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少女と悪魔

「おやおや、こんなところでぬくぬくと人間に飼い慣らされるとは。先祖代々の悪魔殺しはようやく諦めましたか?化け猫のオグル、リップ・スティックさん?」
「おいおい、俺がこんな姿にさせた原因の1つである貴様が何を言うんだ」
昔から飼っていた愛猫が実は悪魔殺しの化け猫で、しかもレインに面識がある??
どうしよう、全然わかんない。
チラリと横にいた和恋を見ると和恋もよくわかっていないようでポカンとしていた。(和恋のことなので愛猫が化け猫だった事実にショックを受けただけかもしれない)
すると、ずっと黙っていた蓬が口を開いた
「……話に入ってしまいすみません。1つ目にヴァーゼ…いや、リップさんに何を食べさせたのか、2つ目にリップさんはなぜ猫の姿で俺達の家に居たのか、最後に先程「こんな姿にした原因」と言いましたがどういうことなのか。この3つを説明して頂きたいです。」
「ああ、1つ目は私が説明しましょう」
と、さっきまでの殺気はどこへやらいつものようにニコニコと笑顔に戻り、懐から先程と同じパッケージを取り出した。
「このチュールは味や匂いは変わりませんが、少し細工をした魔力……ええと、人間でいうと活動するためのエネルギー…精力でしょうか?それを入れてあります。その為これを舐めたその化け猫は元の姿に戻ったという訳です。」
「なるほど、ありがとうレインさん。そして、2.3番目についてですが──」
と、リップさんに視線を向ける
リップさんは面倒くさそうにため息をつくと
「どうしてオグルに関係無い人間に教えなきゃならねーんだよ」
「…確かに貴方からしたらそうかもしれない。でも俺は─数年間の間だったかもしれないが一緒に過ごしてきた家族だと考えている。だから俺は貴方のことをもっと知りたい」
「家族─ねぇ…」
そう言うと、リップはニヤリと口角を上げた
「いいだろう…それに、ヨモギはシャンプーが上手かったからなそれに免じて教えてやる」
「ありがとうございます」
と、蓬は少し嬉しそうに微笑んだ。
「まず、俺がどうしてこの猫の姿でいた理由だが、それは俺もよくわかっていない。俺は死ぬ時突然光出して目が覚めると、気が付けば猫になってた。」
「…そこからどうにかして元に戻ろうとしなかったのですか?」
「あー…そうだな…まぁ、アレだ。思ってたより猫の暮らしも悪くなかったからな…」
と、どこか照れ臭そうに話した。
「まぁそんなところだ!…で、「こんな姿にした原因」と言ったが─つまり俺を死に至らしめるきっかけがあったという訳だ。」
そう言うと、リップさんはため息をつくと
「そこのお嬢ちゃん、こいつの主人だったよな?」
突然の指名に驚きつつも返事をする。
「は、はい!」
「聞いて驚くなよ、俺を殺したのはコイツだ。」
と、レインを指さした。
えっ…!?
レインが…?同じオグルのリップさんを…!
驚きのあまり言葉が出てこない。
「さっきコイツがちょっと言ったが、俺は先祖代々"悪戯"しがちな悪魔を殺すのが仕事だ。まぁ─普通の悪魔がすることといえば召喚された土地で契約を結ばずにその場にいた人間を喰い散らかすとかな。」
「だが、コイツは──」
「人間は1人も喰わない代わりに、罪のないオグルを食い散らかす共食いの常習犯だったんだ」
「レ……イン?」
そういうと、レインはいつもの笑顔を崩さずに
「お嬢…前にも言ったでしょう?『私は人間は食べない』とね」
と、静かに言った。
「お嬢ちゃん、さっさとこんな悪魔とは契約を切ることを薦めるぜ。どうせ契約しててもロクなことが無い」
確かにレインは『私は人間は食べない』と言ったけど、それはてっきり改心したから食べる気はないとかそういうものだと思っていた。どうする??いや、どうするも何もここで突然契約を破棄する??いや、そんなことは出来ない。そんな生半可な気持ちでレインを呼び出したんじゃない!
そうだ、私はお母さんとお父さんを探す為に危険な悪魔を呼び出したんだ!レインがどんな趣味をしてたとしても関係は無い。
「いや──いい、確かにリップさんにしたのは本当に酷いことだけど、私がレインを呼び出したのは私のお父さんとお母さんにまた会いたかったから…だからレインが過去にどんなことをしていたかなんて関係無い」
突然体ふわりと宙へと浮いた
「やはり…流石は私のお嬢……!私を呼び出したことだけがある」
ま……またお姫様抱っこ…!
「へぇ、なかなか言うじゃねーか。俺は気に入ったぜお嬢ちゃん。それに俺のことはリップでいい、『さん』とか付けられる程大きい人間じゃねーからな」
「……じゃあリップ、君は今日から…いや、改めて同じ家で暮らす家族だ」
すると、ようやく現在何が行われているか理解ができたらしい和恋が
「は、はぁ!?なんで俺が化け猫と一緒に住まなきゃなんねーんだよ!!!あと薙乃!「確かに酷いことをした」ってレベルじゃねーのわかってんのか?殺人だぞ??あと悪魔!!!その気色悪い真似をやめろ!!兄貴の目が腐るだろ!!」
と、一気にペラペラと喋り出した
「……まぁまぁ、リップ落ち着いて。弟が1人増えたと思って…」
「いくら兄貴の頼みでもそれはできねーな。薙乃1人でも大変だってのにまた下に1人増えるなんてゴメンだ」
「俺こそそんなの勘弁して欲しい。五月蝿い上にシャンプーするのは下手。そんな人間の弟にならなきゃなんねーのかよ」
「お、お前はシャンプーでしか人を──!!!!」
と、キィキィと2人して言い合っていた。
案外息が合うのかも…?
「………とりあえずリップは2階の少し広い部屋が…あるからそこを………」
とまで言うと蓬は糸が切れたかのようにバタリと倒れた。
「あ、兄貴!!!」
和恋が呼びかけるも一切返事が無い。どうやら気を失ってしまっているようだ。すると和恋は、首筋に手を置いた。
「…俺は兄貴を部屋に運ぶ。お前達は部屋に戻ってろ」
「う、うん」

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「…!……兄貴」
「あぁ……和恋…ちょっと気を失っちゃったんだね…ここ最近研究が多かったから…きっと疲れが出ちゃったのかも…」
「……………」
「…和恋」
「………」
「そんな顔しないで、俺はもう大丈夫だよ」
「……兄貴」
「ん?どうした?」
…………
「俺…兄貴が…」
「…………」
「…………」
「…………」
「…やっぱり、なんでもない」
「そう…わかった」
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