Hallelujah 後編
「…な、ど……っ、こ、これ、が…マオの、おば、おばーちゃんの……」
僕と同じくらい動揺しているらしいダイが、つっかえたりどもったりしながら、マオとお墓を交互に指さしている。
「そうだけど……。ダイ、どうしたの? すごく変だよ?」
マオが訝しげに首を傾げている。
……なっ、なんてこと…っ!
僕は、慌ててスマホを取り出し、タカヒコに電話をかけた。
この際、ダイを気にしてなんかいられない。
『…え? 何だって、高橋大尉の子孫?』
スマホから聞こえてきたタカヒコの能天気な声に、僕はその場にしゃがみ込みそうになってしまった。
『あー、俺言ってなかったか? うん、真桜って人は子ども1人産んでるぞ。あっ、そうか、女の子だったから言わなかったのかもしれないな。ユヅは男の子にしか興味ないだろ。その後も確か男の子は生まれてないしな……え?真桜の子どもの父親? そりゃ高橋大尉だろ? 』
タカヒコの声が聞こえていたのだろう、ダイがぎゃっと叫んで飛び上がった。
「ちょ、ちょっとダイ…、大丈夫か?」
あまりに挙動不審な僕たち(分かってはいるんだけどどうしようもないんだ)に、ショーマが本気で心配している声を出す。
「まっ、まま、マオっ! マオのおばーちゃんのおかーさんって、もっ、もしかしてマオと同じ名前?! 桜の字で。」
ひしっとマオの両肩を掴み、鼻先が触れ合わんばかりに顔を近づけたダイを、驚いたように見ながら、マオはうーんと眉を寄せた。
「ええっと…どうだっけ? マオのお祖母ちゃんは、お祖父ちゃんと離婚してて、だから高橋家のこのお墓にお父さんとお母さんと一緒に入れるって、嬉しそうに……。でも、名前までは……」
「ダイ、ダイ。」
僕はダイの肩をつついた。
ダイには悪いけど、もう1つはっきりさせておきたいことがあった。
「真桜さんの子どもって…、ダイ、心当たりあるの?」
「……………ないことはない。」
ダイは目を見開いたまま、マオの肩を掴んでいた両手をだらんと下げた。
「……出征前の、仮祝言の夜に……、真桜が、最後かもしれないから…って……」
「わ、分かった、もういいからっ。」
目に見えて悄然としたダイに、なんだか悪いことをしたような気がして、僕は慌てて遮った。
大尉と真桜さんは婚約してたんだし、そういうことがあったって、おかしくない。
「……ダイも、知らなかった、んだよね……」
「あ、あぁ……」
ダイは虚ろな目を僕に向けた。
どうやら頭の中が容量オーバーしたらしい。
僕だって、あまりのことにパニック寸前だ。
「おわっ!!」
ダイがまた叫び声を上げて、僕は思わず後ずさった。
さすがにマオとショーマも気味悪そうに、ダイから距離を取り始めている。
「…てことは、てことは……、マオは俺の、ひ孫…?!」
ぶつぶつと言いながら、マオとショーマを交互に見比べていたダイは、ぎっとショーマを睨みつけた。
「ショーマ、お前…っ」
「な、なんだよ…」
「マオを不幸にしたら、許さないからなっ!」
「なっ、何なんだよ、一体…。この前はおめでとうって言ってくれたじゃん!」
ショーマは少し涙目になっている。
無理もない。
ショーマは、ダイが初恋だったのに。
止めに入ろうとしたとき、ばちんっと音がした。
「…ったぁい……」
マオが片手を押さえてぴょんぴょん跳んでいる。
「ま、マオ!」
「大丈夫かっ、ヴァンパイアを素手で叩いたらダメだろ?!」
ダイとショーマが駆け寄って、わたわたしている。
「もお……」
マオは顔をしかめながら、ダイにびしっと人差し指を突きつけた。
「ダイ、昔のことに引きずられないで! 頭おかしくなるよ? ダイが今一番大切にしてるのは、誰?」
「…………」
ダイが、あ、という顔をして、僕を見る。
「ダイ……」
「ユヅ……」
ダイがおずおずと近づいてきて、僕の背中に腕を回すのに身体を預けながら、僕はやっぱりマオには敵わないなと思った。
御台さまと同じ、真実だけを見抜く目。
真桜さんにも通じる、強さ。
僕と同じくらい動揺しているらしいダイが、つっかえたりどもったりしながら、マオとお墓を交互に指さしている。
「そうだけど……。ダイ、どうしたの? すごく変だよ?」
マオが訝しげに首を傾げている。
……なっ、なんてこと…っ!
僕は、慌ててスマホを取り出し、タカヒコに電話をかけた。
この際、ダイを気にしてなんかいられない。
『…え? 何だって、高橋大尉の子孫?』
スマホから聞こえてきたタカヒコの能天気な声に、僕はその場にしゃがみ込みそうになってしまった。
『あー、俺言ってなかったか? うん、真桜って人は子ども1人産んでるぞ。あっ、そうか、女の子だったから言わなかったのかもしれないな。ユヅは男の子にしか興味ないだろ。その後も確か男の子は生まれてないしな……え?真桜の子どもの父親? そりゃ高橋大尉だろ? 』
タカヒコの声が聞こえていたのだろう、ダイがぎゃっと叫んで飛び上がった。
「ちょ、ちょっとダイ…、大丈夫か?」
あまりに挙動不審な僕たち(分かってはいるんだけどどうしようもないんだ)に、ショーマが本気で心配している声を出す。
「まっ、まま、マオっ! マオのおばーちゃんのおかーさんって、もっ、もしかしてマオと同じ名前?! 桜の字で。」
ひしっとマオの両肩を掴み、鼻先が触れ合わんばかりに顔を近づけたダイを、驚いたように見ながら、マオはうーんと眉を寄せた。
「ええっと…どうだっけ? マオのお祖母ちゃんは、お祖父ちゃんと離婚してて、だから高橋家のこのお墓にお父さんとお母さんと一緒に入れるって、嬉しそうに……。でも、名前までは……」
「ダイ、ダイ。」
僕はダイの肩をつついた。
ダイには悪いけど、もう1つはっきりさせておきたいことがあった。
「真桜さんの子どもって…、ダイ、心当たりあるの?」
「……………ないことはない。」
ダイは目を見開いたまま、マオの肩を掴んでいた両手をだらんと下げた。
「……出征前の、仮祝言の夜に……、真桜が、最後かもしれないから…って……」
「わ、分かった、もういいからっ。」
目に見えて悄然としたダイに、なんだか悪いことをしたような気がして、僕は慌てて遮った。
大尉と真桜さんは婚約してたんだし、そういうことがあったって、おかしくない。
「……ダイも、知らなかった、んだよね……」
「あ、あぁ……」
ダイは虚ろな目を僕に向けた。
どうやら頭の中が容量オーバーしたらしい。
僕だって、あまりのことにパニック寸前だ。
「おわっ!!」
ダイがまた叫び声を上げて、僕は思わず後ずさった。
さすがにマオとショーマも気味悪そうに、ダイから距離を取り始めている。
「…てことは、てことは……、マオは俺の、ひ孫…?!」
ぶつぶつと言いながら、マオとショーマを交互に見比べていたダイは、ぎっとショーマを睨みつけた。
「ショーマ、お前…っ」
「な、なんだよ…」
「マオを不幸にしたら、許さないからなっ!」
「なっ、何なんだよ、一体…。この前はおめでとうって言ってくれたじゃん!」
ショーマは少し涙目になっている。
無理もない。
ショーマは、ダイが初恋だったのに。
止めに入ろうとしたとき、ばちんっと音がした。
「…ったぁい……」
マオが片手を押さえてぴょんぴょん跳んでいる。
「ま、マオ!」
「大丈夫かっ、ヴァンパイアを素手で叩いたらダメだろ?!」
ダイとショーマが駆け寄って、わたわたしている。
「もお……」
マオは顔をしかめながら、ダイにびしっと人差し指を突きつけた。
「ダイ、昔のことに引きずられないで! 頭おかしくなるよ? ダイが今一番大切にしてるのは、誰?」
「…………」
ダイが、あ、という顔をして、僕を見る。
「ダイ……」
「ユヅ……」
ダイがおずおずと近づいてきて、僕の背中に腕を回すのに身体を預けながら、僕はやっぱりマオには敵わないなと思った。
御台さまと同じ、真実だけを見抜く目。
真桜さんにも通じる、強さ。