PHASE-00 シファ
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「ほう……客人を連れて来たか、アスラン」
「申し訳ありません、クルーゼ隊長。しかし──」
「責めている訳ではない。……それにしても面白い目だな、少年。名は?」
クルーゼ隊隊長、ラウ・ル・クルーゼ。仮面の向こうの目は見えないが、口元は確かに穏やかだった。
「申し遅れました。シファ・イトと申します。……ラウ・ル・クルーゼ隊長」
シファは静かにクルーゼに対し一礼、頭を下げる。
「お先にお詫び申し上げます。アスランに無理を言って同行致しました」
「礼儀正しいな。……だが、詫びる必要はない。むしろ歓迎しよう」
「隊長──」
「戦力は多いに越したことはない。──まして、この目だ」
クルーゼはアスランの言葉に見向きもせずシファの瞳を捉えた。クルーゼも気づいたらしい。彼のこの揺らぎない桜色に。
「シファ・イト。一つ聞こう。お前は……戦えるのか?」
「……では、無礼を承知で失礼致します」
シファはそのまま真っ直ぐと、クルーゼの仮面を貫くように見つめた。
「戦えるかではありません。……戦います」
戦える──ではなく、戦う。彼は確かにそう言った。その場の誰もがシファの発言に衝撃を受けた。
(何故だ……シファ、お前は何故そんな目ができる……!?何故そんな、揺らぎのない……っ)
アスランは冷や汗が止まらなかった。かのアスラン・ザラが年下の少年の桜色の瞳に恐れている。空っぽな癖に揺らぎのない、真っ直ぐと貫くその瞳に──。
クルーゼはフッと愉快そうに笑った。
「……ほう、いい答えだ」
「シファ……」
「おい……あれが13だってよ……」
「……」
心配そうにシファを見つめるニコル。困惑するディアッカ。イザークも言葉すら出てこなかった。
すると、クルーゼは頷いてようやくアスランの方へと振り返った。*
「アスラン、ジンを一機回せ。予備機があるだろう」
「隊長!!本気ですか!?」
「本気かどうかはこの少年に聞け。ジンに乗れと言って、彼は怯えるか?アスラン」
アスランは反論もできなかった。シファの瞳を見つめる。まだ、揺らがない。出会った時から変わらない、どこかで見たことがあるようなその不思議な瞳は──一瞬の隙すらない。
「……シファ」
アスランはシファの方へと向き直る。ニコルたちもアスランとシファの方へと目を向ける。
「……本当に、いいんだな」
「キミは不思議……いいと言っても何度も迷う。二度三度言わないと、わからない?」
「……っ」
言葉も出せないアスランを他所に、シファは彼方へと歩き出す。その細い脚は止まらない。その方向は間違いなく予備のジンが置かれた場所だった。それが答えを示していた。
「安心して。ボクがキミを守るから」
ずっと無表情のまま固まっていたシファの表情が、緩んだ。一歩、また一歩と離れていくシファのその表情は、アスランたちには見えない。しかしその言葉にアスランは驚いていた──というよりも困惑していた。
「……絶対に」
小さく呟かれた最後の一言は、アスランの耳に届いていたのだろうか。シファは何故アスランに「守る」と言ったのだろうか。それはまだ、誰にもわからない──。
