アヤカシバナシシーズン1「隠世へようこそ」
隠世へ続く門をくぐり、10秒くらい経った頃。
目を開けると、緑が生い茂る山の上にいた。下を見下ろすと、そこには明らかに自分が住んでいた町ではない、見たこともないような景色が広がっていた。
いろは「楓ちゃん、ここが隠世だよ」
楓「わぁ……!凄い……!!」
下には商店街のように店が立ち並んでおり、活気で溢れているようだ。
所々に街灯代わりに赤提灯が揺れており、ぼんやりとした光が周りを包み込んでいて、見ているとなんだか安らかな気持ちになってくる。
楓「なんか落ち着くなぁ……あっ」
ふと街の外れを見ると、他の家より大きな屋敷があるのを見つけた。
楓「大きい家…!あんなの向こうでも見た事ないよ…!」
いろは「あぁ、あれ私の家だよ」
楓「えっ!?」
そういえば妖狐って言ってたし、位も結構高いんだなぁ…と思っていると、横から声が聞こえたと同時に、体が宙に浮く。
いろは「じゃ、早速私の家いこっか!飛ぶよー!」
楓「え、と、飛ぶの!?ちょっと待っ───」
待ってというには遅く、気づけば私は空高く舞い上がっていた。ジェットコースターのような浮遊感を感じながら下を見ると、提灯の明かりが星空のようにキラキラと光っておりとても幻想的だった。そういえば隠世にも星はあるんだろうか、と考えているうちにいろはと私は目的地に着いた。
いろは「到着ー!ここが私の家だよ!」
楓「近くで見ると尚の事大きい…」
いろは「さ、入って入ってー」
楓「お、お邪魔します…」
誘われるがままに木製の扉を開けた。
中は和風と洋風が入り混じったような感じだった。
いろは「ただいまー!」
…あれ?今ただいまって言った…?という事はいろは以外にも同居者がいるという事になる。現世ですっかり人見知りになった私は恐る恐る襖から顔を覗かせた。
???「……ああ、おかえり」
そこに座っていたのは、いろはとは全く違う風貌の男の人だった。白髪に真っ白な肌。赤いシャツに黒いベストを着て、いかにも洋風スタイルだ。耳は少し尖っていて、金色の目が眩しく感じた。
楓「い、いろは…この人って…?」
いろは「私のお兄ちゃんだよ!」
楓「お、お兄さん!?」
兄妹というにはあまりにも似ておらずつい驚いてしまい、その声にその人は振り向いた。
???「…ん?その子は…?見ない顔だな」
いろは「この子は人間なんだけど、現世が嫌になったみたいで、せっかくだから連れてきたの」
???「そうか…人間か…」
楓「は、はっ、初めまして!鈴原楓です…!」
アルフ「俺はアルフ、種族は吸血鬼だ、よろしくな」
楓「はいっ、よろしくお願いしま…え?吸血鬼?」
アルフ「ああ、そうだが……」
思わず二度聞きしてしまった。失礼だっただろうか。
楓「ご、ごめんなさい、いろはと種族が違ったからびっくりして…」
アルフ「いや、気にしないでくれ、実際種族違いの兄妹は珍しいようだからな」
いろは「うちの家系、パパが妖狐でママが吸血鬼だからね」
つまり2人は妖狐と吸血鬼のハーフ。でも2人は種族が何なのかはちゃんとはっきりしてるみたい。そういえば、吸血鬼って事は…
楓「あのー……吸血鬼って事は…血吸ったりとかは…?」
いろは「あぁ、お兄ちゃん小さい頃からなんでか血が飲めないみたいでさ、楓ちゃんが期待してるような吸血シーンは見れないと思うよ?」
楓「期待してないよ!?で、でもそれって結構不便なんじゃないですか…?」
私が尋ねると、アルフさんは少し目を逸らしながら呟いた。
アルフ「まぁ、普通の物も食えるからそっちでは困ってはないんだが…妖力が少ないのだけはどうにかしたいところだな」
楓「よ、妖力……?」
″妖力″という聞いたことのないワードが飛び込んできて、また声が裏返った。
いろは「ん?楓ちゃん妖力知らないの?」
楓「知らない…お父さんから聞いた事ないよ…」
昔お父さんから聞いた妖怪の話とこの隠世に住む妖怪はだいぶ違うらしい。そういえばみんな異形というより人みたいな姿をしている。
楓「それで、妖力って何?」
いろは「妖力っていうのは、まぁ戦闘力みたいなものだね、怨霊を討伐するのにある程度は必要なんだよ」
楓「お、怨霊…?」
怨霊、というと心霊スポットなどでよく話を聞くあの?と考えを巡らせていたが埒があかなさそうなので聞こう。聞くは一時の恥。
楓「あの、怨霊ってお化けの事…?」
いろは「んー、まぁ人間からすればそうかもね、私達妖怪にとっては立派な天敵だけどね」
楓「天敵……」
アルフ「…まぁ早い話、怨霊は死んだ人間という事だ」
楓「死んだ人間…」
さっきからオウム返ししかできてない気がする。と自分に呆れながらも詳細を聞いてみる事にした。
いろは「何かしらの恨みやら妬みやらを持って死んだ人間は大半がそのまま成仏するらしいんだけど、たまに悪霊化して成仏できない霊がいてね、そいつらがなぜか隠世に流れてくるの」
アルフ「生きた人間は妖怪に招かれない限り隠世には入れないが、死んだ人間は別なんだ、何故怨霊が隠世に来るのかまでは分からないがな」
楓「怨霊って事は…呪いとかそういう事を…?」
いろは「……うん、霊術、っていう妖術とはまた違うものを持ってて、それが妖怪にとって脅威なの、実際怨霊の襲撃で何人か死んでるんだよ、妖怪が」
楓「えっ……!」
妖怪が死ぬ。その言葉だけで怨霊、ひいては霊術がどれほど恐ろしいものなのかを表していた。
楓「妖怪は死なない、っていうのが人間の中では常識だったんですが…違うんですね」
アルフ「人間よりかは丈夫なのは間違いないがな。とにかく一般の妖怪が殺される事を防ぐには、一刻も早く現れた怨霊を討伐…いわば強制的に成仏させなければいけないんだ」
楓「どうやって…?」
いろは「そこで妖怪の力、妖術だよ。妖術を使って怨霊にダメージを負わせて、お札を貼って成仏させるの。妖術を使うには妖力が必須なんだよ」
楓「妖力必須…じゃあナイフとかじゃダメって事?」
アルフ「ああ、怨霊に物理攻撃は無効だからな。刀や銃弾に妖力を纏わせれば戦えるが…武器に妖力を付けるのは絶え間なく妖力を消費するからよほど妖力が多くなければまともに戦えないんだ」
いろは「そうそう、だからお兄ちゃんはそれで困ってるってわけ。お兄ちゃん銃一発で急所当てれるんだからそんなに気にしなくていいのに…」
アルフ「だからって銃5発しか撃てないのはまずいだろ、5体以上怨霊が来たらどうするんだ…俺の妖力じゃ札も貼れないしな…」
本人にとっては結構深刻な問題らしい。血が飲めるようになれば解決するはずだが……失礼かもしれないけど理由を聞いてみる。
楓「…でも、なんで血が飲めないんですか?」
アルフ「………精神的な問題だ、気にするな」
アルフさんはそれを聞かれた時、何かを思い起こしたような表情をしていた。何があったかは気になるけど詳しくは聞かないことにした。
いろは「まぁ、ひとまず怨霊のことについても話したし、次は商店街に行ってみよー!」
楓「商店街って、さっきの?」
いろは「うん、今ならお店もたくさんやってるし、楓ちゃんの好きなものきっと見つかるよ!」
楓「楽しみだなぁ…あ!現世のお金って使える!?」
いろは「うん、基本的に向こうと一緒だからね」
楓「よかった…」
いろは「ね、お兄ちゃんも行こ!」
アルフ「ああ、そうだな、楓に紹介したい店もあるしな」
どうやら隠世は現世の日本の文化が基になっているようで、文化の違いは起こらなさそうで安心した。
いろは「よーし!それじゃあ早速行ってみよー!」
楓「うん!」
早速できた新しい友達2人と一緒に、私はまたしても新たな一歩を踏み出した。
目を開けると、緑が生い茂る山の上にいた。下を見下ろすと、そこには明らかに自分が住んでいた町ではない、見たこともないような景色が広がっていた。
いろは「楓ちゃん、ここが隠世だよ」
楓「わぁ……!凄い……!!」
下には商店街のように店が立ち並んでおり、活気で溢れているようだ。
所々に街灯代わりに赤提灯が揺れており、ぼんやりとした光が周りを包み込んでいて、見ているとなんだか安らかな気持ちになってくる。
楓「なんか落ち着くなぁ……あっ」
ふと街の外れを見ると、他の家より大きな屋敷があるのを見つけた。
楓「大きい家…!あんなの向こうでも見た事ないよ…!」
いろは「あぁ、あれ私の家だよ」
楓「えっ!?」
そういえば妖狐って言ってたし、位も結構高いんだなぁ…と思っていると、横から声が聞こえたと同時に、体が宙に浮く。
いろは「じゃ、早速私の家いこっか!飛ぶよー!」
楓「え、と、飛ぶの!?ちょっと待っ───」
待ってというには遅く、気づけば私は空高く舞い上がっていた。ジェットコースターのような浮遊感を感じながら下を見ると、提灯の明かりが星空のようにキラキラと光っておりとても幻想的だった。そういえば隠世にも星はあるんだろうか、と考えているうちにいろはと私は目的地に着いた。
いろは「到着ー!ここが私の家だよ!」
楓「近くで見ると尚の事大きい…」
いろは「さ、入って入ってー」
楓「お、お邪魔します…」
誘われるがままに木製の扉を開けた。
中は和風と洋風が入り混じったような感じだった。
いろは「ただいまー!」
…あれ?今ただいまって言った…?という事はいろは以外にも同居者がいるという事になる。現世ですっかり人見知りになった私は恐る恐る襖から顔を覗かせた。
???「……ああ、おかえり」
そこに座っていたのは、いろはとは全く違う風貌の男の人だった。白髪に真っ白な肌。赤いシャツに黒いベストを着て、いかにも洋風スタイルだ。耳は少し尖っていて、金色の目が眩しく感じた。
楓「い、いろは…この人って…?」
いろは「私のお兄ちゃんだよ!」
楓「お、お兄さん!?」
兄妹というにはあまりにも似ておらずつい驚いてしまい、その声にその人は振り向いた。
???「…ん?その子は…?見ない顔だな」
いろは「この子は人間なんだけど、現世が嫌になったみたいで、せっかくだから連れてきたの」
???「そうか…人間か…」
楓「は、はっ、初めまして!鈴原楓です…!」
アルフ「俺はアルフ、種族は吸血鬼だ、よろしくな」
楓「はいっ、よろしくお願いしま…え?吸血鬼?」
アルフ「ああ、そうだが……」
思わず二度聞きしてしまった。失礼だっただろうか。
楓「ご、ごめんなさい、いろはと種族が違ったからびっくりして…」
アルフ「いや、気にしないでくれ、実際種族違いの兄妹は珍しいようだからな」
いろは「うちの家系、パパが妖狐でママが吸血鬼だからね」
つまり2人は妖狐と吸血鬼のハーフ。でも2人は種族が何なのかはちゃんとはっきりしてるみたい。そういえば、吸血鬼って事は…
楓「あのー……吸血鬼って事は…血吸ったりとかは…?」
いろは「あぁ、お兄ちゃん小さい頃からなんでか血が飲めないみたいでさ、楓ちゃんが期待してるような吸血シーンは見れないと思うよ?」
楓「期待してないよ!?で、でもそれって結構不便なんじゃないですか…?」
私が尋ねると、アルフさんは少し目を逸らしながら呟いた。
アルフ「まぁ、普通の物も食えるからそっちでは困ってはないんだが…妖力が少ないのだけはどうにかしたいところだな」
楓「よ、妖力……?」
″妖力″という聞いたことのないワードが飛び込んできて、また声が裏返った。
いろは「ん?楓ちゃん妖力知らないの?」
楓「知らない…お父さんから聞いた事ないよ…」
昔お父さんから聞いた妖怪の話とこの隠世に住む妖怪はだいぶ違うらしい。そういえばみんな異形というより人みたいな姿をしている。
楓「それで、妖力って何?」
いろは「妖力っていうのは、まぁ戦闘力みたいなものだね、怨霊を討伐するのにある程度は必要なんだよ」
楓「お、怨霊…?」
怨霊、というと心霊スポットなどでよく話を聞くあの?と考えを巡らせていたが埒があかなさそうなので聞こう。聞くは一時の恥。
楓「あの、怨霊ってお化けの事…?」
いろは「んー、まぁ人間からすればそうかもね、私達妖怪にとっては立派な天敵だけどね」
楓「天敵……」
アルフ「…まぁ早い話、怨霊は死んだ人間という事だ」
楓「死んだ人間…」
さっきからオウム返ししかできてない気がする。と自分に呆れながらも詳細を聞いてみる事にした。
いろは「何かしらの恨みやら妬みやらを持って死んだ人間は大半がそのまま成仏するらしいんだけど、たまに悪霊化して成仏できない霊がいてね、そいつらがなぜか隠世に流れてくるの」
アルフ「生きた人間は妖怪に招かれない限り隠世には入れないが、死んだ人間は別なんだ、何故怨霊が隠世に来るのかまでは分からないがな」
楓「怨霊って事は…呪いとかそういう事を…?」
いろは「……うん、霊術、っていう妖術とはまた違うものを持ってて、それが妖怪にとって脅威なの、実際怨霊の襲撃で何人か死んでるんだよ、妖怪が」
楓「えっ……!」
妖怪が死ぬ。その言葉だけで怨霊、ひいては霊術がどれほど恐ろしいものなのかを表していた。
楓「妖怪は死なない、っていうのが人間の中では常識だったんですが…違うんですね」
アルフ「人間よりかは丈夫なのは間違いないがな。とにかく一般の妖怪が殺される事を防ぐには、一刻も早く現れた怨霊を討伐…いわば強制的に成仏させなければいけないんだ」
楓「どうやって…?」
いろは「そこで妖怪の力、妖術だよ。妖術を使って怨霊にダメージを負わせて、お札を貼って成仏させるの。妖術を使うには妖力が必須なんだよ」
楓「妖力必須…じゃあナイフとかじゃダメって事?」
アルフ「ああ、怨霊に物理攻撃は無効だからな。刀や銃弾に妖力を纏わせれば戦えるが…武器に妖力を付けるのは絶え間なく妖力を消費するからよほど妖力が多くなければまともに戦えないんだ」
いろは「そうそう、だからお兄ちゃんはそれで困ってるってわけ。お兄ちゃん銃一発で急所当てれるんだからそんなに気にしなくていいのに…」
アルフ「だからって銃5発しか撃てないのはまずいだろ、5体以上怨霊が来たらどうするんだ…俺の妖力じゃ札も貼れないしな…」
本人にとっては結構深刻な問題らしい。血が飲めるようになれば解決するはずだが……失礼かもしれないけど理由を聞いてみる。
楓「…でも、なんで血が飲めないんですか?」
アルフ「………精神的な問題だ、気にするな」
アルフさんはそれを聞かれた時、何かを思い起こしたような表情をしていた。何があったかは気になるけど詳しくは聞かないことにした。
いろは「まぁ、ひとまず怨霊のことについても話したし、次は商店街に行ってみよー!」
楓「商店街って、さっきの?」
いろは「うん、今ならお店もたくさんやってるし、楓ちゃんの好きなものきっと見つかるよ!」
楓「楽しみだなぁ…あ!現世のお金って使える!?」
いろは「うん、基本的に向こうと一緒だからね」
楓「よかった…」
いろは「ね、お兄ちゃんも行こ!」
アルフ「ああ、そうだな、楓に紹介したい店もあるしな」
どうやら隠世は現世の日本の文化が基になっているようで、文化の違いは起こらなさそうで安心した。
いろは「よーし!それじゃあ早速行ってみよー!」
楓「うん!」
早速できた新しい友達2人と一緒に、私はまたしても新たな一歩を踏み出した。
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