Love Yourself
翌朝、俺たちはオーサカのホテルをチェックアウトして、駅に向かった。
長年ユヅを援助してきた日本人のヴァンパイアは、驚いたことに寺の住職をしているらしかった。
「…よくバレないでいられるもんだな。」
「うん…その…、少し特殊な力があって…。会えば分かるよ。」
ユヅは、珍しく口ごもり、言いにくそうに彼がナゴヤにいると告げた。
俺は、ユヅが昨晩ショーマのことを言い出した理由を理解した。
「新幹線でいい?」
「あぁ。ユヅ、気にするなよ。」
俺は、一瞬だけユヅの手を握って、離した。
ショーマもナゴヤにいる。
いつまでも後回しにしていてはいけないのかもしれなかった。
『ユヅ、本当にユヅなのか?』
そのヴァンパイアは、タカヒコと名乗った。
きりりとした三白眼の若々しい男で、とても住職には見えない。
ブライアンやユヅと同じく、人間と共存することを選んだヴァンパイアだという。
タカヒコは、訪ねてきたユヅに目を丸くし、ユヅの隣にいる俺には見向きもせず、ユヅと固く抱き合って、早口の日本語で何か話している。
ユヅと出会った時よりマシにはなったものの、俺の日本語力では、何を話しているのかすべてを理解することはできなかった。
……なんか、俺、邪魔者扱い?
「ダイ。」
そんなことを思っていると、ユヅが俺に向かって手を差し伸べた。
「タカヒコ、ダイスケサマだよ。3度目に巡り会って、色々あってこうなった。僕は今、幸せだから、もう心配しないで。」
ユヅは俺の腕を取ってしがみつくと、甘えるように頬を擦り付けた。
そして、俺を見上げてにっこりする。
ユヅがファミリー以外の前でこんなことをするのは、すごく珍しい。
…それだけ、タカヒコに心を許してるってことなのか?
それはそれで、ちょっと妬けるぞ。
それに、こんな可愛いユヅをあまり他人に見せたくないし。
少しむっとしながらタカヒコに目をやると、俺と同じようにむっとした表情をしているタカヒコと目が合った。
……あれ?
思わずユヅの方を見たけれど、ユヅは俺の腕にぴったり身体をくっつけて、天使みたいににこにこしているだけだった。
…ユヅ、もしかして、わざとやってる?
しばらく考えて、俺はようやくピンときた。
大体、何百年も俺の子孫を追いかけるなんて、いくらヴァンパイアが有能でも、とんでもない手間と労力だ。
それをユヅのために無償でやろうとするなんて、ユヅに対する特別な感情がなければ続かないだろう。
来客が来たらしく、タカヒコが席を外したときを見計らって、俺はユヅにこっそり耳打ちした。
「なぁ、タカヒコってさ、ユヅのこと……」
「しっ。」
ユヅは、困ったように笑って、人差し指を口元に当てた。
「タカヒコは、僕が他人の考えを読めること、気付いてないんだ。」
「……え…」
そんなことって、あるのか?!
「タカヒコって、とってもいい人なんだけど、ちょっと抜けてるっていうか……」
ユヅは、やっぱり困ったように眉を下げたまま、小首を傾げた。
「タカヒコはずっと待っててくれたけど、僕にはダイ以外に考えられないし…。それに、タカヒコが僕の幸せを心から願ってくれているのは分かってたから、きちんと伝えたほうがいいと思ったんだ。」
「……けど、なんかあからさまに面白くなさそうな顔してたぞ?」
俺なんか、ほとんど無視されてるし。
「そうだね……」
ユヅは小さくため息を吐いた。
「人の心って、難しいね。」
……人じゃなくて、ヴァンパイアだけどね。
俺もこっそりため息を吐いた。
思わぬところでライバル登場だ。
もちろん、譲る気持ちはこれっぽっちもないけど。
長年ユヅを援助してきた日本人のヴァンパイアは、驚いたことに寺の住職をしているらしかった。
「…よくバレないでいられるもんだな。」
「うん…その…、少し特殊な力があって…。会えば分かるよ。」
ユヅは、珍しく口ごもり、言いにくそうに彼がナゴヤにいると告げた。
俺は、ユヅが昨晩ショーマのことを言い出した理由を理解した。
「新幹線でいい?」
「あぁ。ユヅ、気にするなよ。」
俺は、一瞬だけユヅの手を握って、離した。
ショーマもナゴヤにいる。
いつまでも後回しにしていてはいけないのかもしれなかった。
『ユヅ、本当にユヅなのか?』
そのヴァンパイアは、タカヒコと名乗った。
きりりとした三白眼の若々しい男で、とても住職には見えない。
ブライアンやユヅと同じく、人間と共存することを選んだヴァンパイアだという。
タカヒコは、訪ねてきたユヅに目を丸くし、ユヅの隣にいる俺には見向きもせず、ユヅと固く抱き合って、早口の日本語で何か話している。
ユヅと出会った時よりマシにはなったものの、俺の日本語力では、何を話しているのかすべてを理解することはできなかった。
……なんか、俺、邪魔者扱い?
「ダイ。」
そんなことを思っていると、ユヅが俺に向かって手を差し伸べた。
「タカヒコ、ダイスケサマだよ。3度目に巡り会って、色々あってこうなった。僕は今、幸せだから、もう心配しないで。」
ユヅは俺の腕を取ってしがみつくと、甘えるように頬を擦り付けた。
そして、俺を見上げてにっこりする。
ユヅがファミリー以外の前でこんなことをするのは、すごく珍しい。
…それだけ、タカヒコに心を許してるってことなのか?
それはそれで、ちょっと妬けるぞ。
それに、こんな可愛いユヅをあまり他人に見せたくないし。
少しむっとしながらタカヒコに目をやると、俺と同じようにむっとした表情をしているタカヒコと目が合った。
……あれ?
思わずユヅの方を見たけれど、ユヅは俺の腕にぴったり身体をくっつけて、天使みたいににこにこしているだけだった。
…ユヅ、もしかして、わざとやってる?
しばらく考えて、俺はようやくピンときた。
大体、何百年も俺の子孫を追いかけるなんて、いくらヴァンパイアが有能でも、とんでもない手間と労力だ。
それをユヅのために無償でやろうとするなんて、ユヅに対する特別な感情がなければ続かないだろう。
来客が来たらしく、タカヒコが席を外したときを見計らって、俺はユヅにこっそり耳打ちした。
「なぁ、タカヒコってさ、ユヅのこと……」
「しっ。」
ユヅは、困ったように笑って、人差し指を口元に当てた。
「タカヒコは、僕が他人の考えを読めること、気付いてないんだ。」
「……え…」
そんなことって、あるのか?!
「タカヒコって、とってもいい人なんだけど、ちょっと抜けてるっていうか……」
ユヅは、やっぱり困ったように眉を下げたまま、小首を傾げた。
「タカヒコはずっと待っててくれたけど、僕にはダイ以外に考えられないし…。それに、タカヒコが僕の幸せを心から願ってくれているのは分かってたから、きちんと伝えたほうがいいと思ったんだ。」
「……けど、なんかあからさまに面白くなさそうな顔してたぞ?」
俺なんか、ほとんど無視されてるし。
「そうだね……」
ユヅは小さくため息を吐いた。
「人の心って、難しいね。」
……人じゃなくて、ヴァンパイアだけどね。
俺もこっそりため息を吐いた。
思わぬところでライバル登場だ。
もちろん、譲る気持ちはこれっぽっちもないけど。