Lilac Wine 1

Lilac wine
is sweet and heady,
like my love
Lilac wine,
I feel unsteady,
like my love...

Listen to me, I cannot see clearly
Isn't that he coming to me nearly here

Lilac wine
is sweet and heady
where's my love
Lilac wine,
I feel unsteady,
where's my love...



夜の空気は秋の気配を感じさせる。

日中に比べると、ずいぶんと涼しくなってきた。

彼女は夜空を見上げて、そっと目を閉じる。

まぶたに浮かぶのは優しい微笑みを浮かべているあの人。

一目見たときから、心惹かれていた。

彼の伴侶になると決まったときは、嬉しくて仕方なかった。

彼の背負うものはあまりに大きすぎて。

恋の相手にはなれなかったけれど、それでも彼の側で彼を支えることが天命だと信じた。

彼も、信頼という形で、彼女の気持ちに応えてくれた。

だから。

彼女は、微笑みながら膨らんだお腹に手を当てた。

彼が残したもの。

どんなことをしても守ってみせる。

「……クゥン」

気がつくと、足元に柴犬が行儀よく座っていた。

彼が去ってから、まるで彼の身代わりのように現れて、彼女を守るようにいつもそばにいる。

彼女は、にっこりしてその犬に手を差し出した。

「うふふ、くすぐったいじゃない。」

ペロペロとその手を舐める柴犬を、くすくす笑いながら抱き寄せた。

「…ね、お前も一緒に守ってくれるでしょ?」

「ワン!」

彼女の言葉がどれほど分かっているのか、嬉しそうに尻尾をうち振っているのを愛しそうに見つめながら、彼女は大きく息を吐いた。

まだ、為すべきことが残っている。

前を向いて生きるのだ。

それが、彼の望みなのだから。

「……でも、会いたい。」

夢の中でも幻でもいいから。

切なげに秋の夜空を見上げる彼女に、柴犬はいつまでも尻尾を振って、寄り添っていた。






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