📂file9
「お前といっしょに外に出なければ意味がないと思った。」
ついに口に出してしまった。本当の言葉を。もう戻れない。飲み込むこともできない。
「お前じゃなきゃ駄目だと思った。あの日、はじめて俺たちが館で目を覚ました日、あの時俺はお前のことを、天使だと思った。すべての幸せの定義が覆るような心地がした。」
「…」
「外の世界の事を知ったのはその少し後だった。俺は外のことを調べているうちにある写真を見つけた。それは…花火の写真だった。」
ダフネは何も言わない。長いことそばにいても彼女の思考が断片でも読み取れたことはなかった。今もそうだ。ただ俺の方を見ている。俺の話に期待しているのか嫌悪しているのか、そもそも聞いてくれているかすら分からない。だが俺は全てを語る義務を背負った。全て語る事を選んだんだ。たとえどれだけ軽蔑されようとも、自分の気持ちから逃げたくなかった。
「その写真に写された花火はとても綺麗で。これを…お前と見に行きたいと思った。もう季節は過ぎてしまったかもしれないが、それでもお前と外の世界を見て回りたかった。」
「…それはおまえのエゴだ。」
「分かってる。」
「ならばますます私を誘うな。」
彼女のアメジスト色の瞳が伏せられる。初めて見る表情だった。
「おまえは私を天使だと言ってくれたけれど…それはおまえがまだいろんな子と出会ってないからそう見えてるだけだ。」
「そんな事…」
「おまえはここからひとりで出て行っても、きっとその先でまた運命的な出会いをする。私なんぞ霞むくらい、魂が惹かれるような存在と。そいつといろんな所を見て回って…。」
「そんな相手、お前以外あり得ない。」
「かわいいこと言うね、おまえ。」
そう言って確かにダフネは、笑った。それはあの侵入者たちに見せたものとは違う、慈しみさえ感じるものだった。
「俺はお前に会ったとき魂ごと握られるような感覚を覚えた。惹かれるなんてちゃちな感覚じゃない。お前じゃなきゃ駄目なんだ、ダフネ。お前だけが俺をいつも、壊れそうなほど心を揺さぶってくれるんだ。」
「…買いかぶりすぎだ。おまえが思うより私はからっぽなのに。」
「そんなわけない。」
「…はぁ、…まぁおまえの答えの内訳はだいたい理解した。行けるところまでいっしょに行ってやろう。」
「ダフネ…!」
「外に出たらまずどこへ行くかは決めてるんだろ?」
「勿論だ。」
ダフネは俺に向かって手を差し伸べる。
それがまるで天使の導きのような気がして、俺は片手を差し出した。
ダフネの手はやわらかく、あたたかかった。その手に導かれるまま書斎の扉を開け、玄関へと向かった。
ついに口に出してしまった。本当の言葉を。もう戻れない。飲み込むこともできない。
「お前じゃなきゃ駄目だと思った。あの日、はじめて俺たちが館で目を覚ました日、あの時俺はお前のことを、天使だと思った。すべての幸せの定義が覆るような心地がした。」
「…」
「外の世界の事を知ったのはその少し後だった。俺は外のことを調べているうちにある写真を見つけた。それは…花火の写真だった。」
ダフネは何も言わない。長いことそばにいても彼女の思考が断片でも読み取れたことはなかった。今もそうだ。ただ俺の方を見ている。俺の話に期待しているのか嫌悪しているのか、そもそも聞いてくれているかすら分からない。だが俺は全てを語る義務を背負った。全て語る事を選んだんだ。たとえどれだけ軽蔑されようとも、自分の気持ちから逃げたくなかった。
「その写真に写された花火はとても綺麗で。これを…お前と見に行きたいと思った。もう季節は過ぎてしまったかもしれないが、それでもお前と外の世界を見て回りたかった。」
「…それはおまえのエゴだ。」
「分かってる。」
「ならばますます私を誘うな。」
彼女のアメジスト色の瞳が伏せられる。初めて見る表情だった。
「おまえは私を天使だと言ってくれたけれど…それはおまえがまだいろんな子と出会ってないからそう見えてるだけだ。」
「そんな事…」
「おまえはここからひとりで出て行っても、きっとその先でまた運命的な出会いをする。私なんぞ霞むくらい、魂が惹かれるような存在と。そいつといろんな所を見て回って…。」
「そんな相手、お前以外あり得ない。」
「かわいいこと言うね、おまえ。」
そう言って確かにダフネは、笑った。それはあの侵入者たちに見せたものとは違う、慈しみさえ感じるものだった。
「俺はお前に会ったとき魂ごと握られるような感覚を覚えた。惹かれるなんてちゃちな感覚じゃない。お前じゃなきゃ駄目なんだ、ダフネ。お前だけが俺をいつも、壊れそうなほど心を揺さぶってくれるんだ。」
「…買いかぶりすぎだ。おまえが思うより私はからっぽなのに。」
「そんなわけない。」
「…はぁ、…まぁおまえの答えの内訳はだいたい理解した。行けるところまでいっしょに行ってやろう。」
「ダフネ…!」
「外に出たらまずどこへ行くかは決めてるんだろ?」
「勿論だ。」
ダフネは俺に向かって手を差し伸べる。
それがまるで天使の導きのような気がして、俺は片手を差し出した。
ダフネの手はやわらかく、あたたかかった。その手に導かれるまま書斎の扉を開け、玄関へと向かった。
