恋になるまで、側にいて。【Main Story】
そのツケが今日、
今、回ってきたんだ。
自分のしたことの、責任を取らなきゃいけない時間が。
「__________なぁ、
今から、されること、解ってンのか」
きゅ、と瞑った真っ暗な視界の外から、低い声が聞こえる。
少しだけ震えている、帝統の声。
見なくても、見えなくても、彼がどんな表情をしているか分かる。
今からされることだって私、解らないほど子供じゃない。
スッ、と、何かが頬に触れて、体が跳ねた。
冷たいような、温いような、切ない帝統の手だ。
この土壇場でも迷ったように私に触れる優しさが、逆に苦しい。
「………お前が、
俺の事好きなら、このままキスする。」
『………………ふ。
ふふ、』
……帝統。
大切な時に、勢い任せにならない帝統。
こんな時まで、私の言葉を聞こうとしてくれる。
でも意外じゃない。
だって帝統はずっと、優しかったもんね。
『ふふ、あはは、…はは、』
「何、笑ってんだよ、」
『……ふ。だって、帝統、
いつまでも、優しいん、だもん……、』
…優しすぎるんだもん。
重なりあった所が全部、熱くて仕方ない。
私は、ドロドロした醜い気持ちを隠すように笑った。
その勢いで、我慢していた気持ちが、生温い液体になって、外に溢れ出してしまう。
薄目を開けるとぼやけて、よく分からない視界の中で、
見たこともないような帝統の、複雑な顔が見えた。
もう、だめだ。
私たちの関係は、今日で終わるんだ。
『……もっと、私たち、
早くこうなるべきだったのにね、』
「…は、」
『私、帝統が優しいから、甘えてた………。』
_______あの日、私は帝統を利用した。
元カレとの別れの寂しさを埋める為、
自分の人生のつまらなさを誤魔化す為、
私はかの有名な、ファンも沢山いるあの、Fling Posseの有栖川帝統を側に置ける程の女なんだと、
帝統を公園で見かけた瞬間、そう思い込みたい汚い気持ちが生まれた。
だから手を出した。
本当は、誰でも良くなかった。
確かに考えて、帝統を選んだんだ。
お互いにしばらくの間利用し合えればまぁ良いかなと思っていた。
聞いていた噂では、彼は女の子とも頻繁に遊ぶらしいし、
利用している分、帝統も私を軽く見てくれればいいと思った。
_________でも、帝統は、私を利用しなかった。
私は帝統に利用されたかった。
もっと雑に、簡単に扱って欲しかった。
他の女の子たちと同じような立場で、
飽きたらさよならで、それで良かった。
それなのに帝統は優しくて、噂なんか噂に過ぎないんだと思わせられる程、素直で純粋だった。