PHASE-00 シファ
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C.E.70年、血のバレンタイン。プラントと「地球連合」において発生した戦争は、農業用プラント・ユニウスセブンに核ミサイルが撃ち込またことで激化。物量で勝る地球連合軍の勝利で終わると予想されていた戦争は、膠着状態に陥り11か月が経過していた。
「……ここは」
「ザフトの艦だ」
C.E.71年、1月29日。ザフト軍、ガモフ艦。この日、破損した救命ポッドをアスラン・ザラらクルーゼ隊が発見する。それにより救命ポッドに乗船していた一人の少年が救われた。一五〇にも満たない小柄な背丈。雪のような真っ白な髪。瞳は春に咲き誇る桜の花の色。真っ直ぐと前を見つめるその瞳は、何も映していないかのように空っぽだった。
「それで、君は……えっと……」
すると、少年の揺らぎのない真っ直ぐとした瞳がアスランを捉えた。
「……多分、シファ」
多分──それはあまりにも他人事で、適当な回答であるが、それでも。
「シファ・イト」
その名を耳にしたのは、きっと初めてではない。どこかで会ったことがあるような気がする。そんな曖昧な考えが、刹那にアスランの頭に過った。
「シファ……イト……」
小柄なその少年の名を、アスランが呟く。聞き覚えがある。なんとなくそんな気がした。──浜辺。自分より年下くらいの幼い少年……いや、少女だろうか。ぼんやりとした記憶の破片が脳裏に過って、すぐに消えた。
「アスラン?」
「どうしたアスラン、知り合いか?」
「え?あぁ、いや……そういう訳では。……っ」
頭痛がする。しかしそれも一瞬のことで、アスランは不思議に思っていた。
そんなアスランを、ニコルとディアッカは違う意味で不思議そうに見つめていた。イザークはそれを横目に、少年に対して舌打ちをする。
「……多分と言ったな、小僧。貴様……まさかナチュラルじゃないだろうな?」
「イザーク!」
「止めるな、アスラン!このチビが地球軍のスパイだったらどうする!」
「地球軍じゃない。ノートに書いてある」
「は?」
「ノート……?」
シファと名乗ったその少年は、確かに一冊の分厚いノートを抱えていた。紙の一枚一枚がボロボロに破れかかっており、折れかかった付箋が何十枚も張ってある。表紙に記された題名らしき文字すら、炎に焼かれた痕のようなものが残っていて解読も困難だった。
アスランは少年に「貸してくれ」と頼み、パラパラと内容を確認する。精神医学の研究記録のようなものだった。しかし、白紙に変わった瞬間の最後の三ページだけ――全く異なる内容が遺されていた。
「署名……C.E.40年月日不明、インサン科学研究部所属兼イト診療精神科医院医院長、ルフ・イト。C.E.58年、7月9日。我がたった一人の子、シファ・イト誕生。……なんだ、これは……っ!?」
「意味、分かる?」
アスランはその内容に驚きを隠せないでいた。──否、それはディアッカもニコルも、イザークも同じだった。
「ルフ・イト、ってまさか……一年前に亡くなった、あの有名な精神科医の?」
「え、それってあの……『悲劇のクリスマス・イブ』で死んだ医者だろ?記憶を弄る薬を作って──」
「ディアッカ!」
ニコルがディアッカの悪気ない言葉に怒声を上げるが、少年は庇うように片腕を軽く挙げてそれを制止させた。少年は首を横に振る。ただ、静かに。
「……ボクは自分を知らない。何も、知らない。気が付いたらあの中にいた。持っていたのはこのノートだけ。……だけど、ボク自身がそのシファだとしたら」
一同がハッと目を開く。少年は続けた。
「シファ・イトはそのルフっていう医者の子供……このノートを見たらそれがわかる」
「成程……記憶喪失の少年。あのイト医院長の子が君だとしても、不思議ではない……」
「どうします?アスラン。この子……」
「どうする、と言われても……」
アスランが困ったように眉を細めると、先程までバツが悪そうにしていたディアッカが降参したように苦笑いした。
「とりあえず、隊長殿に話を通すしかねーだろ?」
「チッ……どこのどいつだ!こんな大きなお荷物を拾ってきた馬鹿は!!」
「いやアスランだけどさ……お前だって「仕方がないな」って承諾してただろ」
「うるさい!今は時と場合が違うだろうが!!」
「……お荷物って何。ボクのこと」
「お前以外に誰がいるんだ!!」
「イザーク!子供相手に大人げないですよ!」
イザークが舌打ちをする。そんな四人の会話を他所に、アスランは一人考え事をしていた。
(シファ・イト……ルフ・イト……イト医院……インサン……?)
あまりにも不可思議な問題だが、彼にとってその一つ一つが初耳とは思えなかった。シファ・イト──彼は、一体。
「……ここは」
「ザフトの艦だ」
C.E.71年、1月29日。ザフト軍、ガモフ艦。この日、破損した救命ポッドをアスラン・ザラらクルーゼ隊が発見する。それにより救命ポッドに乗船していた一人の少年が救われた。一五〇にも満たない小柄な背丈。雪のような真っ白な髪。瞳は春に咲き誇る桜の花の色。真っ直ぐと前を見つめるその瞳は、何も映していないかのように空っぽだった。
「それで、君は……えっと……」
すると、少年の揺らぎのない真っ直ぐとした瞳がアスランを捉えた。
「……多分、シファ」
多分──それはあまりにも他人事で、適当な回答であるが、それでも。
「シファ・イト」
その名を耳にしたのは、きっと初めてではない。どこかで会ったことがあるような気がする。そんな曖昧な考えが、刹那にアスランの頭に過った。
「シファ……イト……」
小柄なその少年の名を、アスランが呟く。聞き覚えがある。なんとなくそんな気がした。──浜辺。自分より年下くらいの幼い少年……いや、少女だろうか。ぼんやりとした記憶の破片が脳裏に過って、すぐに消えた。
「アスラン?」
「どうしたアスラン、知り合いか?」
「え?あぁ、いや……そういう訳では。……っ」
頭痛がする。しかしそれも一瞬のことで、アスランは不思議に思っていた。
そんなアスランを、ニコルとディアッカは違う意味で不思議そうに見つめていた。イザークはそれを横目に、少年に対して舌打ちをする。
「……多分と言ったな、小僧。貴様……まさかナチュラルじゃないだろうな?」
「イザーク!」
「止めるな、アスラン!このチビが地球軍のスパイだったらどうする!」
「地球軍じゃない。ノートに書いてある」
「は?」
「ノート……?」
シファと名乗ったその少年は、確かに一冊の分厚いノートを抱えていた。紙の一枚一枚がボロボロに破れかかっており、折れかかった付箋が何十枚も張ってある。表紙に記された題名らしき文字すら、炎に焼かれた痕のようなものが残っていて解読も困難だった。
アスランは少年に「貸してくれ」と頼み、パラパラと内容を確認する。精神医学の研究記録のようなものだった。しかし、白紙に変わった瞬間の最後の三ページだけ――全く異なる内容が遺されていた。
「署名……C.E.40年月日不明、インサン科学研究部所属兼イト診療精神科医院医院長、ルフ・イト。C.E.58年、7月9日。我がたった一人の子、シファ・イト誕生。……なんだ、これは……っ!?」
「意味、分かる?」
アスランはその内容に驚きを隠せないでいた。──否、それはディアッカもニコルも、イザークも同じだった。
「ルフ・イト、ってまさか……一年前に亡くなった、あの有名な精神科医の?」
「え、それってあの……『悲劇のクリスマス・イブ』で死んだ医者だろ?記憶を弄る薬を作って──」
「ディアッカ!」
ニコルがディアッカの悪気ない言葉に怒声を上げるが、少年は庇うように片腕を軽く挙げてそれを制止させた。少年は首を横に振る。ただ、静かに。
「……ボクは自分を知らない。何も、知らない。気が付いたらあの中にいた。持っていたのはこのノートだけ。……だけど、ボク自身がそのシファだとしたら」
一同がハッと目を開く。少年は続けた。
「シファ・イトはそのルフっていう医者の子供……このノートを見たらそれがわかる」
「成程……記憶喪失の少年。あのイト医院長の子が君だとしても、不思議ではない……」
「どうします?アスラン。この子……」
「どうする、と言われても……」
アスランが困ったように眉を細めると、先程までバツが悪そうにしていたディアッカが降参したように苦笑いした。
「とりあえず、隊長殿に話を通すしかねーだろ?」
「チッ……どこのどいつだ!こんな大きなお荷物を拾ってきた馬鹿は!!」
「いやアスランだけどさ……お前だって「仕方がないな」って承諾してただろ」
「うるさい!今は時と場合が違うだろうが!!」
「……お荷物って何。ボクのこと」
「お前以外に誰がいるんだ!!」
「イザーク!子供相手に大人げないですよ!」
イザークが舌打ちをする。そんな四人の会話を他所に、アスランは一人考え事をしていた。
(シファ・イト……ルフ・イト……イト医院……インサン……?)
あまりにも不可思議な問題だが、彼にとってその一つ一つが初耳とは思えなかった。シファ・イト──彼は、一体。
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