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少女と悪魔

先程まで犬だったものをそこら辺にバタンとコーデュ・ロイは投げ捨てる。

ふと下を向くと、グチャリと己の顔から皮膚が足元に落ちる。

すると、ロイの瞳からボタボタと大粒の涙が零れ落ちる。

「嗚呼…我が愛しのアンジョレット…!貴女は何処まで私に罪を重ねるのだ」

と、先程まで犬を惨殺した男とは別人のようにオイオイと泣きじゃくる。

彼は古ぼけたコンパクトを開くと、そこにはショートボブで真っ白の羽根を持つ少女がこちらに笑顔を向ける無垢な少女が映っており、ロイはそれをうっとりと眺めると愛おしそうに彼女をなぞった。

「…旦那様」

その声に振り向くと、そこには悲しげな瞳をした女性──ジャガードが立っていた。少しウェーブがかった髪は膝まであり、ロイと同じく溶けた皮膚を修復させるため体の5割が包帯で覆われている。

「また…ベルベット様のことを…」

するとロイはその場に崩れ落ち、ジャガードの足にしがみつく

「嗚呼ッ!我が愛しのマリオネットよ…尊き命を犠牲にしても我が愛しのアンジョレットには近づくことは無いのだ…ッ!」

「では、なぜそこまでしてベルベット様のことを…」

ジャガードは倒れ込むロイをそっと抱き締め、
「可哀想な人……身体が朽ちる呪いを掛けた愛する人をそれでも諦められないのね…嗚呼…旦那様…もう手に入らない御方よりこの私を…」

と、言うとロイはジャガード振り払った

ジャガードは悲しそうに振り払われた腕を見つめる。

すると、突然2人の身体─いや、地面が眩い光に包まれた。

「嗚呼…我が愛しのアンジョレット……肉体の朽ちなど生ぬるい…今すぐ…貴女を魂で抱き締めたい」

「…嗚呼…旦那様」

──────────

「おい!!!成功したぞ!」

「やったわね!あなた!!これを研究会で発表すれば…!」

若い男女が2人を召喚するなと騒ぎたてた

嗚呼──美しくない

「嗚呼、悪魔様…!」

「どうした?」

「一つ願いがあるのですが─」

「私達をオグルにしてください…!正直子どものいる生活には耐えられません…!だからいっそ…!オグルになって永久に──」

嗚呼─

嗚呼───

嗚呼──ッ────

ロイはそう言った女に唇を重ね

そのまま魂を吸い出した

女はバタリと倒れ

男は──

「嗚呼!なんと美しい…」

先程と同じようにジャガードは男に唇を重ね

命を失った

「我が愛しのマリオネットよ……これでまた一歩…我が愛しのアンジョレットに」
「ええ、わかりました…」

2人は身体がドロドロと溶けだし、先程の男女の身体に入った。

─────────

嗚呼─我が愛しのアンジョレット…

貴女の約束通り人間や同胞の尊き命を消し続けた──

嗚呼…はやく逢いたい──

嗚呼…その美しく白い肌を愛撫でたい──

嗚呼…我が愛しのアンジョレット────

───────────

バカな人

頭のいい天使に騙されて

人や同胞を殺すだなんて

…………

殺しても殺しても身体は朽ちるのに

可哀想な人

嗚呼─でも───

─────

嗚呼…私の愛しいキャリヌール
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