美しい人 中編

マオは、保育士をしているらしかった。

天真爛漫で、太陽みたいなマオらしい。

マオが働く保育園に近づいたとき、僕はハッとして足を止めた。

「…ユヅ?」

不思議そうに振り向いたソータが、僕の視線の先を追って、息を飲む。

「ダイ……」.

園庭の木の陰に隠れるようにして、ダイがマオを見つめていた。

一日中、そうしていたの?

動けなくなった僕たちの前で、最後の子供たちが帰り、帰り支度をしたマオが出てきた。

少し急いでいるようだ。

声をかけるつもりなのか、ダイが身じろいで、また動きを止める。

「ショーマ!」

満面の笑顔で笑いかけるマオの声の先には、車から降りたショーマがいた。

ソータが不意に僕の手を引っ張って歩き出す。

「そ、ソータ……」

僕はソータの考えを読み取って、驚きのあまり足がもつれてしまった。

「…あれ?ソータ?ユヅも。どうしたの?」

マオはきょとんとして、僕たちを見た。

ショーマが何か言いたげにソータを見ている。

「昨日、僕、参加できなかったからリベンジ!」

ソータは明るい声で言うと、ダイのいる木陰を振り返った。

「ダイ!こっちだよ!もう一回、飲もう!」

僕と同じくらいびっくりした顔をしたダイが、少しばつが悪そうに近づいてくる。

「…お前ら、せっかくのデートを邪魔しやがって……」

ショーマが小さな声でぼやきつつ、僕に向かって心の中で話しかけてくれた。

——全部、任せる。

ショーマには何も話していないのに、僕とソータを信じてくれているらしい。

僕は心からこの日本の友人たちに感謝した。

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