恋になるまで、側にいて。【Main Story】
『っい、今までずっと私っ、
帝統のこと、り、利用してたのっ。
帝統みたいなっ、有名人が、側にいてくれる、優越感に、浸りたかった、から…、…。』
はっきり思いを伝える度、帝統の顔を見るのが怖くなった。
本当の私を知って、どんな顔をする?
どんな目で見られる?
……もう、私に呆れるよね。
でも、それも仕方無い。
全部、帝統を騙し続けて、傷付けた私のせいなのだから。
握ってくれていた帝統の手を離して、唇を噛み締める。
今日で終わり、ならせめて、許されるわけはないけど、
『…帝統。
私なんかに優しくしてくれて、ありがとう。
今まで、ごめんね…っ、。』
エンドロールをとっくに終え、放置されたままの黒い画面が、私たちを見つめている。
そこに映っているはあまりにも子供っぽくて、どうしても帝統には似合わない。
しゃくりあげる姿も、泣いてぐしゃぐしゃの顔も、自分勝手な心も。
「なぁ」
数分間の沈黙の後、帝統がもう一度、私を呼んだ。
そういえば私、この呼びかけ方が好きだったなと、急に思う。
顔を上げるとそこには、普段と変わらない帝統がいた。
さっきとは違う、震えのない、瞳に貫かれる。
何を言われるか、
何を考えているのか、分からなくて怖い。
でも、聞かなくちゃ。
今まで彼の気持ちを無視し続けた分。
自分の弱さに負けないように、私も帝統を見つめ返した。
久しぶりに聞いた帝統の声は、ほんの少し掠れていた。
「俺、嘘吐くのヘタなんだわ。
……分かんだろ?」
その一瞬。
頷く間も、
え?と聞き返す間もなく、引き寄せられた。
泣き終わって、渇ききった頬に触れた長い指。
近付いた鼻先が軽く擦れた後、
唇に、初めての感触と熱が乗った。