日付のない墓標

「ユヅ、そろそろ寝よっか?」

ダイに声をかけられて、僕は頷いた。

まだヴァンパイアになって数年しか経っていないダイは、人間だったときの習慣が残っている。

眠らないけれど、特別なことがない夜はベッドに入っていたいらしかった。

もちろん、僕はダイと一緒にいられるなら、どこで何をしてたっていい。

ベッドの中で、両手を広げたダイの胸に抱かれて、頬に羽毛みたいなキスをされる。

ダイは優しい。

今までも優しかったけど、前世の記憶を取り戻してから、本当に慈しむように僕を見る。

まるで、大輔さまが蘇ったみたいだった。

もう二度と逢えないと思っていたのに。

ダイの腕とは違う、ふんわりと温かなものに包まれる心地がして、僕はダイが僕にシールドを張ってくれたことを悟った。

僕には見えないけれど、感じるんだ。

ダイのシールドは、ダイと同じで、すごく優しくて心地よい。



「…ね、ダイ。また、見たい。」

だから僕は、つい甘えてしまう。

「いいよ。」

ダイはにっこりした。

毎晩のようにお願いしているけど、ダイは一度も嫌な顔をしない。

「今日は何が見たいの?」

「ん……と…」

僕は少し迷った。

「僕が今のダイと初めてキスしたときのこと。」

ダイは、 ふふっと笑った。

「キスだけでいいの?」

「え……」

「初めて寝たときのは?」

「……は、恥ずかしいよ、そんなの……」

思わず俯いてしまった僕を可笑しそうに見て、ダイは大きく深呼吸した。

僕を包むシールドの感覚がまた変わって、ダイの感情が流れ込んでくる。

寮のダイの部屋のベッドで、初めてキスしたときの、ダイの初々しいときめきと戸惑いと僕への生まれたての想い。

嬉しくって、恥ずかしくって、僕はどきどきした。

ずっとずっと知りたかったダイの気持ち。

シールドを操れるようになったダイのおかげで見られるようになった。

僕は込み上げてくる嬉しさのまま、ダイの首に腕を回してキスをした。

「……んっ……」

ダイが慌てたように身じろいで、ぱちんと何かが弾ける気配がしたかと思うと、テレビの電源が消えるように映像が消えてしまった。

「…こら。集中できないだろ。」

ダイが少し憮然として僕の鼻をつまんだ。

ダイのシールドは、ゴムみたいにダイに吸い付いていて、引き離した状態を保つのは結構大変らしい。

「…ごめん。」

僕は肩をすくめて謝った。

「今度はじっとしてるから、だから……」

もう一回。

そうねだると、ダイはしょうがないなぁというように微笑んだ。



1/3ページ
スキ