少女と悪魔
───────
とても長い間…眠っていたような気がする。
しかし、何処かおかしい。
俺は確か、神社の裏でぶっ倒れた筈だ…なのに今の俺の目の前には大きな皿に入った水…その皿には『ヴァーゼ』と書かれている。
なにがなんなのかさっぱりわからん、とりあえず此処から動くのが最優先だ。もしかすると近くに8号と鹿の子がいるかもしれない。
そう思いながら立ち上がると、己の手足を見て気がついた。
に、肉球!?た、確かに俺は化け猫のオグルではあるが本物の猫になった記憶は無い…
とりあえずこの部屋を出ることにした。
廊下へ出てみると誰かの話声が聞こえてきた
「…で、コーデュ・ロイを召喚すれば願いを全て叶えるっていうのは本当か?」
「えぇ、そうらしいわ。コーデュ・ロイは悪魔の中でも一際強い力を持つの。貴方の願いなんてすぐ──」
…!!違う…!コーデュ・ロイは間違い無く他人の願いを叶える能力を持っているが、あんな奴は人間に背負いきれるオグルではない!
俺は慌ててその2人が会話する部屋に入り
「やめろ!そいつは…」
と、言ったつもりが「にゃーん」という鳴き声しか出なかった。
─────────
「いやぁ…やっぱり猫はかわいいですねぇ」
と、家で飼っている猫をレインが撫でながら言った。いつもは誰にも懐かないことで有名な筈なのにレインに撫でられるのが心地良いのか「にゃーん」と鳴いている。
「レインの住む世界には猫っていないの?」
「猫ですか……猫は居ませんが、先祖代々悪魔殺しをすることで有名な化け猫なら知っていますよ」
「え!!悪魔殺しの化け猫!?レインはやられちゃわないの?」
「えぇ、ただの化け猫ごときに殺られる程私は弱く…いててて」
どうやら撫でていた手を噛まれてしまったようだった。
「おかしいな、いつもなら絶対噛まないのに……」
「おい!!!」
そう言われ、振り返るとバケツと雑巾を持った和恋が立っていた
「今週はしっかり掃除するって言っただろ!!!!兄貴を過労死させる気か!」
「おや、ちょうどいいところに和恋さん」
「な、なんだよ」
「この猫…ええと…」
「『ヴァーゼ』だ」
「そう、ヴァーゼはいつから此処に住んでいるのか知っていますか?」
「え?言われてみれば知らないな……あ、兄貴!ヴァーゼがいつからここに住んでるのか知ってるか?」
偶然通りかかった蓬お兄ちゃんは手に持っていた掃除機を置きヴァーゼを抱き上げた
「母さんに聞いたことあるけど、確か父さんと出会ってすぐだから25年……?」
えっ、25年?猫って長生きしても13~6年くらいなんじゃないの?
「その通り!よくお嬢お気づきになられましたね」
「私なんにも喋ってな…」
「そう!猫の平均寿命は15.65歳。つまりヴァーゼとかいったその猫は長生きし過ぎなんです」
すると、レインは懐から何かを取り出し、ヴァーゼの鼻先へと持っていった。
「おいおい、待て待てなんだそれは?」
「安心してください、ただのチュールです」
確かにパッケージはチュールであり、特に変な感じはしない。
ヴァーゼはそれをクンクンと嗅ぎ、ペロペロと舐め始めた。
すると……
ドンッという音がした途端煙のようなものが周囲に立ち込めた。しかし、その煙は一瞬でありすぐに煙は無くなった。
気が付くと、ヴァーゼは居なくなっており、代わりに
「いたた…!!何するんだよ!悪魔!」
と叫ぶ、黄緑色の髪に猫の耳のようなものが付いており、時代劇かとツッコミたくなるようなよくわからない民族衣装を着た少年がいた。
「おやおや、こんなところでぬくぬくと人間に飼い慣らされるとは。先祖代々の悪魔殺しはようやく諦めましたか?化け猫のオグル、リップ・スティックさん?」
つづく
とても長い間…眠っていたような気がする。
しかし、何処かおかしい。
俺は確か、神社の裏でぶっ倒れた筈だ…なのに今の俺の目の前には大きな皿に入った水…その皿には『ヴァーゼ』と書かれている。
なにがなんなのかさっぱりわからん、とりあえず此処から動くのが最優先だ。もしかすると近くに8号と鹿の子がいるかもしれない。
そう思いながら立ち上がると、己の手足を見て気がついた。
に、肉球!?た、確かに俺は化け猫のオグルではあるが本物の猫になった記憶は無い…
とりあえずこの部屋を出ることにした。
廊下へ出てみると誰かの話声が聞こえてきた
「…で、コーデュ・ロイを召喚すれば願いを全て叶えるっていうのは本当か?」
「えぇ、そうらしいわ。コーデュ・ロイは悪魔の中でも一際強い力を持つの。貴方の願いなんてすぐ──」
…!!違う…!コーデュ・ロイは間違い無く他人の願いを叶える能力を持っているが、あんな奴は人間に背負いきれるオグルではない!
俺は慌ててその2人が会話する部屋に入り
「やめろ!そいつは…」
と、言ったつもりが「にゃーん」という鳴き声しか出なかった。
─────────
「いやぁ…やっぱり猫はかわいいですねぇ」
と、家で飼っている猫をレインが撫でながら言った。いつもは誰にも懐かないことで有名な筈なのにレインに撫でられるのが心地良いのか「にゃーん」と鳴いている。
「レインの住む世界には猫っていないの?」
「猫ですか……猫は居ませんが、先祖代々悪魔殺しをすることで有名な化け猫なら知っていますよ」
「え!!悪魔殺しの化け猫!?レインはやられちゃわないの?」
「えぇ、ただの化け猫ごときに殺られる程私は弱く…いててて」
どうやら撫でていた手を噛まれてしまったようだった。
「おかしいな、いつもなら絶対噛まないのに……」
「おい!!!」
そう言われ、振り返るとバケツと雑巾を持った和恋が立っていた
「今週はしっかり掃除するって言っただろ!!!!兄貴を過労死させる気か!」
「おや、ちょうどいいところに和恋さん」
「な、なんだよ」
「この猫…ええと…」
「『ヴァーゼ』だ」
「そう、ヴァーゼはいつから此処に住んでいるのか知っていますか?」
「え?言われてみれば知らないな……あ、兄貴!ヴァーゼがいつからここに住んでるのか知ってるか?」
偶然通りかかった蓬お兄ちゃんは手に持っていた掃除機を置きヴァーゼを抱き上げた
「母さんに聞いたことあるけど、確か父さんと出会ってすぐだから25年……?」
えっ、25年?猫って長生きしても13~6年くらいなんじゃないの?
「その通り!よくお嬢お気づきになられましたね」
「私なんにも喋ってな…」
「そう!猫の平均寿命は15.65歳。つまりヴァーゼとかいったその猫は長生きし過ぎなんです」
すると、レインは懐から何かを取り出し、ヴァーゼの鼻先へと持っていった。
「おいおい、待て待てなんだそれは?」
「安心してください、ただのチュールです」
確かにパッケージはチュールであり、特に変な感じはしない。
ヴァーゼはそれをクンクンと嗅ぎ、ペロペロと舐め始めた。
すると……
ドンッという音がした途端煙のようなものが周囲に立ち込めた。しかし、その煙は一瞬でありすぐに煙は無くなった。
気が付くと、ヴァーゼは居なくなっており、代わりに
「いたた…!!何するんだよ!悪魔!」
と叫ぶ、黄緑色の髪に猫の耳のようなものが付いており、時代劇かとツッコミたくなるようなよくわからない民族衣装を着た少年がいた。
「おやおや、こんなところでぬくぬくと人間に飼い慣らされるとは。先祖代々の悪魔殺しはようやく諦めましたか?化け猫のオグル、リップ・スティックさん?」
つづく