◈魔笛
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織「あやめちゃんを怒らないであげて。冬獅郎くんに心配かけた事気にしてたから」
日「‥‥」
そう言って井上は出て行き、俺はあやめの頬に手を伸ばし触れた。
日「あやめ‥」
何も知らない俺にお前を責めるなんて出来やしないさ‥。
助けを求めることも出来ない中で戦い続けるお前に俺は何をしてやれるんだろうな。
―――――――――‥
あれから陽が沈み、俺達は祭りへ行く為に着替えを始めた。松本達のはしゃぎ声を聞きながら頭の中はあやめの事でいっぱいだ。
黒「あやめはまだ寝てんのか?」
日「ああ」
黒「そっか。行く前に起きりゃいいんだけどな。
あやめも誘うってルキアと井上が言ってたからよ」
阿「随分、仲が良いんだな」
黒「そうか?
ま、アイツって言い方は素っ気ないけど優しい奴だぜ」
阿「へぇー。つーか‥一護、着方がおかしくないか?」
黒「あ?‥浴衣なんか着ないからなぁ」
日「(苛つく‥)」
俺があやめの事を知ったのは最近で、打ち解けたのだって直ぐじゃない。
なのに―‥
黒崎達には助けを求める程の仲‥それが悔しい。
なんて考えていれば賑やかに騒ぎ出した黒崎達に溜め息。
日「おい―‥」
スパンッ、
・・・・・!?
阿・黒「「Σだァーーーー!!?」」
日「っるせェよ!!
お前も何平然としてんだ!あやめ!!」
いきなり襖が開いたと思ったら寝起きのあやめが立ってるし、着替え中もあって下着姿だってのに!!
『うるさい。目が覚めたら此処から声がしたから開けただけだろうが』
じぃー‥
黒「なんだよι」
『着方がおかしいぞ。
‥動くなよ』
黒「なっ//」
日「‥‥」
何やってんだ?
否、手直ししてるのは分かるが―‥。
『ほら、出来たぞ』
黒「ああ‥悪いな//」
『気にすん―‥おぉ?』
日「ちょっと来い!」
スパンッ、
あやめの手を掴み、元の部屋へと連れ込む。
日「どういうつもりだ」
『何が?』
しれっと答えるあやめにまた苛つく。
『手直ししただけだろう?何怒ってんだ?』
日「自分が女だって分かってんだろうが。無防備過ぎだ」
簡単に着替え中に入って来るし、躊躇いもなく手を伸ばす。苛つくのは当たり前だ。そうとは知らないあやめは首を傾げるばかり。
全く分かってない様子に掴んでいた手に力が入った。
あやめが言う。
『“普通の女”みたいに恥じらえばよかったのか』
そう言ったあやめの冷めた目に動揺する。
日「そういうつもりじゃねーけど‥」
『なら何?男所帯の十一番隊に居るんだぜ?恥じらうなんざ今更だ』
日「‥‥」
それを言われちゃ、何も言えない‥。
ゆっくりと手の力を抜いて離す――。
『ごめんなさい‥』
日「あやめっ!」
すり抜けていく―‥。
離した瞬間に出て行ったあやめを追うことも出来なかった俺は‥離さないと言った手を離しちまった―‥。
普通の女なんて気にしてなかったのに、ただ、醜い嫉妬だっただけなのに‥。
日「最悪だ‥」
黒「冬獅郎。あやめは―‥冬獅郎?」
日「出て行った‥。外にでも行ったんじゃないか」
黒「そーか‥。そろそろ行こうぜ」
日「ああ‥」
気乗りしねーけど‥行かねーとうるさいからな‥‥松本が。
ふと、掴んでいた手を見る。
日「(女‥なんだよな)」
強がってても、男みたいに振る舞ってても――。
きゅ、
雛「日番谷くん、行くよー!」
お前と行きたかった祭り。
結局、ちゃんと誘うことも出来なかったが‥本当に見たかったんだ。あやめの浴衣姿。
そんでもって、手繋いで屋台回って‥花火見て――。
笑ってくれたら、それでよかった。
『“ごめんなさい”』
そう言ったあやめの顔は悲しげに、自嘲の笑みを浮かべてた。
□■□■□
浦原商店を出て、その辺をぶらぶら。
行く場所もないし、何も考えてない。とりあえず公園の木に座り祭りへと向かう人を眺めて思う。
『冬獅郎達も行ったかな‥』
冬獅郎が何で怒ってたのかは分からないけど、ヤキモチだったのかなぁとは思ってる。
でも、女だろうって言われたら‥何か、ムカついた。
“普通の女”の反応じゃないって言われてるようで。
今更って感じだ。
自分が普通じゃないのは分かってるのに‥。
『(お祭り、見て来ようかな)』
――宙を駆けて行く。
しばらく走れば、屋台の明かりが見えた。
お囃子の音。賑わう声。色とりどりの浴衣。
久しぶりに見たお祭りはとても楽しそうで自然と口許が綻んだ。
地に降り、霊圧を消して歩く。
『やちるがいたらはしゃぎそう』
周りを見れば家族や友人と歩く姿。そして、肩を並べて歩くカップル。その羨ましい光景に気分が沈んでいると、
?「シロちゃん早く!」
?「はいはい」
冬獅郎と雛森副隊長の姿が見えた。腕を組ながら楽しそうに屋台を回ってる。あんな風に私もはしゃげたら―‥そう思って頭を振った。
すると、
?「あやめちゃん!」
『織姫‥』
そこには織姫と一護が。
織「やっぱり来てたんだね」
『まぁな。他はどうしたんだ?』
黒「気がついたらバラけてたんだよι」
織「お祭りに夢中だからね!
あやめちゃんも一緒に回らない?」
『否、いいよ』
黒「いいじゃねぇか」
『義骸じゃないし。端から見たらおかしいだろう?』
黒「あ‥」
忘れてたのか‥。
織「じゃあ、浦原さんの所に行こう!」
『別に、俺は――‥』
織「花火には間に合うよ!ほらほら!!」
『おいっ』
織姫に腕を引かれるまま人波を逆走。途中でルキアにあって二人に引きずられるまま浦原商店へと戻された。
乱「あら?織姫と朽木はどうしたの?」
黒「あやめ連れて浦原さんとこ行ってるぜ」
日「来てたのか?」
黒「ああ。義骸入って戻って来る筈だ」
日「(あやめ‥)」
―――――――――‥
織「お待たせー!」
『はぁ‥』
あれから浦原商店に戻された俺はあれよあれよという間に浴衣を着せられ戻って来た。
久しぶりの格好に上手く歩けずたどたどしい足取りだ。
黒「お、戻って――‥」
ゆっくりと歩み寄った俺に送られたのは驚きの視線。男は固まり、女ははしゃぐ。全く反応が違う両者に溜め息。
不意に冬獅郎と目が合えば、少し気恥ずかしい気持ちになる。
ル「あやめ、何処へ行く?」
『腹減ったから何か買って来る。
いつまでも突っ立ってると邪魔だぜ?』
さて、何食べようかな?
あ、たこ焼きでいいや。
大分混んで来たなぁ、と買ったたこ焼き手に考えていると―‥。
?「おい」
『冬獅郎』
そこには眉間にシワを寄せた如何にも不機嫌な冬獅郎がいた。
日「一人で歩くな。変な奴に絡まれたら面倒だろうが」
『絡まれてから考えるさ。説教しにわざわざ来たのか』
日「‥‥違う。あやめと、居たいから来ただけだ」
‥素直な回答だこと。そんな嬉しい言葉を聞いても今の俺には届かない。
あんなの見せつけられたら‥‥仕方ないだろう?
『別に、俺がいなくても楽しんでたじゃないか。可愛い彼女と腕組んで』
日「!‥アイツは家族だ」
『ふーん。家族なら何しても俺が傷つかないとでも思った?』
日「!!」
馬鹿みたいかもしれないけど‥俺は、痛かったんだぜ?
ただ一護の着替えを手伝っただけで怒られて、家族なんて都合のいい言葉並べて自分を正当化されて。そんなんで納得出来る程大人じゃない。
『冬獅郎には線引きする必要があるな』
日「いらねー‥」
『いるさ。嫉妬に狂って大事な家族を殺されたりしたらどうするんだ?』
日「‥冗談に聞こえないぜ」
『可能性は無きにしも非ずだろう?
俺は―‥
“普通”じゃないんだからな』
薄く笑って言えば冬獅郎は更に不機嫌になる。
日「ふざけんなよ。お前は人殺しにはならない‥絶対にだ」
『もう人殺しだ‥』
日「事故に過ぎない。お前が直接手を下したんじゃないだろう。‥お前は人を殺せない。優しいお前には無理だ」
ホント‥なんて真っ直ぐなんだろうか。
日「あやめ‥」
『もういい。嫉妬なんて結局は自分勝手な考えでしかないんだし。俺も気にせずに一護とかと腕組めばいいんだしな。
いちいち嫉妬するよりは気楽――‥何だよ?』
腕を掴まれて足を止める。
日「やるな」
『自分はしたクセに』
日「‥もうしない。だから―‥」
はぁ‥なんか、俺がイジメてるみたいな展開になってないか?
必死に腕を掴む冬獅郎は次の言葉を探してるみたいだけど。
『手、離して‥ちょっと痛い』
日「ぁ、悪い‥」
名残惜しいのだろうか?
少し躊躇ってから離された。
『そんな捨てられた子猫みたいな顔しないで』
日「誰が子猫だ‥」
『冬獅郎よ。
‥ちょっと疲れたから座らない?足、痛いの』
日「ああ‥」
『ありがとう』
冬獅郎の手に指を絡めれば少し驚いた顔をする。それに笑っていれば照れたのか歩き出して少し人がいない場所に。
腰を下ろして一息。
日「足、大丈夫か?」
『うん。慣れないから疲れた‥』
日「‥似合ってる//」
『世辞はいらないよ』
日「世辞じゃねーよ。
ホントに‥似合ってる///」
『珍しいだけよ。みんな似合ってたじゃない』
織姫とルキアも似合ってたなぁ。それに松本副隊長は美人、雛森副隊長は可愛いって有名だもの。そう考えたら冬獅郎って両手に花ね。
日「‥素直に喜ばねーのかよ、お前は」
『ふふっ。珍しいといえば、一護達の浴衣姿も素敵だった』
日「‥‥そうかよ(ムスッ」
『(分かりやすい)』
あからさまに不機嫌な冬獅郎に愛しさを感じていた。
たこ焼きを食べながら祭りを眺めて、ふと、隣へと視線を移す。
膝に頬杖を立てて拗ねてる冬獅郎の浴衣姿というより甚平か。
こうして見てる分には幼い少年だけど、羽織を着て斬魄刀を構える姿は凛々しいのだから不思議だ。
日「何だよ?」
『甚平、似合うなぁと思って。
死覇装しか見たことないから』
日「どうせガキにしか見えねーって言いたいんだろ‥」
『そうね。
‥――いつもよりは軽そうだもの』
日「?」
イマイチ分かりづらい言い方にきょとんとする冬獅郎に言う。
『あのね―‥。
無理に大人になろうとしなくてもいいと思う。
冬獅郎は色んな事を背負い過ぎて外見と中身が噛み合わないの。どんなに急いでも外見の成長は急いではくれないのだから、もう少し気楽に考えたら?』
日「‥カッコ悪いだろう‥チビなんて」
その言葉に笑みが浮かんだ。
だって、周りを歩く恋人同士を見れば彼女より低い彼氏はそういない。周りからすれば私達は恋人同士というより姉弟だろうしね。
私は気にしてないけど男の冬獅郎からすれば身長差は重大なのだろうけど、分かっていない事がある。
『小さくても、ちゃんと私を守ってくれるじゃない』
隊長である前に男の子。
外見の割には抱き締める腕は力強いし、ドキッとする時もある。
日「‥嫉妬して傷つけてるようじゃガキだろう」
『それは違うわ。大人になるから嫉妬ですれ違うのよ』
日「‥‥」
『子供は思ってる事をちゃんと伝えられるけど、大人は違う。
さっさと伝えてしまえば喧嘩にもならないのに溜め込んで爆発させるから傷つけ合うの。冬獅郎の場合は自分の気持ちよりも感情の方が先だから伝わりにくいだけ』
日「悪かった‥。
‥お前が他の奴に触れるのはやっぱり気に食わないし、苛つくんだ」
『それは私も同じ。
想っているからこその感情なのだろうけど‥ちょっと疲れる』
苛ついて、傷つけ合って、虚しさを感じて‥。
絶対の信頼を持てないからこそ不安になって疑い、喧嘩する。
?「いたいた!」
『どうしたんだ?織姫』
織「そろそろ花火上がるから呼びに来たんだよ!」
『そっか。なぁ、人が少ない場所で花火見れないか?』
黒「あー‥近くの公園なら見れるぜ。意外と穴場だし」
『そっ。なら、そこにするか』
立ち上がれば少し痛みを感じる。
履き慣れないせいだろうなぁ‥何か、疲れるし‥。
織「まだ乱菊さん達来てないよ」
『いいよ。俺は一人で』
日「俺も行く」
そう言って立ち上がった冬獅郎は私の手を取った。
『冬獅郎??』
日「アイツ等には言っといてくれ」
黒「ああ、わかった」
織「行ってらっしゃーい!」
手を引かれるままに歩き出す。
後ろで手を振る一護達は笑ってた。
人波を抜ければ街灯の明かりだけに。人通りもなく静かな夜道を手を繋ぎながら歩く。
『よかったの?』
日「言っただろう、俺はあやめと居たいんだよ//」
『‥ふふっ。そう言ってもらえると嬉しい』
照れてるせいか顔は見せない冬獅郎は気づかない。
私の顔も赤く染まっていることに――。
―――――――――‥
日「ほら」
『ありがとう』
日「やっぱり暑いな」
『夏だからね。暑いの弱い?』
日「かなり」
『氷雪系だものね』
花火が上がるまで公園のベンチに座りながら冬獅郎が買って来た缶ジュースを飲みながら待つ。
日「‥‥」
『何?』
日「別に‥//」
『気になる』
日「Σち、近いッ//」
『いつもの距離よ。
それに、キスはもっと近いわ(微笑)』
日「ッ///」
『何が問題?』
距離を詰めれば真っ赤な冬獅郎に笑った。
日「あんま、煽るなよ//
‥我慢出来る程大人じゃないからな///」
その言葉に驚いた。
前に欲情してるって言った時はこんなに照れなかったのに、意外だ。
それに一応は意識しててくれた事が嬉しい。
『そんなに照れなくてもいいんじゃない?』
日「うるせェ///
いつもと、違うから‥調子狂うんだよ///」
『ふふっ。強引なのか、奥手なのか分からないわね』
日「‥なら、」
『ん――‥!』
パァァンッ―‥!
夜空を彩る花火よりも、私の意識は視界を遮り唇を重ねる冬獅郎に向いていた。
啄み、舌を入れては絡みつき。
息さえも奪われて流石に苦しくて肩を押した。
『ッはぁ‥///
ちょっと、待って‥///』
日「嫌だ」
『んんッ///!!』
ちゅっ、ぴちゃ、くちゅ―‥
花火の音に消されている筈の濡れた音がやけに響く。
頭の中が真っ白になり始めた頃、漸く離された唇。
『ぁ‥はぁ‥はぁ‥///』
荒い息を整える私の濡れた唇を親指で撫でる冬獅郎は花火の光に照らされ銀の髪がキラキラと輝いてる。
それに、目の前の彼は男の顔で艶やかに笑って言う。
日「遠慮しないぜ?」
『はぁ‥はぁ‥//』
鼓動が速く、息が荒くなる。
冬獅郎の低い声だけが耳に響いた。
日「今日のお前、すげぇ可愛いな」
耳から犯されていく感覚に何も考えられない。
頬に触れる手の温もり、抱き寄せる腕の強さにドキドキしてる。
全てが媚薬だ――。
日「愛してる」
耳元で囁き、唇が鎖骨の辺りに触れて息を飲んだ。
ちゅっ、
『ァ‥///』
吸い付かれた感触に吐息が洩れる。
日「なんだ、可愛く鳴けるじゃん。もっと聞きたくなる」
ギラギラと妖しく光る翡翠に驚く。
どこにそんな色気を隠しているのだろうか?
照れ屋で嫉妬深い少年は影を潜めてるのだろうか?
『外、なんだけど‥』
日「言っただろう?遠慮はしないって」
『だからといって‥今じゃなくても‥//』
日「恥ずかしいのか?」
『‥いち、おぅ///』
ドキドキとうるさい鼓動を隠すように身体を捻り、視線を外した。
日「へぇー。照れてるあやめは珍しいな」
『うるさい‥///』
日「逃げるなよ」
『もういいでしょ///
花火見たい‥///』
日「俺より花火かよ(ムスッ」
『花火に嫉妬しないでよ。
もぅ―‥今日は‥冬獅郎の部屋に泊まるから花火見せて///?』
日「分かったよ//
(泊まる‥マジか?)」
分かってもらえたのはいいけど‥ちょっと、大胆過ぎるかな?
でも―‥
『(嬉しい、かも)』
日「何笑ってんだよ?」
『ずっと一緒にいられるなぁ、て思ったら嬉しくなっただけ』
日「///」
とん―‥
『綺麗だね』
日「そうだな」
寄り添い、手を握り合いながら大輪の花を眺め、久しぶりにいい思い出が出来たことに笑い。
ずっと一緒にいられたら、そう思いながら花火に願いを込めて幸せを噛みしめた夏の夜。