◈第一話
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◈約束と再会と職務質問◈
幼い頃の記憶とは曖昧だ。そう歳を重ねて思う。
どんな話をして。
どんな遊びをして。
どんなケンカをして。
どんな約束をしたのか。
その時はハッキリと覚えていたのに、大人になるにつれて薄れてしまう。大切な約束があった筈なのに。
子供同士の約束なんて些細なモノだろう。守れる筈もなく消えるだけの。だけどーーー・・・
■□■□■□
?「ーー・・・ーーーん・・・銀さん!」
銀「・・・ぁ?」
新「あ?じゃないですよ。朝なんですからいい加減に起きてください。まったく、また飲み過ぎたんですか?」
銀「あ~・・・頭痛ェ」
神「ねェ、銀ちゃん」
銀「あ~?」
神「"あやめ"って誰アルか?」
銀「!・・・は?」
新「寝言で言ってたましたよ。僕も初めて聞いたし、知り合いですか?」
銀「・・・キャバクラの姉ちゃん」
神「なんだァ。てっきり銀ちゃんの初恋の相手かと思ったネ」
新「銀さんに初恋ってあるんだろうかι?あ、朝ごはん冷めちゃいますからさっさと顔洗ってきてください」
銀「ヘイヘイ・・・」
初恋、ねェ。"アイツ"は多分そうなんだろうな。俺にとっての初恋。守りたかったのに守れなかった奴。生きているのか、死んでるのか。分からねェ。
『銀』
そう俺を呼んだ女。
銀「(久し振りに見たな昔の夢なんて)」
あのまま大人になってりゃ、今でも馬鹿やって騒いでたんだろうか。らしくねェな。過去を悔やんだって戻りはしねェんだ、考えるだけ無駄だな。
銀「(年よりか俺は・・・)」
嫌だねェ、年は取りたくないってな。
過去は戻らねェ。けど、アイツを思い出さない日はなかったよ。会いたくて仕方ない。そんな想いをずっと抱えて今日まで来た。
もし、もしも、アイツに会えたら。俺はきっと遠くから見てるだけだろうな。カッコ悪ィが、俺には会わせる顔がない。"2度も"守れなかったんだからな・・・。
新「銀さーん。冷めちゃいますよーー!」
銀「わァーたっつーの!ッたく、口煩い母ちゃんかッ」
何処かで幸せならそれでいいー・・・なんて、カッコつけて言ってはみるもののーー。
銀「(そんなの実際に目の当たりにしたら気が狂いそうだよな、多分)」
表に出さないのは得意だ。
ただ、心までは欺くのは難しいだろうがな。
ーーーーーー・・・
登「家賃も払わないで二日酔いなんていいご身分だね。内臓売り飛ばされたいのかい?」
銀「仕方ねーだろう?依頼がねェんだから。払いたくても払えねェの」
登「開き直るんじゃないよ!まったく・・・。
そういや、最近、町外れの寺に娘が出入りしてるらしいんだよ」
新「確か、その寺って身寄りのない子供達を引き取ってるんですよね」
登「ああ。何でも旅人らしくてね。気立ても良くていい子なんだけど・・・その子、刀を持ってるそうだよ」
新「女性がですか?珍しいですね」
銀「別にいいんじゃね?父親の形見とかかもしんないしな」
登「確かにね。でも、住職が心配していてね。娘に問題はないんだが。最近、妙な連中がうろついてるらしいんだよ」
銀「妙な連中?」
登「浪士なのか、役人なのかは分からないらしいんだけど侍がうろついてるようでね。子供も居るから心配ってんで、暇なアンタに頼もうと思ってね。依頼料は今月の家賃チャラってことで頼んだよ」
銀「ってェーーッ!?依頼だったのかよォ!!何サラッと依頼受けてんだババァッ!?」
登「うるっさいねェ!内臓売られたくなかったらさっさと行きなッ!この甲斐性なしの天パ野郎ォーーッ!!!」
クソッ。あのババァ、家賃払わねーからって偉そうに!しかも、アイツ等もアイツ等だ。人に押し付けて逃げやがって。
ハァ~・・・しっかし、刀を持った女か。聞いただけじゃわかんねェけど、アイツじゃないよな・・・。
『ふふっ。銀・・・』
忘れるなんて出来ねェなんてよ。柔らかい声も、笑った顔も。今でも覚えてンだもんなァ。俺ってこんな女々しい野郎だっけ?忘れさせてくれるような女に出会ってないからか?否、そもそも俺の回りに女なんていたっけ?ゴリラしかいなくね?
誰が飼育委員だァァァーーッ!!←言ってない。
銀「(正夢があるならーー・・・)
・・・ーーー会いてェな、お前に」
遠くからでいいんだ。お前が生きてるって確認出来ればそれでいい。俺には会わす顔が、資格が・・・ない。
昔の事なんて忘れたくても忘れられないンだよなァ。不思議なモンだよ、まったく。
ハァ~ァ・・・気分乗らねーよなァ。まっ、家賃チャラだし仕方ねーか。
銀「っと、此処だな」
「おや、お登勢さんトコの」
銀「万事屋だ」
「わざわざすまないね」
銀「で?依頼の内容、聞かしてくんねェか?」
ーーーー・・・
銀「成程ね。狙われる心当たりとかあんのか?どこぞのご令嬢とか、そいつ等に恨まれてるとか」
「・・・おそらくは、彼女の兄が原因かと」
銀「兄?ロクでもない兄貴も居たもんだなァ。妹が狙われてるってのに助けもねェのかよ。どんなダメ兄貴なんだか」
「名前くらいなら万事屋さんでも聞いたことあると思いますが・・・」
銀「俺が?・・・なんて、名前だ?」
俺でも知る名前で兄貴のせいで妹が浪士に狙われてる。不意に思い浮かぶ顔に、まさかな、と頭を振る。
住職が口を開くとガキが顔を覗かせた。
「和尚さん・・・」
「おや、どうしたんだい?」
「せんせー、まだ?」
「まだ帰っていないよ。みんなと遊んで待ってておいで」
小さく頷いて去っていく小さな背中を眺めながら話を再開した。
「子供達に読み書きを教える内に先生と呼ぶようになってね」
銀「そうかい。で、兄貴の名だがなんつーの?」
「高杉 晋助だよ」
銀「・・・たか、すぎ?」
「ああ。彼女の名は高杉 あやめと言うんです」
アイツが此処にいるのか?江戸に?つか、正夢じゃね?マジであんのかよ正夢って。スゴくない?こんなんそうそうないよな。アレだ、一攫千金も夢じゃねーよ。・・・て、アレ?話違うな。驚き過ぎて処理出来ねェ。
「心配は要らないと彼女は言うのですが、流石に心配で。お登勢さんに話したら万事屋さんの話が出たのでお願いできれば、と」
銀「そ、そうかい。とりあえず、その連中が居ないか見てくるわ」
「お願いします」
マジか~~~ァ・・・
いや、嬉しいよ?嬉しいけどさァ。いきなり過ぎて困っちゃうよ銀さん。だってよォ、アイツと別れて何年経ってンだ?10年・・・は経ってるような、経ってないような。
綺麗になってんだろうなァ・・・。兄貴とは正反対の性格だったっけ。思い浮かぶ笑顔に思考が停止。なんか、熱い・・・/// まだ始まってもないんだけど?思春期の中学生じゃあるまいし・・・///
銀「(アイツは、俺を・・・)」
忘れないでいてくれたんだろうか?
守ってやれなかった情けない男のコトを。優しいアイツのコトだから覚えてはいるか。惚れた男が居たりすんのかな。いい歳だもんなァ、既婚者だったりして。そうだったら、俺ァ、どうすんだろうなァ。
笑って祝福してやるか?それとも、諦めきれずに奪うのか?そんなことしても意味はないな。出来ることならーー・・・なんて、願ってるあたり女々しい野郎だぜ。それだけ未練タラタラだってことか。運命とか信じる方じゃねーけど、そうであるならーー・・・。
「せんせー!」
銀「(帰ったのかーー・・・)」
元気のいい声に視線を移せば、ガキに囲まれる女の姿が。
紺色の着物に山吹色の帯。腰まで伸びた艶やかな黒髪をゆるく結ってた。
遠目でも分かる。間違いなく高杉の妹で。俺がずっと会いたかった女が其処に居た。柔らかな笑みを浮かべながらガキ共と話す表情は変わらない、否、変わったか。あの頃よりも綺麗になったな。
銀「(成程ね。ありゃー敵だな。高杉を敵視してる連中か?妹を人質にでもするつもりかねェ。んなことしたら、逆効果で返り討ちだろうに。なんたって野郎はシスコンだからな)」
機会をうかがう数人の侍は監視するように女を見てた。まぁ、アイツが気づかないワケねーだろうがな。伊達に女であの戦争を生き抜いてないからな。
それにしてもーー・・・本当に兄妹か?
兄貴は危険人物。妹は大和撫子。まったく正反対なのにアレとアレが兄妹だもんねェ。世の中何が起きるかわかんねーモンだぜ。
銀「(変わらねェな。あの笑顔はーー・・・)」
ずっと傍で見てた。向けられた、あの笑顔を俺は守りたいと子供ながらに思ったんだよなァ。銀さんにだって可愛い子供の頃があんだよ!純粋だった時代がなッッ!!
でも、泣いたり怒ったりした顔は見たことないンだよねェ。それが何かモヤモヤしてさ~ァ。俺の前では隠すな!とか、心の中で叫んでたっけ。アイツの特別になりたくて・・・。今は、どうだろうな。こんな俺を見て何て言うか気になる所ではあるが心の準備がないと無理だな、うん。怖いモン。
?「ちょっといいか?其処の天パ侍さんよォ」
銀「誰が天パ侍だ、コノヤロー!!・・・て、なんだ、柄の悪いお巡りさんかよ。こっちは仕事なの。邪魔すんじゃねーよ」
土「こっちも仕事だ。変な白髪の天パ野郎が覗き見してるって通報があったんだよ」
銀「・・・マジでι」
土「マジだ。で?何を覗き見してたんだ。場合によっちゃあ逮捕だが?」
眼が怖い!怖いって!お巡りさんよりヤクザの方が絶対向いてるよ!!
こりゃあ、どう言っても逮捕にしかならない気がすんだけど。つーか、俺よりもアイツらの方が怪しくない?なんで俺なんだよ!!
銀「依頼があったんだよ。此処の住職から。最近変質者が出るって。ガキがいるから心配なんだとよ」
土「成程。それで、テメェが見廻りしてると」
銀「そっ!頼りないンだろうな。ストーカーするようなお巡りさんだしねェ。そっちを取り締まった方がいいんじゃないの?副長さんよォ」
土「チッ。で?連中の目的は分かってンのか?」
銀「さぁな。美人な女が目当てなんじゃねーの?」
ヤツの妹となれば面倒なコトにしかならないだろうが、連中を探るには役に立つし。此処は共同作戦だな。ウチのガキ共は逃げたし、俺一人じゃ手に余るしね。
土「見ねェ顔だな。知り合いか?」
銀「・・・いんや、知らねェ。最近流れ着いたらしいぜ。旅人なんだと」
土「女の一人旅ねェ。しかし、なァ」
銀「何だよ?」
土「どっかで似た顔を見た気がしてな」
ドキンッ!!
まっ、まぁ、そりゃあ、兄妹だし?似てなくもないけど・・・ι 今気付けばアイツが連れてかれそうだよね。事情聴取とか言ってさァ。それは流石に困るンだよ。こちとら、久し振りすぎてどうすりゃいいのか、結論出てないからよォ。どうすっかな・・・?
土「普通の女が何だって狙われてんだ?」
銀「美人だからじゃないの?あんだけの上玉なら売れば金になるだろうしな」
土「テメェ、そんなこと考えてたのか?ゲスだな」
銀「誰がそんなことするかッ!!例えばの話だろうが!俺のどこがゲスってんだよ!そこまで性根は腐ってねーンだよ!」
土「おー、そうか。こんなところでストーカー紛いのコトしてるのは腐ってないと。成程ねェ」
銀「ぐっ・・・ι」
ストーカーじゃねェって言ってンのになんなのこの不良警官。俺を取り締まるなら連中が先だろう!どう考えたってメチャクチャ怪しいじゃん?天パだからか?天パのせいかァーーーッ!ンなワケねーだろがぁぁぁぁあーーーッ!
銀「お宅いつまで居るの?いい加減仕事の邪魔なんだけど?こんなところで暇潰してるならあっちのストーカーゴリラ取り締まりなよ」
土「何だよ、ストーカーゴリラって」
銀「アレ」
土「どれだーー・・・!?」
あ、言葉失った。だろうなぁ、だってお妙の後ろに何か、変な、あ~、何て言うか。否、うん、まぁ、アレだ。いつもの様にゴリラが雌ゴリラを追っかけてンだよ。
お前らの想像力に任せる!
銀「ホラホラ~。早くしないと行っちゃうよ?」
土「チッ。テメェも周りの目ぐらい気にしやがれ」
銀「ヘーヘー」
やっと行ったか・・・。ったく、しつこい男だよねェ。俺のどこが怪しいンだっての。
まぁ、こんなところで物陰から女一人を見つめてりゃあ、ストーカーって言われても仕方ないよな。ゴリラの仲間入りはしたくないけど・・・。
銀「(あ~、やっぱ美人だな。ガキの頃から可愛いって思ってたけど成長するにつれて綺麗になっていったモンなァ)」
あんなことなけりゃ、普通の女みたいに所帯持って子供が居ただろうに。否、他の男となんて考えらんねーな。だからって俺ってのも・・・ないなι
アイツの傍には居たい。だけど、幸せにしてやれるかって言われると自信はないンだよね。どっち付かずの想いは拗らせたまま残ってるのに、どうしたらいいのか分からないんだ。
・・・ーー俺は、アイツを"守れなかった"。
その事がアイツを遠ざけてる。否、逃げてんだよな。笑っているなら、幸せなら。ソコに俺がいなくてもいい。な~んてな!そんなカッコいいコト言えるかよ。ガキの頃から今日まで忘れた日はないンだからな。諦めようともしたが、出来なかったよ。ずっと、ずっと想い続けた大事な女。
銀「・・・あやめ(ポツリ」
久し振りの名前を呟けば、胸の辺りが何かこう~~・・・温かい?モヤモヤ?フワフワ?何て言ったらいいんだろう。わかんねーけど!何かだ!何かって何だよ!って思ったヤツは廊下に立っとけ!
■□■□■□
銀「ふぁ~あ・・・」
あ~、寝みィな。一度帰ってまた来るか。流石にこんな夜更けに出て行ったりしないだろうし。でも、いつまで居るかも分からねーンだよな・・・。
連中に気付いてるなら、アイツのコトだ。
恐らくーー・・・。
月明かりがあるとはいえ、お世辞にも明るいとは言えない中に二人の影が見えた。
・・・やっぱりな。話し声は聞こえないが住職とアイツの姿だって分かる。ガキ共を危険に晒す前に出て行く選択をしたってワケだ。
一人で流れるように旅してたんだな。居場所も作らず、ずっと、一人で・・・。
情けねェ。守れもせず、見つけてやることもせず、俺ァ、アイツらと馬鹿やって過ごしてた。忘れたコトはなかったってのは本当だ。でも、頭の片隅にあったってだけだもんなァ。
銀「(・・・っと。見っけーー・・・ヅラじゃね?知ってやがったな。あの野郎)」
てか、よくもいけしゃあしゃあとアイツの前に出て行けるよ。もう少し近づいてみっか。
バレない様に用心しねーと。よしっ!この辺りなら聞こえるな。
桂「すまなかった。あの時、お前一人を犠牲にした俺に会わせる顔などないのは分かっている。だが、謝らねば気が済まなくて、こうして立っている。本当にすまない」
気持ちは同じか・・・。
『謝ることなどどこにもありませんよ?』
桂「しかし・・・」
『今日の再会があるのはあの時の選択が間違いではなかったからではありませんか。私は誰も恨んでもいないし、憎んでもいませんよ。
ちゃんと生きていてくれた。居場所を見つけて、変わらずに。私はそれがわかっただけで十分です(微笑)』
・・・・・・・・変わらねェ奴。
桂「変わらないな、お前は。何故、アレが兄なのか理解できん」
『ふふ。私は結構似てると思いますけどね』
桂「似てもらっては困る。手が掛かるのはあの馬鹿二人で十分だからな。寧ろ、手に余る」
ん?馬鹿二人って俺も入ってンの?ふざけんな!あんなシスコン眼帯野郎と一緒にすんな!
桂「銀時には会ったのか?」
ドキッ!
『いいえ。ですが、万事屋をやっているとか。お世話になっていた住職さんのお知り合いだと聞きました』
桂「会ってはどうだ。アイツもお前に会いたがっていたからな。出て行くのはそれからでも遅くはあるまい」
ヅラ、ナイス!会いに来るなら俺も会いやすいぜ!
『長いものですね。あれから今日まで・・・』
桂「そうだな。色々あったが、腐れ縁はなかなか切れないものだ」
『ふふっ。・・・銀に会うのは止めておきます』
桂「何故だ?」
『銀は優しいですからね。会ってしまったら引き留められそうですから』
桂「それなら留まればいいではないか?」
『・・・此処には私の居場所はありません。いえ、何処にもないのかもしれない』
桂「それは・・・」
『"死神"に居場所など不要ですよ(微笑)』
桂「あやめ、お前はッ・・・!?」
ガタガタッ!!
桂「!?」
『!?』
桂「誰だ?」
〈にゃ、にゃあ~ぁ〉
桂「なんだ、猫か。それにしてはおっさんみたいな鳴き声だな」
誰がおっさん猫だ!あっぶねェ、危うく盗み聞きしてるのバレる所だったぜ・・・ι ふぅ~。
『・・・私なら大丈夫ですから。自分で見つけた道を振り返らずに進んでください』
桂「ならば、あやめ。お前が進む道は何処だ?」
『・・・風の吹くまま、気の向くまま。その先に何があるのかは私にも分かりません』
桂「俺と高杉はお前とは進めんかもしれないが、銀時は違う。アイツはただの万事屋だ。共に進むには問題などなかろう?何故、そうまでして独りであろうとするのだ」
『私は、死神だから・・・一緒に居たら不幸になるだけですよ』
桂「あやめッ・・・!」
『あの頃には戻れない。けれど、私はみんなが生きていてくれただけで、知れただけで十分です。道は違えたんです。私も私の道を行きます(微笑)』
そう言ってアイツは背を向け歩き出した。
月明かりに照らされた微笑みが綺麗で、追いかけるコトも出来ずにその場から動けずにいた。
道を違えた、か。それもそうだ。俺達はあの頃とは違う。ガキだったあの頃とは・・・。アイツの行く道が何処なのかは分からねー。それが、アイツを独りにさせるのか。
"約束ですよ。私と銀時の、二人の約束ですーー・・・"
約束・・・面倒なモノ残されたな。
俺は、その約束を守れていない。三度目の正直があるなら今を逃したら、もうアイツの笑顔を見れないんじゃないのか?
桂「まったく。頑固な所は兄譲りか。それで。お前はどうするんだ?・・・銀時」
銀「ンだよ、バレてやがったのか。猫の鳴き声なんてやったのに恥ずかしいだろうが」
桂「アレが猫か?随分と年寄りな猫の鳴き声だったがな」
銀「るせぇ・・・」
桂「行かせていいのか?」
銀「いいも何も。アイツは独りがいいんだろう?引き留める理由なんざ俺にはねーよ」
桂「だろうな。
・・・アイツを狙う連中は高杉と手を組むコトを考えてる輩のようだ」
銀「はァ?そんなコトしたらあのシスコン兄貴が怒り狂うだけだろう?シスコンだからな!」
桂「あのシスコン兄ならあり得ない話ではないな。
ーーって、そうじゃない。アイツを狙う連中は他にも居ると言うことだ。敵にしろ味方にしろ、な」
成程ね。どっちからも狙われてるってワケか。よくもまぁ、モテる女だねェ。分からなくもないけど。
桂「なぁ、銀時。アイツはいつだって俺達を優先していた。どんなに思うところがあっても、な。そのクセ自分のコトは隠そうとするのは頂けないがな」
銀「アイツが弱い部分を見せられるのはアイツだけだろう。ガキの頃からずっとな」
桂「そうだったな。だが、今のあやめには弱さを見せられる。安心できる居場所がない。いつか、抱えきれない程のモノに押し潰されやしないかと心配になるのだ」
銀「・・・そこまでガキじゃねェだろ?」
桂「お前よりはな。だが、知らないわけではないだろう?アイツは自分のコトに関しては興味がない、と」
銀「・・・」
桂「自己犠牲をいとわないような奴だ。独りで居たいワケではあるまい。独りであらねばならない理由がある、俺にはそう思えてならない」
銀「そうかよ・・・」
桂「銀時。後悔だけはするなよ?」
銀「ヘーヘー・・・。頭の片隅にでも入れてくよ。じゃあな」
桂「・・・まったく。いつになったら素直になるんだろうな、あの二人は」
ーーーーーー・・・
あ、あれェェ~~~・・・ι??
ヅラと別れてアイツを追った。追ったんだけど・・・何処にも居ねェ。そんなに時間経ってもいないし、走ったワケでもなさそうだし。なんでだ??
銀「(オイオイッ!見失っちまったのかよ!?これじゃあ始まる前から終わってんじゃねーか!どーすんだよ!俺のドキドキを返せーーェ!!)」
マジかよ~~・・・。
何処にも居ねェ。隠れられるような場所も探したが見つからない。途方に暮れて佇むと"あの時"襲った喪失感が押し寄せる。手の届く場所に居たのに、逃げ腰になって。カッコ悪いったらねーよ。ダセェ・・・。
銀「はぁ~・・・」
"死神に居場所など不要です"
"死神が居たら不幸になるだけですよ"
"死神"ーー・・・アイツがそう呼ばれていたのは昔だ。その呼び方が俺は大嫌いだった。多分、俺以外の奴も。なのに言われた本人は笑うだけで否定しないし。嫌がりもしない。それどころか、間違いじゃないって言いやがるしな。ずっと見てきたがアイツのコトだけは未だによく分からねェ。
分からねェけど、それでも俺ァ、アイツだけを見つめてきた。ずっと、今もーー・・・。
銀「また、守れねーのか・・・。悪ィ、松陽。約束果たしてやれなさそうだ」
今度はいつ会えるか分からねーよなァ。まだ近くに居るといいんだけど。こんな夜更けに出歩ってれば間違いなく危ない連中に見つかるよな。となると、姿を眩まして出て行ったと思わせてから動くのが安全だよな。そーすっと、隠れる場所が必要だ。日が浅いアイツに知り合いは少ないよな?身を隠すなら吉原もありだな。女一人だし。寧ろそっちの方が都合がいいだろう。日輪なら分かるかもしれないし聞いてみっか。とはいえあくまでも俺の推測でしかないからな。このまま出ていたら・・・。
銀「(否、アイツは俺等よりも慎重な奴だ。身を隠すが外れてるとは思えねェ。)
可能性があるなら潰していかねーとな」
そうと決まれば、一度帰って飯食って、寝るか。飯も食わずに張り込んでたからな。
銀「(そういや、アイツの作った味噌汁食いてーな)」
□■□■□■
俺は呪われてんのか?
今日であの夜から一週間。気が付いたら経っちゃったのよ?否っ!!探そうとしなかったとかじゃないからね!?探そうとしたんだよ。したんだけどさァ~。
ストーカーに追いかけ回されるわ。ゴリラ女に捕まるわ。ババァはうるせェわで。雑用をさせられてたんだよ~(泣) タダ働きで、だぜェ。肉体労働でもう~へっとへと。銀さんだって若いってつっても限度があるのよ。
やっと、探しに行けるんだけどーー・・・。
銀「なんでお前らまで着いてくんの・・・ι?」
新「なんでって。着いてこられたら困る理由でもあるんですか?」
神「銀ちゃん、ツッキーに会いに行くの?それとも、気に入った女でも見つけたアルか?」
銀「んっ、ん~、まぁ、そんなとこーー・・・グハッ!!」
新「仕事も探さないで何してんだ、アンタァ!?」
神「ロクに給料も払わないで自分は吉原でウハウハってか!ふざけんな!」
銀「お前ェーらこそふざけんな!
勝手に着いて来といて何様ですかァ!?」
いきなり殴る様な子に銀さん育てた覚えないからね!?金がないのに吉原でウハウハするかってんだ。んなとこ月詠に見つかったらあの世に送られるからね?・・・マジで。
新「で?結局、吉原には何しに行くんですか?」
銀「女を探しに。居るかは分からねーけどな」
神「その女って誰ネ?知ってる人?」
銀「まあ、そんなところだ」
新「随分と歯切れが悪いですね。昔の知り合いってコトですか?」
銀「・・・あぁ」
別に隠すようなコトじゃないんだけどよ。なんつーか、俺自身、まだ心の準備が出来てないンだよね。情けねェよなァ。一途に思い続けて。やっと会えたってのに引き留められず。探してはいるが会ってどうしたいのかも分からねーってンだからな。惚れた女一人、守ってやれなかった男が今更なんて言ってやればいいんだろう。
アイツは何を一人で背負ってンだ? 俺にも背負わせて欲しい。守らせて欲しい。傍に居て欲しい。欲は出るのにそれを伝える術であるはずの言葉がいつだって出やしねーんだよね。肝心な所でいつも後悔するのよね、銀さんって。
銀「(あやめ・・・)」
あ~、なんでこんなに好きなのかねェ。
アイツの兄貴なんてアレだよ?「俺ァ、壊すだけだ。この腐った世界を!」なんて言ってる様な頭がイカれてる奴だよ?普通なら関わらないじゃん?挙げ句にはシスコンだし。厄介なオマケ付きなのに心底惚れちまってる俺って凄くない? 10年・・・10年ただ想い続けてきた。否、違うな。ガキの頃合わせたら10年じゃきかねーか。長い片想いだぜ、まったく。銀さんこう見えても一途だからね。
ーーーーー・・・
日「新入りかい?何処で聞いたか知らないけど、居るよ。一人だけ」
新「そうなんですか?」
日「ワケありみたいだけどね。一週間前にふらっと来て。少しの間滞在したいって。タダってワケにもいかないから仕事してもらってんのさ。もちろん、遊女じゃないよ」
新「接客か何かですか?」
日「そう。それと、三味線が多少出来るってんで芸者もしてるよ。元が綺麗な子だから今じゃ売れっ子になってるけどね。
その子がどうかしたの?」
神「銀ちゃんが会いたがってるネ。知り合いなんだって」
日「今、出てるけどもう少ししたら戻って来るから。お茶でも飲んで待ってな」
新「すみません、ありがとうございます。
・・・ーーーアンタら、いい加減にしてもらっていいですか?」
銀「俺のせいじゃねーだろッ!いきなりクナイ飛ばしてきやがったのはアイツだからね!銀さんこれっぽっちも悪くないからねェ!?」
出会って秒でクナイ飛ばしてきやがったってのになんだって気にもせずに話進めてんだよ!此方は言い掛かりつけられるわ、容赦ねーわで困ってるってのに!!薄情者がッ!
日「月詠。いくら久し振りに銀さんに会えたからってはしゃぐんじゃないよ」
月「何処がはしゃいでるように見える?!大体、こんなモジャモジャに会ってはしゃぐ女が居るわけないだろうッ!」
銀「誰がモジャモジャだッ!俺だってな、こんな可愛げのねー女に絡まれて迷惑してんだよ!何処がはしゃいでるように見えるのォ!?お宅の目は節穴かァ!?」
新「いい大人が何やってんだか・・・」
神「中身は小学生だからな。ツッキーも嬉しいならちゃんと嬉しいって言えばいいネ」
日「まったく。二人揃って素直じゃないんだから」
マジでマトモに話聞いてくれない?つーか、俺の目的はこんな凶暴な女じゃないよ?真逆の女だからね?怒らせると怖ェけど・・・。
「おや、黄泉じゃないか。此処には慣れたかい?」
『まだまだ、でしょうか。ですが、皆さん優しくて居心地は良いです』
「そうかい。じゃあね」
『はい。お気をつけて』
聞こえて来た声に身体が固まるのが分かった。聞き間違える筈のない声。柔らかくて優しい声。ヤバいッ、心臓がドキドキうるせェ///
『ただいま戻りました・・・?』
日「お帰り。アンタに客だよー・・・って、アラ?どこ行っちまったんだ?」
新「ホントだ。さっきまで確かに居たんですが・・・」
神「おーい、銀ちゃーん。かくれんぼしてるの?混ぜろよォ」
新「いや、かくれんぼしてないからね?
すみません。さっきまで居たんですが。あ!名乗って居ませんでしたね!志村 新八と」
神「神楽ネ」
『黄泉と言います。本名ではありませんがコチラで通っているので。それで、私に客とは??』
俺は何してんだ?
アイツが戻って来たってのに反射的に隠れちまってんじゃねーかァァァ!?馬鹿だろ?!どうすんの?この状況でどのタイミングで出ていけばいいんだよ!しかも、勝手に話し進めてるしィ!!マジでヤバイよ。タイミング分からねーよ。銀さん泣きそう・・・(泣)
物陰から覗き見ればやっぱりアイツが居て。変わらない笑みで対応してた。
新「銀さんが会いたがってたんですけど、ホントに何処行っちゃったんだろι」
『銀さん?』
神「万事屋銀ちゃんの社長でマダオな天パの坂田 銀時ネ」
『・・・そうですか』
銀「・・・」
会わないって言ってたし。迷惑って思ってたりすんのかな。マジで、泣きそうなんだけど・・・。
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