Love Yourself
タカヒコはなかなか戻って来なくて、俺はユヅを残して境内を散歩することにした。
古びた寺だが、隅々まで手入れが行き届いている。
灯籠の横に立派な桜の木が植えられていた。
少し散りかけていたが、見事に咲いている。
日本人にとって、桜は特別な花らしい。
ダイスケサマの眠る木に枝振りが似ているな…
そんなことを思っていると、背後に人の気配がした。
慌ててサングラスをつけて振り向く。
そこには、腰の曲がった老僧が立っていた。
「…コンニチハ。」
とりあえず日本語で挨拶をしておく。
老僧は、鷹揚にうなずいた。
『この桜はの、大阪の老木から枝分けしてここに植えたんじゃ。』
老僧は続けて、きゃりぃふろむおーさか、ぷらんと、と言ったように聞こえた。
…なんだ、今の。
英語?
それともお経??
『……あんなユヅは、初めて見たな。』
俺が答えないでいると、老僧はすっと背筋を伸ばした。
口調まで変わっている。
『あんなふうに、笑うんだな。』
俺は、目の前の老僧の姿がゆらゆらしながらゆっくりとタカヒコの姿に変わっていくのを、呆然として見ていた。
…タカヒコの特殊な能力って、これなのか。
「ダイ! タカヒコ!」
ユヅの声と共に、駆け寄ってくる足音がした。
『驚いた?』
にやにやしているタカヒコに、俺は仕方なくうなずいた。
この能力のおかげで、人間に疑われずにずっと寺の住職をしていられるんだな。
「もう、タカヒコってば、いつも初対面のヴァンパイアにそれをやるんだから。」
ユヅは呆れた顔をしていたが、これまでと変わらないタカヒコの様子に、ほっとしているようだった。
『さよなら、ユヅ。幸せに。大輔さまの子孫を追いかける必要がなくなっても、時々連絡くれると嬉しいな。』
『もちろん! ありがとう、タカヒコ。』
ユヅとタカヒコは、別れ際にまた固く抱き合っていた。
ユヅが嬉しそうだから、まぁいいけど。
古びた寺だが、隅々まで手入れが行き届いている。
灯籠の横に立派な桜の木が植えられていた。
少し散りかけていたが、見事に咲いている。
日本人にとって、桜は特別な花らしい。
ダイスケサマの眠る木に枝振りが似ているな…
そんなことを思っていると、背後に人の気配がした。
慌ててサングラスをつけて振り向く。
そこには、腰の曲がった老僧が立っていた。
「…コンニチハ。」
とりあえず日本語で挨拶をしておく。
老僧は、鷹揚にうなずいた。
『この桜はの、大阪の老木から枝分けしてここに植えたんじゃ。』
老僧は続けて、きゃりぃふろむおーさか、ぷらんと、と言ったように聞こえた。
…なんだ、今の。
英語?
それともお経??
『……あんなユヅは、初めて見たな。』
俺が答えないでいると、老僧はすっと背筋を伸ばした。
口調まで変わっている。
『あんなふうに、笑うんだな。』
俺は、目の前の老僧の姿がゆらゆらしながらゆっくりとタカヒコの姿に変わっていくのを、呆然として見ていた。
…タカヒコの特殊な能力って、これなのか。
「ダイ! タカヒコ!」
ユヅの声と共に、駆け寄ってくる足音がした。
『驚いた?』
にやにやしているタカヒコに、俺は仕方なくうなずいた。
この能力のおかげで、人間に疑われずにずっと寺の住職をしていられるんだな。
「もう、タカヒコってば、いつも初対面のヴァンパイアにそれをやるんだから。」
ユヅは呆れた顔をしていたが、これまでと変わらないタカヒコの様子に、ほっとしているようだった。
『さよなら、ユヅ。幸せに。大輔さまの子孫を追いかける必要がなくなっても、時々連絡くれると嬉しいな。』
『もちろん! ありがとう、タカヒコ。』
ユヅとタカヒコは、別れ際にまた固く抱き合っていた。
ユヅが嬉しそうだから、まぁいいけど。