Hallelujah 前編

暗闇の中、僕はベッドに横たわるダイを枕元でじっと見つめていた。

ダイが眠るのは久しぶりだ。

去年の夏、前世の記憶を取り戻してから、しばらくは頻繁に眠っていたけれど、ここ半年くらいはなかった。

きっと、前世のことを色々と思い出したせいだろう。

ダイのひいお祖父さんの形見分けとして僕たちの前に現れた笄の、不思議な縁に導かれるようにして、僕たちは日本列島を旅した。

そして、僕も知らなかった真実にたどり着いたんだ。

眠っているダイは、微動だにしない。

ダイが人間だったときも、眠るダイをよく一晩中見つめていたけれど、そのときと違うのは、ダイが呼吸をしていないことだ。

冷たい身体で、息をしないまま横たわっているダイの姿は、僕に恐ろしい別の記憶を呼び起こさせる。

眠っているだけだと頭では分かっているのに、不安で不安で仕方ないんだ。

僕は、そっと頭をダイの胸にもたせかけた。

聞こえないはずの心臓の音を探そうとするように。

………あ。

ふわりと僕を包む空気が変わって、僕はダイのシールドの中にいることに気づいた。

…と同時にダイの思念のようなものが断片的に僕に流れ込んでくる。

夢でも見ているのかな。

ダイが起きたのかと思ったけれど、まだ眠っているみたいだった。

ダイ自身のシールドの中に他人を入れるのは、シールドで包むより難しいらしい。

……無意識でも僕を受け入れてくれている。

そう思うと嬉しかった。

僕は目を閉じて、ダイの夢に身を委ねた。



夢の中のダイは、大尉だった。

太平洋に浮かぶその島へ配属されると聞いたとき、生きては帰れないかもしれないという考えが頭をよぎる。

今は勝利していても、国力の差は歴然だ。

領土の広さからして、桁違いなのだ。

非国民と誹られるのが明らかだったから、何も言わなかったが、神風など信じていなかった。

ただ、守りたいと。

たとえ力及ばずで倒れるとしても。

せめて自分の帰りを待っている家族のために。

大尉の決死の覚悟が伝わってくる。

ふと、大きな口を開けて、屈託なく笑う女性の顔が浮かんだ。

僕は彼女を知っていた。




真桜……


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