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Wisdom

ダイの血の匂いに興奮した新生者たちを倒すのは、さほど難しいことではなかった。

新生者たちの動きは、スコットが教えてくれた通りだったし。

俺たちは、2人(2頭)でペアを組み、次々と新生者たちを屠っていった。

オオカミになっている間は、意識を共有しているので、連携も取りやすい。

…まぁ、考えてることが全部分かってしまうってのは厄介だけど。

おかげで、俺がダイに好意を持っていることも、群れの全員が知るところになっている。

……おそらく、振られるだろうことも。

『ショーマ!』

頭の中に声が響いて、俺はハッと我に返った。

間一髪、襲いかかってきた新生者の牙を逃れる。

即座に銀色の毛並みのマオが横からその新生者に飛び付き、倒した。

『ショーマ! 今はダイのことは考えないで!』

『……ごめん。』

俺は目の前の闘いに集中した。

普通の人間より強大な力を持っている俺たちだけど、個々の力ではヴァンパイアに敵わない。

群れを作り、連携して戦う必要があった。

新生者たちを十分にこちらに引きつけておくこと。

それがダイの身を守ることになる。


少し離れたところで、ユヅルのファミリーが同じように新生者たちと戦っている。

人間の血を食料としないヴァンパイア集団。

存在は聞いていたが、会うのは今回が初めてだった。

思っていたよりずっと、彼らは好意的で協力的だ。

ヴァンパイアだからという理由だけで、敵視していた最初の自分が少し恥ずかしい。


『ショーマ、今から僕もそっちに行く!』

頭にソータの声が響いた。

もしものときのために、ダイの側にいてもらったのだが、こちらで戦闘が始まったことを知り、じっとしていられなくなったらしい。

『…こっちは、さほど手こずらなさそうだけどな。』

そう返して、辺りを見回した。

新生者の数は半分くらいに減っていて、俺たちはほとんど無傷だ。

戦闘に勝利するのは時間の問題だった。

『おかしいな……』

ボスが呟く。

いくつもの声が賛同した。

簡単すぎる。

『新生者を操っているはずのヴァンパイアは、どこにいるんだ…?』

俺はハッとした。

赤毛の女ヴァンパイアの狙い。

それはダイだ。

これまでの戦闘で、ダイの匂いを辿ると、俺たちが待ち構えているのを知ったとしたら……

そしてそこにユヅルがいないと気付かれたら……

『ソータっ! 戻れ!!』

俺は声を限りに叫んでいた。

ダイが危ない気がする。

すぐさま俺も駆けつけようとしたときだった。

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