Lilac Wine 4

「探すてあったものは見づがったんだが?」

寺の住職に丁寧にお礼を言い、辞去する旨を伝えた俺たちに、住職は細い目をさらに細めて尋ねた。

「はい。手がかりになりそうなものを見つけることができました。」

「それは良がった。」

住職の言葉は訛りがきつくて、俺には少し分かりづらい。

思考を読めるユヅの方が意思疎通はスムーズだった。

「何やらわった古い物ば探すておらぃだようだね。」

「ええ。」

「あまりに熱心だはんで、少々興味湧いでまりますた。もう少す事情ばお聞ぎすてもいが?」

「もちろんです。」

ユヅは俺に目配せをして、俺がリュックから取り出した笄を住職に示して見せた。

「彼の家に代々伝わってきた物なんですが、由来を知りたくて。とても大切にされてきたようなので。」

「……こぃは…」

「…えっ?!」

目を見開いた住職を見て、ユヅが小さく叫び声を上げる。

「…これを、ご存知なのですか?」

「似だような掛げ軸ば見だごどがあります。少すお待ぢぐださい。」

よろよろと立ち上がった住職を見送り、俺たちは顔を見合わせた。

…どういうことなんだ?!



やがて、住職が抱えてきた古い掛け軸を見て、俺たちは言葉を失った。

「わーも由来は知らねが、昔檀家であった武家がら贈らぃだものど聞いでおります。著名な絵師の作品どのごどで、何度が修繕すて当寺で大切にすてらものだ。」

それは、腹掛けをした男童が笑っている微笑ましい水墨画だった。

そして、その童が抱えている小刀のようなものは、その細工が俺の笄にそっくりだった。

「こ、これ……、この笄が、このお寺に伝わっていたということですか?!」

「さぁ、わーも詳すいごどは分がらね。」

住職は、困ったように真っ白な眉を八の字にした。

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