ。しかも、転校先が立海。不思議な縁だね」
『あはは‥ι 昨日、立海のテニス部を見て来ましたけど…僕が青学だって言ったら空気が重かったですι』
竜「そりゃあ、そうだろう。ウチが負かしたからね。大丈夫かい?」
『どうですかね‥ι』
竜「まぁ、お前さんなら大丈夫だろうさ」
『頑張りますι』
その後も、スミレちゃんと話しながらみんなの帰りを待つ。前はいつものコトだったのに‥。なんだか、昔のコトみたいだ。
此処から旅立つと思うとやっぱり寂しいや。卒業とは違うし、名残惜しいのだ。
竜「なに泣きそうな顔してんだい」
『スミレちゃ~ん‥』
竜「まったくι いつでも来ればいいじゃないか」
『ぅん‥』
でも、やっぱり、近くで応援したかったなぁ…。
あ、部活どうしよう‥?
やりたい部活あるかなぁ?
特にやりたいのもないし、アズちゃんはテニス部のマネージャーだし‥。ホント、どうしよう‥。
考えただけで溜め息が出る。職員室に行ったスミレちゃんを見送り、誰もいないテニスコートでぼんやりしながらヒロくん達が頑張ってる姿を思い浮かべたら笑ってしまったのだ。
『みんな、テニスが好きなんだなぁ♪』
そんな彼等を見ているのが僕は好きだ。
賑やかで、楽しくて、厳しい練習も必死にこなして。その一生懸命な姿はカッコいいのだ。
だからこそ、転校なんて些細なコトでヘコたれてる自分が凄く子供だ。メンタルはかなり弱いからね。
マネージャーではなくなったけど、応援してる。もちろん、ヒロくん達も。コートの外からみんなを見よう。
?「あやめちゃんだにゃ~」
その声に振り返るとランニングから帰った部員達‥というか、レギュラー陣がいた。飛び跳ねながら手を振る英二に笑って手を振る。
今日が本当の最後。だけど、別に終わりじゃない。会おうと思えば会える。離れるのは寂しいけど、今は笑っていなくちゃ。折角、みんなといるんだもんね。
『ランニングお疲れ様なのだ!』
全国大会は必ず見に行くのだ!
青学を、ヒロくん達を応援したいから。どちらかなんて選べないからどっちも応援する。学校が始まったらヒロくん達の練習を見ていよう。部活には入らず。帰宅部なのだ!
†side:仁王†
昨日から俺はおかしくなったらしい。柳生のイトコ。神崎 あやめのコトが頭から離れないんじゃ。自分でも驚くぜよ。初めて会った女子が気になるとはの。
一目惚れではないナリ。多分、変装がバレたからだろう。あれを見破れる奴はそういない。それだけの自信が俺にはあった。だが、いきなり抱き付いてきた女子が柳生のイトコとは知らなかったが、やり過ごすコトもできた筈なんじゃが‥。
『“にお、くん‥?”』
そう言った彼女に驚くと慌てて離れ、瞳に涙を浮かべた泣きそうな顔にこっちが焦ったぜよ。とりあえず、場所を変えて、変装を解けば幼い笑顔で髪の色を褒めてくれた。言われ慣れた筈なんに、照れてしまったぜよ。
部活終わりに柳生から紹介をされた彼女が青学でテニス部マネージャーをしていたコトには流石に聞いた幸村さえ言葉をなくしてたのは貴重やったのぅ。
まぁ、柳生と恋人同士と聞いてきたときは俺も驚いたが。からかってやろうと冗談で肯定したら素直に受け止められて、柳生から冷たい視線をもらったナリ。紳士とは思えんよ。
同い年の筈なんじゃが、なんと言うか、ほっとけない子じゃったな。柳生が過保護になるのも分からなくはないぜよ。
比「何か考え事ですか?」
仁「いや、何もないぜよ。もう時間か」
比「はい」
仁「んじゃ、戻らんとな。幸村が戻ってから練習がハードぜよ」
比「全国大会が始まりますからね。 無敗が止められ、連覇に掛ける思いが強いからでしょうね」
仁「そうじゃな。お前さんのイトコは青学を応援しとるんか?」
比「どちらかにこだわってはいませんよ。勝ち負けよりも一生懸命な姿を見るのが好きらしく。悔いがなければそれでいいそうです」
仁「一生懸命な姿ねぇ。てっきり青学を応援しとると思ってたナリ」
比「彼女は優しい子ですから、どらかには選べないのでしょう」
仁「そうかもな」
優しい子か。あんなに素直な女はそういないぜよ。興味が湧いたナリ。
比「あまりあやめをからかわないで下さいよ」
仁「プリッ」
比「はぁ~‥ι」
仁「そういや、今日は来てないんじゃな」
比「今日は青学に行っていますよ。笑ってはいますが、やはり不安みたいですから」
仁「昨日も泣きそうな顔してたからのぅ。親の都合とは言ってたが、随分と中途半端な時期に来たな」
比「彼女の両親は自由と言いますか‥。急な事情で海外に行くコトが決まりましてね。あやめは残ると言ったそうですが一人暮らしは流石に出来ませんから、私の母がウチで預かると言ったのです。ですが、此方から通うには心配で‥」
仁「だから、転校するしかなかったんか」
比「笑って了承してはいたんですがね…」
聞き分けがいいと言うか。仕方ないと分かっているからなのかのぅ。
柳生が心配するのも分からんでもないがな。
まるで、迷子になった小さい子に見えたし。
仁「過保護じゃな」
比「昔から危なっかしいんですよ、彼女は」
仁「お前さんでも振り回されるコトがあるんじゃのぅ」
比「大事な家族ですからね」
柳生の家族と言う言葉に引っ掛かりを感じたぜよ。柳生はそうでも彼女は違うんじゃないのか。なんて考えてる俺の方がどうかしとるの。
なんだってこんなに彼女が気になるのか。自分でも不思議じゃ。
―――――‥
練習が終わる頃には全員、ヘトヘトになってた。大会前にこの練習量は鬼じゃ…。部室で着替えをしていると、柳生が携帯を片手に固まっとるナリ。
仁「柳生よ。どうしたんじゃ?」
比「いえ、母があやめにお使いを頼んだらしいのですが‥帰りが遅いと‥」
仁「寄り道でも――‥」
バンッ!!
?「ヒロくん!」
丸「Σ御崎ッ!?」
切「いきなり入って来ないで下さいよ! まだ、着替えてないんスから!」
?「大丈夫! 眼中にないから!」
切・丸「「Σ!!?」」
比「梓‥ι」
相変わらず面白い子ぜよ。眼中にないとはの。言われたブン太と赤也はショックだったらしいな。御愁傷様ナリ。
比「どうしました?」
梓「あやめちゃんが迷子らしいの!」
比「Σなんとッ!?」
梓「さっき電話が掛かってきて、帰り道が分からなくなったみたいで」
比「急いだ方が良さそうですね」
梓「動かないように言ってあるから、急ごう!」
比「はい! では、お先に失礼します」
慌ただしく出て行った二人に呆気にとられながら俺もバッグを背負って部室を出る。状況が掴めず固まる奴等を尻目に幸村と参謀に声を掛けて。
しかし、迷子とはのぅ。とはいえ、あの二人の慌てようは大袈裟じゃないのか?
そもそも中三にもなって迷子って‥‥あの子ならあり得そうじゃがι
仁「よっ」
梓「仁王くん!」
比「どうしました? 何か用でも?」
仁「ないよ。ちょっと気になったから来ただけじゃ」
梓「だよねι」
仁「あの慌てようは流石に気になるぜよ」
比「すみませんι 彼女はよく迷子になるんですが…。何故か決まって―‥‥」
梓「ヒロくん!あそこ!」
見つけたのはいいが‥。一緒にいるオッサンは誰じゃ? 知り合いかと聞く前に柳生が走り出していた。
梓「やっぱり‥ι」
仁「?」
梓「あやめちゃんてぽわぽわして幼いから怪しい人に絡まれやすいんだよι 本人に自覚も警戒心もないから心配で」
あ~‥柳生のあの慌てようはそう言うことじゃったのか。
□■□■□
みんなに見送られて電車に乗るとおばさんからメールが来てお使いを頼まれたから駅に着いたら近くのお店でお使いを済ませたんだけど‥。
比「荷物を抱えたお婆さんを助けて荷物を運んだ迄は良かったんですが‥」
梓「帰り道が分からなくなっちゃったんだねι」
仁「仕方ないとは思うが‥中三で迷子とはのぅ」
『ごめんなさぃ…(シュン...』
ホントに情けない…。見なかったことに出来なくて、大丈夫と思ったんだけど意外と距離があった。覚えてる場所を見つけながら歩いたんだけど分からず。申し訳なく思いながらアズちゃんに電話をしたのだ。 居場所を伝えて動かないように言われて待っていたら知らないおじさんに声を掛けられて、困っていたらヒロくんが来てくれた。
比「何はともあれ無事で良かったです」
梓「あやめちゃんは正しい事をしたんだから悪くないよ♪」
『でも、中三にもなって迷子は情けないのだ…(シュン...』
比・梓「「(仁王くん‥)」」
仁「‥‥ι」
ぽふん、
『‥ニオくん?』
仁「すまん。次からは気を付ければいいだけじゃよ」
『ぅん‥ありがと、ニオくん(微笑)』
仁「‥プリッ」
比「さぁ、帰りましょうか」
『うん!』
四人で歩く帰り道。青学でのコトやヒロくん達のコトを話しながら帰る。待ってる間、凄く心細くて寂しかった。でも、ヒロくんが来て、アズちゃんにニオくんも来てくれたのが見えた時、凄く嬉しくなった。同時に申し訳なくもなった。ニオくんの言葉はもっともで、その通りだと思い凹んでいたらニオくんが頭を撫でて“次からは気を付ければいいだけじゃよ”って言ってくれたから笑ってお礼が言えた。やっぱりニオくんは優しいのだ。
家に着けばおばさんが心配していて謝りながら事の経緯を話したら褒めてくれて少し恥ずかしかった。
比「今後は一人で出歩かない様にしてくださいね」
『分かった!』
比「知らない男性には気を付ける様に」
『‥分かったのだ』
比「(間がありましたが‥ι)
学校が始まったら登下校は一緒ですよ。部活がありますから待たせてしまいますが…。部活は入るんですか?」
『ううん。やりたいコトもないからヒロくん達の練習を見てるのだ』
比「そうですか。では、忘れ物をしないように準備をしておいて下さいね」
『はぁい!』
心配してくれるヒロくんやアズちゃん、ニオくん。僕は幸せ者だ。こんな僕を心配して、駆けつけてくれる優しい人達に恵まれているのだから。
『(あれ? ニオくんは‥違うかも‥?)』
まだ、彼を知らないけど―‥。
『温かい手だったのだ‥(微笑)』
頭を撫でてくれた大きな手の温もりは優しくて‥嬉しかった。ヒロくん以外で撫でてくれたのはニオくんが初めてだなぁ。あっちにいた頃はなかったし。ニオくんもお兄ちゃんみたいだよね。
もっと、仲良くなりたいのだ♪
◆◇◆◇◆◇
夏休みが終わって、登校初日の朝。
ヒロくんは朝練があり、僕も一緒に登校した。緊張からか、気分が重い…。
『全国大会が始まるんだよね』
コートの外からヒロくん達の練習を眺めながら笑みが浮かぶ。一生懸命な姿はやっぱりカッコいい‥。見てるだけで嬉しくなっちゃうなぁ。
?「楽しそうだね」
『幸村くん‥』
幸「やぁ、おはよう。基礎練を楽しそうに眺める子はいないから珍しくて」
『楽しいというか、嬉しいかな』
幸「何故だい?」
『一人一人が誰よりも負けず嫌いで、チームメイトでさえ倒したいライバルだけど。根っこは同じ。強い絆がある。だからこそ、カッコいいと思うし。見てるだけで嬉しくなるのだ(満笑)』
幸「そうか‥。
(素直というか、純粋な子だな)」
僕も頑張らなきゃ!
みんなが頑張ってるんだもんね。
幸「何を見てるんだい?」
『これ!』
幸「写真?」
『うん!レギュラー陣と撮ったの♪』
幸「いい写真だね」
『宝物なのだ(微笑)』
待受にした写真はこの間、行った際に撮ったもの。僕の宝物でお守りだ。
練習を終えたニオくんが来た。
『おはよう。それと、お疲れ様なのだ!』
仁「おう。そういや、お前さんクラスは決まってるんじゃろ」
『3Bだよ』
仁「ほぉ、ウチのクラスか」
『そうなの!?』
仁「同じクラスぜよ」
『それは嬉しいのだ!』
仁「ピヨι」
『~~♪』
知らないクラスだったらどうしようとか思ってたから、凄く嬉しい。
仁「‥‥ι
(そんなに嬉しそうにされると照れるぜよ‥。ホントに素直な子ナリ)」
比「そろそろ教室に行きますよ」
『ぅん‥』
う~‥やっぱり緊張するのだ。
比「大丈夫でしょうか‥ι」
梓「凄く心配だよね(オロオロ..」
丸「心配し過ぎだろぃ」
仁「‥‥」
比「仁王くん?」
『ほわ?』
仁「見ときんしゃい」
『??』
そう言って出されたのはニオくんの手。言われるがままに見ていると‥。
ポンッ、
『!』
仁「プレゼントぜよ」
突然、ニオくんの手から小さな造花の花束が現れた。何もなかったのに。
『ニオくんは凄いね』
仁「?」
『‥―――まるで、魔法使いみたいなのだ!(満笑)』
仁「プリッ」
丸「ただの手品だろぃ」
梓・幸「「丸井、黙れ(黒笑)」」
丸「!?」
幸「ほら、行くよ」
仁「大丈夫じゃよ」
ニオくんは笑って言った。僕の頭を撫でて。やっぱり、ニオくんは魔法使いだよ。だって…さっきまでの不安が和らいだのだから。
「今日から転校して来た神崎だ。仲良くしろよ」
『神崎 あやめです。よろしくお願いします』
「神崎の席は仁王の隣だ。あそこの銀髪な」
仁「知り合いじゃから分かっとるよ」
「そうなのか。なら、何か分からんコトは仁王に聞けな」
『はぃ‥』
席に向かう僕に突き刺さる様な視線に泣きそうになる。好奇心からよりも、なんというか‥‥悪意の様な視線があるのだ。怖いのだ。
仁「のぅ」
『ニオくん?』
仁「よろしくな」
『‥うん!』
仁「(お前さんには笑顔が似合うナリ)」
ニオくんが笑うと僕も笑ってる。鋭い目付きなのに笑い掛けてくれると優しく細められて、それが僕は嬉しい。
休み時間になれば声を掛けられた。物珍しさにしか見えない。だって、話の内容は“仁王くんと知り合いってなんで?”だから。答えれば興味が失せたみたいに離れていく。でも、今はそれが丁度いい。
ヴゥー‥
『メール‥!』
仁「どうしたんじゃ?」
『ニオくん。周助からメールが来てね』
仁「周助‥。不二か」
『うん! 泣いてないかい?って。僕、泣き虫だからみんな心配してくれるんだ』
周助は特に勘がいい。離れていても分かるんだから凄い思う。たまに黒いけど‥。
仁「(なんか、ムカつくぜよ)」
『ニオくん?』
仁「ん?」
『どうしたの?』
仁「なん?」
『怒ってない?』
仁「!」
やっぱり、迷惑でしかないよね。甘えてばかりじゃダメなのだ。
ぽふん、
『‥‥?』
仁「怒っとらんよ。お前さん、付き合ってた奴居るんか?」
『居ないよ。僕ってそういうの鈍いんだって』
仁「なるほどのぅ。好きな奴居らんかったんか?」
『居ないなぁ。恋より部活が楽しかったから♪』
仁「マネージャーがそんなに楽しいとはのぅ」
『変だよね。よく言われる。
でも、頑張ってる姿を見ているとカッコいいと思うし。出来ることはやろうって思ってたから苦でもなかったんだぁ』
仁「部活は決まってるのか?」
『帰宅部だよ』
仁「何もやらんの?」
『今からじゃ中途半端だからね。ヒロくんの頑張る姿を見ていようかと♪』
仁「なんだ、柳生だけなんか…」
『ニオくんも見ているのだ! 迷惑じゃなければ‥』
仁「迷惑じゃないぜよ」
『ありがと(微笑)』
今日は始業式の為、午前中で終わり。
部活に向かうニオくんと丸井くんを見ながら携帯を開く。青学のみんなとの思い出に浸る。
きっと、みんなも部活にまっしぐらだろうなぁ。賑やかで、楽しくて。でも、もう、僕はソコには居ない。強がってはみたものの‥やっぱり、寂しいな…。
こんなコトなら――‥。
『あっちにいれば良かったのだ…(ポツリ』
大丈夫だと思ってたんだけどなぁ‥。
ヒロくんが終わるまで校舎を歩こう。校内で迷子じゃ迷惑でしかないもんね。
とんっ、
『あ! ごめんなさいっ‥』
?「大丈夫ぜよ」
『‥ニオくん』
仁「何処行くんじゃ?」
『校内を歩こうと思って。部活、早く行かないと怒られるよ?』
仁「‥‥」
『??』
反応がない。しかも、何故か…見られているのだι
ぽふん、
『え?』
仁「一緒に行くぞ」
『え? え? ニオくん?』
丸「お? ソイツも連れて行くのか?」
仁「ああ。一人じゃ可哀想じゃからな」
『ニオくん‥』
とくん、
その胸の小さな高鳴りが何なのかはまだ分からないけど。とても優しくて、温かい気持ちが広がって心地良いのだ。後ろを歩きながらその大きな背中を見つめる。ゆらゆらと揺れる尻尾のような結ばれた髪が可愛らしく見えた。
ふと、ニオくんに聞かれた“好きな奴”について思い出した。
恋と呼ぶには幼くて。初恋とも違う。憧れがあってるかもしれない。そう考えると僕はまだ恋を知らないのかもしれないなぁ。
梓「あやめちゃん!」
『アズちゃん♪』
ぎゅぅ、
丸「仲良いのは分かるけど、抱き合う必要ないだろぃ」
梓「だって~。抱き締めたくなるんだもん♪」
『えへへ///』
アズちゃんは優しいのだ。着替えの為に部室に向かったニオくんと丸井くん。私はアズちゃんとお喋りをしながら待っているとヒロくん達も来て、部活が始まった。僕は幸村くんに許可をもらってコート内から見学。
『部員でもないのに、無理言ってごめんなさいなのだ』
幸「構わないよ。それに、全くの素人じゃないしね。
でも驚いたよ。仁王がわざわざ頼んできたんだからね」
『ニオくんが?』
幸「君が気に入ったんじゃないかな」
『僕? う~ん‥そうかなぁ?』
幸「ああ見えて女の子にはあまり関わらないんだよ。仁王の周りに集まる子は賑やかで派手な子が多いからね」
『そっか~。だから、視線が痛かったんだね』
幸「視線?」
『うん。ニオくんと知り合いだって分かったら悪意のある視線を感じたんだ‥。流石は立海テニス部レギュラー陣。貞治が言った通り、みんな人気者なんだね』
幸「俺達にとってはいい迷惑でしかないんだけどね」
はっきり言うなぁ‥。これだけ真剣に練習してるのにあの騒ぎだ。仕方ないかもしれないのだ。
頑張る姿を見るのは僕も好きだけど、彼等の邪魔になることはしたくないのだ。
アップが終わって打ち合いが始まると幸村くんも厳しい眼差しで見ていた。僕の視線はコートに転がる一つのボールを映し、足が動いた。
邪魔にならないように小走りで取りに行き、戻る。近くにいた一年生にボールを渡したらコートの外にいる女の子達の話し声が耳に入った。
「何、あの子?」
「知らない」
「狡くない」
人気者とは言ってだけど…。ここまでとは思ってなかった。あの時と同じ。悪意のある視線が突き刺さる。
ぽふん、
『!‥‥ニオくん』
仁「どうしたんじゃ?」
『ううん。練習は?』
仁「今は交代じゃ。柳生もな」
『ヒロくん、お疲れ様!』
比「はい。大丈夫ですか?」
『ちょっと、視線が怖いのだ‥』
仁・比「「なるほど…」」
『みんな人気者だね!』
ちゃんと笑えてるかなぁ?
二人を見れば、なんだか困り顔をしてる。僕は分かりやすいと栞に言われたのを思い出した。というコトは顔に出てるのかもしれないのだ。
比「相変わらず敏感な子ですね」
仁「敏感?」
比「他人の仕草や視線、態度。無意識なんでしょうが…」
仁「なるほどのぅ」
敏感、なのだろうか…?
気にしすぎなだけだと思う。嫌われたくないから、怖いから。そういった思いがいつの間にか警戒心のようなモノに変わっているのかもしれないのだ。
はぁ~‥。なんか、やっていける気がしないなぁ。
比「あやめ‥」
『大丈夫なのだ! ほら、練習しないと!僕、終わるまで校舎を歩いているのだ」
比「一人でというのは流石に‥ι」
『校舎を歩くだけだから大丈夫! 終わったら連絡してね!』
比「分かりました」
ヒロくんに笑ってコートを出た。
心配をかけてちゃダメだって分かってるのに、ついつい甘えてしまう。小さい頃から僕の手を引いていたヒロくんは今も変わらずに僕の心配をしてくれる。それは、アズちゃんも同じなのだ。一人じゃないのは確かだし、まだ始まったばかりだよね!
『此方は特別教室があるんだ』
理科室や家庭科室、調理室に美術室に多目的室。見て歩いていると数人の女子が向こうから歩いて来た。少し派手目のその子達は僕を見るとヒソヒソと何か話してる。ちょっと、不安になって、咄嗟に空き教室に入った。
『此処は…使われてないんだね』
「ちょっといい?」
『‥はぃ』
さっきの女の子達が入って来ると僕は緊張と怖さから俯いた。
近寄って来たと思ったら、答える暇もなく質問攻めに合い戸惑う。
『あのっ…。結局、何が…聞きたいのですか…?』
「だぁから~。なんでコートに入れたのよ」
「特別扱いって狡くない?」
『え、と‥‥ι』
なんて言えばいいのだろうか?
コートに入れたコトがそんなに重大だとは思わなかったのだ…。言葉に詰まる僕に苛立つ女の子達から冷たい言葉が吐き出される。
「柳生くんの知り合いだからって特別扱いはないんじゃないの?」
「柳生くんの知り合いだから仁王も優しくしてるんだろうね」
「迷惑な子~」
クスクス笑う女の子達の言葉が突き刺さる。その通りだと思うから。僕は…やっぱり、情けないのだ。
俯いたまま視界が揺れるのを必死に我慢していると――‥。
?「おーおー、怖い女が居るぜよ」
「に、仁王ッ?!」
驚く女の子達を気にもせずに歩み寄る足音がやけに響く。文句を言っていた女の子達は黙り込み、ニオくんは続ける。
仁「転校生相手にイジメとはのぅ」
「別に、イジメてたワケじゃ」
仁「はぁ~‥迷惑な奴等じゃな。お前さんら」
「ッ…」
仁「俺はその子と仲良くしたいんじゃ。だからな? 余計なことしないで欲しいぜよ」
「!?」
慌てて出て行った足音を聞きながら俯いたままでいるとニオくんの手が頭に乗せられて、視線を少しだけ上げた。
仁「怖かったな。もう大丈夫じゃよ」
そう言って優しく笑っているニオくんに我慢してた涙が零れて落ちてしまった。見られたくなくて距離を取り、涙を拭いながら笑って見せた。
『ありがと‥。もう、大丈夫だよ。 でも、ニオくん‥部活は?』
仁「‥‥」
『サボりはよくないのだ! 僕なら大丈夫だから部活に―――‥!?』
驚いた…。だって、急に暗くなって。頭を撫でられていたから。
『あの、ニオくん‥?』
仁「我慢しなくていいよ。怖かったじゃろ? もう大丈夫だからな」
『ッ…』
ポンポンとあやされると余計に泣きたくなって、涙が溢れてニオくんの胸で泣いた。泣き止むまでニオくんは僕をあやし続けて、その優しさが僕には救いだったのだ。
『ニオくん‥ごめんなさいなのだ…』
仁「お前さんが悪いんじゃないだろ? 俺は迷惑なんて思ってないから気にせんでもよかよ」
『でも‥』
仁「アイツらのコトは気にするな。迷惑なのはあっちぜよ。だから、これからも仲良くして欲しいナリ」
『‥‥うん////』
ニオくんの言葉が嬉しくて、ちょっとくすぐったい。
その後、ニオくんは一緒に校内を歩いてくれた。部活は?って聞いても気にするなって言われるし、なんだか申し訳なくいれば頭を撫でてくれる。
仁「ほら、行くぞ」
前を行く猫背に揺れる尻尾。不思議な感情が胸を温かくする。初めての感覚だけど、嫌な感じはしない。
ニオくんは本当に魔法使いなのかもしれないのだ。
仁「置いていくぞ」
『(ニオくんはやっぱり優しいなぁ)』
コートに戻れば部活は終わっていて。勝手に抜け出したニオくんは真田くんにお説教されていたけど、効果はないみたいだった。
胸に芽生えた気持ちに気付かぬまま、僕の新しい生活は幕を開けたのです。
