📂file11

「貴様はダフネが嫌いなのか」
「んー、よくわかんないな。まぁでも、ボクにお熱だった研究員が…ボクの大好きだった子も含めて、みんなダフネに夢中だったからね。心のある個体の尺度…それこそはじめの身体だったらそう思ってたのかもしれないね。」
「だから一連の計画に協力したのか。」
「違うよ。ただの気まぐれと好奇心さ。」

先ほどまで闇一色だった空間には、巨大な家具や小道具たちが建ち並び、空はひびわれたガラスの温室越しに、おぞましい色を覗かせている。

「貴様らの計画にはもうひとつ大きな意味がある。…何故ダフネを被験体にした?」
「…それは、ダフネがとりわけ強かったからだよ。同族のどの個体よりもね。」
「最も強力な個体は戦闘員として残しておく方が合理的だ。それに彼女の同族に限定したとて明確に雌雄を持つことが可能な者もいたはずだ。何故彼女を選んだ。」
「それはボクが知り得ることじゃないな。」
「記憶の鈍化がありながらダフネは貴様や人間に好意的だった。貴様に対しては愛称で呼んでいた程だ。なにかきっかけなしに、あんなに愛着を示すなんてあり得ん。現にダフネも夢の世界に来る前はそこまでヒトに対して歩み寄る姿勢はなかった。」
「…」
「この計画、すべてダフネに向けられたものだな?」
「…」
「あいつは…戦うことに疑問を持ち出していたんだろう。」
「そうだね。初任務でのキミの発言が、頭から離れなかったみたいだね。」
「俺への種明かしは遊び。本当にこうするつもりだった対象はダフネの方だったんだろう。最後は自ずから折れ…貴様らに傾倒するように。そうすれば元の、単なる兵器に戻ると。」
「…」
「ダフネを支配し、不可能なら身体機能を利用する。余すことなくダフネという存在を使う。これが貴様らの目論見だろう。」
「…」
「何とか…言ったらどうだ……っ!!!」

何十もの黒い針のようなものが奴を追尾する。硝子で作られた天井は砕け、破片が降り注ぐ。

「だからボクはただ協力してただけだよ。あの子を支配しようとしてる人間たちのことはキミにとってそれほど重要じゃないと判断したから言及しなかっただけだ。まあもう、どちらにせよキミはここからもう出られないんだろう?」
「ああ…だがもしそうなったら、それじゃあ誰があいつを起こすんだ?」
「ボクとしてはずっと眠っててもらえるつもりでいたんだけどな。計画に賛同してる間は…あの子も、またボクを必要としてくれてたし。」
「その人間に必要とされるなら自分の娘でも使い捨てると?」
「キミたちだって生きるために命令に従って幾多の命を屠ってきただろう?おなじことじゃないか。」

貫いても貫いても奴は別の身体と共に復活する。だが丁度良かった。まだ俺は殺し足りない。ふと、今は彼女にかけてもらったおまじないが効いてないことに気づいた。でも平気だった。

「そんなに夢空間を激しく改変したら間違いなく崩壊するよ。そしたら今度こそキミは外に出る手段を無くす。キミは空虚な夢の中で、自我を崩壊させていくしかなくなるんだよ。」
「この…畜生がぁ…!!!」

絶望はうねりとなり、すべてを押し上げる。
ダフネといっしょの未来を望んだ。そうだ。俺は彼女と任務に出向くうち、戦いの運命から逃れた、ひたすらに優しく、退屈な、ありふれた日常を望むようになっていた。
俺は、
お前の未来が見たかった。
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