◈渡せぬ想い<チョコ>
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†side:日番谷†
両親が事故で亡くなった瞬間、小さかった俺は泣くのを堪えるのが精一杯だった。男だからと、二人が安心出来る様に強くと、幼いながらに決めて。
そんな俺に声をかけてくれたのがあやめだった。誰一人として寄り添ってくれなかったのにあやめは俺を抱き締めて“一緒に居るよ”と何度も呟いて。嬉しかったんだ。大人達は引き取るかで頭を抱え、俺のコトなんて気にしてなんかいない。あやめだけが俺の家族になると言ってくれた。それだけが救いで、特別な存在。当然の様に好意へと変わっていた。
けれど――。
俺は、あやめを泣かせるばかりで伝えられずにいた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
日「おはよう、ございます」
「あら、おはよう」
日「あやめは?」
「先に出たわよ」
日「そうですか‥」
避けられてんのか、仕方ないよな。いつも隣にいた筈の空席に寂しさを感じた。
「なんだか、あやめが家を出たら寂しくなるわね」
日「‥‥」
「あやめに彼氏が出来たらと思うと―‥何故だか腹が立つな(笑)」
「パパったらιそういえば、小さい頃あやめの夢って冬獅郎君のお嫁さんだったのよねェ」
「冬獅郎君ならパパはいいぞ!」
日「‥ι」
「うふふ」
確かにそんなコトを言ってた。
子供ならもっと素直に言えるのに、今じゃ上手く伝えるコトも出来やしねェ。その場の空気に苛立っては傷つける言葉ばかり吐き出して‥。
笑った顔が好きなのに笑わせるコトも出来ない俺はダサい男だよ。
雛「おはよう!」
日「ああ‥」
雛「あやめちゃんは?」
日「先行った」
雛「そっか‥。
昨日、あやめちゃんとプリクラ撮ったんだって?」
日「誰に聞いたんだよ」
雛「乱菊先輩が連絡くれたの。
折角二人きりにしたのに可愛くない態度でプリクラ撮った挙げ句、あやめちゃん傷つけたって」
あのお節介余計なコトを―‥。
雛「いいの?
あやめちゃんに伝えなくて」
日「‥‥」
分かってる。あやめが俺を好きだって言ってくれたんだ、返事をしなきゃ、伝えなきゃならないって。けれど、アイツは俺を避けてる。
あの後、返事をしたくて部屋のドアを叩いた、が‥開ける事はなかった。寝たわけじゃないのは知ってたが、それが応えだったんだろう。折角、想い合っているのに擦れ違う俺達。もどかしさを感じながら何も出来ずにいた。
雛「ホワイトデー」
日「何だよいきなり」
雛「だから、ホワイトデーにあやかって告白しなよ!」
日「‥‥」
雛「乱菊先輩に聞いたけどあやめちゃん家出るんでしょう?
このままじゃ、あっという間に卒業していなくなっちゃうよ!」
日「(居なくなる‥)」
『“一緒に居るよ”』
日「(嫌だ!)」
大切なんだ。誰よりも、何よりも。あやめが居たから寂しくなかった。いつだって俺の味方でいてくれたからあやめを守れるくらい強くなるって決意だってしたのにッ。
――好きだ。
ずっと好きだったんだ。だから、傍に居てくれ‥ちゃんと伝えるから、全部話すから‥居なくなるなよ‥あやめ。
―――――――――‥
放課後。いつもの様に生徒会室で資料をまとめていると副会長の伊勢先輩に声をかけられた。
伊「すみません、いつも居残りをさせてしまい」
日「いえ。会長は?」
伊「‥駄々をこねる狐を手懐けています」
日「(またか‥)」
生徒会長とその狐も中学の先輩であやめの友人だ。
会長は落ち着いた大人な女子だが、問題は飼ってる狐がワガママな上に寂しがり屋な為、度々生徒会の仕事を邪魔してる面倒な奴。
伊「今日はこのくらいにしておきましょう。どの道、会長が居なくてはこれ以上は出来ませんし」
日「はい」
伊「それと、コレをあやめに渡して貰えますか?」
日「構いませんが‥コレは?」
伊「雛森さんからバレンタインを貰ったのですが、あやめからも貰ったのでそのお返しです」
日「そうですか‥」
伊「会長と市丸君からのも入っていると伝えておいて下さい。
では、お疲れ様でした」
日「お疲れ様です」
ホワイトデーはまだなのにお返しを用意している伊勢先輩や会長に感心しちまう。つーか、市丸にも渡してたのかよ‥‥何か、ムカつく。自分で断ったクセに他の野郎が貰ってるのは気に食わない。
日「‥あやめ?」
帰り道を一人歩いていると前方にあやめとオレンジ頭が特徴の黒崎が並んで歩いてた。
楽しそうに笑い合う姿に拳を強く握る。
――あんな顔、見てないな。
笑って欲しい、笑いかけて欲しい。傍に居て欲しい‥のにな。
黒崎と別れたあやめの背中は遠くて小さい。寂しく見えて気づけば走り出してた。
日「あやめっ!」
『‥冬獅郎君。おかえり、生徒会のお仕事だったの?』
日「ああ‥。さっきの黒崎だよな」
『うん。みんなで帰ったから』
日「‥そうか」
みんな、か‥。中学に入ったばかりの頃はよく帰った。あやめとも何気ない話して‥それも、好意に気づいてからはなく‥いつの間にかどう接したらいいのか分からなくなったんだよな‥。
『二人で帰るのは久しぶりだね』
日「ああ‥」
『いつも忙しいもんね、冬獅郎君は‥私と違って(苦笑)』
――そんな顔すんなよ。
『頭いいし、運動出来るし、優しいし、カッコいいとこしかないね!』
――俺は、情けなくてカッコ悪い奴だ。
『‥桃ちゃんだって頭いいし、運動出来るし、可愛いし‥自慢の幼なじみだよ!』
嬉しそうに話すあやめの顔は寂しそうに見えた。
お前は‥寂しがり屋で子供っぽくて、飯が美味くて‥それに、笑った顔が俺は好きなんだ。
ぎゅっ、
『冬獅郎君‥?』
日「‥‥」
『あの、どうしたの?』
言わねーと‥今、逃したらあやめが二度と捕まえられなくなる気がした。
日「‥好きだ」
『!?』
日「中二の時にあやめに抱く感情に気づいたんだ。家族じゃなく一人の女として大事なんだって‥」
『なら、何で‥?』
日「お前に、男として意識して欲しくて高校を別にした。
態度が素っ気なかったのは‥意識してたら、今までみたいに接するコトが出来なかったんだ」
『‥‥私、寂しかったんだよ』
日「ごめん‥」
もっと早く伝えていたらあやめを傷つける事もなかったのにな‥。
結局、俺は怖かったんだ。家族という関係を壊すのが――。
情けないよな‥あやめに言わせて傷つけるだけ傷つけて、泣かせて。
だけど、それでも俺は―‥
――あやめが好きだ。
『‥‥』
日「今更、遅いかもしれないが‥」
『そんなコトないよ』
日「あやめ」
『そんなコト、ない‥。
私‥こんなに嬉しいもん(微笑)』
日「!?」
夕陽に染まる笑顔。
俺が一番好きな表情、この三年見ることが出来なかった表情が向けられてる。
やっと、やっと俺だけのあやめになるんだ。
『わッ!?』
あの日、曇りのない眩しい笑顔で家族と迎え入れてくれたあやめを俺が守るんだってそう思った。
否、決めたんだ――。
『と、しろぅ‥くん‥?』
酔いそうになる匂い、キツく抱き締めたら折れちまいそうで加減が難しい。逃がさないようにキツく抱き締めたいが苦しくなるといけないから出来るだけ優しくしねーとな。
『あのっ!ここ外だよ///』
日「だから?」
『恥ずかしいから、離して///?』
日「嫌だ」
『でもっ///』
日「ずっとこうしたかった。
やっと捕まえられたのに離すわけないだろう?」
『逃げたりしないよ‥帰る場所も同じじゃない///』
日「ああ。ずっと一緒だ」
『‥ぅん!』
手を握り家へと歩く。
昔はあやめが手を引いてたんだよな。何処へ行くにしても手を繋いで、笑ってた。
成長するにつれてあんなに簡単に繋いだ筈の手はこんなにも遠回りしてやっと繋げたなんてな。素直になるってのは案外、難しいもんだぜ。
『私、てっきり桃ちゃんと付き合ってるのかと思ったよ』
日「それはねェな。
アイツ他に好きな奴いるぜ?」
『そうなの!?
全然知らなかった‥』
気づかなかったのかよι
あやめも知ってる奴なんだけどな‥。
日「どうした?」
『ううん。ちょっと、寂しいなぁって。成長するっていいことなのに‥何だか、距離が出来るしみたいで』
日「だとしても、俺はあやめの傍にいる。そんなに寂しがるなよ」
『うん‥ありがとう、冬獅郎君』
何気ない家までの帰り道。
変わり映えしない風景の筈なのに、隣にあやめがいるだけで違って見える。
『背伸びたね』
日「そうか?」
『うん。‥知らない内に大きくなってたんだ』
そう言って嬉しそうに笑ったあやめに顔が熱くなった。
『ちょっと前は同じ目線だったのに‥。男の子はいつの間にか大きくなるね』
日「女と背が同じなんて、カッコ悪いだろう‥//」
俺は、ずっと早く大人になりたいって思ってた。あやめを守れるだけの力や体格が欲しいって。
でも、俺が成長するようにあやめも成長してる。まともに目も合わせられなかった二年の間に綺麗になった。
‥――なんて、言えないけど//
『ちゃんと、伝えればよかった‥』
日「あやめ?」
『冬獅郎君が離れて、伝えなきゃって何度も何度も思ったけど‥怖かったの』
――同じだ。
『家族じゃなくて他人で‥』
日「ごめん‥」
『ううん。冬獅郎君なりに考えただけでしょう?
私だって、あのままだったらきっと同じコトしてたよ。じゃなきゃ‥もっと辛かったと思う』
そうだな。
傍に居るのに触れるコトが出来ない壁がある。それが“家族”の壁だった。崩したくない絆がありながらも俺は、あやめに恋い焦がれ続けた。
『きっと、冬獅郎君の両親が引き合わせてくれたんだね』
日「‥‥いいのか?」
『?』
日「俺なんかで‥」
今更何言ってんだって感じだけどさ、不安なんだ。また泣かせたりしないか‥ちゃんと伝えられるか‥幸せにしてやれるのか‥。
俺は意地っ張りで格好ばかり気にして、そのクセ‥嫉妬深くて独占欲の強いガキだから。
『私だって自信があるわけじゃないよ?
いっぱい不安になるだろうし、喧嘩だってすると思う。
でもね―‥
きっと、大好きだから不安になるんだよ』
日「あやめ」
『だから、喧嘩しても不安になっても‥好きって気持ちがあるからこそなんだよ』
日「‥前向きだな」
俺はそんな風に割り切れない。好きだからこそ大切に、傷つけないようにしたいんだ。
『前向きじゃないよ‥。すぐ落ち込んじゃうし、ネガティブだもん。だから‥冬獅郎君には迷惑ばかりかけちゃうかもしれないけど‥宜しくお願いします(微笑)』
日「こちらこそ、宜しく頼む//」
『うん!』
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
3月13日ホワイトデー前日。
いつものように生徒会の仕事を済ませて駅前を一人歩いてた。
日「‥ι」
――どうしたもんか。
如何にも女子が好きそうな店の前で佇む。流石に入りづらい雰囲気の店に来たのには理由がある。ホワイトデーに恋人らしいプレゼントをしようと来たワケなんだが‥‥女子ばっかで男一人で入るのは無理だι
日「(とはいえ、他にそれらしい店知らねーしな‥仕方ないか)」
躊躇いながら店の中へと進んだ。まぁ‥最悪の状況だけどな。ジロジロ見られるは甘ったるい匂いに酔いそうだ‥。
店内を歩き回りながらネックレスが飾られたスペースを見つけ眺めた。
日「(こうしてあやめのプレゼント選ぶのは久しぶりだな‥)」
誕生日やクリスマスに渡したのは随分昔の事だから悩んじまう。気に入るか‥そればっか考えてるし。
ホント情けないな、俺は‥。
『“ずっと一緒だよ”』
何も不安になる事はないんだよな。せっかく掴んだ幸せを守る、その証を贈りたいんだ――。
日「コレだな」
沢山の中からあやめに似合うだろうネックレスを手に会計へ向かう。ラッピングをしてもらい足早に店を出て一息。
日「後は渡すだけ‥なんだが―‥」
ここでまた問題発生。
――どう言って渡したらいいのか?
チョコのお返しとかならすんなり渡せるが、残念ながらあやめから直接貰えていない以上それは理由にならねーし。
何もないのに渡したりしたら変か?
恋人記念‥って、なんか違うよなι
あれこれ悩みながら歩いていると後ろから名前を呼ばれた。
日「あやめ」
『やっと追いついた~!』
とっさにそれを鞄へと押し込んだ。
日「珍しいな、居残りか?」
『うん。日直だったから』
日「そうか」
それから何気ない話しをしたけど俺はソワソワしていた。
落ち着かない気持ちを隠しながら隣で笑うあやめの話しを聞いた。
日「(理由なんて何でもいいじゃねーか)」
形を残したい、それだけの事なんだ。
あやめが俺の彼女だって証を形にして贈る。きっと、笑ってくれる筈だ。
『おかえり、冬獅郎君!』
日「‥ただいま、あやめ」
――明日が楽しみだ。
■□■□■□
乱「まったく。もう少しまともなお返し出来ないのかしら!」
『まともってι
お返ししてくれるだけいいじゃない。一生懸命考えたんだろうしさ』
乱「だからってお菓子の詰め合わせはないでしょう!太るし!」
『乱ちゃんは美人だから大丈夫です。檜佐木君からは可愛い髪留め貰えたじゃない』
乱「まぁね‥」
『贅沢言わないの!』
乱「むぅ‥」
まだ不服ですか‥ι
今日はホワイトデー。お昼休みに黒崎君たちからお返しを貰ったのですが、乱ちゃんはご不満らしく拗ねちゃいました(苦笑)
小さめの紙袋いっぱいのお菓子は黒崎君たちが悩みに悩んだ結果なのは直ぐに分かる。
こういったこと苦手だろうからι
気を遣わせてしまいましたね‥。
乱「そういえば、日番谷と上手くいったんだって?」
『ぅん//』
乱「良かったじゃないvV両親には話したの?」
『うん。ちゃんと話しておこうって冬獅郎君が。もちろん了承してくれたし喜んでた(笑)』
乱「未来の旦那様が既に同居してるんだもの両親は安心してるのね」
『ありがとね。乱ちゃんにはいつも迷惑ばかりかけちゃって‥』
乱「親友だもの、当たり前よ!」
その言葉に泣きそうになっちゃったよ。嬉しいコトばかり続いて怖くなる。でも、みんながいるから‥冬獅郎君がいるから大丈夫だって思えるんだ。
―――――――――‥
放課後。
一人家路を歩きながら息を吐く。春先だと言ってもまだ寒い。ふと、手に持つ紙袋を見る。
律儀な後輩君たちを思い出して笑う。見た目だけなら不良なんだよねぇ~(笑)
『ちゃんと渡せば良かったなぁ‥』
勘違いの末にゴミ箱へと叩きつけた本命チョコ。
渡していたら冬獅郎君はどんなお返しくれたのかなぁ?
ちょっと興味があったんだけど‥来年の楽しみと思って待とう。
『あれ?お母さん居ないのか‥』
鞄から鍵を取り出して開ける。
中へ入って行けばテーブルに書き置きが。
『ホント、熱い両親だね(笑)』
そこには、ホワイトデーなのでデートしてきますvV‥と書かれていた。
ここまで来ると呆れるよりも何だか羨ましくなっちゃうよ。
私たちもそうであれたらきっと幸せだろうなぁ、なんて考えながら夕飯の支度を始めた。
日が沈んだ頃、冬獅郎君が帰宅。
『おかえりー』
日「ただいま。おばさん達は?」
『デートだって』
日「ホワイトデーだからか」
『うん。あ、桃ちゃんにお返しした?』
日「してない。しなくていいって言われてるからな」
『そうなんだ~』
やっぱり、ちょっと苦しくなるね‥。
小さく溜め息を吐いて夕飯の準備をする。
『ご飯にするから着替えて―‥』
ぎゅっ、
『!?』
いきなりの抱擁に驚いて危うく手にしたお玉を落とすとこだったぁ~危ない危ないι
『ぁの‥これじゃ動けないよι』
日「嫌か?」
『嫌ではないけど‥ご飯冷めちゃうよ//』
日「もぅ少し‥」
背中に感じる温もりに安心しながら笑む。成長して大人っぽいのにこんなにも甘えたな部分がまだ残っていたとは思わないよね。
『‥時間はあるからご飯にしよう、ね?』
日「風呂も一緒がいい」
『Σ無理ですッ///!?』
日「小さい頃は一緒だっただろう?」
『年頃でしょうが//!冗談はいいからご飯!』
日「はいはい」
スルリと外された腕にちょっと寂しくなったのは内緒。
からかうのが上手いというか何というか‥‥年下とは思えない落ち着きだよ。
どこで覚えて来たのかしら?
‥――なんてね(笑)
『ん?何か―‥』
首筋の違和感に手を伸ばして気づいた。首に付けられたネックレス。誰の仕業かは直ぐ分かる。後ろにさっきまで居たんだから―‥。
『冬獅郎君!あのっ‥コレは‥?』
日「それは、その‥チョコのお返しだ//」
『へ?だって、チョコなんて―‥』
――渡してないよ?
日「ゴミ箱に捨てただろう?アレだ」
じゃあ、ゴミ箱から消えてたのは冬獅郎君が拾ったから‥‥そのお返しに、ネックレスを‥?
日「ずっと、欲しかったんだ。
あやめからの本命チョコが‥。
あの日だけはゴミ箱にあったから‥つい、な」
『‥そうなんだ。
毎年自分で食べてたからね(苦笑)』
日「手渡されたワケじゃないからお返しってのも変だけどさ。
付き合ってる証があったらいいなって思って‥//」
照れる冬獅郎君がどうしよもなく愛おしくて、幸せ過ぎて、言葉が出ない。
日「Σ泣くなよ!」
『ぅん‥ごめんね。でも、嬉しくて//』
日「忙しい奴」
そう言って涙が止まらない私を笑って抱き締めくれる。
日「好きだ。あやめが好きだ」
『うん!私も大好きだよ//』
初めて重ねる唇はとても優しく、幸せを感じた。
きっとこの先、何度だってすれ違うことだろう。
まだまだ幼い私たちだけど、いつか、仲の良い両親の様に末永く寄り添い、笑い合えたらいいなと思う。
だからこそ、想いを言葉にするのは大事なんだ。秘め続けるよりも難しいけれど、伝えるコトで変わる未来もあるから――。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
日「俺より黒崎達の方が大事かよ?」
『そうは言ってないよι
ただ、約束しちゃってたから‥』
日「他の男とね(ムスッ」
『‥ι』
伝えるのは大事‥なんだけど、ここまでとはι
日「せっかくの休日だってのに‥」
『だから冬獅郎君も行こうよ』
日「嫌だ」
付き合い始めてからというもの冬獅郎君のヤキモチに手を焼いていた。
黒崎君達と遊ぶ約束をしていた私は冬獅郎君も誘っているのですが‥これを全力で拒否されてるんですι
最近、生徒会が忙しく日曜日も学校だった冬獅郎君に暇を持て余してた私は乱ちゃんの誘いに乗ったのですが(黒崎君達も一緒に)
生徒会も落ち着きお休みの冬獅郎君に今日の約束を話した途端に拗ねちゃったのですよ‥ι
日「‥‥(ムスッ」
『(あ~‥)』
何というか‥駄々っ子さんだね(笑)
仕方なく携帯を取り出して乱ちゃんにメールを送信っと。
鞄を椅子にかけ、ソファで拗ねてる冬獅郎君の隣に座った。
日「何だよ?」
『邪魔?』
日「別に‥。出掛けんだろう?遅刻するぜ」
『お断りしました』
日「‥‥」
『私も、冬獅郎君と居たから(微笑)』
日「‥//」
乱ちゃんには悪いけど、こんなに想ってくれるちょっとヤキモチ焼きな彼氏を甘やかしてあげても罰は当たらないよね?
手を握り合い寄り添う。それだけで幸せだ。
拾われた恋心-チョコ-
(神崎先輩は?)
(年下彼氏が拗ねてるからパスだって)
(((あ~ぁ‥)))
(上手くいって良かった!)
(うむ。お似合いだな)
(アンタたちもさっさとしなさいよ?)
(((はぁ~‥)))
(あららι)
(すぅ‥)
((よっぽど疲れてたんだね。お疲れ様))
(ん‥あやめ‥)
(寝言だ)
(~‥ヤり、たぃ‥~‥すぅ‥)
(Σ何をッ!?)
両親が事故で亡くなった瞬間、小さかった俺は泣くのを堪えるのが精一杯だった。男だからと、二人が安心出来る様に強くと、幼いながらに決めて。
そんな俺に声をかけてくれたのがあやめだった。誰一人として寄り添ってくれなかったのにあやめは俺を抱き締めて“一緒に居るよ”と何度も呟いて。嬉しかったんだ。大人達は引き取るかで頭を抱え、俺のコトなんて気にしてなんかいない。あやめだけが俺の家族になると言ってくれた。それだけが救いで、特別な存在。当然の様に好意へと変わっていた。
けれど――。
俺は、あやめを泣かせるばかりで伝えられずにいた。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
日「おはよう、ございます」
「あら、おはよう」
日「あやめは?」
「先に出たわよ」
日「そうですか‥」
避けられてんのか、仕方ないよな。いつも隣にいた筈の空席に寂しさを感じた。
「なんだか、あやめが家を出たら寂しくなるわね」
日「‥‥」
「あやめに彼氏が出来たらと思うと―‥何故だか腹が立つな(笑)」
「パパったらιそういえば、小さい頃あやめの夢って冬獅郎君のお嫁さんだったのよねェ」
「冬獅郎君ならパパはいいぞ!」
日「‥ι」
「うふふ」
確かにそんなコトを言ってた。
子供ならもっと素直に言えるのに、今じゃ上手く伝えるコトも出来やしねェ。その場の空気に苛立っては傷つける言葉ばかり吐き出して‥。
笑った顔が好きなのに笑わせるコトも出来ない俺はダサい男だよ。
雛「おはよう!」
日「ああ‥」
雛「あやめちゃんは?」
日「先行った」
雛「そっか‥。
昨日、あやめちゃんとプリクラ撮ったんだって?」
日「誰に聞いたんだよ」
雛「乱菊先輩が連絡くれたの。
折角二人きりにしたのに可愛くない態度でプリクラ撮った挙げ句、あやめちゃん傷つけたって」
あのお節介余計なコトを―‥。
雛「いいの?
あやめちゃんに伝えなくて」
日「‥‥」
分かってる。あやめが俺を好きだって言ってくれたんだ、返事をしなきゃ、伝えなきゃならないって。けれど、アイツは俺を避けてる。
あの後、返事をしたくて部屋のドアを叩いた、が‥開ける事はなかった。寝たわけじゃないのは知ってたが、それが応えだったんだろう。折角、想い合っているのに擦れ違う俺達。もどかしさを感じながら何も出来ずにいた。
雛「ホワイトデー」
日「何だよいきなり」
雛「だから、ホワイトデーにあやかって告白しなよ!」
日「‥‥」
雛「乱菊先輩に聞いたけどあやめちゃん家出るんでしょう?
このままじゃ、あっという間に卒業していなくなっちゃうよ!」
日「(居なくなる‥)」
『“一緒に居るよ”』
日「(嫌だ!)」
大切なんだ。誰よりも、何よりも。あやめが居たから寂しくなかった。いつだって俺の味方でいてくれたからあやめを守れるくらい強くなるって決意だってしたのにッ。
――好きだ。
ずっと好きだったんだ。だから、傍に居てくれ‥ちゃんと伝えるから、全部話すから‥居なくなるなよ‥あやめ。
―――――――――‥
放課後。いつもの様に生徒会室で資料をまとめていると副会長の伊勢先輩に声をかけられた。
伊「すみません、いつも居残りをさせてしまい」
日「いえ。会長は?」
伊「‥駄々をこねる狐を手懐けています」
日「(またか‥)」
生徒会長とその狐も中学の先輩であやめの友人だ。
会長は落ち着いた大人な女子だが、問題は飼ってる狐がワガママな上に寂しがり屋な為、度々生徒会の仕事を邪魔してる面倒な奴。
伊「今日はこのくらいにしておきましょう。どの道、会長が居なくてはこれ以上は出来ませんし」
日「はい」
伊「それと、コレをあやめに渡して貰えますか?」
日「構いませんが‥コレは?」
伊「雛森さんからバレンタインを貰ったのですが、あやめからも貰ったのでそのお返しです」
日「そうですか‥」
伊「会長と市丸君からのも入っていると伝えておいて下さい。
では、お疲れ様でした」
日「お疲れ様です」
ホワイトデーはまだなのにお返しを用意している伊勢先輩や会長に感心しちまう。つーか、市丸にも渡してたのかよ‥‥何か、ムカつく。自分で断ったクセに他の野郎が貰ってるのは気に食わない。
日「‥あやめ?」
帰り道を一人歩いていると前方にあやめとオレンジ頭が特徴の黒崎が並んで歩いてた。
楽しそうに笑い合う姿に拳を強く握る。
――あんな顔、見てないな。
笑って欲しい、笑いかけて欲しい。傍に居て欲しい‥のにな。
黒崎と別れたあやめの背中は遠くて小さい。寂しく見えて気づけば走り出してた。
日「あやめっ!」
『‥冬獅郎君。おかえり、生徒会のお仕事だったの?』
日「ああ‥。さっきの黒崎だよな」
『うん。みんなで帰ったから』
日「‥そうか」
みんな、か‥。中学に入ったばかりの頃はよく帰った。あやめとも何気ない話して‥それも、好意に気づいてからはなく‥いつの間にかどう接したらいいのか分からなくなったんだよな‥。
『二人で帰るのは久しぶりだね』
日「ああ‥」
『いつも忙しいもんね、冬獅郎君は‥私と違って(苦笑)』
――そんな顔すんなよ。
『頭いいし、運動出来るし、優しいし、カッコいいとこしかないね!』
――俺は、情けなくてカッコ悪い奴だ。
『‥桃ちゃんだって頭いいし、運動出来るし、可愛いし‥自慢の幼なじみだよ!』
嬉しそうに話すあやめの顔は寂しそうに見えた。
お前は‥寂しがり屋で子供っぽくて、飯が美味くて‥それに、笑った顔が俺は好きなんだ。
ぎゅっ、
『冬獅郎君‥?』
日「‥‥」
『あの、どうしたの?』
言わねーと‥今、逃したらあやめが二度と捕まえられなくなる気がした。
日「‥好きだ」
『!?』
日「中二の時にあやめに抱く感情に気づいたんだ。家族じゃなく一人の女として大事なんだって‥」
『なら、何で‥?』
日「お前に、男として意識して欲しくて高校を別にした。
態度が素っ気なかったのは‥意識してたら、今までみたいに接するコトが出来なかったんだ」
『‥‥私、寂しかったんだよ』
日「ごめん‥」
もっと早く伝えていたらあやめを傷つける事もなかったのにな‥。
結局、俺は怖かったんだ。家族という関係を壊すのが――。
情けないよな‥あやめに言わせて傷つけるだけ傷つけて、泣かせて。
だけど、それでも俺は―‥
――あやめが好きだ。
『‥‥』
日「今更、遅いかもしれないが‥」
『そんなコトないよ』
日「あやめ」
『そんなコト、ない‥。
私‥こんなに嬉しいもん(微笑)』
日「!?」
夕陽に染まる笑顔。
俺が一番好きな表情、この三年見ることが出来なかった表情が向けられてる。
やっと、やっと俺だけのあやめになるんだ。
『わッ!?』
あの日、曇りのない眩しい笑顔で家族と迎え入れてくれたあやめを俺が守るんだってそう思った。
否、決めたんだ――。
『と、しろぅ‥くん‥?』
酔いそうになる匂い、キツく抱き締めたら折れちまいそうで加減が難しい。逃がさないようにキツく抱き締めたいが苦しくなるといけないから出来るだけ優しくしねーとな。
『あのっ!ここ外だよ///』
日「だから?」
『恥ずかしいから、離して///?』
日「嫌だ」
『でもっ///』
日「ずっとこうしたかった。
やっと捕まえられたのに離すわけないだろう?」
『逃げたりしないよ‥帰る場所も同じじゃない///』
日「ああ。ずっと一緒だ」
『‥ぅん!』
手を握り家へと歩く。
昔はあやめが手を引いてたんだよな。何処へ行くにしても手を繋いで、笑ってた。
成長するにつれてあんなに簡単に繋いだ筈の手はこんなにも遠回りしてやっと繋げたなんてな。素直になるってのは案外、難しいもんだぜ。
『私、てっきり桃ちゃんと付き合ってるのかと思ったよ』
日「それはねェな。
アイツ他に好きな奴いるぜ?」
『そうなの!?
全然知らなかった‥』
気づかなかったのかよι
あやめも知ってる奴なんだけどな‥。
日「どうした?」
『ううん。ちょっと、寂しいなぁって。成長するっていいことなのに‥何だか、距離が出来るしみたいで』
日「だとしても、俺はあやめの傍にいる。そんなに寂しがるなよ」
『うん‥ありがとう、冬獅郎君』
何気ない家までの帰り道。
変わり映えしない風景の筈なのに、隣にあやめがいるだけで違って見える。
『背伸びたね』
日「そうか?」
『うん。‥知らない内に大きくなってたんだ』
そう言って嬉しそうに笑ったあやめに顔が熱くなった。
『ちょっと前は同じ目線だったのに‥。男の子はいつの間にか大きくなるね』
日「女と背が同じなんて、カッコ悪いだろう‥//」
俺は、ずっと早く大人になりたいって思ってた。あやめを守れるだけの力や体格が欲しいって。
でも、俺が成長するようにあやめも成長してる。まともに目も合わせられなかった二年の間に綺麗になった。
‥――なんて、言えないけど//
『ちゃんと、伝えればよかった‥』
日「あやめ?」
『冬獅郎君が離れて、伝えなきゃって何度も何度も思ったけど‥怖かったの』
――同じだ。
『家族じゃなくて他人で‥』
日「ごめん‥」
『ううん。冬獅郎君なりに考えただけでしょう?
私だって、あのままだったらきっと同じコトしてたよ。じゃなきゃ‥もっと辛かったと思う』
そうだな。
傍に居るのに触れるコトが出来ない壁がある。それが“家族”の壁だった。崩したくない絆がありながらも俺は、あやめに恋い焦がれ続けた。
『きっと、冬獅郎君の両親が引き合わせてくれたんだね』
日「‥‥いいのか?」
『?』
日「俺なんかで‥」
今更何言ってんだって感じだけどさ、不安なんだ。また泣かせたりしないか‥ちゃんと伝えられるか‥幸せにしてやれるのか‥。
俺は意地っ張りで格好ばかり気にして、そのクセ‥嫉妬深くて独占欲の強いガキだから。
『私だって自信があるわけじゃないよ?
いっぱい不安になるだろうし、喧嘩だってすると思う。
でもね―‥
きっと、大好きだから不安になるんだよ』
日「あやめ」
『だから、喧嘩しても不安になっても‥好きって気持ちがあるからこそなんだよ』
日「‥前向きだな」
俺はそんな風に割り切れない。好きだからこそ大切に、傷つけないようにしたいんだ。
『前向きじゃないよ‥。すぐ落ち込んじゃうし、ネガティブだもん。だから‥冬獅郎君には迷惑ばかりかけちゃうかもしれないけど‥宜しくお願いします(微笑)』
日「こちらこそ、宜しく頼む//」
『うん!』
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
3月13日ホワイトデー前日。
いつものように生徒会の仕事を済ませて駅前を一人歩いてた。
日「‥ι」
――どうしたもんか。
如何にも女子が好きそうな店の前で佇む。流石に入りづらい雰囲気の店に来たのには理由がある。ホワイトデーに恋人らしいプレゼントをしようと来たワケなんだが‥‥女子ばっかで男一人で入るのは無理だι
日「(とはいえ、他にそれらしい店知らねーしな‥仕方ないか)」
躊躇いながら店の中へと進んだ。まぁ‥最悪の状況だけどな。ジロジロ見られるは甘ったるい匂いに酔いそうだ‥。
店内を歩き回りながらネックレスが飾られたスペースを見つけ眺めた。
日「(こうしてあやめのプレゼント選ぶのは久しぶりだな‥)」
誕生日やクリスマスに渡したのは随分昔の事だから悩んじまう。気に入るか‥そればっか考えてるし。
ホント情けないな、俺は‥。
『“ずっと一緒だよ”』
何も不安になる事はないんだよな。せっかく掴んだ幸せを守る、その証を贈りたいんだ――。
日「コレだな」
沢山の中からあやめに似合うだろうネックレスを手に会計へ向かう。ラッピングをしてもらい足早に店を出て一息。
日「後は渡すだけ‥なんだが―‥」
ここでまた問題発生。
――どう言って渡したらいいのか?
チョコのお返しとかならすんなり渡せるが、残念ながらあやめから直接貰えていない以上それは理由にならねーし。
何もないのに渡したりしたら変か?
恋人記念‥って、なんか違うよなι
あれこれ悩みながら歩いていると後ろから名前を呼ばれた。
日「あやめ」
『やっと追いついた~!』
とっさにそれを鞄へと押し込んだ。
日「珍しいな、居残りか?」
『うん。日直だったから』
日「そうか」
それから何気ない話しをしたけど俺はソワソワしていた。
落ち着かない気持ちを隠しながら隣で笑うあやめの話しを聞いた。
日「(理由なんて何でもいいじゃねーか)」
形を残したい、それだけの事なんだ。
あやめが俺の彼女だって証を形にして贈る。きっと、笑ってくれる筈だ。
『おかえり、冬獅郎君!』
日「‥ただいま、あやめ」
――明日が楽しみだ。
■□■□■□
乱「まったく。もう少しまともなお返し出来ないのかしら!」
『まともってι
お返ししてくれるだけいいじゃない。一生懸命考えたんだろうしさ』
乱「だからってお菓子の詰め合わせはないでしょう!太るし!」
『乱ちゃんは美人だから大丈夫です。檜佐木君からは可愛い髪留め貰えたじゃない』
乱「まぁね‥」
『贅沢言わないの!』
乱「むぅ‥」
まだ不服ですか‥ι
今日はホワイトデー。お昼休みに黒崎君たちからお返しを貰ったのですが、乱ちゃんはご不満らしく拗ねちゃいました(苦笑)
小さめの紙袋いっぱいのお菓子は黒崎君たちが悩みに悩んだ結果なのは直ぐに分かる。
こういったこと苦手だろうからι
気を遣わせてしまいましたね‥。
乱「そういえば、日番谷と上手くいったんだって?」
『ぅん//』
乱「良かったじゃないvV両親には話したの?」
『うん。ちゃんと話しておこうって冬獅郎君が。もちろん了承してくれたし喜んでた(笑)』
乱「未来の旦那様が既に同居してるんだもの両親は安心してるのね」
『ありがとね。乱ちゃんにはいつも迷惑ばかりかけちゃって‥』
乱「親友だもの、当たり前よ!」
その言葉に泣きそうになっちゃったよ。嬉しいコトばかり続いて怖くなる。でも、みんながいるから‥冬獅郎君がいるから大丈夫だって思えるんだ。
―――――――――‥
放課後。
一人家路を歩きながら息を吐く。春先だと言ってもまだ寒い。ふと、手に持つ紙袋を見る。
律儀な後輩君たちを思い出して笑う。見た目だけなら不良なんだよねぇ~(笑)
『ちゃんと渡せば良かったなぁ‥』
勘違いの末にゴミ箱へと叩きつけた本命チョコ。
渡していたら冬獅郎君はどんなお返しくれたのかなぁ?
ちょっと興味があったんだけど‥来年の楽しみと思って待とう。
『あれ?お母さん居ないのか‥』
鞄から鍵を取り出して開ける。
中へ入って行けばテーブルに書き置きが。
『ホント、熱い両親だね(笑)』
そこには、ホワイトデーなのでデートしてきますvV‥と書かれていた。
ここまで来ると呆れるよりも何だか羨ましくなっちゃうよ。
私たちもそうであれたらきっと幸せだろうなぁ、なんて考えながら夕飯の支度を始めた。
日が沈んだ頃、冬獅郎君が帰宅。
『おかえりー』
日「ただいま。おばさん達は?」
『デートだって』
日「ホワイトデーだからか」
『うん。あ、桃ちゃんにお返しした?』
日「してない。しなくていいって言われてるからな」
『そうなんだ~』
やっぱり、ちょっと苦しくなるね‥。
小さく溜め息を吐いて夕飯の準備をする。
『ご飯にするから着替えて―‥』
ぎゅっ、
『!?』
いきなりの抱擁に驚いて危うく手にしたお玉を落とすとこだったぁ~危ない危ないι
『ぁの‥これじゃ動けないよι』
日「嫌か?」
『嫌ではないけど‥ご飯冷めちゃうよ//』
日「もぅ少し‥」
背中に感じる温もりに安心しながら笑む。成長して大人っぽいのにこんなにも甘えたな部分がまだ残っていたとは思わないよね。
『‥時間はあるからご飯にしよう、ね?』
日「風呂も一緒がいい」
『Σ無理ですッ///!?』
日「小さい頃は一緒だっただろう?」
『年頃でしょうが//!冗談はいいからご飯!』
日「はいはい」
スルリと外された腕にちょっと寂しくなったのは内緒。
からかうのが上手いというか何というか‥‥年下とは思えない落ち着きだよ。
どこで覚えて来たのかしら?
‥――なんてね(笑)
『ん?何か―‥』
首筋の違和感に手を伸ばして気づいた。首に付けられたネックレス。誰の仕業かは直ぐ分かる。後ろにさっきまで居たんだから―‥。
『冬獅郎君!あのっ‥コレは‥?』
日「それは、その‥チョコのお返しだ//」
『へ?だって、チョコなんて―‥』
――渡してないよ?
日「ゴミ箱に捨てただろう?アレだ」
じゃあ、ゴミ箱から消えてたのは冬獅郎君が拾ったから‥‥そのお返しに、ネックレスを‥?
日「ずっと、欲しかったんだ。
あやめからの本命チョコが‥。
あの日だけはゴミ箱にあったから‥つい、な」
『‥そうなんだ。
毎年自分で食べてたからね(苦笑)』
日「手渡されたワケじゃないからお返しってのも変だけどさ。
付き合ってる証があったらいいなって思って‥//」
照れる冬獅郎君がどうしよもなく愛おしくて、幸せ過ぎて、言葉が出ない。
日「Σ泣くなよ!」
『ぅん‥ごめんね。でも、嬉しくて//』
日「忙しい奴」
そう言って涙が止まらない私を笑って抱き締めくれる。
日「好きだ。あやめが好きだ」
『うん!私も大好きだよ//』
初めて重ねる唇はとても優しく、幸せを感じた。
きっとこの先、何度だってすれ違うことだろう。
まだまだ幼い私たちだけど、いつか、仲の良い両親の様に末永く寄り添い、笑い合えたらいいなと思う。
だからこそ、想いを言葉にするのは大事なんだ。秘め続けるよりも難しいけれど、伝えるコトで変わる未来もあるから――。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
日「俺より黒崎達の方が大事かよ?」
『そうは言ってないよι
ただ、約束しちゃってたから‥』
日「他の男とね(ムスッ」
『‥ι』
伝えるのは大事‥なんだけど、ここまでとはι
日「せっかくの休日だってのに‥」
『だから冬獅郎君も行こうよ』
日「嫌だ」
付き合い始めてからというもの冬獅郎君のヤキモチに手を焼いていた。
黒崎君達と遊ぶ約束をしていた私は冬獅郎君も誘っているのですが‥これを全力で拒否されてるんですι
最近、生徒会が忙しく日曜日も学校だった冬獅郎君に暇を持て余してた私は乱ちゃんの誘いに乗ったのですが(黒崎君達も一緒に)
生徒会も落ち着きお休みの冬獅郎君に今日の約束を話した途端に拗ねちゃったのですよ‥ι
日「‥‥(ムスッ」
『(あ~‥)』
何というか‥駄々っ子さんだね(笑)
仕方なく携帯を取り出して乱ちゃんにメールを送信っと。
鞄を椅子にかけ、ソファで拗ねてる冬獅郎君の隣に座った。
日「何だよ?」
『邪魔?』
日「別に‥。出掛けんだろう?遅刻するぜ」
『お断りしました』
日「‥‥」
『私も、冬獅郎君と居たから(微笑)』
日「‥//」
乱ちゃんには悪いけど、こんなに想ってくれるちょっとヤキモチ焼きな彼氏を甘やかしてあげても罰は当たらないよね?
手を握り合い寄り添う。それだけで幸せだ。
拾われた恋心-チョコ-
(神崎先輩は?)
(年下彼氏が拗ねてるからパスだって)
(((あ~ぁ‥)))
(上手くいって良かった!)
(うむ。お似合いだな)
(アンタたちもさっさとしなさいよ?)
(((はぁ~‥)))
(あららι)
(すぅ‥)
((よっぽど疲れてたんだね。お疲れ様))
(ん‥あやめ‥)
(寝言だ)
(~‥ヤり、たぃ‥~‥すぅ‥)
(Σ何をッ!?)