◈薔薇の刻印
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
‡side:冬獅郎‡
冬「ギン!テメェ、また勝手に入り込んだな!!」
ギ「入り込んだなんて人聞き悪いやないの。ボクは弟思いなだけやvV」
冬「気色悪ぃんだよ!!佳奈!なんとかしろっ!」
佳「冬獅郎。その前に言うことあるでしょう?」
冬「う゛っ‥‥ただいま」
佳「お帰りなさい(微笑)」
ギ「佳奈には素直やねェ~。お兄ちゃん寂しい‥」
冬「ウザい」
佳「しつこい」
ギ「佳奈~~‥」
冬「‥‥‥」
この森の奥深くに屋敷を構える吸血鬼。
必要な時には村にも出向くが、俺はまだ行ったことがなかった。面倒なのは目に見えてるからだ。
この屋敷には元々、多くの吸血鬼と花嫁が居たが‥次第に子孫を残すことが出来ずに減り、今は俺だけ。ギンと佳奈は近くに二人で住んでる。
何かと面倒を見てくれる“佳奈には”←ここ重要だ。感謝してる。
ギンは――‥ウザい。
佳「昨日はどうしたの?」
冬「‥‥ちょっと、しくじって動けなかった」
ギ「成る程。だから、薬草の匂いがするんやね」
冬「‥‥」
ニヤニヤ笑うギンに苛つく。
心配する佳奈に大丈夫だと、伝えて部屋で休むことにした。
ベッドに体を沈ませ、彼女を思い出す。
冬「(綺麗だったな‥///)」
笑った顔が何よりも綺麗。
動物と戯れる姿は愛らしい。
そんな彼女に脅迫までして手に入れようとする男。怯える彼女。抱き締めた小さな肩が震えて、泣いたあやめを守らなきゃならねーと強く思った。
アイツは、あやめは、
冬「絶対奪ってやる」
‥――俺の花嫁だ
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
冬「は?」
ギ「せやから。冬獅郎も今年で二十歳やし、お嫁さん見つけなアカンやんvV」
冬「だから?」
ギ「村行って可愛い子探すんや♪」
冬「‥‥」
自分が行きたいだけだろ、絶対‥。
ひとり浮かれるギンを冷めた目で見ながら佳奈に声をかける。
冬「いいのか?」
佳「ギンは馬鹿なくらいが丁度いい」
冬「成る程。‥気が乗らねー」
村に行くのは好きじゃない。
視線が気になってそれどころじゃないだろうし、なにより‥
冬「(見つけたしな)」
花嫁はもう見つけた。今更探す必要もない。二人には言ってないから、仕方ないが。
佳「冬獅郎の為、ね?」
冬「わかってる」
吸血鬼は二十歳を迎えると本能がより強くなるという厄介な問題があった。だからこそ、二十歳を迎えると花嫁を招く。本能が暴走でもすれば見境がなくなる可能性があるからだ。
あくまでも可能性であり、例はない。
冬「佳奈」
佳「なに?」
冬「花嫁なんだけどさ‥」
佳「うん」
冬「‥――見つけてあるんだ///」
驚く佳奈から顔を背ける。
気恥ずかしくて、次の言葉が気になった。
ぽふん、
冬「佳奈?」
佳「冬獅郎が見つけた子なら、きっと優しい子ね」
冬「‥まぁ、な///」
優しく、嬉しそうに笑う佳奈に一言返すのが精一杯だ。
親に捨てられた俺を拾ったのはギンだった。
何故捨てられたかって?
父親は吸血鬼で母親が人間、別に他の吸血鬼と変わらない。変わっていたのは俺の“容姿”だけ。
赤子の俺をギンが拾って育ててくれたんだ。その点については感謝してる。6つ違いの兄と言えば兄だが‥‥
ギ「佳奈~。愛してるよォvV」
佳「それ、この間別の女に言ってたね」
ギ「そうやったかなぁ?ボクには佳奈しか居らんよ」
佳「私はギンじゃなくてもいいわ」
ギ「佳奈~~ι」
冬「はぁ‥」
正直、アレを兄だと思いたくない。
佳奈は姉だと思ってるけどな。優しいし、ちゃんと俺を見て話を聞いてくれる。理解者って言ってもいいな。
ギ「花嫁見つけたってどんな子?」
冬「‥‥」
佳「聞いてたわね」
ギ「えぇやん、冬獅郎の兄なんやし♪」
冬「前によくしてくれてた薬売りの娘だ」
佳「あのご夫婦の‥」
あやめの両親は俺たち吸血鬼に優しくしてくれた。
薬を売ってくれたり、食い物を分けてくれたりと。
ギ「亡くなったんやってねェ」
佳「娘さんが居るとは聞いていたけど、会ったことないね」
ギ「いつの間に唾付けたん?」
佳「唾って‥」
冬「‥‥」
ギ「ん―?」
冬「絶対言わねー」
ニヤニヤ笑うギンを睨みつけて顔を背ける。
からかいたいだけだろうが、ったく‥。
ギ「そういえば、近々結婚式があるらしいわ」
佳「結婚式?誰の?」
ギ「地主の息子やて」
冬「!?」
ガタッ、
佳「冬獅郎??」
冬「出て来る」
それだけ言って、村へと向かう。
冬「(あやめ‥)」
人間が怖い。
そう言ったアイツは悲しげで、ひとりぼっちで‥。
なんで、もっと早く、迎えに行かなかったんだって悔やんだ。
冬「クソッ」
焦る。あやめが心配で、不安で泣いてないか。酷いことされてないか。不安に押しつぶされそうになりながら、森を走り出す。
‥――あやめ
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「薬売り?ああ!あやめちゃんか」
「そういえば、最近見ないねー」
冬「そうなのか?」
村に着くなりフードを被ってあやめを探す。が、村の奴に聞いても分からない。
「結婚式の準備で忙しいのかもね!」
冬「結婚式?」
「あやめちゃんと地主の息子さ!めでたいね!」
嬉しそうな村の連中に内心苛ついた。
あやめは嫌がっているって知らねーのかよ‥めでたいのはコイツ等の頭ン中だな。
?「そらめでたいなぁ」
「‥‥!?」
冬「(最悪だ)」
独特の話し方でわかってしまう自分が嫌になる。村の連中を見れば、怯えた表情だ。
そんな視線を向けられるギンは、いつものようにニヤニヤ笑っていやがる。
ギ「ほな、会うてみようか。行くで冬獅郎」
冬「は?」
腕を引かれた反動でフードが取れた。ヤバい、そう思っても遅く。村の連中の目の色が変わった。
冬「チッ」
ギ「そう拗ねたらあやめちゃんに嫌われるで♪」
冬「‥‥何しに来たんだよ」
ギ「あやめちゃんに会いに」
冬「佳奈、なんとかしろっ!」
佳「冬獅郎。ギンに任せなさい」
冬「‥‥」
佳「大丈夫。冬獅郎が傷つくことは絶対しない‥ね?」
ギ「傷つけたらボクが佳奈に嫌われるやん」
冬「‥‥」
何するんだか知らねーが‥佳奈が大丈夫っていうなら信じるか。
―――――――――‥
「それは、わざわざありがとうございます」
ギ「いいえー。めでたいことですし、村の人たちも喜んどりますわ」
地主の家に着くなり、愛想笑いしながらお茶を啜った。こういう時、ギンの能面顔は役に立つんだな。
地主の隣に座る息子を見るだけで腹が立つ。
ギ「花嫁さんは居りませんの?見てみたいんですが」
「え、えぇ‥出掛けていましてι」
ギ「残念ですわ。
あ、そうそう!薬売りのご夫婦は何故亡くなったんです?」
ギンの言葉に地主の肩が震えた。やましいことがある証拠だな。
ギ「よぉしてくれたんですよ。ボクらにも優しくしてくれて」
「そ、そうでしたか‥ι」
佳「ご息女がいらっしゃると聞きました」
ギ「その子を花嫁さんに貰えるか、聞きに来たんですわ」
「!‥そ、それはι」
狼狽える地主のオッサンを見かねた息子が口を開く。
「申し訳ないが、私の花嫁がそのご息女なんですよ」
ギ「そら驚いたわ!せやけど、ホントに愛し合ってはります?」
「もちろん」
そう自信満々のソイツに怒りが湧いた。
冬「よく言うぜ。脅迫までして泣かせるような最低野郎が」
ギ「脅迫?そないなことしとるんですか?」
「まさか!その子供の言いがかりですよ!」
子供‥だと。
頭にきて言い返そうとしたら、佳奈に遮られた。
佳「子供?冬獅郎は二十歳の成人男性だけど」
ギ「見た目がちっちゃいからなぁ♪」
ニヤニヤ笑うギンの足を思いっきり踏んづける。
ギ「~~ι」
冬「フンッ」
佳「‥兎に角、彼女に会わせて下さいませんか?」
「で、ですから‥今は出掛けて――‥」
「彼女なら居りますわよ」
「エレナ!?」
突然、割って入って来た女に驚くオッサンと息子。
佳「貴女は?」
「村長の娘でエレナと申します。お探しの娘でしたら、此方に」
その言葉と同時にあやめが入って来た。
「あやめ!大丈夫かい?
顔色も悪いし、休んだ方がいい。
さぁ―‥」
ぱしっ、
『気持ち悪い‥』
無表情のまま、そう吐き捨てるあやめは別人のようだ。
顔色も悪いが、服も汚れている。
ギ「随分、愛されてないんやね」
「っ!」
「私の家の小部屋に監禁されていましたの。お父様に聞けば、あなた方の指示だとか」
冬「!?」
‥――監禁、だと
あやめを見れば、やっと俺に気づいたのかホッとしように弱々しい笑みを浮かべている。
胸が痛む。もっと早く、否、あの日さっさと奪っちまえば良かったんだ。
そうすれば‥あやめが傷つくことはなかったのにッ!!
佳「冬獅郎」
冬「‥」
佳「少し席外してくれる?そちらのお嬢さん方も」
「はい」
冬「‥‥」
佳奈に言われた通りに席を外す。
ぱたん、
「では、私はこれで‥」
『エレナ』
「なに?」
『助けてくれて、ありがとう‥』
「ぁ‥‥当然のことをしたまでですわ///」
廊下に残された俺たちはお互いに黙ったままだ。
なんて言えばいいのかわからねー。
気の利いた言葉が浮かばず髪を掻き上げる俺に、あやめが口を開いた。
『冬獅郎くん‥』
冬「‥ん?」
『森に、行かない‥』
冬「そうだな。行くか」
あやめの手を握り、歩き出す。
おぼつかない足取りのあやめに合わせてゆっくりと歩く。
小川まで来て、座る。
同時にあやめの周りに動物が集まって来た。
『こんにちは‥』
力なく笑うあやめを心配するように動物が寄り添っている。
その優しさに瞳を閉じながら感じてるあやめの手を握り締めた。
『冬獅郎くん‥?』
冬「ごめん」
『ぇ?』
冬「もっと早く、迎えに行っていたら‥怖い思いしなくてもよかったんだっ」
俯いて歯を食いしばる。
『小さい頃ね、両親を探して森に入っては迷子になったことがあるの』
‥――あぁ、知ってる
『寂しくて、怖くて大泣きして』
‥――森中に響いてたな
『その時、フードを被った男の子が声を掛けてくれたの。
安心したらまた泣いちゃって‥。
頭を撫でてくれた』
‥――なかなか泣き止まねーから焦ったよ
『森の中を案内してくれて、いつの間にか笑って‥。
帰り際に“一緒にいたくて”縋って‥約束したんだ』
‥――守ってやりたいと思った
『シロにーたん‥』
懐かしい呼び方で呼ぶあやめは嬉しそうに笑ってた。
冬「なんだよ‥///」
流石に恥ずかしい。
『年上だったんだ』
冬「まぁな。しかし、お互い気づかねーもんだな」
『私、顔見てないし。
冬獅郎くんは―‥‥冬獅郎さんは気づかなかったの?』
冬「‥‥気づかねーよ。そんなに、綺麗になってたら―‥///」
『///!!』
微妙な空気になっちまった///
何も言わないあやめをチラッと見れば真っ赤になって俯いてる。
‥――可愛い奴
きゅっ、
『!‥冬獅郎さん?』
冬「俺と一緒に来い。絶対幸せにしてやるから‥泣かせたりしないから‥俺の傍にいろよ、あやめ」
真っ直ぐ見つめて言葉を紡ぐ俺にあやめは静かに涙を流して、今までで一番綺麗に笑って―‥
『十分、幸せだよ。
‥だって、冬獅郎さんが傍に居るんだもん(微笑)』
‥――俺もだよ
冬「好きだ、あやめ」
『私も‥大好きだよ、冬獅郎さん』
あれから私は冬獅郎さんと一緒に森の奥深くにあるお家で暮らし始めた。
兄のギンさんとその花嫁さんの佳奈さんは優しい人たちで何かと世話をしてもらってる。
暮らし初めて、吸血鬼が何をしているのかを知った。たまに冬獅郎さんが怪我をしている理由。化け物退治とは聞いていたけど、心配になってしまう。
だから、私は私に出来ることをしようと思い薬草の勉強を一からやり直してる。出来るだけ冬獅郎さんの役に立ちたくて。
『おはよう!今日もいい天気ね』
小鳥さんに挨拶して、お洗濯。干し終えたら冬獅郎さんを起こして朝食。
そんな当たり前のことをこなしながら幸せだなぁと感じる日々。
『花嫁、なんだよね‥』
あまり実感がない。
特に変わったことはないし、冬獅郎さんも普通。佳奈さんに聞けば、
佳「冬獅郎は貴方を大切に思っているから、我慢してるのかもね」
と言われた。
大切にされているのは嬉しいけど、私も大切だから我慢しないで欲しい。
コンコン―‥
『まだ寝てるのかな?』
ノックをしても返事がない。
ドアノブを捻り、開くとギィィ、と音が鳴る。
『冬獅郎さん?』
呼んでも返事がない。ゆっくりとベッドに近づいて見れば、幼い寝顔の彼。なんだか幸せそうな寝顔に笑みが零れる。
そっとベッドに腰を下ろして銀色を梳く。
冬「ん‥‥」
ゆっくりと目が開かれ、綺麗な翡翠に私を映した。
『おはよう、冬獅郎さん』
冬「はよ‥」
まだ、はっきりしないのかぼんやりしてる冬獅郎さんに手を掴まれてそのまま上に被さるように倒れた。
『Σぁあのッ‥ごめんなさい///!!』
冬「引っ張ったのは俺だぜ?」
『いや、そうですけど‥///』
恥ずかしい///!この体勢は流石に恥ずかし過ぎる///!!
離れようとしても、冬獅郎さんに手は掴まれてるし、腰に腕回されて動けない。
『冬獅郎さん‥恥ずかしいよ///』
冬「別に恥ずかしがることないだろう。花嫁なんだし」
『そ、そういうことではなく‥///』
冬「嫌なのか‥」
『Σ違います///!!』
嫌なんかじゃない。むしろ、嬉しいくらいだ。ただ―‥
『ぉ、落ち着かないの///』
冬「?」
『ドキドキするし、なんか‥ソワソワして‥落ち着かない///』
冬「(可愛い///)」
もう一度もがいてはみたものの、無意味に終わった。
冬「甘い匂いがする」
『へ?甘い匂い?』
なんだろう?
首を傾げる私に冬獅郎さんは笑って教えてくれた。
冬「薔薇の刻印を刻んだ花嫁からは刻んだ本人にしかわからない匂いがするんだ。自分のモノって証がな」
『でも、初めて会った時冬獅郎さん気づかなかったって』
冬「薬草の匂いが強くて気づかなかったんだろうな。こんなに甘い匂いに気づかないわけないしな」
『!?』
首筋に顔を埋める冬獅郎さんに私の心臓は壊れるくらい早鐘を鳴らしている。
冬「そういや、まだあやめの血貰ってなかったな」
『ぅ、うん///』
冬「いいか?」
『‥///』
コクンと頷いた私に冬獅郎さんは優しく笑って体勢を変えた。
見上げる私に顔を近づけて、額を合わせる。吐息がかかる数㎝の距離がなんだかもどかしく感じた。
ちゅっ、
初めてキスはとても優しいモノだった。
冬「痛くしないから」
『ぅん///』
そう言って、首筋に埋まると痛みはなくて、代わりに優しく吸われたのがわかる。
『ん‥///』
甘く痺れる感じがして、吐息が漏れた。
冬「美味い」
『そう、なの///?』
冬「ああ、甘くてすげーそそる」
そう言った冬獅郎さんの瞳はギラギラした獣のような強い光が見える。獲物を捉えるような‥。その瞳を見ている内に体が熱くなる気がした。
冬「‥チッ」
『?』
いきなり舌打ちして不機嫌になってしまった冬獅郎さん。
ベッドから降りて、バンッ!勢い良く扉を開くと人影が‥。
冬「盗み聞きとはいい趣味してんじゃねーか‥ギン」
ギ「嫌やなぁ。可愛い弟が気になって来ただけやないのι
おはよう、あやめちゃん」
『おはよう、ございます‥ギンさん』
冬「何の用だ?まさか、本当に冷やかしに来ただけじゃねーだろうなぁ‥ああ゛(怒)」
ギ「えー、と‥ι」
佳「だからやめなって言ったのに」
『佳奈さん』
青筋立てて怒る冬獅郎さんに、睨まれて冷や汗かいてるギンさん。佳奈さんは呆れ顔で溜め息。私は、どうしたらいいやらわからずベッドに座ったままだ。
佳「ごめんね」
『い、いえιほっといていいんですか?』
佳「悪いのはギンだから。ほっとく」
『はぁ‥ι』
言い争いを始めた二人を佳奈さんと眺める。
こうして見てると、なんだかんだ言って仲良しなんだと思う。
佳「邪魔しちゃったね。冬獅郎にも悪いことした」
『そんなことないです!冬獅郎さんもお二人の前では素直ですし』
佳「あやめちゃんの前では甘えたね」
『Σ甘えた///!?‥‥そうですかね///』
あまり実感がない私に佳奈さんは笑って、
佳「吸血鬼は花嫁にしか触れないの。浮気もしない。一途で優しくて‥傷つきやすい。私はそう思う」
『佳奈さん‥』
佳「貴女は冬獅郎が愛してやまない花嫁。それは、他の誰かに代えることが出来ない大切な人。だから‥冬獅郎を信じて、愛してあげて」
そう言った佳奈さんはとても幸せなんだと思った。
―――――――――‥
いまだに言い争いを続ける二人に苦笑いして、部屋を静かに出た。
『愛する、か‥』
芝生の絨毯に座り込みながら空を仰いだ。
静かな庭に優しい風が吹き抜ける。穏やかな時間の中、佳奈さんの言葉を思い出しては呟いた。
ピッピッ―‥
可愛い鳴き声を上げる小鳥に手を伸ばせば、ちょこんととまる。
『私‥ちゃんと冬獅郎さんを愛せてるかな?』
男性と付き合ったことがない私は、どうしたらいいかわからずにいた。
冬獅郎さんは私を大切にしてくれているのに‥私に出来るのは、身の回りのお世話と心配だけ。そんなことしか出来ない自分に自信が持てる筈もなく、自己嫌悪。
『どうしたら伝わるのかな?』
?「何が?」
『冬獅郎さんが大好きだっ―――‥‥て??』
振り返って固まる。
後ろには喉を鳴らしている冬獅郎さんがいて、私の顔は火が噴くんじゃないかってくらいに熱を帯びていた。
冬「お前、そんなこと考えてたのかよ」
『そんなこと‥じゃないもん‥///』
恥ずかしさと照れくささ。
加えて、冬獅郎さんの言葉に拗ねる。顔を背けて、俯いた。
ギュッ―‥
冬「ごめんな」
『‥ぅん///』
背中から抱き締められて、耳元で謝られたら許すしかない。
『私‥付き合った経験なくて―‥。冬獅郎さんに何をしてあげられるか考えてた』
冬「それで?」
髪を弄りながら促す。
『身の回りのお世話ぐらいしか出来なくて‥役に立ちたいけど、何もなくて‥‥』
あ、視界が滲む。
心なしか語尾が震えてしまった。
『大好きなのにっ‥何も、出来ない自分が嫌いで‥‥っ‥』
堪えきれなかった涙が零れ落ちる。
抱き締めてくれる温もりも、
名前を呼ぶ低い声も、
触れる手の優しさも、
全部が愛おしい―‥。
こんなにも愛されてるのに、愛してやまないのに、私に出来ることが見つからない。
冬「あやめ‥」
頬に触れる手に導かれるように、振り返った。
‥――あ‥
真っ直ぐ見つめる翡翠の瞳は優しく細められている。
ぺろっ、と頬を伝う涙を舐めとり、目元にキスをされた。
冬「何もなくなんかねーよ。あやめが居て、身の回りの世話してくれて、笑っていてくれる。
それだけですげー幸せだって思ってるんだ」
『ホント‥?』
冬「疑うのかよ?」
『だってェ‥』
上目遣いに見れば、冬獅郎さんの頬が染まる。
冬「んな目で見んなよ///」
『?』
冬「‥限界だ」
『へ?‥‥Σんんっ!?』
いきなり重ねられた唇に目を見開いた。そのまま唇をすり抜けるように侵入してきた舌にビクッと肩が揺れる。
歯列をなぞり、舌を絡めとる舌。
絡む度に耳に届く水音に羞恥から胸を押す。けれど、願いも虚しく私はその場に押し倒されてしまった。
『んっ!‥んふっ‥‥ぁ‥とー‥んんっ///』
冬「はぁ‥ん‥‥」
何度も、何度も重ねては絡めるの繰り返し。
漸く離された頃にはお互い荒い息で見つめ合った。舌なめずりをして妖しく、それでいて艶やかに笑みを浮かべる冬獅郎さんを見上げた。
だらしなく開いた口は息を整えようと空気を吸っては吐いて。口端を飲みきれなかった唾液が伝う。
冬「キスだけでギブアップか?」
意地の悪い笑みを浮かべる冬獅郎さんから顔を背ける。
小さな抵抗だ―‥。
『意地悪‥///』
冬「今更だな」
『ん‥///』
首筋に触れる指がゆっくりと滑る。
冬「あやめ」
『‥ひゃう///!!』
冬「敏感」
『ぁ‥はぁっ‥ふっ///!!』
首筋に濡れた柔らかで温かい舌を這わしては吸いつくを繰り返す。
その度に、吐息混じりの声が漏れる。
力の入らない手で肩を押したけど無視。
そのままブラウスのボタンを一つ、また一つ外され露わになる胸元に羞恥から涙が零れた。
冬「キスマークなんかよりも強い所有印だよな、コレ」
胸元に咲く薔薇に触れる指から愛おしさを感じた。
『消えない、印だね///』
冬「そうだな。永遠の誓いの証だ」
ちゅっ、と薔薇にキスをする冬獅郎さんに幸せと愛おしさが溢れるのを感じる。
余韻に浸る私をよそに、冬獅郎さんの手がスカートの裾を捲り始めて我に返る。
『Σ何してるんですか///!?』
冬「何って、聞くか普通」
『そ、そうじゃなくて///
此処外ですよね?』
冬「青空の下だからな」
『朝ですよね?』
冬「昼じゃないのは確かだ」
『~~~~わかってるなら退いてっ///』
冬「嫌だ」
『嫌じゃなくて///!!
外だし朝だし、恥ずかしいから///!!』
精一杯抵抗しても男女の差がある。小さくても成人男性ですしね‥。
冬「じゃあ、ベッドの上で夜ならいいのかよ?」
『へ‥?』
一瞬の思考停止―‥
否、理解するのを拒否したんだ。
どうなんだ、とばかりの無言の圧力に降参するしかない。口で勝てる気がしないんだもん‥。
だから、せめて甘えた口調でお願いしてみた。
『夜なら‥いいよ///』
冬「へぇー」
『そ、その代わり――‥///』
冬「なんだよ」
『初めて、だから‥意地悪しないで、ね///?』
冬「っ///!!」
『優しくじゃなきゃ‥嫌だよ?シロにーたん///』
冬「(コイツ、小悪魔か///)
わかったよ‥///」
おとぎ話のお姫様は王子様に出会って幸せに暮らしましたとさ‥。
なんて、絵本の中だけだと思ってた。
でも、運命の出会ってちゃんとあるんだよ?
私の王子様は人ではない吸血鬼。綺麗な容姿のその人は小さい頃に交わした約束を守って、私を迎えてくれたの。
今は凄く幸せ。
やっぱり、ハッピーエンドがいいね!
それは、永遠の愛の証
(で、どやったの?あやめちゃんは)
(誰が話すか)
((あんな姿他の野郎に絶対ェ教えるかよ///))
(気になるわ~)
(佳奈、何とかしろよ)
(‥‥ギン)
(は、はぃι)
(3ヶ月お預け)
(Σ3ヶ月!?アカン!そんな地獄や!!)
(ざまーみろ)
(冬獅郎さん)
(ん?)
(お預けって?)
(あ―、それは‥昨日俺たちがしてたことだろう)
(昨日‥し―‥っ///!?)
((飽きねーな。この反応は))
((恥ずかしい///))