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恋になるまで、側にいて。【Main Story】






「お前が……、

 お前が良いってんなら、ぐちゃぐちゃに抱いてやる。

 …けどよ、」






帝統の声はまだ、震えている。
言いたかったことが私に全部、潰されてどうしようもないんだろう。
言葉を探してくれているのが分かる。


…ごめんね、帝統。
そんな顔させて。


私はとことん、最低だ。







「そうじゃねぇんだろ、
 ずっと、言いてぇことがあんだろ。

 言っとくけど俺、言ってくんなきゃ分かんねぇからな。」






……あぁ。

帝統は、本当に。

私なんかよりずっと大人で、
どうしてこんなに優しいんだろう。


私は帝統に倒された体を起こして、彼と向き合った。
涙と熱さでもう、めちゃくちゃだ。
今の私の顔は、想像したくもない程不細工だろう。

言葉を発そうとしても、しゃくりあげてしまうせいで声は形にならない。
しばらく小さい子みたいに、『うぅ、』とか『あぅ…、』とか、気持ちのよくない音が喉から溢れた。


帝統の二つの瞳はその間も柔らかく、真っ直ぐ私を見つめていた。
こんな風に向き合うのは、そういえば初めてだ。
ちゃんと目を合わせたのも、初めてかもしれない。

もしかして、帝統はずっとこんな瞳で、私を見つめてくれていたんだろうか。
そう思うと心臓を軽くつねられたような、ギュッとする痛みが胸を貫いた。
これまで認めようとしなかった想いの波が、一気に押し寄せて来るようだった。





『っわ、

 私……っ…、』





「ん、」





帝統の大きな手が、私の指先を包む。
そうされるとなんだか、酷く安心して、だんだんと嗚咽も収まってきた。

軽く握られた手を、ぎゅっと握り返す。
今まで一度も、こんなことをしたことはなかったのに、
帝統はしっかり、私の手を包んでくれる。










『…私…、

 帝統が、…好き…、っ……、』












私に触れる帝統の手は、いつも優しかった。

たまに指先が触れるだけでも、どうしようもなく、嬉しかった。

私を呼ぶ帝統の声が、ちょっとだけ甘くなった。

その声で、何度でも呼んで欲しいと思った。

私を見る帝統の瞳がいつの間にか、期待を含んだ目に変わっていた。


__________怖いと思った。

私は帝統を利用しただけ。
そんな私が、彼を好きになる資格なんてない。
優越感に浸る為だけに、帝統を家に上げた。
帝統の優しさと、素直さを利用して、心を縛り上げた。

今更私が帝統を好きになっていい理由がない。
帝統に優しくされる度、自分の醜さと後悔ばかりが剥き出しになっていく。




…それなのに、私、

いつの間にどうしようもないくらい、帝統を好きになってしまった。

隠せない、認めざるを得ないくらい、好きに。
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