花束を君に 前編
マオは、一人で来たらしかった。
もちろん友人だし、アドレスは教えていたけれど、まさかオオカミ人間がたった一人で僕たちヴァンパイアの住む家に、予告もなく来るなんて。
ショーマが知ったら、どうなることか。
僕の心配をよそに、ブライアンとジョニー(特にジョニー)は、久しぶりの客に大喜びで手料理を振る舞っている。
「…どうしたんだろう、ショーマと何かあったのかな?」
ダイは、別の心配をしているらしかった。
「……とりあえず、食べ終わるまで話はできなさそう…」
マオの食欲はすごかった。
あれよあれよという間に、大皿が空になっていく。
「何しに来たのかしら。お腹減ってたの? ユヅ、分かる?」
ジェーニャも首を傾げている。
「……今のマオの頭の中は、食べ物しかないよ……」
僕の能力は、まったく役に立たなかった。
「…だからね、マオ、今のままじゃ、ショーマと結婚できないの。」
ようやく終わった食事の後(ジョニーはマオに完敗したと言って、明日の食材を調達しに街へ出掛けて行った。)、マオの話を聞いた僕らは、密かに頭を抱えていた。
「…だからって、なんで俺なんだ。マオと会ったのは、数えるほどだろう?」
ダイも困惑した顔をしている。
「あたしだって、分からないわよ。でもなぜか、気になって気になって、しょうがないの。なんでこんなにダイのことが頭から離れないの?結婚式が近づけば近づくほど、ココがざわざわするのよ。」
マオは、自分の胸を指差した。
「と、とにかく、ショーマには連絡するぞ?黙って来たんだろう?婚約者に心配かけちゃいけない。」
「…………」
ショーマの名前を出されると、マオは黙った。
ショーマへの後ろめたさはあるようだった。
僕は、携帯を取るために部屋を出たダイを追いかける。
「いったい、何なんだ? マリッジブルーってやつか?」
ダイはがしがしと頭をかいた。
「マオは正直に話してるよ。マオ自身も上手く説明できないんだよ。」
僕は、やっぱり…、という気持ちになっていた。
ダイとマオの絆は、誰にも侵せないものなんだ。
「ねぇ、ダイ。全部話してあげたら?ダイとマオの前世のこと。」
「……マオには、そういうのに縛られずに幸せになってほしいんだ。」
ダイは、顔をしかめた。
「……マオが知ったら、ダイを選ぶかもしれないから?」
「ユヅ!!」
咎めるようなダイの声に、僕はダイから目を逸らした。
…だって、僕は嫌っていうほど知っている。
御台さまが、真桜さんが、どれほどダイのことを想っていたか。
僕にはそれをなかったことにする権利なんかない。
もちろん友人だし、アドレスは教えていたけれど、まさかオオカミ人間がたった一人で僕たちヴァンパイアの住む家に、予告もなく来るなんて。
ショーマが知ったら、どうなることか。
僕の心配をよそに、ブライアンとジョニー(特にジョニー)は、久しぶりの客に大喜びで手料理を振る舞っている。
「…どうしたんだろう、ショーマと何かあったのかな?」
ダイは、別の心配をしているらしかった。
「……とりあえず、食べ終わるまで話はできなさそう…」
マオの食欲はすごかった。
あれよあれよという間に、大皿が空になっていく。
「何しに来たのかしら。お腹減ってたの? ユヅ、分かる?」
ジェーニャも首を傾げている。
「……今のマオの頭の中は、食べ物しかないよ……」
僕の能力は、まったく役に立たなかった。
「…だからね、マオ、今のままじゃ、ショーマと結婚できないの。」
ようやく終わった食事の後(ジョニーはマオに完敗したと言って、明日の食材を調達しに街へ出掛けて行った。)、マオの話を聞いた僕らは、密かに頭を抱えていた。
「…だからって、なんで俺なんだ。マオと会ったのは、数えるほどだろう?」
ダイも困惑した顔をしている。
「あたしだって、分からないわよ。でもなぜか、気になって気になって、しょうがないの。なんでこんなにダイのことが頭から離れないの?結婚式が近づけば近づくほど、ココがざわざわするのよ。」
マオは、自分の胸を指差した。
「と、とにかく、ショーマには連絡するぞ?黙って来たんだろう?婚約者に心配かけちゃいけない。」
「…………」
ショーマの名前を出されると、マオは黙った。
ショーマへの後ろめたさはあるようだった。
僕は、携帯を取るために部屋を出たダイを追いかける。
「いったい、何なんだ? マリッジブルーってやつか?」
ダイはがしがしと頭をかいた。
「マオは正直に話してるよ。マオ自身も上手く説明できないんだよ。」
僕は、やっぱり…、という気持ちになっていた。
ダイとマオの絆は、誰にも侵せないものなんだ。
「ねぇ、ダイ。全部話してあげたら?ダイとマオの前世のこと。」
「……マオには、そういうのに縛られずに幸せになってほしいんだ。」
ダイは、顔をしかめた。
「……マオが知ったら、ダイを選ぶかもしれないから?」
「ユヅ!!」
咎めるようなダイの声に、僕はダイから目を逸らした。
…だって、僕は嫌っていうほど知っている。
御台さまが、真桜さんが、どれほどダイのことを想っていたか。
僕にはそれをなかったことにする権利なんかない。