Notte Stellata
「ハビのばか、キライ!」
鋭い声で言い放ち、つんと顎を上げて滑り去って行く華奢な背中を見て、僕はやれやれとため息をついた。
また怒らせちゃったよ……。
平昌からしばらくバカンスを取っていた僕は、来季の準備のためにクリケットクラブに戻ってきた。
ようやく久しぶりに会ったというのに。
ユヅはといえば、日本でのショーにイベントにと超絶多忙な日々を送っていて、スペインにいてさえ、その一挙手一投足がネットニュースを通じて伝わってきた。
過密スケジュールの合間を縫って、来季の準備のために慌ただしくクラブに戻ってきて、奪われた時間を取り返すように練習に没頭している。
少しピリピリしてるなぁ……。
まだジャンプは制限されていて、それがストレスになっているのかもしれなかった。
いつも、周りの期待以上に自分に高い目標を課し、それを達成しようとする彼だから。
それにしても、大抵の人には礼儀正しくていつもにこやかなのに、なんで僕にはすぐつんけんするんだろ…。
甘えてるのかな。
まぁ、それならそれで、いいけどさ。
彼を追い詰めたくなくて、僕たちの関係は、友達以上恋人未満って感じだけど、やることはやっている。
享楽主義の僕は、可愛いコを見るとつい遊んでしまうんだけど、僕の中の一番は、もうずっと長いこと、ユヅ一人だけだ。
…まだ彼には言っていないけど。
練習を切り上げて、ロッカールームに向かうユヅを追いかける。
せっかく会ったのに、怒らせたままなんて、悲しすぎる。
ロッカールームで着替えていたユヅは、僕の姿を見ると、ぷいっと視線を逸らし、バスタオルを持って、シャワーブースの方へすたすた歩いて行った。
固く強張った肩のラインが、まだ怒っていると告げている。
僕は、もう一つため息をついて、ユヅの後を追った。
「…っ、なんだよ、ハビっ。シャワーブースは他にも空いてるだろ…っ」
少し慌てた表情で振り返ったユヅの、抜けるように白い背中を抱きしめた。
「…やめ、ろっ…て……っ、んん……っ」
可愛くないことを言う可愛い口を塞ぐ。
ユヅの抵抗が弱くなった。
ユヅ。
可愛くて綺麗で、残酷な僕のユヅ。
君の本心は分かっている。
いつか君がその華奢な肩に背負ったすべての重荷を降ろしたら、僕の想いを告げてもいいかな。
けれど、本当は君ももう分かっているはずなんだ。
僕はずっと君のそばにいる。
あの満天に輝く星みたいに。
たとえ太陽の光にかき消されて昼間は見えないとしても。
どこにも行かずに君を見つめているよ。
D’amore per noi
Io t’amo sai tu mi ami
僕らのための愛の夜
ぼくは君を愛している
君も僕を愛している
Gia
もうすでに
終わり
☆冒頭のセリフは、みっふぃー様のリクエストからそのまま拝借いたしましたm(_ _)m♡